2018年06月10日

車いす犬ラッキー 小林照幸

車いす犬ラッキー 捨てられた命と生きる 小林照幸 毎日新聞出版 2018課題図書

 カバーの写真を見る。後ろ足2本が使えない犬が、車いすのような自作手づくりらしき車いすをからだに装着している。事故にでもあったのでしょう。

 奄美大島付近の地図が出てきました。先週日曜日の夜見たNHK大河ドラマSEGODONを思い出しました。
 2016年平成28年10月中旬から始まります。
 犬の名前はラッキー、11月で4歳、体重13kg、雑種です。4歳は人間だと28歳~36歳の間ぐらいと20ページの記事でわかります。
 この犬のことで、これからどうやってページを埋めていくのだろう。

 ラッキーの飼い主は、島田須尚(しまだ・すなお)さんです。犬のことではなく、島田さんのことをレポートしていく。偉人伝形式です。捨てられていた命を拾うのです。

 ラッキーが暮らす徳之島、人口約2万6000人、3町で構成されている。
 鹿児島港からフェリーで約14時間半は長い。たしか、成田空港-パリが、飛行機で、行きが12時間35分、帰りが、11時間45分です。

 ゴミの話があります。徳之島はゴミが多い島のようです。放置自転車が多いことは不思議です。海流に流されて、岸に打ち寄せられるのだろうか。

 自営の電気店を奥さん小夜子(さよこ)さんと一緒に営まれます。
 ラッキーは2頭目の飼い犬で、捨て犬だったのを島田さんが拾って育てている。捨てる人がいれば拾う神ありみたいなことわざがあります。1頭目の犬の名前が、寅さん(とらさん)。

 島田さんは、昭和24年生まれですから、平成30年の今は、68歳ぐらいでしょう。

気に入った文節が出てきました。まあ、お金を損したお話ですが、「60万円で勉強した。」 学ぶには損失することもあります。

 役所とのつながりが強いのは、田舎だからということもあるのでしょう。生活保護、犬の飼育がらみの保健所、ごみの関係もあるでしょう。公園の指定管理者もされていたので、公園管理部門とも結びつきがあるのでしょう。あわせて、徳之島の産業発展の記事があります。

 島には野良犬が多いようです。都会では、野良犬を見かけることはありません。野良猫はいます。

 ラッキー1歳(人間だと17歳)、初代の飼い犬寅さんが12歳(人間だと64歳ぐらい)、人間である飼い主の島田さんが、64歳である2013年、平成25年です。ラッキーは交通事故に遭います。下半身が使えなくなり、手術、車いす生活となります。途中安楽死の提案も出ますが、避けて良かった。
 人間と犬との愛情物語です。徳之島だからできたこと、不便だったことはあります。車いす犬は、どこでも、だれでもできることではありません。
 事故直後の殺処分話は、読み手は反対しません。そういう選択肢もあります。その後捨て猫が拾われて「マオ」と名付けられています。島田さんは、「捨てない人」です。なかなかできることではありません。
いったん捨てられた子猫のマオは、長い距離を歩いて、もとの場所へ戻ってきています。ドラマがあります。

 交通事故のほうは、人間ではなく犬なので、加害者の姿はありません。やむを得ません。

 171ページの写真を見ながら、犬でもリハビリはあるだろうし、下半身をおなかと腰のところで支えて苦しくはないのだろうかと心配します。寝る時はどうするんだろう。車いすははずしてもらって横になるのでしょう。183ページの写真を見ると、車いすをはずして、後ろ足を使って、自力で立つこともできるようです。

 島田さん本人に胃癌が発見されます。だれしも、順風満帆にはいきません。事故や病気やケガはつきものです。人生は障害物競争に似ています。
 救われた命でも、いつかは死はきます。犬でも人間でも同じです。死ぬまでの時間をどうすごすかがそれぞれにゆだねられています。  

Posted by 熊太郎 at 06:18Comments(0)TrackBack(0)読書感想文

2018年06月09日

千年の田んぼ 石井里津子

千年の田んぼ 石井里津子 旬報社 2018課題図書

(1回目の本読み)
 1ページずつ、すべてのページをゆっくりめくります。流し読みよりもっと速い内容雰囲気把握読みです。最後までいくと、全部を読んだような多少錯覚が入った安心感に満たされます。
 山口県日本海側に浮かぶ「見島(みしま)」が舞台で、見島には、千年以上前から同じ形態を続けている稲田があるそうです。稲田の歴史的な価値に着目です。
 わたしは、同じような場所にある角島(つのしま)しか行ったことがありません。本土から島にかかる橋が美しいところでした。
 本に田んぼをながめている夫婦とこどもの絵があります。雰囲気としては、奈良県明日香村(あすかむら)の雰囲気がただよっています。縄文時代をすぎて、飛鳥時代(あすかじだい)ぐらい、西暦600年代ぐらいです。

