それいけズッコケ三人組 那須正幹

それいけズッコケ三人組 那須正幹(なす・まさもと) ポプラ社

 1983年が初版で、2017年で107刷もされています。すごい本です。
 わたしは初版時すでにおとなでしたので読むのは今回が初めてです。
 ハカセ:山中正太郎。らっきょみたいな顔でメガネ
 ハチベエ:八谷良平。背が低くて色黒ギョロメ目
 モーちゃん:奥田三吉。たぶん牛のなき声モーォからきている。太っている。
 花山第二小学校6年1組、担任が宅和先生(たくわ。おじいさん)
 友情、勇気、愛がテーマ
 発行されたシリーズ50冊のタイトルをながめながら、昔で言うところのクレイジーキャッツとかドリフターズのシリーズものの映画を思い浮かべました。
 三人が住んでいるのは花山団地です。

第1話 ハカセの家に泥棒二人組が入ります。ハカセはトイレの中にいます。字を書いたトイレットペーパーをトイレの窓からたらして助けを求めます。
 なつかしい言葉がたくさん出てきます。「やっこさん(あの人の意味)」「国鉄(JRになったのは1987年昭和62年4月1日)」「ずうたいがでかい」「百科事典」「ズッコケ」自体も最近はあまり聞きません」
 お話のほうは泥棒が入ってきて落語みたいな展開になります。おもしろい。話のつくりがうまい。

第2話 女子三人が本屋で万引きをするお話です。女子は中学生ふたりと小学生ひとりです。ズッコケ三人組が彼女たちの万引きを防ぎます。おもしろくて楽しい。

第3話 お化けのお話です。三人組が女子たちを驚かそうとお化けをつくるのですが、本物のお化けが出てきてしまいます。リアルな幽霊です。子どもさん向けですが、タブー(禁止事項)なしの基準で書いてあり、それはそれで満足しました。

第4話 男女5人で貝塚発掘に行き、ハチベエひとりが里山で遭難してしまいます。歴史を扱った物語です。縄文人と太平洋戦争当時のことです。防空壕はなつかしい。小学2年生ぐらいのころ近所の縦型子ども社会のグループで探検したり、ひとりだけで潜り込んだことも数回あり、遠い記憶がよみがえりました。防空壕の発見は、台風による小規模土砂崩れ被害がきっかけになっています。志賀島の金印もなつかしい。福岡県太宰府にある九州国立博物館で金印のレプリカをお土産に買ったのは、2009年12月のことでしたからかれこれ10年が経とうとしています。体調を崩してからは旅行に行くのもめんどうで気が進まなくなりました。
 作者自身にもたくさんの冒険体験があるのでしょう。体験から生まれた物語です。
 「カナテコ:鉄製のてこ。てこを利用してフタをあける」
 炭鉱もなつかしい。

第5話
 スローモーでひっこみじあんなモーちゃんがテレビ番組に出場します。子どものクイズ大会です。そして、いんちきで全問正解15万円ゲットをハカセとハチベエが狙います。最初は替え玉出演を想像しましたがはずれました。トランシーバー∔補聴器作戦です。意外に嘘ついてもよしとする創作手法なんだと驚きましたが、そううまくはいきません。物語の展開をどうもっていくのか興味しんしんで読み進めました。いいオチでした。  

坂道のアポロン 邦画DVD

坂道のアポロン 邦画DVD 2018年3月公開

 青春ものです。坂道は長崎県の長崎市内を思い浮かべますが、同県内の米軍基地がある佐世保市のようです。時代は昭和40年代を振り返ります。
 アポロンは、ギリシャ神話に出てくる音楽の神さまです。アポロンにたとえてあるのが登場人物川渕仙太郎で、彼の身の上話には感涙しました。ジャズドラムを演奏するドラマーです。ジャズピアノが西見薫で現在は東京で働く男性医師です。ふたりにからむのが、レコード屋の娘である迎律子(むかい・りつこ)です。この三人の三角関係に、別の男女の別れる、別れないがからみます。

 出だしはぎこちないのですが、だんだん波に乗ってきます。中盤は原作のダイジェスト版のようなのかなという感想をもちました。
 九州弁はなつかしい。時代は変わりましたが、今も九州の片田舎では映像の中のような風景は残っています。
 千太郎くんは西郷隆盛のようです。
 薫くんは、中学生に見えてしまうのですが、言葉遣いは北の国からの吉岡さんみたいです。
 律子さんは好演です。
 
