2024年08月17日

星屑の町(ほしくずのまち) 邦画 2020年

星屑の町(ほしくずのまち) 邦画 2020年(令和2年) 1時間44分 動画配信サービス

 少々古臭い雰囲気が内容のお話ですが、観終えてみれば、ああ、いい映画だったなあと感慨深いものがありました。
 昭和40年代、自分がまだ小学生中学生だったころに聴いた歌が何曲も流れます。
 のんさんの歌では、島倉千代子さんの歌、『ほんきかしら』が一番良かった。1966年(昭和41年)の歌です。
 最近しみじみ思うのは、自分と同じ時代を生きて来た人たちが、ひとりふたりと亡くなってしまった、あるいは、もうすぐ亡くなりそうであるという状況が、自分の身の回りにあります。
 自分は父親をこどものころに病気で亡くしましたが、その後も、祖父母、叔父叔母や義父母、職場の先輩・同僚・後輩、学校の先生や同級生でも、もうこの世から消えてしまった人が何人もいます。
 親しき人を亡くすということはつらいものです。でも、死を止めることはできません。淡々と時間は流れていくのです。悲しくても歯を食いしばるだけです。
 だれかが亡くなれば、新しい命が生まれてきます。昨年に引き続き今年五月にまた新しいあかちゃんが自分の親族として誕生しました。生まれてきてくれてありがとうです。
 そんな日常を背景にしながら、この映画で次々と流れ出てくる歌曲を聴くと、人生ってなんだろうなあと思いつつ、できるだけ丁寧(ていねい)に、いい人生を過ごしたいと願うのです。

 映像を観ていて、ああ、昔はカラオケという機器がなかったと思い出すのです。
 宴会では、みんなで手拍子をたたきながら、大きな声を出して歌っていました。歌の歌詞は5・7・5の言葉の組み合わせが基本で、言葉数は少なく覚えやすかった。同じ単語の繰り返しが多かった。
 仕事場の旅行では、和室の大広間に設置されたステージで、寸劇や手品、踊りや、ちょっとした芸を披露したりもしました。
 (この文章を書いて数日後に、NHKのテレビ番組、『鶴瓶の家族に乾杯』で、四国香川県お遍路さんを題材にして訪問した俳優の松山ケンイチさんが訪れた場所で、会社の方が、『うちの山本リンダで~すとか、うちの中森明菜で~す』と言われて、紹介された社員さんのほうもそのようなポーズをつくって、みんな笑顔でいい雰囲気でした。毎年職場の主催で歌謡ショーのような娯楽をされるそうです。昭和40年代から50年代にかけてのやり方が今も残っていて、観ていていい気分になれました)
 
 動画配信サービスの映画案内を観ていて、久しぶりにムード歌謡コーラスを聴きたいと思い立ちこの映画を観ました。
 出てくるのは、『山田修とハローナイツ』というメンバーですが、雰囲気は、『内山田洋とクールファイブ』でした。ボーカルは、前川清さんです。昭和40年代から50年代に、よく流行りました。(はやりました)

 あいちゃん(久間部愛。くまべ・あい)を演じるのんさんの父親探しの話題があるのですが、そのことについては、たいして重要視はされていません。
 あいちゃんは、歌手になりたいという希望がありますが、なかなか夢がかなわない。かなわないけれど、映画だから最終的にはかないます。かなったあと、本当の幸せは何かと考えて気づいて、歌手の世界を卒業します。
 のんさんは、しばらく前に、NHKEテレの、『スイッチインタビュー』という番組でお見かけしました。百田夏菜子さん(ももいろクローバーZのリーダー)と交代でインタビューをしあっていました。
 のんさんは事務所ともめて長い間干されて表舞台に出ることができなかったというようなことを聞きますが、わたしにはなんのことかわかりません。去年、NHK朝ドラ『あまちゃん』の再放送をずっと見ていて、おもしろいなあと思い興味をもちました。リアルで放送されていた2013年(平成25年)のころは、仕事が忙しくてテレビはほとんど見る時間がありませんでした。
 何があったのかわかりませんが、芸名を変えなければなるほど追い込まれて、テレビや映画にも出ることができなくしてというほど圧力がかけられるということは異常で異様です。
 スイッチインタビューのなかで、30歳になったのんさんが自分の若い頃を振り返って、自分はあの頃、とんがっていたと表現されました。
 まあ若い頃には失敗はつきものですから、徹底的にたたくのではなく、寛容さも必要だと自分自身の人生をふりかえってもそう思うのです。まだまだ失敗が許される年齢です。

 映画の映像では、ショートコントを入れながらのおだやかで、ゆったりとしたステージショーが続きます。心地よい。

 あいちゃんの祖父を演じる柄本明さんは妖怪のようです。
 古い話のつくりがあります。
 村のかよわき若い女性が都会のヤクザ者から暴力を受けて、柄本明さんが、加害者たちを成敗するのです。せいばい:やっつける。
 日本刀で、ズバンズバンと切って捨てて、切って、切りきざんで、炭焼きの火で焼いちゃうのです。おそろしい。

 歌がなつかしい。
 流れてくる歌は古いけれど、歌を聴くと、当時の思い出がよみがえります。

 歌がうまいだけでは、売れない。
 歌がうまい人は、いくらでもいる。
 (売れるためには、なんでもですが、唯一(ゆいいつ。たとえばその世界でただ一つしかない。希少価値きしょうかちです)という個性がいるのです)
 これしかできないから、この仕事をやっているということはあります。仕事って基本的にそういうものです。
 のんさんの歌唱力は、人を強くひきつける歌手としてご飯が食べていけるほどの高レベルではありませんが、女優という演技の世界で、自身の個性を表現して行かれるのでしょう。

 関西弁でケンカがあります。
 舞台劇を観ているようです。
 九州弁も出てきます。いろいろです。

 古い時代だから、男尊女卑(だんそんじょひ。男が女より上という意識)の雰囲気もあります。
 
 気持ちを大切にする作品です。
 たまに夢がかなう。
 いつもいつもは、夢はかなわない。
 なかなか世の中は厳しい。

 日曜日夕方5時半からの笑点で司会をやっている春風亭昇太さんが、居酒屋の店長役で登場されました。おもしろい。なかなかいい。笑いました。

 歌というものは楽しいもの。
 のんさんとバックコーラスのおじいちゃんに近い年齢のおじさんたちとは、なんとなく組み合わせがアンバランスですが、ちゃんと映画として成立しています。たいしたものです。

 また喫煙シーンが出ました。前座歌手役の戸田恵子さんが、ビルの外階段で、長々まったりと(ながながまったりと)タバコを吸っています。
 映画製作のための補助金を政府から(文化庁?)もらうのに、税金の原資になっているタバコのシーンを映像に入れるように国の組織から指示でもされているのだろうか。日本映画のほとんどに喫煙シーンが出てきます。映画に喫煙シーンを入れるのはもうやめたほうがいい。人間、心身の健康が第一です。

 水族館の映像が出ました。のんさんが主演をしたさかなくんの映画を思い出しました。2022年9月公開、『さかなのこ』。しばらく前に観ました。でも、こっちのムード歌謡の映画のほうが、『さかなのこ』の前に公開されています。

 なかなか良かった。
 のんさんは、じぇじぇじぇの『あまちゃん』ですから、東北に足を付けて生きておられることがわかりました。岩手県の盛岡市とか久慈市(くじし)です。