2018年08月24日

極上の孤独 下重暁子

極上の孤独 下重暁子(しもじゅう・あきこ) 幻冬舎新書

 作者が孤独な人とは思えません。ベストセラー作家です。周囲にはたくさんの人たちがいるはずです。そう思いながら読み始めましたが、本人には孤独な部分がありました。

 幼い頃病弱だったため孤独だった。孤独ではあったが、孤独を楽しむ方法を知っていた。

 なにも自分から望んで積極的に自分を孤独な環境に置かなくてもよかろうにと思います。すでに孤独である人への励ましメッセージだとして読んでいます。

 インドサイが「孤独」であるということは初耳です。新しい知識の吸収です。

 お金があれば孤独でも生きられそう。

 調べた言葉として、「透徹:とうてつ。すみきっている。筋がすっきり通っている」、「地域猫:近所の人たちが世話している野良猫」

 読んでいて、自慢話、他者評価・批評もあり、ちょっと身を引く思いあり。

 ご指摘どおり、つきあいのために心にもないことを口にしてしまうことがあります。それはそれでいい。相手の言うことにいちいち否定や非難はしない。

 本書の形式は、「心に浮かんできたことを書き留める」随筆です。類似の形式として、吉田兼好の徒然草を思い出します。

 俳句が孤独を癒す手段となっています。

 以前尾道にいったときロープウェイの中で老齢の女性が話していたことを思い出します。「歳をとって一番苦しいのは、ひとりになることです」
 老いてからの孤独、若い時の孤独があります。老いてからの孤独は、先が見えますが、若い時の孤独は先が見えません。

 いじめや悪口でしか人の輪をつくれない人との付き合いは避けたい。

 学者は学問以外のことは知らない。ハードワーカーも仕事のこと以外は知らない。人間だれしも、できることの範囲の限界があります。肩書で人間を評価しない。信用しない。

 著者は80代の方ですが、いままでひとり暮らしをしたことがないとあり、ちょっとびっくりします。

 人それぞれなので、読んだ人ごとに異なる感想があるでしょう。  

Posted by 熊太郎 at 05:05Comments(0)TrackBack(0)読書感想文

2018年08月22日

銀の匙(ぎんのさじ) 中勘助

銀の匙(ぎんのさじ) 中勘助(なか・かんすけ) ポプラ社

 児童文学の名作ですが読みはじめてみるとけっこう言葉がむずかしい。各ページに説明が付記されているので理解できます。江戸時代が終わり、明治18年以降頃の言葉です。

 偶然、茶箪笥(ちゃだんす)の引き出しから出てきたのが銀の匙である。母親がその銀の匙の由来を語ってくれる。場所は東京神田である。

 主人公は生誕後病弱だった。頭から顔からまつかさのようなできものがあった。母親の産後の状態も悪く、主人公は叔母に育てられることになる。叔母の夫は病死していた。

 語り唄を聴くような雰囲気で読書を続けています。文章にリズム感があります。主人公自身の経歴と東京の歴史が重なりながら進行します。
 主人公と叔母のサムライごっこは楽しい。いつの時代でも同じです。対戦ごっこです。加藤清正が出てきます。
 
 主人公であるこどもに対する叔母の愛情が深い。

 古い話なので、文章を読んでも光景をイメージできませんが、明治時代の街のにぎわいとか、人のありようが、生き生きと表現されています。ことに子どもの世界の豊かさがあります。日記がベースで書かれていると推定します。

 少年期の初恋のことが書いてありしみじみします。

 日清戦争、1894年7月、明治27年から1895年3月朝鮮半島を巡る大日本帝国と大清国の戦争

 主人公の思考に寄ればこの世で立派な人はいないというところまで到達するのですが、病弱だった自分のめんどうをみてくれた叔母には感謝します。叔母が主人公にいつも銀の匙(さじ)で薬を飲ませてくれた。叔母のおかげで今の自分がある。
 