 わたしは、糸電話のシーンが気に入りました。
 ジャズが好きな人に観てほしいムービです。  

相棒 テレビドラマDVD シーズン1 第1話~第5話

相棒 テレビドラマDVD シーズン1 第1話~第5話

 先日読んだ辻村深月さんの文章に「相棒」が面白いとありました。自分は知りません。ので、とりあえず最初のお話を観ました。シリーズはロングランです。観たのは、2002年の作品です。
 警察の中でお荷物のふたりが組んで事件を解決するから「相棒」と理解しました。
 杉下右京という係長職と亀山薫さんという男性のペアです。
 ダイナマイトをもった立てこもり犯を身柄確保してから話が始まります。確保の仕方が見事でおもしろい。大企業の政治家がらみの贈収賄事件に発展しました。
 杉下右京はなにを交換条件にしたのだろうというところが見ていて焦点になりました。水谷さんと岸部さんのやりとりは秀逸です。
 杉下右京のキャラクターはロボットみたいでロボコップをイメージしました。感情を抜きにして理路整然と考察します。対して、相棒の薫さんは動きます。ふたりのバランスがいい。基本的には二人芝居です。
 男女の愛はボタンの掛け違いで「憎しみ」に変わる。

(つづけてシーズン1-2)
 1本につき90分かと思っていたら、最初の作品だけが90分で、あとは45分でした。
 2本目は、人を殺してしまいましたという女性がビルから飛び降り自殺をしようとするシーンから始まりました。いい出だしです。いつ、どうやって、だれを殺したのか。死体が見つかりません。
 トリックは途中で気づけます。
 刑事コロンボを思い出します。
 このドラマは、巨大な公権力と闘うことがスタンスのようです。
 クラッシク音楽が場面に合っていていい。

 「見えを切る:いいところを見せようとする」

(つづけてシーズン1-3)
 不可解。歩道橋の上に転落したいあり。上に構築物なし。
 麻薬がらみの殺人事件発生です。
 話のネタで勝負する刑事ドラマです。
 落語家の手ぬぐいにこだわる理由が最後までわかりませんでした。
 だまし合いが続きます。いろいろ疑いながら観ています。
 上出来の人情モノに仕上がっています。
 もう16年ぐらい前の風景ですが、観ていて「東京なんだなあ」と感慨にふけります。

(つづけてシーズン1-4)
 事件は、女性の下着泥棒の証言から警察の不祥事隠蔽へと発展していきます。
 犯人の個性設定が面白い。
 杉下右京は、警察官であることに誇りをもっている。
 正義をとおす時には決心がいる。

(つづけてシーズン1-5)
 10才小学生が殺人犯人です。ホラーを見ているようでもありました。
 凶器がなぜボーカン(弓矢)なのか、杉下右京のこだわりがありました。
 冒頭の「じいじ、しっこ」そして、「したい」おしっこがしたいと死体の重ねが愉快でした。  

寝ても覚めても 柴崎友香

寝ても覚めても 柴崎友香 河出文庫

 38ページまで読んだところで感想を書き始めます。

 寝ても覚めてもというのは、おそらく、男子に恋をしたあさちゃん22歳大卒就職者(いまはまだきちんとした氏名と職業がわからない)が、ビルの27階で偶然出会った青年(22歳から23歳ぐらい)に恋をして、一日中、男子のことを恋焦がれる物語と今は受け止めて読んでいます。

 展望室があるビルの場所や名称がわからないのですが、最初、あべのハルカスかと思いましたがどうも違うようです。

 2010年の小説ですから、今から8年前です。今月9月に映画が公開されているようです。

 自分の言葉で書いてあることが読んでいてわかります。主人公女性あさちゃんの一人称で進行します。

 男女の出会いは見た目で始まり、見た目で継続する。

 主人公女性がいまどこにいるのか、場所の固有名詞は出さない。

 大阪市内の案内と関西弁が続く。

 「絢子(あやこ)」カラオケスナック

 「リバー・フェニックス:1993年に23歳で死没したアメリカ合衆国の男優。スタンド・バイ・ミーに出演」

 ここから(38ページ)最初のページに戻って、読み落としがないか確認します。

(つづく)

 調べた単語類として、「彼氏の麦(ばく。名前です)が着ている緑色のパーカー:首の根元に帽子となるフードが付いている上着」、「スパンコール:ぴかぴか光る装飾用の金属、プラスチック」、「インラインスケート:スケート靴の下に車輪が一列のローラースケート」、「サイケデリック:薬で幻覚状態。原色の絵画、刺激の強い音響」、「スタンドカラー:折り返しのない襟」、「リフレイン:繰り返し」、「フラペチーノ:スタバの冷たいドリンク」、「ドレープ:垂らした布の柔らかいひだ」、「ミルフィーユ:フランス菓子。パイ重ね。間にクリームなど」、「タルト:焼き菓子」、「ピスタチオ:ナッツ」、「タンドリーチキン:インド料理。チキンを窯で焼く」、「スリング:抱っこひも」、「スウェット:吸湿性の高い厚手の布」、「バングル:ブレスレット」

