2024年03月21日

ぼくの死体をよろしくたのむ 川上弘美

ぼくの死体をよろしくたのむ 川上弘美 新潮文庫

 短い文章が18本並んでいます。短編集です。そのうちのひとつが、本のタイトルと同じです。
 この作家さんで、以前読んだ本があります。『神様 川上弘美 中公文庫』でした。この世にない世界という世界観、この世にない空間、人間(のようなもの)を書く人だという記憶が残っています。

『鍵』
 男の後ろ姿に惚れた(ほれた)。
 男は、筋肉質の体で、右の手のひらに、ダンベルを持って歩いていた。男の後ろ姿を見て恋をした。男は神社の境内に住むホームレスだった。
 語り手は32歳の未婚女性です。これまでに男性とつきあったことはあるけれど、『好き』という言葉を言われたことも言ったこともないそうです。(つまり、恋ではなかった。なんとなくなりゆき。男女の体の関係はあった)
 そんな話が続きます。
 読んでいて、不思議な感覚が自分に広がります。語っている女性の実体が感じられないのです。
 恋した相手であるホームレスの男の年齢は、65歳です。
 詩的な内容でした。

『大聖堂』
 大聖堂というのは、語り手の知人の部屋にある本のタイトルです。本棚の飾り目的だけの本です。異性が来た時に本をみせびらかして、自分に惚れ(ほれ)させるのです。その部屋の住人がどこかで拾ってきた(ひろってきた)本だそうです。
 これもまた、不思議な設定です。
 アパートがあります。家賃は格安ですが、条件として、大家が提供する動物のいずれかを飼って世話をしなければならないのです。動物を死なせると賃貸借契約は打ち切りです。(動物の自然死はOK。事故死は状況次第(しだい))
 語り手は、男子大学生です。
 アパートの家賃は、2万円で、二階建て、二階が大家宅で、一階に4部屋あります。

 作者の文章書きの特徴として、ひらがな表記があります。『案外→あんがい』とか、『関する→かんする』とか。
 
 語り手の男子大学生は、中学時代いじめにあっていた。

 男子大学生は、動物を選びましたが、この世に存在する動物ではないようです。四つ足で、背中に小さな羽がある。オコジョとかテンに似ている。
 動物の分類としての名称がない動物です。大学生は、その動物に『つばさ』と名付けて可愛がります。
 アパートには、住人がいます。
 1号室:カーヴァー(最初不明だった住人に大学生が付けた仮想の名前。カーヴァーは、アメリカの小説家でアル中)。この部屋の住人は、アルコールの瓶と缶のゴミを大量に出す。(あとで、二十代の若くてきれいな女性だということが判明します)
 2号室:ウェストミンスター(1号室に同じ。不明)。三十代ぐらいの男らしい。
 3号室:主人公の大学生
 4号室:河合。男性。フェレットを飼っている。

 読み終えました。なんだかわからない。表現したい言葉は、『虚無(きょむ。からっぽ)』だろうか。

『ずっと雨が降っていたような気がしたけれど』
 静香:語り手の若い女性。同じものをふたつ買う女性です。同じブラウスを二枚買いました。コーヒーカップとかも同じものをふたつ買うのです。そして、買ったあと、ひとつは、壊すのです。ブラウスは、布を切ってバラバラにしました。静香は、アパートでひとり暮らしをしている。
 慶太:静香の兄。親に対して、自分は死んだ兄の代わりではないと思っている。実家で暮らしている。
 草太(そうた):慶太の上の兄。2歳のときに死んだ。慶太は草太が死んでから10年後に生まれた。静香はその翌年に生まれた。
 
 繰り返しになりますが、同じものをふたつ買う若い女性です。同じブラウスを2枚買いました。『喪失(そうしつ。失う)』に備えるためにふたつ買うのです。だけど、自分で、もう片方を壊すなりして喪失するのです。語り手の女性は、変な人です。

 慶太は、草太の代わりに生まれたということで、両親が慶太を可愛がった。
 静香は、慶太の陰に隠れて、『二の次(にのつぎ)』扱いであった。
 こういった事情が、本編に反映されています。(同じものをふたつ手に入れて、ひとつを壊してなくす)

 読んでいて、静香は、よく言えば、『繊細(せんさい。傷つきやすい)』、悪く言えば、『めんどくさい人』です。

 静香に光月(みつき)というカレシができますが、もうひとり、光月と同じスペアがほしい。(でも、壊すんだ)

 短い文章にたくさんの情報を入れてくる作者さんです。

 不気味で怖い(こわい)ショートストーリーでした。
 『欲しいものは、なに?』に対して、『快楽』という返事があります。
 殺人の匂いが(においが)します。

『二人でお茶を』
 いとこ同士の女性のお話でした。ふたりはいっしょに暮しています。
 相手のいとこは、外国暮らしが長くて、帰国後も、国籍は日本人だけど、頭の中は外国人の考え方の人です。日本人のあれこれを不思議に思う人です。
 外国暮らしが長かったいとこのファッションは奇抜です。そして、いとこはお金持ちです。ケチりません。豪華な食事、部屋の暖房もしっかり入れます。
 相手のいとこの年齢は43歳、名前は、トーコさん。5歳から40歳まで外国暮らし。離婚歴1回ですが、話が始まってから結婚して、また離婚します。外国では×1(バツイチ)とか×2とか言わないらしい。(そのような表現は外国では、人権侵害にあたるそうです)。〇1とか〇2とかは言うらしい。(本当かどうかはわかりません)
 この物語を語るのは、トーコさんと同い年のミワさんですが、彼女も離婚歴1回で、今はひとり者です。
 なんだかんだと話は進んでいきます。おもしろい。
 
 珍味佳肴(ちんみかこう):めったに食べられないおいしいごちそう。

 ふたりの関係です。
 お互いにキライじゃないけれど、好きとは言いにくい。
 いっしょに暮していて、楽しいとは思う。

 天性のものを感じる作者の文章です。

『銀座 午後二時、歌舞伎座あたり』
 タイトルの場所は、以前散策をしたことがあります。歌舞伎座内の見学もしました。そんなことを思い出しながらの読書が始まります。

 不思議な話でした。宇宙人みたいな人間の姿をしたものが現れるのです。
 体長は15cmぐらい。髪は薄茶色、白いシャツにジーンズをはいているのです。
 人間の顔をしています。
 生きています。しゃべります。東京武蔵野(むさしの)の集落で暮らしていたそうです。天敵が猫だそうです。

