2018年06月04日

ピアリス 萩尾望都

ピアリス 萩尾望都(はぎお・もと) 河出書房新社

 書店で1行目を読んで、いいなあと感じて買いました。10歳になって、「時間」の感覚がわかるようになったというようなことが書いてあります。
 家に帰って、そのあと10行ぐらいを読んで、あれ、平凡だなと感じました。

 最初に本の最後に書いてあるインタビュー部分を読みました。
文章書きはにがてで、この本に出ている作品は、四半世紀前ぐらいに別のペンネームで雑誌に書いたSF作品だそうです。
 ご本人のことをあまり知りませんが、偉大な少女漫画家であらせられるようです。福岡県の出身地は、こどもの頃、その近くに住んでいたことがあるので土地の雰囲気はわかります。

 36ページ付近まで読みました。
 アムルー星人は内戦をしている。シリアのように難民が発生して、5歳の双子兄妹が生き別れになる。兄がユーロで、どうも未来が見えるらしい。妹がピアリスという名前で、どうも過去に関係がある能力があるらしい。(その後、ソビエトと米国の代理戦争の地、朝鮮半島のような記述が出てきます。)

 文章は読点(とうてん「、」)が多く、少し読みにくい。そのあたりが、インタビュー時の自信のなさに表れているのでしょう。

 内容は、いまのところよくわかりません。ユーロと教師のエトラジェン人セル(男性教師)の関係は、男性同士の結婚話が出ていて、そういう世界を扱っている小説なのかと思わせてくれます。

 いまはまだ、ユーロが10歳の設定で、彼は難民として惑星ムウーンにある修道院で暮らしています。

(つづく)

 読み終えました。
 女子が、想像の世界を楽しむ作品でした。

 最初にあるカラーアニメで、手足を縛られてベッドにくくりつけられているのは、妹ピアリスのほうだと思いこんでいました。兄、ユーロのほうでした。右下に白い小さな字で書いてあるのですが、老眼で見えませんでした。
 物語全体に、同性愛とか、軽いセクシー記事があります。

 内戦で両親から離れたユーロにしてもピアリスにしても北朝鮮に拉致された被害者のようです。

 「ビジョン:未来が見える現象」 ノストラダムスの大予言が思い浮かびました。

 予防接種をするように避妊手術がある。

 身分制度、差別社会がある。

 全体で4つの短編です。雑誌の春夏秋冬発行時期に合わせてあります。第2話のほうが第1話より動きがあっておもしろい。内容は独特です。去勢という文字が出てきました。

 風景描写から、読み手と書き手が、近い世代であることを感じます。

 登場人物セル(修道院の男性教師)の老い方が著しい。

 わたしには、絵の良さはわかりません。感じる力がわたしにはないのでしょう。

 ゆるぎない孤独感がある作品です。

 ペルシャ絨毯(じゅうたん)のような記事あり。

 スラム(廃墟、警察力なし、秩序なし、暴力支配)、人身売買、差別、盗みの世界があります。反対に治安が良く高収入の世界もあります。世界は数値が小さいほど高度で、最大の9がだめなのです。

気に入った表現として、「役目ですから」、「勝たなきゃ、生き残れない。」

調べた単語として、「未来を統べる:すべる。支配する。」、「攫う:さらう。読めませんでした。人攫いひとさらい。」
 

(その後)

書店で別の本を見かけたので買って読みました。
KAWADE夢ムック総特集 萩尾望都 少女マンガ界の偉大なる母 文藝別冊

 福岡県の出身地が亡祖父や高齢となった母親と同じなので読む興味が湧きました。産炭地ですが、萩尾さんのおうちは管理する側リッチなほうのファミリーです。うちは、反対側の労働者グループです。ただ、地域の雰囲気は同じでしょう。文化が産まれやすい環境にありました。

 冒頭付近のカラーマンガは、愛と殺しとの異様な世界です。わからない単語が出てきました。「こしかた:過ぎ去った過去」 仲の悪い息子母親です。息子が死期の迫っている母親に、こしかた、いい人生だっかと聞きます。
 ブラックユーモアのようです。結婚も離婚も母親に仕切られた。(だから母をうらんでいる。)
 詩の世界です。息子には顔がない。喜怒哀楽がない。感情を奪ったのは実母。
 おもしろい。

 作者の父親は、優しいけれど、自分しか見ていない人だった。的確な指摘なのでしょう。その父親が母親とともに、雑誌の後半で、インタビューに出ています。マンガの内容が独特なのに珍しい。

 漫画制作風景は、現在NHKの朝ドラで流れている「半分、青い」と重なります。偶然です。

 「ポーの一族」も「残酷な神が支配する」も読んだことがありません。これから読むかどうかもわかりません。

「ルルとミミ」の部分で、学校が休みの日にこどもが早起きするシーンが出てきます。小学校2年生のときにそんなことがあって、父親に指摘されたことを思い出しました。なつかしい。  

Posted by 熊太郎 at 06:01Comments(0)TrackBack(0)読書感想文

2018年06月03日

三ツ星フードトラック始めました 洋画DVD

三ツ星フードトラック始めました 洋画DVD 2015年公開

 離婚して妻が引き取った10歳の息子と、自分がつくりたい料理がつくれないシェフの父親、そして、彼の元同僚が、移動販売車(トラック)で、キューバサンドイッチを売る内容で、成長物語、成功物語のハッピーなロードムービーとなっています。