 主人公の彼氏は、ふっとどこかへ行ってしまう習性あり。主人公の泉谷朝子は家族と断絶している気配あり。
 朝子は、岡崎家のアパートという居心地のいい場所を見つけます。岡崎ファミリーである母、兄、弟、朝子、朝子の彼氏である麦(ばく)の暮らしは楽しそう。

 ピンク色が強調されています。

 印象に残った文節として、「隣の部署の人が小説家になると言って会社を辞めた」「目の前のすべてが過去に見えた」
 
 物語の動きはあまりありません。2年9か月のブランクがあって、2002年になりました。この作品自体は2010年のものです。

 そして、3年が経過します。場所は大阪から東京へ移ります。日記を読んでいるような感覚があります。時系列で記述していく。
 そこはかとなく孤独な若い女性の淋しさが伝わってきます。

 同じ顔をもつふたり目の男性が登場します。彼は実は同一人物で記憶喪失なのか。それとも、最初の人物は詐称していたのか。次の人物が詐称なのか。

 「寝ても覚めても」とは、男を思ってそうなるのではなく、自分を思ってそうなると推測が変化しました。

 時は2006年になる。大阪における麦との付き合い記述が希薄だったのはなぜか。

 2008年になる。

 読み手は今、248ページ付近にいます。最後はどう落とすのだろう。ひとつの案は頭に浮かんでいます。

 記述として、突然違う話の1行が入ることが特徴です。

 あっけない再会。なぜ今まで彼女に連絡をしてこなかったのだろうか。

 うーむ。仕事の話は出てこない。

 恋愛小説だけれど、一方のみ(女性)の心理。

 途中で? どういうことなのだろう。読んでいて混乱が生じてきました。

 名言です。恋は勘違い。

 信頼関係の崩壊。

 過去にひきずられる。

 人を傷つけても傷つけたという実感をもっていない女性。

 そして、雨。

 読んでいると、遠い過去、40年ぐらい前の風景が見えてくる。

 読み終えました。

 悪く言えば、「自分勝手」、よく言えば、「自由奔放」、されど、31歳に達した主人公はもう若くはない。最後に「腐れ縁」「女の性(さが)」ホラー小説みたい。


 合わせて、文庫に登載されている「同じ街の違う夜」の感想も付け足します。

 「碑文谷:ひもんや。読めませんでしたが、以前、別の小説でも舞台として出てきた記憶があります」

 ポイントになる単語、文節として、「あの顔」、

 読んでいると、過去をなつかしむ気分になります。昔あって今はない建物、それを知らないその後に生まれた世代。40年ぐらい前を思い出します。

 最後の文章で、作品「寝ても覚めても」とつながります。ほーっと感嘆のため息が出ました。

 「解説」の感想も足します。

 ポイントになる言葉として、「ガーリー:子どもっぽさを残した少女の姿」、「目の文体」、「意匠:趣向、デザイン」
わかりやすいいい解説でした。

 あとは、登場人物がたくさん登場する物語でした。メモをしながらメモを読み返しながらの読書でした。たくさん出てきますが、要点を動かす登場人物は少なかった。  

老後の資金がありません 垣谷美雨

老後の資金がありません 垣谷美雨(かきや・みう) 中公文庫

 長男の嫁後藤篤子さん50代後半ぐらいの一人称でことがらが語られていきます。

 冒頭、娘の結婚式に600万円かける話から始まります。クレージーです。(このあと、じっさいはもっとかかります)
 支出額がリアルでぞっとします。
 結婚式にしても、お葬式にしても、お祝いや香典があるので、全額出ていくわけでもないのが救いですが、この物語の場合は、見栄と親族間の精神的対立で、支出額の上限があるようでありません。極端すぎる面があります。ことなかれ主義の主人公の夫はなんの役にも立ちません。
 「お祝い」「香典」という相互扶助の精神がある日本は幸いです。中国はじめ外国にはそういう慣例はないと聞いたことがあります。

 印象的な文節などとして、「これほど長生きするとは…」(自分の介護費用と葬式代は自分で用意して欲しいという願望につながります)

 大きな出費が次々と襲ってきます。夫57歳はまだ在職中なのに、退職金を前倒しで食いつぶしそうです。自分たち夫婦の老後の生活費はどうするのだろう。こんな調子だと家計が破たんしてしまいます。

 夫の両親とは別居している長男夫婦の妻がここまでやらねばならないのだろうか。
 107ページまで読みました。続けて読みながら感想を継ぎ足していきます。

(つづく)

  「詰まった:つまった」
 結婚した娘のDV話は誤解がありそう。
 息子勇人(はやと)のポジションはアドバイザーで、なかなかしっかりしている大学生です。
 主人公篤子さんのともだちであるサツキさんもアドバイザー役です。