 結婚相手がなかなか見つからない女性が出てきます。叔母の紹介でお見合いを重ねています。両親はすでに亡くなっています。女性は40歳で、地味な外見で、趣味は読書です。周囲からは、かわいそうという目で見られているそうです。
 その女性、歌舞伎座あたりで、背の高い男性とぶつかったときに、さきほどの小さな人間みたいなものに、ふたりが出会います。
 女性にとって背の高い男性は当たり(結婚相手にしたい)なのです。

 星新一氏のショートショートを読むようでもあります。

 偶然出会った男女は、宇宙人みたいな男の願いをききます。彼の恋人を猫から救い出すのです。

 寧子(やすこ):女性のお名前です。
 ななお:男の名前ですが、苗字か下の名前かは、わかりません。ななおは、寧子の質問に、もうあなたと会うことはないと首を振りました。『当たりだったのに』寧子の気持ちです。

 男と女の出会いの話でした。
 それでもまだ寧子は、男との再会をあきらめてはいません。

『なくしたものは』
 女ふたり、男ひとりの三角関係の話です。女たちは女子短大生です。
 『起きたらすぐに、おまじないを唱える』から始まります。
 語り手を変えながら進行していくショートストーリーです。
 作者は、狭い世界のことを深く書く人です。

 「なりちゃん(女子。成田)」の語り:自分となるちゃん(鳴海)は、女子短大の同級生。成田は、顔はかわいくないが、色気はあるそうです。

 「なるちゃん(女子。鳴海)」の語り:なりちゃん(成田)は、ともだちだけど、いっしょにいるといらいらする。でもいっしょにいたい。鳴海の顔はかわいい。色気はない。うるさいことは言わない。高校時代から、渚(なぎさ。男)と付き合いがある。

 「渚(男です。鳴海のカレシのようなものだが、渚は鳴海を恋人とは思っていない。成田とも会って付き合いがある)」:渚は、鳴海を気楽な遊び友だちだと思っている。渚は、両親と弟と4人家族で実家に住んでいる。愛犬の小太郎(実はメスだった。母親が性別を間違えて付けた名前)が3年前に死んだことをいまだに引きずっている。小太郎を思い出すと泣けてくる。ラブ:ラブラドールレトリバーという犬種だった。(だけど、犬のほうは、渚をきらっています)

 91ページ、奇想天外です。(きそうてんがい。思いもよらない。奇抜(きばつ))。今度は、死んだ犬の霊(小太郎)がしゃべります。世界一好きだったのが、飼われていた家のお母さんで、次が満(みつる。渚の弟)、その次がお父さんで、ビリが渚。お母さんと満が、自分の食事や散歩の世話をしてくれた。父は仕事だからしかたがない。渚は、わたしを避けていたと主張があります。

 自分が相手を思っているほど、相手は自分のことを思ってくれてはいないということはよくあります。逆に迷惑に思われていたりもします。

 こちらの短編は楽しい小品です。(しょうひん。ちょっとした作品)

 「満(みつる。渚の弟):家を出ることを考えている。父も兄もキライ。母もキライになった。母は兄が好きだ。兄の顔は父に似ているから、母は兄が好きだ。父も兄も顔がキレイだ。自分は背が低い。もっさりしている。見た目はかっこよくない。女にもてたことがない。いちばん好いてくれたのは(すいてくれたのは)、メス犬の小太郎だった。満は、考古学者のような仕事をする人になりたいそうです。

 「(たぶん思うに)邪馬台国の卑弥呼の霊魂」が語ります:小太郎の霊魂と語り合います。

 成田は渚をつまらない男だと評価しています。当たっています。まあ、いろいろあります。
 独特な雰囲気がある文章です。

『儀式』
 天罰を与える儀式を行う女性がいます。見た目はおばさんです。
 女性は、昼夜逆転の生活を送っています。
 夕方6時半ごろ起きて食べる食事が女性にとっては朝食です。
 新聞を読んで(夕刊、朝方に朝刊を読んでから寝る)、記事の切り抜きのようなことをして、天罰を与える人物を選び出すのです。
 天罰にはランクがあるらしく、レベル一(いち)とかレベル三とかの記述があります。
 天罰を与える仕事をしているのかと思いましたが不確かです。
 天罰は一日十件を限度にしているそうです。
 儀式は、長い衣を着て行います。
 
 生活費には困らない精神の病(やまい)がある人だろうか。

『バタフライ・エフェクト』
 蝶がでてきます。英語で、バタフライです。バタフライ・エフェクトは、『バタフライ効果』で、最初は小さなことが、やがておおごとになるということです。

 ふたりの手帳に、それぞれの手書きで、見ず知らずの相手の氏名が書き込まれているのを、ふたりが発見します。でも、ふたりとも自分で書いた記憶がありません。
 二階堂理沙(にかいどう・りさ):27歳未婚。自分の字で手帳の9月1日(未来の日付)に、『後藤光史(ごとう・こうじ)』の氏名が書いてあります。
 後藤光司:ひとり暮らしを始めて5年が経過している。恋人と暮らしたい。二階堂理沙と同様に、後藤光司の手帳の9月1日のページに、二階堂理沙の氏名が書いてあります。自分の筆跡なのに、書いた記憶がありません。

 そんな話です。
 ミステリーです。
 人と人の縁が素材です。
 あれこれあって、ふたりは、五年後に出会うそうです。
 そうか。不思議なストーリーでした。

『二百十日(にひゃくとうか。立春(りっしゅん。2月2日ころ)から数えて210日目。9月1日ころ。台風警戒日)』
 あたし:女性。40歳。離婚歴あり。ひとり暮らしをしている。こどもは好きじゃない。こどもは、嫌い。出産経験はない。職業は、『カウンセラー』
 萩原の叔母(おば):萩原は、新潟の地名
 萩原の叔父(おじ):病気で死にかけている。寝たきり状態にある。
 るか:こども。男の子。小学生ぐらいだが、学校は行っていないそうです。少し、魔法を使えるらしい。人型のぬいぐるみをひとつもっている。魔法で、時間の流れを変えることができる。変身もできる。ちょっとだけだけど。

 このパターン、『寄居虫女(ヤドカリオンナ) 櫛木理宇(くしきりう) 角川書店』(ホラー作品)に似ていますが、その後の展開は違っていました。

 出窓のところに置いてあった人型の人形が落ちた。
 叔父が亡くなった。
 叔父は、死ぬ前に、大事な人に会いに来たらしい。

『お金は大切』
 お金で人を買うお話です。
 『僕』が女性に買われます。以前類似の本を読みました。『余命一年、男をかう 吉川トリコ 講談社』、がんの宣告を受けた未婚女性がホストと期間限定で契約するのです。四十歳独身女性である、あと一年ぐらいで、がんで死んでしまうらしき片倉唯(かたくら・ゆい)が、病院待合所で、偶然出会ったホストクラブのホスト(片倉唯よりだいぶ年下)瀬名吉高(せな・よしたか)ひとりに、気持ちを入れ込む内容になっています。お金はある。寿命はない。そんな設定でした。