 他者を非難しながら自立心が育っていきます。

 前編が「大正元年初稿(1912年、106年前)」、後編が「大正2年初稿」古いのですが今の子どもたちの心理にも共通します。これからもそうなのでしょう。

 印象に残ったこととして、「若い時、学問にこって本ばかり読んでいたら気がふれた人がいた」、「お寺の縁日におおぜいの乞食が出る」、「教師と気が合わない記述。同様に兄と気が合わない記述。そのほかのこともふくめて、『ふしあわあせ』という表現」、「主人公は憂鬱症」

 調べた単語などとして、「帷子:かたびら。夏の麻の着物」、「章魚坊主:たこぼうず。主人公の男の子9歳のこと」、「悍馬:かんば。暴れ馬」

 年齢を重ねていくごとに老いていく。育ての親である叔母との再会シーンがクライマックスでしょう。自分の世話をしてくれた人に感謝して、自分もまただれかの世話をして老いていく。しみじみします。  

Posted by 熊太郎 at 05:27Comments(0)TrackBack(0)読書感想文

2018年08月21日

笠をかぶったような富士山

笠をかぶったような富士山

新幹線の車窓から見えた光景です。
山頂付近だけ、台風の渦巻きみたいに囲まれています。
初めて見ました。
写真が下手なのでわかりにくいかもしれません。








次は、前日に車窓から見たときの富士山です。


  

Posted by 熊太郎 at 06:07Comments(0)TrackBack(0)静岡県

2018年08月19日

お盆過ぎの東山動物園

お盆過ぎの東山動物園

昼間は混んでいませんでしたが、午後8時30分までのナイトズー目当てか、午後5時を過ぎてから混み始めました。

暑さの中でもくるくる回って泳ぐコビトカバ



暑さのためか、たまに水面に顔を出すふつうのカバ



いつもじっと寝ているのに、この日はちょうど午後の食事時で、びゅんびゅん動き回るコアラ。すごい勢いで上下、左右、枝から枝に飛び跳ねているので驚きます。写真は「タイチ」という名のコアラです。



孤独で淋しそうなシンリンオオカミ



檻の外に飛び出したような展示になっているユキヒョウ。動きが激しくて迫力があります。



お正月以来に上った東山スカイタワーからの風景です。上池、シロクマ・ペンギン・アシカ舎方向が一枚と遊園地、9月6日公開予定の新しい類人猿舎方向です。







  

Posted by 熊太郎 at 05:55Comments(0)TrackBack(0)名古屋市

2018年08月18日

本当の頑張らない育児 やまもとりえ

本当の頑張らない育児 やまもとりえ 集英社

 横断歩道を歩いていたら突然夕立みたいな豪雨になって、近くの本屋で雨宿り。なかなか雨がやまず書棚をながめていたらおもしろそうなマンガを見つけたので、雨宿りのお礼代わりに購入しました。

 だんなが育児を手伝ってくれなくてマイペースなのが悩みです。だんなもこどもみたいなものです。

 絵は優しいタッチで内容もほのぼのしています。ただ、絵はところどころわかりにくく描画が不十分な気がします。スマホが電話に見えませんでした。
 妻ひとりに仕事を押し付けると妻は壊れます。最悪児童虐待が始まります。こどもはかわいいばかりではありません。反抗的でめんどうなこともあります。