 日本人の主食であるお米のお話です。

「八町八反開田:はっちょうはったん。面積の表示です。一町は1ヘクタール(100mぐらい×100mぐらい。1万㎡ぐらい)ぐらい、八町は8倍ですが、872m四方ぐらい。反が1000㎡ぐらい。町の10分の1。ちなみに1畝(せ)が、10m×10mで100㎡ぐらい。八町八反だと、8×1万㎡∔8×1000㎡だから、88000㎡ぐらい。島の一部分に水田が集中してつくられていると受け止めました。

 この本は小説ではない。調査報告書のような書きぶりです。

 ページの色がはじめとおわりで違います。白いページが灰色のページにはさまれています。なにか意味があるのでしょう。

 イラスト、ことに人物像がやさしいタッチです。

 日本人の先祖をたどるとたいていが農家です。

 地籍簿(ちせきず)というものが出てきます。土地の記録です。土地の広さとか所有者が描かれているのでしょう。いっぽう、戸籍は人間の記録です。生まれ血筋、生年月日などが書かれています。

 「三角ため池」という言葉がこの本の内容のキーワードになりそうです。

(2回目の本読み)
 最初から、ちゃんと読みます。
 94ページまで読みました。
 農業に関する勉強をする本です。合わせて歴史の本です。
 「水」の大切さが書かれています。

 山口県の日本海側沖合にある見島(みしま)というところの田んぼが研究地です。千年以上前の田んぼの形態を今もなお維持しているそうです。
 水が不足しがちなので、田んぼの角に三角形のため池がたくさんある。農作業をする人は池の水をため池から汲んで田んぼに流す。田んぼに流れた水は地下を通って再びため池に戻る。その繰り返しが延々と続く。田んぼは、貴重な、なんとか遺産に該当しそうです。三角ため池の一編は5m~6mとあります。深さは2m~3mです。

 9ページに島の航空写真があります。牛の形をしています。右向いて、前足、後ろ足があります。
 
 ため池の石垣は丸い石で組まれている。海岸の丸い石が活用されている。海岸には同じく丸い石でつくられたジーコンボ古墳群がある。なにごとも自然のものを自然に使ってつくる。

「ユンボ(重機):岩を砕く。土を掘ったり、削ったりするための小型ショベルカーに見えます。」

 佐賀県の吉野ケ里遺跡を見学したことがあります。本書中では、佐賀は干潟を干拓して出来上がった土地とありました。(干拓:海ほかと仕切って、水を抜いて土地を干す。)
 佐賀県内は、延々と続く平野で、どこまでも平たく、見て驚きました。

 農業というテーマをはずれて、なにごとにおいても、「自分が思う疑問を解決するために探求心をもつ。判明した時に喜びが湧く。」ということがあると、読みながら考えました。

 著者の出身が香川県で、水がなかったため、ため池が多かったという記事を読んで、そういえば、小学生のときに、香川県内はため池が多いと習ったと、大昔のことが脳によみがえりました。

 気に入った文節の主旨です。「自然は大きな脅威、日本人はそこに神々を見出し、祈り続けた。」

 84ページに田んぼづくりの手順が書かれています。荒おこし→ひきかえし→代かき(しろかき)→しろ。4回の作業があります。これは、田んぼづくりだけに限らず、なにごとにも通じます。最初は荒く、徐々にていねいにすき間をつめていき、最終的に、できばえのいいものをしあげるのです。いいものをつくるためには時間と手間がいります。

 89ページ付近の牛の話には共感します。うちでも、牛を飼っていました。牛は労働力で家族でした。食べるものではありません。
 89ページの牛の絵が良かった。

「ゲノム:遺伝の関係の言葉」

 読みながら、昔は昔、今は今という言葉が浮かびました。昔のやり方を今もすることは無理です。耕作放棄という言葉が出てきます。以前、日本海側を旅行した時に、ここで生まれた若い人はここを出たいだろうなあ。出たら帰ってこないだろうなあと感じるものがありました。92ページにありますが、次代の人は都市に出て家を買い新しい場所で暮らします。