 さて、こちらの短編の話です。
 買われた若い男のほうの話です。
 別れたカノジョの知人女性から、お金を払うから(12万円)、自分と一緒にいてくれと頼まれるのです。
 
 変わった女性です。午前0時にワルツを踊り出します。お金をもらう男もいっしょに踊ります。ふたりは、朝まで踊り続けます。男は、女性と一体化するような体感を味わいます。

 さらに、時が経過します。若かった男は四十歳にまでなりましたが未婚です。
 そして、12万円を返せという話になるのです。
 でも、男は言います。『払えません』
 呪い(のろい)の話でした。

『ルル秋桜(こすもす)』
 死体の話です。
 本物ではなく、人が寝ている写真を切り抜いて、緑色の缶の中に入れてあります。それぞれに名前が付けてあります。また、変な少女が主人公として出てきました。
 う~む。ホラー(恐怖話)か。

 ひとみ:主人公少女。死んだ祖父に似ている。祖父は少し変わった人だった。ひとみは、祖父の生まれ変わりみたいな雰囲気があります。
 みのり:ひとみの1歳年上の姉。見た目がきれい。顔が母親に似ている。かわいがられている。
 隼人:ハーフ、母子家庭の男の子
 杏子(あんこ):ひとみの親友。おとな。絵画教室の先生。ちょっと不気味な女性。
 
 ごうもん(拷問)の話が出ます。
 先日観た阿部サダヲさん主演映画、『死刑にいたる病(やまい)』を思い出しました。
 こちらの短編話は、なかなか独特です。

 標準ではない、少数派の意見があります。
 生まれつきそうなのです。(標準ではない)
 ひとみにとって、姉のみのりは、不快なライバルです。
 
 あとさき長い人生を考えて、『絶望』という悲しみに浸る(ひたる)少数派の気持ちを表現してありました。
 (変わり者と言われる人にとって)ちょっぴり喜びがあったりもします。共感してくれる人の登場です。

『憎い二人』
 旅行のお話です。しゃべるのは、女三人旅の女性です。くみちゃん(語り手)とマコちん、すずです。三人とも、もうすぐ三十歳になる。
 なんとなく、同じルートをたどるのが、男ふたりの旅人です。(同性愛者ではないかとの疑惑がありますが、純粋な友人同士です。30歳過ぎのメガネの男と40歳すぎの目つきがきつい男です)
 新幹線で、東京からとある温泉地へ向かいます。
 
 スカジャン:背中に大きなししゅうがあるスタジアムジャンパーのような上着。30歳過ぎメガネの男が来ている。描かれている絵が、ナスカの地上絵に似ている。
 モッズコート:米軍で使用されていた上着。40歳過ぎの男が来ている。

 『友だち、わたしも、ほしいな』
 読み終えて、う~む。なんだかわかりませんでした。

『ぼくの死体をよろしくたのむ』
 黒河内璃莉香(くろこうち・りりか):ミステリー作家。この短編の語り手女性の亡父親の知り合い。年に2回語り手の女性と会う。父の遺言にそうしてくれと書いてあった。語り手が中学生のときから続いている。
 黒河内璃莉香は、男を変えながら恋愛を続けた。
 黒河内璃莉香は、語り手女性の父親にたくさんお金を貸した。父親とは、同級生になる。
 
 語り手である女性の父親は弱い人間だった。
 父親は、何度か自殺未遂をして、最後に自殺で死んだ。
 父が黒河内璃莉香にあてた遺言がある。
 父の死体と晴美とさくらをよろしくたのむ。(語り手の母親と語り手本人の名前です)
 
 味わいがある内容の文章です。
 
 実は、語り手女性にも自殺願望があります。
 黒河内璃莉香の問いに、『死にません』が良かった。

 娘を死なせないための父親の遺言なのか。

『いいラクダを得る』
 わたしたちは、中華料理屋に集合する。夢見という名前の女性の語りです。
 大学生の集まりです。男子大学生の父親が自営している中華料理店です。
 サークルの名称が、『逆光サークル』です。時代に逆行することを行って楽しむ。
 第二外国語のアラビア語のクラスで知り合いになった。
 メンバーは、5人です。
 
 なんだか、大学生たちが、ヒマをもてあましているような内容です。
 
 日文(にちぶん):大学で、日本文学の略。
 偶蹄目(ぐうていもく):この物語では、ラクダのこと。草食、ヒズメあり。哺乳類。

 サヨナラ。一時的な(大学での)付き合いということか。

『土曜日には映画を見に』
 日曜日のお昼は、そうめんを食べるということが、最後まで貫かれます。
 人生を表現してあります。

 男にもてない、デートにだれも誘ってくれない市役所勤務の35歳未婚女性が、伯母さん(おばさん)の紹介で、47歳の未婚男性とお見合いをします。男性は、マンガオタクです。仕事はダンボール製造会社の総務課長です。太っています。丸顔で眉毛(まゆげ)が濃い。汗っかきで、早口です。
 女友だちに男性の写真を見せたら、みんなが沈黙しました。忍び笑いをしました。
 『今なら、まだやめられるのよ』
 伯母からそう言われますが、女性は結婚します。
 
 長い時間が経過して、後半に、現在の話になることが、この作家さんの文章づくりの特徴です。
 ふたりに、こどもはできません。
 男性は定年を迎えました。ふたりは、ふたりの両親を見送りました。(逝去された)
 女性も定年退職しました。
 ふたりは、淡々と老後を送ります。
 日曜日には、そうめんを食べます。(にゅうめん。あたためたそうめん)
 結婚は、見た目の良しあし(顔やスタイル)でするものではなくて、性格の相性が合う人とするものという含みがあります。(ふくみ)
 結婚と恋愛は違います。結婚においては、まず経済力がなければ、結婚生活は続けられません。

『スミレ』
 こちらも不思議なお話です。
 実年齢と精神年齢の話があります。未来のことなのか、宿舎にいるときは、精神年齢に応じた顔かたちに変化します。
 精神年齢で入る宿舎があります。宿舎にいるときは、精神年齢で動きます。
 精神年齢18歳、実年齢53歳:市役所勤務の女性(この短編での語り手)
 精神年齢33歳、実年齢14歳:村松(男子)
 ふたりは、恋愛中だそうです。
 