 手抜きとかズボラで子育ての大変さをのりきろうというメッセージ本です。

 最初のうち、作者は、ウジウジとして、旦那にはっきり意思表示をしません。同じ場所をグルグル回ってその範囲から外へ出ることができません。
 
 内容を観ていると奥さんも仕事を再開されます。共働きです。そこからがまた苦しいのですが親の代わりに保育士に育ててもらってもかまいません。

 こどもさんの「個性」が登場する場面が少なかった。  

Posted by 熊太郎 at 05:27Comments(0)TrackBack(0)読書感想文

2018年08月17日

出会い系サイトで70人と実際に会ってその人に合いそうな本をす

出会い系サイトで70人と実際に会ってその人に合いそうな本をすすめまくった1年間のこと 花田菜々子 河出書房新社

 珍しいタイトルの本です。とにかく、読み始めてみます。

 主人公は33歳女性書籍・雑貨店の店員。冒頭は主人公女子のホームレス状態から始まります。主人公は既婚者で、離婚はしていませんが、別居です。舞台は横浜。子どもはない。そして作者自身のノンフィクションで事実に基づいています。
 出会い系サイトで会った男性に肉体関係抜きでその人に合う本を紹介するという不思議な内容です。当初は健全さを出していますが、最終的な男性の目的は主人公の体です。実体験に基づくものとあるのですごい覚悟を感じます。本を書くため。お金のため。32ページまで読みました。主人公が相手に勧める本は、書名も作家も知らない人ばかりです。2013年(平成25年)1月からスタートして2017年(平成29年)までの期間のことが書いてあります。70人こなすとそれぐらいの期間がかかるのでしょう。(あとで気が付きますが、行動自体はタイトルにもあるとおり1年間のことでした)

(つづく)

 「X」のサイトを通じて男性と出会う。SNSの世界です。健全に集うように書いてあるのですが最近起きた誘拐殺人事件を連想し闇を感じます。
 
 相手は独身男性ばかりではありません。既婚者もいます。そして、女性もいます。

 作者はかなりユニークな人です。どうして、どのようにして、別居された男性と結婚したのかは書かれていませんが平凡な主婦ではありません。SNSでの自己アピール文が異様です。初期のときは「セクシー書店員」とあります。それを読んだほうは、あとあと、暴力を伴う男性が登場するとか、金銭要求があるかもしれないとか考えてしまいます。

 ヴィレッジヴァンガードという店で働いていて友人関係になった吉田さんとの交流がきっかけで、この本の内容が芽生えています。

 作者の勧める本を見かけたことがありません。ヴィレッジヴァンガードには何度か行ったことがあります。風変りな店だという印象があります。方向性が大衆向きではなくマニアックだと感じました。紹介があるこういう本の情報を作者がどこで手に入れるのかわかりません。

 半分ぐらい、111ページぐらいまできて、なんだか飽きてきました。書き方がワンパターンに近い。時系列的に説明が続きます。

 たくさんの本の紹介がありますが、わたしはそのうちの1冊しか読んだことがありません。サブカルチャー(独自な信条をもつ人々の独特な文化)が担当領域のような記述がありました。

 サイト「X」で、身分を明らかにして、30分間の出会いで、自分が相手から何かを得て、相手には何かを提供するシステムです。
 当初は数年間関与したと受け取りましたが読み終えてみると初期の目的を達成したということで、1年間で脱会されているようです。

 印象に残った部分として、「印象に残る1年後の自分」

 作者は若いので頭の中にある知識とか記憶が短時間で瞬間的に出てきます。歳を重ねるとそれができなくなります。忘れてしまいます。

 自らをさらけ出すのが、作家の宿命です。

 読みながら、途中、だれと会って、どんな本を勧めたのかを記録していましたが、220ページに一覧がありました。わかりやすくていい。

 調べた単語などとして、「マッドシティ:ファミコン用ソフトとか洋画のようですが、この本での使い方はよくわかりません。東京はおもしろマッドシティとあります」、「Sというバル:Sは店名の頭文字でしょう。バルは、食堂とバーが一緒になった飲食店」、「岡崎京子の漫画」、「ルノアール:喫茶店名。まじめで高級みたい」、「横浜のコワーキングスペース:IT機器持ち込みで、席で仕事ができる飲食店と理解しますが、書中では、レンタルオフィスのようです」、「人狼ゲーム:村人に化けたオオカミが出てくるゲーム」、「仕事のプライオリティ:優先度(重要度を優先するわけではない)」  

Posted by 熊太郎 at 05:59Comments(0)TrackBack(0)読書感想文