 八町八反の田んぼは、定規で引いたようなきれいな田んぼです。1300年以上前につくられた。条理という形式でつくられた。京都や奈良に昔あった平城京のつくりです。
 八町八反の田んぼは、標高1.8mぐらいあるから干拓地ではない。(海を干したところではない。)
 戸籍をつくり田んぼを割り当てる。米をつくらせ年貢(税)を収めさせる。土地も民も国のもの。
 
 日本海に浮かぶ小さな島なれど、昔は国の防衛のために国の役人家族が住んでいた。今は自衛隊のレーダー基地がある。ジーコンボ古墳群のジーコンボは英語だと思いましたが、おじいさんのお墓で、ジーコンボとは気づけませんでした。
 さだまさしさんの「防人の歌(さきもりのうた)」を思い出しました。ドラマがあります。
 外国から国を守るために法令に基づく国家が島を警備するために役人とその家族を住まわせた。豊富な武器、高級な食器が古墳に埋葬されている。次々と意外なことが判明していきます。「ラスト豪族」という言葉が最後に登場します。

 米の貴重さ、重要さが書かれています。一粒が2000粒になる。稲の恩恵は大きい。米二俵半で人ひとりが1年間生きていける。米100万石で100万人が1年間生きていける。

 子が生れた祝いに大凧をあげる。

 千年前の知恵があります。工夫をしないで、文句ばかり言っている現代人は、昔の人に学ばねばなりません。  

Posted by 熊太郎 at 06:22Comments(0)TrackBack(0)読書感想文

2018年06月08日

こんぴら狗(こんぴらいぬ) 今井恭子

こんぴら狗(こんぴらいぬ) 今井恭子(いまい・きょうこ) くもん出版 2018課題図書

 「こんぴら」とは、四国香川県にある金毘羅さんという神社で、わたしは19歳のときに行ったことがあります。四国半周野宿の車旅でした。こんぴらさんは、長い階段を登り詰めて、山の頂上に拝むところがありました。足が痛くてへとへとになりました。書中にもありますが、「海の神さま」がまつられています。江戸時代にワンちゃんが江戸から四国まで歩いて、さらにあの延々と続く階段を登ったとは、簡単には信じられません。本の帯では、途中から犬一匹で行って帰ってきたように書いてあります。ほんとかな?

 「狗」は、犬です。この物語では、江戸時代の後期、(明治維新が1868年で、この物語の設定が1820年です。明治維新となる48年前に物語はスタートです。
 犬が江戸から四国の金毘羅山までお参りすることは、この本を読んで初めて知りました。お伊勢参りは一般的で、たぶん、犬の伊勢参りもあったのでしょう。

 この物語では、最初、犬のみが金毘羅参りをしたのかと、そんなことができるわけがないと、そんな気持ちで読み始めました。
 捨て犬だった「ムツキ(睦月、1月生まれだからの意味)」オス犬が、病気になった飼い主小杉弥生16歳の病気が治りますようにとお参りして願うため、犬の飼い主の知り合いのご隠居さん(美陶園という瀬戸物問屋の人)とひとりと一匹のふたり旅で四国を目指します。

 まだ、106ページを読んでいるところなので、これから感想を継ぎ足していきます。

 日本人は心豊かな民族です。ここまで読んでそう思いました。江戸時代の人たちは心が優しい。親切です。それだけ、世の中が安定していたのでしょう。
 犬が、江戸から四国のこんぴらさんまで、お参りできるのです。そんな安全な国はなかなかありません。
 この本ではありませんが、江戸時代に滞在した外国人の手記を数冊読んだことがあります。世界各地を旅行したけれど、日本が一番いい国だと評価されていました。自然が豊かで海の幸(さち)、山の幸に恵まれている。士農工商という身分制度はあるけれど、人々はそれほどこだわっていない。上下関係の意識は薄い。外国では権力者が豪華絢爛な家に住んでいるが、日本の権力者武士は質素な生活をしている。そんな権力者は世界で見たことがないと感嘆していました。

 だれかの代わりにお参りをする犬を「こんぴら狗(いぬ)」といって、周りの人はその犬を大事にしたそうです。

 お寺さんは、昔、今でいうところの旅館とかホテルの役割を果たしていました。だから、広い畳の間(ま)があります。旅人はそこで、寝たのでしょう。

 山の神がいて、海の神がいる。八百万の神(やおよろずのかみ)といって、いろいろなものに神さまが宿っている。

 「かわいい子には旅をさせろ(将来のために苦労させなさい。)」という言葉を思い出しました。

 参考になります。江戸時代の人は、1日十里(4km×10)40kmも歩く。日の出2時間前に宿を出て、10時間ぐらい歩く。江戸からこんぴらさんまで、670kmです。17日間かかりますが、途中、大雨が降れば、川を渡れない時もあります。しかも、往復しなければなりません。
 