 精神年齢15歳、実年齢非公開:女性。殿山(とのやま)さん。
 殿山さんが、村松さんを好きになった。
 
 『時間』というものが、意味のない世界にいる。

 語り手の女性は、仕事のストレスで、精神年齢が18歳から40歳になります。外見が40歳に変化して、宿舎にいられなくなりました。
 そして、今は53歳になって、これからは、ゆっくり生きて行くそうです。
 
 う~む。そうですか。おだいじにとしか言いようがありません。

『無人島から』
 とらお:弟。ふみちゃんと同棲していたが、ふみちゃんはアパートを出て行った。
 みはる:姉(この短編の語り手)。自宅アパートはあるけれど、(フロなしアパート)、親族宅を転々としている。
 
 恒子:ふたりの母親。わたしを「おかあさん」とよばないでくださいという発言があります。「恒子さん」と呼んでください。
 新吉:ふたりの父親。山師だった。(やまし)。山の中を歩き回って、金属の鉱脈を見つけてお金につなげる。(わたしは、若い頃、父親が山師だったという人と親しかったことがあります。その人から、自分がこどもの頃は、ものすごい貧乏生活を味わったと話を聴(き)きました。おもしろおかしくてちょっぴり悲しいお話でした)

 パイレックスの皿:耐熱ガラスの皿

 お笑いコンビ麒麟の田村さんの、『ホームレス中学生』みたいです。
 とらおが二十歳になったとき、両親がこどもふたりに言いました。
 『家族、今月でおしまいにするから』
 たしか、田村さんのほうは、オヤジさんが、『解散!』と言った記憶です。
 こちらのお宅の方は、戸建ての自宅を売却してしまいました。家を売ったお金をこどもたちにも分配しました。だから、とらおは、大学の授業料を払えます。アパートも借りることができました。

 家族って何だろう。
 なるべくいっしょにいるものという概念を否定する斬新な(ざんしんな)作品でした。

『廊下』
 男と別れた話です。
 男はバイオリンを弾きます。
 
 朝香(あさか):語り手の女性。30歳で飛夫と出会い付き合い始めた。飛夫と1年間同棲した。
 飛夫(とびお):朝香の年下のカレシ、20歳で、朝香と付き合い始めた。
 摩耶(まや):朝香の祖母。85歳ぐらいで亡くなる。
 山田:祖母である摩耶のカレシ。祖母より10歳年下。
 
 飛夫は、1年前にわたしの前から姿を消した。
 飛夫は、『ちょっと、時計台に行ってくる』と言って、家を出たまま、帰ってこなかった。

 タイムトラベルものです。

 中性脂肪値:空腹時30~149mg/dL
 辛気くさい(しんきくさい):じれったい。重苦しい。

 時間が経ちます。(たちます)。10年後に飛びます。
 
 幻視が見えます。
 死んだ人と会う話です。
 『もう、ここに来るのは、やめなさい。時は戻らないのよ』(過去を変えることはできません)

 認知症の人の脳内にある世界を表現してあるのだろうか。
 少女の頃の朝香さんが出てきます。
 
 う~む。この本の全体をとおして、独特な世界観がありました。  

Posted by 熊太郎 at 07:09Comments(0)TrackBack(0)読書感想文

2024年03月20日

出川哲朗の充電バイクの旅 2019年再放送分 山形縦断

出川哲朗の充電させてもらえませんか? 何度も観たい旅SP(2019年(令和元年)) 山形縦断 東根(ひがしね市)→米沢 TVer(ティーバー)

■行くぞ!絶景の<山形縦断>だ!■東根から米沢へと<温泉街道>105キロ!■ですがひぇ~!中居くんが<スター>すぎて地元が大フィーバーでヤバイよヤバイよSP■


 なかなかおもしろかった。
 再放送ですが、観たのは初めてです。
 2019年ですからコロナ禍前のロケです。翌年から日本におけるコロナ騒ぎが始まっています。
 山形県内を南下していくルートです。

 出だしのドタバタ騒ぎに笑いました。
 農地が広がる風景の中、中居正広さんの登場シーンがうまくいきません。
 地元の人たちも協力して、やらせの芝居を打つのですが、どうも不自然で、映像に使えません。
 土方ディレクター(ひじかたディレクター)はあいかわらずのドジで、段取りも指示もしません。グダグダです。でも、おもしろい。唯一(ゆいいつ)という個性があります。笑えます。

 バイク運転の途中、雪をかぶった『月山(がっさん)』を見ることができましたが、出川さんも中居さんも月山を知らないようです。森敦さんの芥川賞受賞作品、『月山(がっさん)』もご存じないのでしょう。

 中居正広さんは野球がうまい。キャッチャーミットをつけて、小学生ピッチャーの球を受けながらキャッチボールをしました。なかなかいい感じでした。バッティングもホームランのようなあたりで感心しました。決めゼリフみたいに、『生まれも育ちもこんな感じで……』という言葉も良かった。
 このあと、当時の小学生たちの現在が紹介されました。
 みなさん、高校一年生になられています。こどもは、成長が楽しみです。自分の孫だと、幼児のままでずっといればいいのにと思いますが、そうもいきません。自分の経験だと、ちびっこたちは、二歳半ぐらいのときの容姿がいちばんかわいい。

 中居正広さんは、さいしょのうちは、めんどくさいひとだなあという印象がありましたが、しばらくみていて、ちゃんとした人だということがわかりました。少年のような、いたずらや、わるふざけはありますが、神経質なくらいきちんとしていて、仕事がていねいです。
 中居さんが自分の欲しいものは、今はないそうです。物欲なし。金銭欲なしです。人から見られることを気にしなくて済むような自由な時間がほしいのかもしれません。

 中居さんは食事のこだわりもありません。全国チェーンの食堂でもかまいません。バス旅のえびすよしかずさんに似ています。えびすさんは、どこに行っても、その土地の名物は食べないのが基本でした。カレーとか、ハンバーグとか、スパゲティとかを注文していました。えびすさんは、魚介類の生ものは食べることができない人でした。そこがまたおもしろかった。えびすさんは、奇人変人ではありますが、根が正直な善人です。

 中居さんの行動は破天荒すぎる。(はてんこう:ふつう、やらないことをやる)。スタッフ一同からびゅーんと離れて、カメラのないところで、地元の人の家をピンポーンして、充電依頼をしてしまいます。ロケ番組として、肝心(かんじん。重要)なところの映像をとることができません。そして、中居さんは、おうちの人にひたすら、『スイマセン』を連発して頭を下げていました。
 中居さんは、年功序列にこだわるところがあって、相手が自分より年下だとわかるといばります。芸能界ってそういう世界なのか。先輩後輩に序列が厳しそうです。
 地元の人たちが出してくださる、『パインサイダー』と、『リンゴジュース』がありがたい。夏のロケのようで、気温が34℃と紹介があります。出川さんは汗だくです。