 「障害」がいろいろ発生しますが、克服していきます。

 おいしそうな料理や食べ物が次々と登場します。
 陽気なサンバの音楽が鳴り響きます。
 ダンスもあります。
 冒頭付近は対立もあり、あわただしく忙しい。

 アメリカ合衆国の風景も楽しめました。

 下品な言葉使いも出てはきますが、家族で楽しめます。

 シェフはどうしようもなく頑固者です。勝手な人だという印象もあります。ただ、主役に欠点をもたせるのは、物語づくりの常道、秘訣です。

 10歳の少年によって、スマホとか、動画とか、YouTube、ツイッターのSNSが駆使されます。
 
 当初「地獄の厨房」とかいうテレビ番組で、批評家と勝負するのかと思ったら、フードトラックへと流れて、途中で、お話の構想が変化したのかもしれないと邪推しました。  

2018年06月02日

いい人ランキング 吉野万理子

いい人ランキング 吉野万理子 あすなろ書房

 タイトルから察すると、「いじめ」が素材でしょう。読者の対象は、中学生でしょう。という予測通りの内容でした。
 いい人を選ぶコンテストがあるとは思えませんが、もし、実施するとこうなるという結末です。

 いじめの対象になるのは、木佐貫桃(きさぬき・もも、女子、中学2年生)です。

 心理描写は深い。矛盾(肯定と否定でつじつまが合わない。)を指摘する内容です。

 されど、途中で、読むことがつらくなり、途中から流し読みをしました。

 「クラスで一番性格のいい人」を投票で決めて表彰する。現実には、こういった「人を晒す(さらす)」投票はやらないでしょう。

 人は、人を自分の都合のいいように利用しようとする面をもっています。選ばれた人間は利用されます。人に好かれない方が気楽なときもあります。

 中学生が考えそうな企画です。先生も家族も止めないのが不思議でした。

 中学女子向けの本だと感じました。

 身を引く思い。笑いの場所で、笑えない。少し、理屈っぽい。

 読んでいて、気持ちのいいものではありません。学校の教室内の閉鎖的で重苦しい雰囲気が伝わってきます。

 陰険なので、もう読むのをやめよかと思う95ページ付近です。いじめができる場所を設定して、相手をはめる。辛辣(しんらつ。極めて厳しい。)です。

 よかった表現の主旨として、「いい人には2種類ある。本当にいい人といい人を演じている人」、「うわべはね。」  

Posted by 熊太郎 at 07:02Comments(0)TrackBack(0)読書感想文

2018年06月01日

ユリゴコロ 邦画DVD

ユリゴゴロ 邦画DVD 2017年公開
 連続殺人モノなので、映像で見るとかなりグロい。文章を読むのとではちがいます。映像、音楽に押されます。
 あの日、あの時、あの場所で、あの人に会わなければ、こんな不幸な人生を歩まなくても済んだ。巡り合わせの宿命があります。こういう殺人好き傾向をもつ性質の人が現実にもいるので不気味です。

 吉高由里子 松阪桃李 松山ケンイチ 監督 熊沢尚人


2012年3月6日の読書感想文 ユリゴゴロ 沼田まほかる 双葉社
 ぐいぐいと読ませてくれます。288ページあります。遅い昼食後に読み始めて、途中お昼寝をはさんで午後8時00分頃読み終えました。情景描写に不足な点がありますが完成度の高い作品でした。ホラー、サスペンス、推理が充実しています。心の病がある人にとっては読みたい本です。
 「ユリゴコロ」とは、「拠り所(よりどころ)」を聞き違えたものです。「依り所」とも解釈します。気持の依り所なのです。それは「家族」を指します。困ったときに頼るところがファミリーなのです。
 読書中に主人公亮24歳の母親が入れ替わったことには気づけます。背景と具体的な手法、理由はわかりません。
 1冊の本のなかに2本の小説が交互に収められています。表の物語よりも裏の物語のほうがメインです。裏の物語は芥川賞選考対象作品です。人間の汚れた悪の部分があからさまに表現されています。秘密のノートです。秘密は読書欲をそそります。公序良俗を否定する内容です。自傷行為を幇助(ほうじょ、助ける)する記述もあります。登場人物は仕置き人(殺し屋)です。途中、秘密ノートの内容は創作であろうと、読み手の気持はいったん薄まりますが、その後濃厚さは復活します。裏作品は「胎児」のようです。この1冊の本が母親の母体で、裏作品が「胎児」という構成です。この本は「妊婦」なのです。
 戸籍に関する記述に多くのページ数が使用されています。戸籍にこだわるのは20代までです。年齢を重ねるにつれ戸籍というものから気持は遠ざかってゆきます。戸籍は行政が住民を管理するための行政のものであって、本人の所有物ではありません。戸籍制度に従っていれば生活が保障されますが、家族の実体は家庭にあります。親子が一緒に暮らせる期間は短い。早い人は義務教育終了後、親から離れます。親子は、離れてからの期間がはるかに長い。読書マニア受けする作品でした。わたしは十分満足しました。