 57ページ付近、作者が犬のムツキに成り代わります。

「上弦の月:月の形がDの形の半月。反対が下弦の月。弓の弦のあるほうをさす。」、「上がり框:あがりがまち。玄関、靴を脱いであがる部分のふち。」、「四半時:しはんとき。いっときが2時間。半時が1時間、4半時が30分間」

 親切で優しい江戸時代の人たちです。

 4月8日江戸を出発しました。9日が品川です。

 小田原に箱根越えの山駕籠(やまかご)があったそうな。ほうという気持ちになりました。初めて知りました。ただ、かごよりも歩いた方が楽だとあります。かごは揺れがひどいらしい。箱根の関所は観光で何度か行きました。思っていたより小さな建物でした。

 街道を歩きながらたくさんの名物食べ物が出てきます。おもち、うなぎ、焼きハマグリ、とろろ汁、富士山の景色もいい。

 読んでいると新しい知識が増える本です。へーと思うことがあります。はたごへの連泊は許されなかった。病気で連泊するときは役所に届けが必要だった。朝食後はさっさと出発しなければならなかった。

「無常:むじょう。人の世ははかない。」 118ページ付近は暗い雰囲気です。ご隠居さんがいなくなる。犬一匹になる。
 50代での、こんぴらさん参りは酷です。当時の平均寿命は50代ではなかろうか。旅の別れが人生の別れになってしまいました。

 4月29日三重県鈴鹿あたりまで来ました。ご隠居さんは病気で亡くなりました。さて、犬一匹となったムツキはどうするのでしょう。
 新名神高速道路は何度か車で走ったことがあります。「土山(つちやま)」というサービスエリアで休憩をした覚えがあります。山の中にあるきれいな施設でした。この本は地理の勉強にもなります。ときおり、本の最初にある地図を見ます。こんぴらさんは遠いなー 冒険小説を読むような雰囲気もあります。

 ご隠居が亡くなって、ムツキのことをムツキと呼ぶ人がいなくなった。その部分で、犬の大変さが伝わってきます。名無しの犬になってしまいました。

般若心経(はんにゃしんぎょう) 仏教の経典(きょうてん。お釈迦様の教え)
 かんじーざいぼさつ、ぎょうじんはんにゃはらみたじ、しょうけんごーおんかいく …… ぎゃちぎゃてい、はらぎゃてい…
 
 ムツキは、托鉢の(たくはつ)のお坊さん玄祐、次に、偽薬売りの孫市についていく。大坂到着です。(昔は、大阪ではなく、大坂だった。)

 5月13日、船の旅の始まりです。「こんぴらふねふね… 」の歌は久しぶりに目にしました。なつかしい。

 ムツキは芸者さん3人(女将さん(おかみ)さん、オトシ、チエ)についていきます。3人が中心になって、船の上で三味線伴奏で乗船客みんなでの大合唱のシーンが良かった。

「讃岐富士:香川県飯野山いいのやま。標高420mぐらい。」

 5月19日、こんぴらさん到着。199ページ、犬のムツキがこんぴらさんの階段をのぼる絵は、まるで、人間がへとへとになって登っている姿に似ていて笑えました。

 大工の健太についていくムツキです。健太の速い歩行スピードが素敵です。
 
 6月4日まできました。江戸を出発したのは4月8日でしたから、2か月ぐらいが経過します。
 ムツキは、奥川澄枝さんという江戸の女の人(油問屋のおかみさん)のグループと一緒になります。お伊勢参りの戻りの人です。目の見えない息子さん宗郎(むねおさん)と手代(てだい、従業員)善七さんと一緒です。むねおさんは、ムツキを「茶々丸」と名付けます。こどもにとって、犬はともだちです。ムツキは目の見えないむねおさんの心のいやしとなり、やがて、盲導犬のような存在になります。