 土方さん(ひじかたさん。ディレクター)は、あいかわらずです。自分がだれで、どんな役割なのかを中居さんにいつまでたっても自己紹介しないので、中居さんに、『あなたはだれですか?』とロケの途中で、質問されてしまいます。
 土方さんを見ていると、土方さんは、あれで(仕事を)やれるのなら、自分でもやれるという自信を与えてくれる人です。土方さんは、ドジだけど、この番組には必要な人です。

 大工道具を貸してくれたおとうさん、ありがとう。すごい。大工道具セットがしゅっと出てきました。
 土方ディレクターが、充電先の家で踏んで割ってしまったウッドデッキの修繕をします。中居さんンのていねいな、のこぎりで板を切る作業に感心しました。(拍手です)
 貸してくださったおとうさんの家は、畳屋さんだと聞き、その手際(てぎわ)の良さに納得しました。

 蔵王温泉(ざおうおんせん)に向かう道は、すごい、いなか道です。
 
 途中、充電先の家で、まるで、自分の家にいるようにくつろいで、テレビの野球中継を見ている中居さんでした。
 あとで、そのお宅の娘さんたちの現在が映像に出ました。お嬢さんは、身長が34cmも伸びて、出川さんの背丈を追い抜き、161cmになったそうです。おうちは、ジンギスカンのお店をやってらっしゃるそうで、奥さんの、『よってけらっしゃーい』の山形弁に味わいがありました。

 中居さんは、行く先々で、ファンの女性たちにさわられまくります。
 旅館もいい旅館でした。
 すごい。おしぼりの上に、レモンがのせてありました。
 夜は、地元の居酒屋に行く出川さんと中居さんです。くだけています。
 なのに、土方さんのチョンボで、映像が残っていません。カメラの使い方が間違っていたそうです。(まあ、いいか)

 旅館で声をかけたアメリカ合衆国の兄弟の今が紹介されました。(すごい。氏名と住所を控えてあったのでしょう。撮影許可書への承認サインとかで)
 アメリカ人の高校生が、『ヤバイよヤバイよとか、中居さんが当時ふたりに教えた「ド・ミ・ソー(ソーは、調子がはずれた高い音)」』を連呼してくれました。
 
 その後、いっしょにおソバ屋で、お昼ご飯を食べたおばあさんの言葉が良かった。
 『結婚は、クジみたいなもんだからね(89歳のおばあさんの言葉)』
 (演者のだれかが)『(おばあさんは)当たった?』
 『当たらなかった』
 笑いました。
 土方さんは、そのおソバ屋で、ラーメンを頼んで、麺をのどにつまらせてむせていました。当地お勧めの日本そばを頼まずにラーメンを頼みます。まあ、めちゃくちゃです。おもしろい。そのお店では、牛丼セットをはじめ、どれも大盛りで、あれだけボリュームがあればだれもが満足です。
 予定調和というものがない番組です。出川さんが、この番組はひどい番組だと言います。たしか、東野&岡村の旅猿に出川さんがゲストで出演したときも、旅猿は、クソ番組だと出川さんは言っていました。
 どちらもお上品な旅番組ではありません。
 でも、まだ千鳥の旅番組である『相席食堂』よりはいいと思います。以前、相席食堂を観ていましたが、あまりにも下品なので観るのをやめました。

 中居正広さんはスターです。女子たちが大喜びです。
 
 昼間の露天風呂では、小学生の修学旅行状態のような演者たちでした。
 みなさん、歳はとっていても意識は18歳ぐらいの少年です。
 
 中居正広さんは、出川さんたちにあいさつなしで、途中で帰ってしまいました。次の仕事があるそうです。出川さんたちにはあいさつせずに内緒で帰りましたが、地元の人たちにはきちんとあいさつをして、いっしょに記念写真もとりました。(出川さんと中居さんは、翌日も別の番組でいっしょになると話していました)
 目的地の神社までゴールしていないのに、途中で帰ってしまうゲストも珍しい。
 なにか裏があるようで、ゴールの神社で米沢牛のすき焼きを食べることができると思っていたら、食べることは目的ではなかったそうです。それを聞いて、中居さんは帰ったのだろうと出川さんが推理をしていました。(米沢牛を食べるレストランがある神社がゴールということで、ゴールして、高価なすき焼きを食べるということではなかったそうです)  

2024年03月19日

死刑にいたる病(やまい) 邦画

死刑にいたる病(やまい) 邦画 2022年(令和4年) 2時間9分 動画配信サービス

 阿部サダヲさんの出る金曜夜のドラマ、『不適切にもほどがある!』を毎週楽しみにして観ています。アメリカ映画の『バックトゥザフューチャー』みたいに、昭和61年(1986年)と現在を行ったり来たりするタイムトラベルドラマです。
 先日は、同じく阿部サダヲさんが出る邦画、『シャイロックの子供たち』を観ました。なかなか良かった。同じく、『謝罪の王様』も観ました。途中首をかしげるシーンも多々ありましたが、映画全体が終わってみれば、なかなか良かった。

 こちらの映画は、阿部サダヲさんが、連続殺人鬼を演じます。17歳・18歳のまじめでおとなしく学力優秀な高校生である男女23人と、26歳の成人女性1人を殺した罪で、死刑判決を受けて服役中です。
 彼の主張があります。『罪は認めるが、最後の事件(26歳成人女性の死)は冤罪だ。(えんざいだ。自分は無実だ)。殺人犯が他にいることを証明してほしい』
 そういう内容の手紙を書いて、刑務所から知り合いの大学法学部在籍中の雅也に調査を依頼します。雅也が弁護士事務所にアルバイトとして入り、推理と調査が始まります。

 阿部サダヲさんはなんでも演じる人です。すごいなあ。いろいろな役をやるんだ。仕事は役者です。コメディもやるし、今回のような恐ろしい殺人犯の役もやります。映像の中に彼の狂気が散らばっています。阿部サダヲさんが演じる男は、一見(いっけん)心優しい善人なのですが、スイッチが入ると残虐な鬼になります。阿部サダヲさんの口調には説得力があります。自信満々です。