 225ページあたりからおもしろくなってきました。やはり年寄りも、めんどうをみてもらうのではなく、自分でできることは自分でやったほうが生きがいにつながります。
 
 印象に残った言葉として、「人はみかけじゃわからない」

 葬儀に関する記述が非常に詳しい。よく調査されています。

 いろいろなパターンがありますから、人それぞれの感想をもつのでしょう。

 番外として、解説の室井佑月(むろい・ゆづき)さんの文章が本音で書いてあって楽しい。この小説を「面白くためになる素敵な小説」と定義されています。

 この作者さんのほかの作品も含めて、作者の目の付け所が時流にのっていていい。  

男はつらいよ(1、2、3、6)

男はつらいよ 第1作 DVD 1969年昭和44年公開
 新作の製作があると聞き、このさい最初から観てみようと借りてきました。
 皆さん若い。監督さんも若い(特典映像を観て)
 亡くなった俳優さんたちが、日本映画を創って、映画界を支えてくださったことに感謝しながら鑑賞しました。
 90分という短い時間で観やすい。内容に勢いがあります。「動→静→動」のリズムがいい。
 この巻は、最初の1本なので、自己紹介による登場人物の紹介が主です。
 多少無理な変化にもっていっても通用しています。
 画像はきれいです。
 渥美清さんの口上(こうじょう。ものいい)がすばらしい。
 内容は、まあ、下品です。どうして、いいかげんな主人公フーテンの寅さんに観客は心を寄せたのか。それは、主人公の「気持ち」に共感するからでしょう。このへんが、完全な善人を主人公としない秘訣でしょう。
 ロケ地は、見慣れた奈良の風景です。二月堂、東大寺、奈良ホテル
 画像の中の風景よりも、今のほうが新しい建物に見えます。
 「スイカの名産地」はなつかしい歌です。小学校のバス旅行のバスの中で歌いました。
 心の表と裏の描き方がうまい。
 音楽が下支えをしています(山本直純氏)
 大卒、学歴へのこだわりがあります。50年ぐらい前は、経済的な理由で、学力があっても大学への進学がむずかしい時代でした。


続・男はつらいよ 第2作 DVD 1969年11月公開(昭和44年)
 冒頭の寅さんが夢をみるシーンは第二作が初めてのようです。お布団の柄がなつかしい。
 映画を離れて、渥美清さんという俳優さんの記録を読みました。
 公私を分離する。私生活は隠す。車寅次郎という個性を守るために演技を離れた時間帯は人づきあいをしない。渥美清を演じ切る。厳しいものがあります。
 架空の人物像「車寅次郎」に日本中の人が惚れました。
 盆正月に映画館にこの映画を観に行くと、上映経営者と観客が知り合いで、上映中に、「〇〇くーん、電話だよー」とか、うしろから声がかかって、スクリーンの中と現実が一体化しているぬくもりのある光景がありました。
 「葛飾柴又帝釈天」、行ったことはありませんが、この映画を支えている場所です。
 さくらさんの子ども満男くんが生まれています。
 東野英治郎さんの名がゼリフがいい。
 渥美さんのしゃべりは、まるで落語です。おもしろい。
 今回のロケ地は、京都、清水寺、嵐山
 意表をつくラブホテル、劇中では、連れ込み旅館のロケで、支配人さんのミヤコ蝶々さんが寅さんの実母です。8歳のときに別れて、30年ぶりの再会です。寅さんは38歳です。ラストシーンが良かった。
 「おみそならハナマルキ おかーさん」のコマーシャルがなつかしい。
 寅さんがその場にいないと思ってしゃべっていたら実は居たというお笑いのパターンが楽しい。


第3作 男はつらいよ フーテンの寅 1970年公開(昭和45年)
 舞台は最初が木曽で、次が三重県湯の山温泉でした。
 湯の山は何度も行きました。その当時の風景と今とを比べながら景色を見ていました。ロープウェイもあるし、道路もあまり変わっていない感じがしました。
 おいちゃんのくちぐせ「知らねえよ、おらぁ」が何度も出ます。監督さんが山田洋次さんではないせいか、なんだが雰囲気が違います。ヤクザ色が強い。
 驚いたのは冒頭で、先日亡くなった樹木希林さん(当時の芸名は悠木千帆さん)が旅館の仲居さんで登場したことです。若い。まだ20代だと思います。ご冥福をお祈りいたします。
 「岡惚れ:決まった相手がある人、親しくない人に、ひそかに惚れる」

第4作と5作は観たことがあるので、第6作 男はつらいよ 純情篇 1971年昭和46年1月
 藤圭子さんの「15・16・17とわたしの人生暗かった…」を聴くとしみじみします。
 腹の中にあることを包み隠さず表に出して喜怒哀楽の強い生活を送る人たちと、無表情になって感情を体の中に押し込める人たちの暮らしとの対比を試みていますが、時間が90分と短いので不十分な面がありました。それでも笑えるからよしとするのです。