 6月17日、どうやら江戸に到着です。愛知、静岡あたりの地名は身近で物語に親しみが湧きます。おつかれさま。

「姫街道:ひめかいどう。東海道の脇街道。浜名湖の北側を通る。」

 江戸時代の観光案内ブックを読むようです。

 1825年、ムツキの飼い主亜矢さんは、結婚して妊娠します。ムツキがこんぴらさんに行ってから5年が経過しました。  

Posted by 熊太郎 at 05:59Comments(0)TrackBack(0)読書感想文

2018年06月07日

家族はつらいよⅢ 妻よ薔薇のように 映画館

家族はつらいよⅢ 妻よ薔薇のように 映画館

 久しぶりに映画館へ行きました。この映画の1と2は最近DVDで観ました。Ⅲを観てまず、こどもたちふたりが大きくなったなあという感想と、それにともない出演者の方々もふけてきたなあというものでした。もっとも子役さんは別の人に変わっているようです。1年に1本のペースで公開されています。

 今回の出だしはかなり衝撃的でした。起こってはいけないことが起こってしまいます。一番悪いのは空き巣の笹野高史さんなのに、お嫁さんの夏川結衣さんが責められてしまいます。

 いまどき、大家族のなかの働いていない専業主婦というのは珍しい存在なので説明に苦しい面もあるのですが、お金のこととか、介護とか、子育て、親戚づきあいなど、話題は身近で豊富です。
 あと、中学生のこどもふたりが、でかい図体をしているのに、自分で料理をつくれなかったり、食事の用意を親や祖母に依存したりするのも不可解です。古い中学生像、中年、老年男性像が映像に残っています。

 次回は、妻夫木さん夫婦に赤ちゃんが産まれそうなので、第4弾が来年あたり公開されるのでしょう。楽しみです。それにしても、妻夫木さんが兄の西村まさ彦さんを説得するくだりには胸を打たれました。なんていい奴なのだろう。

 事柄は次々と展開していきます。てんこ盛りです。その勢いに圧倒させられます。そして、事項にはつながりがあり、この出来事は、このあとどこかで再び顔を出すだろうと予想しながら集中して観ることができます。
 戸建の中なのですが、家族会議を行うスペース(ダイニングルームとリビング)が狭い。そこに大勢がぎゅっと詰まって激しいやりとりをするものですから真に迫った演技が伝わってきて、観ていて、笑ったり泣いたりができます。効果を狙った狭さが設定されています。

 ちょい出演の笑福亭鶴瓶さんの演技にはほっとさせられます。タクシーの運転手役です。渥美清さんを思い出します。

 あっという間の2時間でした。

 この雰囲気をこれから先長く、どうやって引き継いでいくのだろうかという危惧をもちつつ、支えていくのは映画を観に来る観客だという結論に達するのです。

山田洋二監督 橋爪功 吉行和子 中島朋子 林家正蔵 蒼井優 風吹ジュン  

2018年06月06日

神様のカルテ2 邦画DVD

神様のカルテ2 邦画DVD 2014年公開

 冒頭付近、面白くて良かったセリフです。
「少しは寝れた?」に対して、「ありがたいことに、5分も寝れた。」
 もうひとつが、「ようこそ、医療の底辺へ」

 患者のために、365日24時間営業の病院です。医師、看護師は、休日もとれません。それが、理想の医療なのかと、映画は観客に投げかけ続けます。観ていて疲れます。場が冷えます。

 これ以上観てもなという失意が途中にあります。進藤辰也役の俳優さんの演技は、感情を引きずり気味で、ぎりぎり過ぎる。幼き娘の世話があるとあとで理由が出るのですが、それまでの感じが悪い。

 ドクターでなくても、「仕事人間」はいます。たいてい、結婚してない。していても子どもはいない。仕事中毒という病気です。

 生真面目な映画です。セリフで説明しすぎるのか、観ていて心が動きません。  

2018年06月05日

神さまのカルテ 邦画DVD

神さまのカルテ 邦画DVD 2011年公開

 小説は読んだことがあります。読書感想文も書きましたが、データが残っていません。
 強い印象はなかった記憶です。

 映画は、まじめです。
 今となっては古い内容もありますが、昔は、長時間の診察待ちが、まん延していました。

 医師にとっての矛盾に感じること、苦闘が映像ににじみでた作品です。

 冒頭は、アルコール依存のことが流れます。酒をやめる気がない人は受診する必要もない。わざわざ受診して、酒をやめる気はないと主張するぐらいなら受診はいらない。病気になって、倒れて、痛い思いをしてみないと、身に染みてわからない。

 主人公ふたりの夫婦像は、ありえないような夫婦でした。

 救えない患者を救うことはできない。

 神様のカルテとは、役者が演じる医師が書いた診療の記録を言う。

 欠点(情にもろい。特定の患者に気持ちを入れこむ。)をもつ主役(医師)設定映画でした。

 櫻井翔 宮崎あおい 柄本明 原田泰造