 人生において自分も何度か現場で体験した火葬場風景から始まります。
 映像では、雅也の祖母の葬式と火葬です。
 頼りない雅也の母親の姿があります。自分でものごとを決められません。
 雅也の父親は、Fクラスの大学に入った雅也を軽蔑しています。息子が三流大学だから恥ずかしい。
 うまくいっていない家庭です。(Fクラス大学:受験すれば合格できるという、学力の低い者でも入れる大学。「F」は、ボーダーフリー(BF)のFからきている)

 映画を観ながらこの感想を書いています。
 この映画のメッセージは何だろう。
 何を表現したいのだろう。
 
 まあ、設定と経過には、いろいろつっこみどころはありますが、これは、映画です。
 自分はつくり手の立場で映像を見るので、殺人シーンは怖く(こわく)ありません。
 監督以下スタッフがカメラをにらんで撮影している様子を想像しながら見ます。光と影を駆使して(くしして)、殺人行為の残虐さを強く描いてあります。役者はじっさいに殺されるわけではなく、殺される人物を演じています。(監督が撮影中に、『カット!』といえば、殺された役の人は生き返り、「おなかすいた~ 休憩で、なに食べる~」なんて、言っているのだと思います)
 ひどい殺し方です。この映画はひとりで観る映画です。生きている少年少女の爪をはいでから、じわりじわりと殺していきます。とうぜん叫び声が響き渡ります。
 犯人は、脳みそに異常ありです。病(やまい)です。
 ふと、思う。殺人鬼である阿部サダヲさんが演じる榛村(はいむら)は、親から虐待を受けていたのではないか。(その後、当たらずとも遠からじという展開になっていきました。なかなか自分は勘(かん)がいいとうぬぼれました)

 BLTO:ベーコン、レタス、トマト、オレンジ。なお、殺人鬼の職業は、パン職人であり、パン屋の自営業です。少年少女にパンやジュースをおまけして、手なずけて犠牲者にする手法です。けしからん奴です。

 何かしら、学歴偏重(かたよった学歴重視)の意識が、映画の底辺にあります。
 いまどきは、行かなくてもいい人まで大学に行くようになりました。
 昔は、お金がなければ、大学進学はあきらめて就職しました。
 働いて、お金を貯めてから会社を辞めて、大学に入学する人もいました。
 夜間の大学や定時制高校に行く人も多かった。
 そんな人たちが中小企業に入って、がんばってまじめに働いて、サービス残業みたいな長時間労働をがまんしてやって、日本の社会を支えていました。堅実(けんじつ。てがたく、まじめに)に働く労働者にとっては、職場が家でした。
 いまどきは、学力がなくても大学に行くのか……
 また、いらぬことを書いてしまいます。
 60歳を過ぎたら、学歴は関係ありません。義務教育だけで卒業の人でも、老後を迎えて経済的に豊かな人はいます。社会においては、学力だけで豊かになれるものではありません。本人の才能と努力、人間関係という周囲の支えがいります。老後は、本人のそれまでの人生の成果です。だれかに評価してもらうようなものでもありません。
 どうして目的がないのに、なんとなくとか、みんなが行くからとか、とりあえずという理由で大学に行くのだろう。人にもまれて働きたくないから、勉強を口実(こうじつ。理由付け)にして、労働から逃げているように見えます。資格取得など、学習目的がない大学生は、合法的な失業者です。
 ムダなお金を、大学を始めとした教育関係の法人組織に払うよりも(親のカネとか奨学金とかで)、自分が働いて稼いだお金で、自分が食べたいものを食べて、自分が着たい洋服を着て、自分が行きたいところへ旅に出たほうが、気持ちがすっきりします。
 あわせて、返済のめどがつかない借金(奨学金)はつくらないほうがいい。お金というものは、貸してもらうよりも、まずは、自分で稼ぐ(かせぐ)ものです。

 映像では、いろいろ複雑な事情が、雅也探偵の調査で、明らかになっていきます。
 
 『暗示』があります。殺人鬼は、人を操作する能力に長けているのです。(たけている。能力が高い)。人がいいとだまされます。殺人鬼のくちびるから出てくる言葉は、すべてウソだと決めつけたほうがいい。

 洋画『羊たちの沈黙』の雰囲気があります。殺人鬼の話でした。精神科医で殺人鬼の人物が出ていました。

 児童虐待の映画でした。(やっぱり)
 ふーっ。(内容が)重たいなあ。
 
 殺人鬼は、人心をつかむことがうまい。味方のようにふるまって、実は相手を、殺人の対象者候補にリストアップしている。逃げたくなったらいつでもおいでと声をかけて、殺人の餌食(えじき)にする。なんだか、最近のSNSで少女をおびきだす事件を連想させます。

 あっちもこっちも児童虐待だらけです。
 ひどいことをする親がいます。加害者が継父というパターンもあるでしょう。
 こどもの心は壊れていきます。自傷行為があります。壁土を食べます。
 なんて、暗い内容の映画だろう。救いの光が見えない。ラストで光が見えるのだろうか。
 
 幻想の世界に入っていきます。
 だれがだれを殺したのか、混乱があります。
 狂気をもった人間がいます。
 暗示と催眠術があります。病んでいる。(やんでいる)
 犯行の手法は、現実には無理です。これは、映画です。
 
 親から抑圧(よくあつ)されたこどもは、自尊心(プライド。自分が自分であることの誇り(ほこり)。自意識(自分のことは自分で決める)。自信)が低い。いたわってあげれば、こちらになつく。なついたら、利用する。そんな流れです。自己否定があるのかもしれません。虐待されたこどもは、虐待する親を責めずに、自分を責める。自分がだめだから、親が怒って自分を虐待すると考える。
 殺人鬼の言葉です。『信頼関係を築いてから、いたぶる。(おどかして、いじめぬく)。ぼくは、そういうふうにしか人と付き合えない』。そんな人と結婚したら、おおごとになります。

 まあ、つくり話です。説得力はありません。まあ、映画です。
 阿部サダヲさんは、怖い殺人鬼をじょうずに演じていました。また、殺人鬼と対等にやりあう大学生を演じた俳優さんも良かった。(改名されているようです。岡田健史さん→水上恒司さん)

 『こっち側(殺人で死刑判決を受けて服役)に来たら、もう戻れないよ』。最近簡単に殺人事件が起きます。人生でとりかえしがつかないのが、自殺と殺人です。カッとなっていらぬ行動をしてしまう前によく考えたほうがいい。自分の思いどおりにならない相手に対して、表面には出さないけれど、仕返ししてやりたいと思っている人はいます。されど、実行する人はほとんどいません。一時的な憂さ晴らしができても(うさばらし。気晴らし(きばらし))、そのあとで失うものは大きい。
 思いつめると発狂します。気持ち60%ぐらいで、そのことはあきらめるという選択肢の気持ちを40%ぐらい残しておいたほうがいい。気持ちの余裕とか、寛容です。まあいいかです。そのうちいいこともあるだろうと淡い(あわい)期待をもちます。

 ラストは、びっくりシーンなのでしょうが、わたしの心には響きませんでした。

 タイトルクレジット(映画の最後に流れる文字群)を見ていて、原作が、櫛木理宇さんであることを知りました。ホラー小説を書かれる方です。以前一冊読んだことがあります。
『寄居虫女(ヤドカリオンナ) 櫛木理宇(くしきりう) 角川書店』。以下は感想の一部です。
 読んでいる途中も、読み終えても、気持ちが晴れる内容ではありません。ある日、男児が家に迷い込む、しばらくしてその母親という女が家に入りこむ、というようにして、家を乗っ取られていく物語です。DVとか虐待とかが下地にあって、とある国のような洗脳(思考をコントロールされる)とか互いを監視し合う手法が記載されています。皆川ファミリーが崩壊していきます。けっこう恐ろしい(おそろしい)内容です。  

2024年03月18日

スマホが壊れた。

スマホが壊れた。

 親族とリモート電話をしていたら、スマホの画面が固まりました。
 話が終わって、電話を切ろうとしても切ることができません。
 相手に切ってもらいました。
 スマホの画面は、ピクリとも動きません。
 やむなく、再起動しようと、ボタンを長押しして電源を落としました。
 以降、スマホは立ち上がらなくなりました。
 実は、10日ほど前から、突然画面が(フリーズ。凍る(こおる)。止まる)して、再起動をして立ち上げることを5回~6回ぐらいしていました。修理か、機種変更が必要な時期なのかなあ。

 販売店訪問の予約をして、訪問して修理をお願いしました。
 翌日電話があって、修理不能と返答がありました。
 型落ち(古い型)でよければ、無償で交換するとのことでしたが、新型にしたかったので、機種変更をすることにしました。
 そのあと、新しいスマホの設定等で、苦闘がありました。疲れました。

1 ようやく知ったこと。
 画面の下に、『◀ ● ■』(スリーボタンナビゲーション)のマークがありますが、このマークを表示したり、非表示にしたりすることができることを知りました。『設定』から入って設定できました。
 これまで使っていた自分のスマホにはその表示がなくて、スマホでなにかの手続きをしているときに、直前に表示していたページ(履歴)を見たくても、どうやって、どこを見ていいのかわからず、混乱していました。(あとから、画面の下から少し上に指をすべらせると、履歴の画面が出てくることを知りました)
 スマホを修理に出した時にショップで貸してくれたスマホの画面下に、『◀ ● ■』(スリーボタンナビゲーション)の表示があり、自分のスマホには、スリーボタンがないので、履歴のページの見方がわからないというようなことを、店員さんに話をしたら教えてくれました。これまで自分はいったい、何に苦労していたのだろうかと、力が抜けました。スリーボタン表示だと、■を押すと、過去に見たページが表示されます。

2 最初に入力するPIN(ピン。数字6桁(けた))のこと。
 新たに買ったスマホをいじっていました。(ちなみに、以前のスマホでは、PINの設定とか、指紋認証とか、顔認証の設定はしていませんでした。スマホは基本的に、電話とメール、写真撮影とラインなど、どうしても必要な範囲内で使っています)
 わたしのスマホは家電(いえでん。家に置いてある加入電話機)みたいなもので、わたしがいないときに電話の呼び出し音が鳴ったり、ラインの到着音がしたりすると、家族が気づけばスマホの電話やラインに出てくれます。また、相手と電話で会話をするときには、みんなに通話の声が聞こえるようにして、複数でわいわいがやがやと話をすることもあります。だから、だれかに知られて困るようなことがらは、スマホの中には入っていません。
 新しく買ったスマホの画面に、個人情報を保護するための設定をしてください、みたいな文章が出てきたので、あとでPINのいらない状態に戻せばいいからと思いPINを設定しました。(そこから苦闘と苦悩が始まりました)。PINの消し方がわかりません。
 スマホには、大金がからんだアプリは入れていないこともあって、いちいち立ち上げるときにPINを入れるのはめんどうです。自分は個人情報を気にする世代として人生を送ってきてはいません。
 突然ですが、思い出したことがあります。半世紀ぐらい前、給料は現金支給で、受取りの一覧表に各自が領収印を押していました。町内会の回覧板みたいに、全員の給料の一覧表が回ってきて、領収印欄に押印して次に回していました。一覧表には、だれがいくらもらっていて、税金等はいくらで、職場がからんだ貯金はいくら、親睦会費はいくら、職場がらみで借りた住宅ローンの返済金はいくらといろいろ記載がありました。
 他人の給料が丸見えという今考えるとありえないことなのでしょうが、当時はほとんどだれも気にしていませんでした。そもそも当時の日本人社会に、『個人情報』という言葉はなかった記憶です。仕事場にいる人たちは、みんな家族のような仲間でした。(そういうことがイヤだという人はいたと思いますが、少数派でした)
 話が脱線しましたが、さらに、老齢で、視力も衰えているので、スマホの画面に数字を入れ間違えるし、パスワード等のど忘れも最近多いです。スマホへのPIN入力が苦痛の種となりました。
 ネットで調べたら、初期化(最初の状態に戻す)しないとPINは消せないみたいに書いてあるので、ああ、個人情報保護の観点からしかたがない設定だとあきらめました。それでも、心の中は悶々(もんもん)としたストレスを抱えることになりました。
 息子が家に晩御飯を食べに来た時に、(息子は、もう三十代のおっさんになってしまいました)そんな愚痴をこぼしました。すると、PINは消すことができるし、自分は、毎日必要に応じて、設定したり消したりしているというので、ひっくりかえるほどびっくりしました。息子に教えてもらって、PINの設定、非設定ができるようになりました。心の重荷がとれて、ほっとしました。いい気分です。

 ほかにも自分の思いどおりに使えないことがいくつもありましたが、自分の無知が原因でした。
 克服できたおかげで、今は快適にスマホを使用できるようになりました。
 ふりかえって思うのは、やはり、学習(教えてもらう)が必要です。
 ネットの説明記事を見ただけでは、わからないこともあります。
 年寄り向けのスマホの操作の研修を受けるといいのでしょう。
 何歳になっても新しいことを覚えるための勉強は必要です。
 まあ、あとは、スマホなんて、もたなくてすむならもたないほうがいい。
 人間の心が、徹底的に内(うち)にこもるような道具です。
 先々週、金曜夜のドラマ、『不適切にもほどがある!』で、主役の阿部サダヲさん(昭和61年、1986年の人間が現代にタイムトラベルで来ているという設定で)が、スマホに怒りを感じて、大きな怒鳴り声をあげながら、スマホを床にたたきつけようとします。バカヤロー、こんなもの(いらんわ!)です。同感です。  

Posted by 熊太郎 at 07:23Comments(0)TrackBack(0)熊太郎の語り

2024年03月15日

青空のむこう アレックス・シアラー 金原瑞人・訳

青空のむこう アレックス・シアラー 金原瑞人(かねはら・みずひと)・訳 求龍堂(きゅうりゅうどう)

 死んでしまった少年の話らしい。
 イギリスの小説家の児童文学作品です。児童冒険小説というジャンルのようです。
 日本語訳者は、先日読んだ、『アンソーシャルディスタンス』の作者金原ひとみさん(「蛇にピアス」で芥川賞を受賞された)のお父さんです。これから読む本が家のダンボール箱に入れてあるのですが、たまたま偶然、こちらのお父さんの本にあたりました。
 
ハリー・デクランド:交通事故死した少年。サッカーが好き。10歳から12歳ぐらいに見える。死ぬ前に姉のエギーとけんかをしていたことを、死んでから後悔している。とても後悔している。捨てゼリフを姉にぶつけて家を出て、そのあと交通事故にあって死んでしまった。自転車に乗っていて、10トントラックにひかれた。
 『…… お姉ちゃんなんか大嫌い! …… 帰ってくるもんか。もう二度と会いたくない』、姉のエギーが、『じゃあ帰ってこないで』と言い返したのがこの世の姉との会話の最後だった。(つらい話です。現実でも起きることです。家から出かける時は、ケンカしないほうがいい。本当に、それが最後になることがありえます)

エギー・デクランド:ハリーの姉。ハリーより3歳年上。本名は、エグランティーン・デグランド。エギーは愛称。みんなは、『ティナ』と呼んでいた。

ハリーとエギーのパパとママ

ジェリー・ドンキンス:ハリーの同級生。でかい。太い。いじめっこ。プレハブ小屋で、ハリーを殴った。(なぐった)

ピート・サルマス:ハリーの親友

オリビア・マスターソン:女子。ハリーの同級生

オルト:猫

アーサー:150年前の死者。葬儀屋だった。死んだ母親を探している。みすぼらしい服を着ている。つぎはぎだらけ。大きなシルクハットをかぶっている。死んでから歳をとっていない。<死者の国>では、人は歳をとらない。アーサーは、施設で育った。母親はアーサーを産んだときに死んでしまった。父親は不明。

スタンさん:50年前に死んだ老人。幽霊。愛犬ウィンストンを探している。

ウグ:原始人。「死者の国」をさまよっている。「うぐっ」しか言えない。

グラムリーのおばあちゃん:あの世の人。少年ハリーが生きていたころの記憶にある女性。おばあちゃんはハリーを覚えていない。ハリーがまだあかちゃんぐらの幼かったころに亡くなったらしい。

タイトル『青空のむこう』には、死後の世界があるということだろうか。(14ページにそれらしき記述があります)
読み始めます。

1 受付-The Desk
 『…… ママはまだ生きている。ぼくが先に死んじゃったんだ』(自転車に乗っていて、トラックにひかれたらしい)
 <家> <この世> <あの世> <死者の国・入り口> <現在地> <彼方の青い世界へ(かなたのあおいせかいへ)> <死者の国> <太陽は傾いているのに(かたむいているのに)、沈むことはない。>
 男児のこども言葉で、話が続きます。
 自分がまだ小学校低学年、少年だった時に読んだマンガ本のようでもあります。
 
 『…… 登録を待つ人たちの列がえんえんとつづいていた。犬や猫もいる……』

 チャールズ・ディケンズ:イギリスの小説家。1812年-1870年。58歳没。

 <彼方の青い世界(かなたのあおいせかい)>

2 死者の国-The Other Lands
 良書です。まだ途中ですが、今年読んで良かった一冊でした。

 今一度、会いたい。ハリーは、姉や家族や友人に会いたい。

3 生者の国-To The Land of The Living
 洋画『ゴースト ニューヨークの幻(まぼろし)』を思い出します。
 死んだ少年ハリーのひとり語りが続きます。児童文学ですから読みやすい。日本語訳も読みやすい。

 ノーマンおじさん、ベリル大おばさん

 ハリーが、150年前に死んだアーサーと、幽霊(ゴースト)の状態で、自分がいた現世(げんせい。人が生きている時代の空間)へ行きます。
 現世で、知っている人たちを見て、知っている人たちに話しかけて、相手は気づいてくれなくて、それなりにハリーの気持ちがへこみます。

 現世へは、崖から落ちるように転落していきます。
 『助けて! だれか、助けて! 死んじゃう!』(きみは、もう死んでいる)

 『ぼくたちは落ちているんじゃなかった。飛んでいた。』(素敵な文章です)

4 下の世界 Back Down
 トゥルーリー:死んでいる人の霊
 現世では、死んでいるのに死にきれない人の霊が複数ただよっています。
 
 『悪魔』のことが出てきます。
 わたしが思うに、まずもって、『悪魔』というものは存在しない。
 人間が勝手に、『悪魔』をつくりだした。
 自分が悪いのに、悪魔のせいにする。
 以前、外国人の殺人犯が、殺人の動機は、悪魔がそうさせたと述べていてびっくりしました。日本人にはない発想と文化です。

5 学校 School
 自殺した人の言葉に思えるセリフがあります。
 『死ぬと疲れることはないんだ。』

 ハリーのクラスメートとして、テリー、ダン、ドナ、サイモン、ジェリー・ドンキンス(いじめっこ)、ピート・サルマス
 ダイヤモンド先生:背が高く、口ひげが長い。
 
 この本は、「死んじゃだめだ」と訴えているのだろうか。
 ハリーは、さみしい思いをします。

 転校していったクラスメートとして、フラン、チャズ、トレバー
 
 ハリーには、これから死にそうな人がわかる能力があります。
 ダイヤモンド先生が、死にそうです。先生自身であるご本人は、まだ気づいていません。

6 コート掛け The Peg
 ハリーの近所の人たちで、ハリーのお葬式に来てくれた人たちとして、チャーリーおじさん、ペグおばさん。

 ハリーの教室で、ハリーのコート掛けが、ボブ・アンダーソンになっていた。ハリーはボブを知らないから、新しく来た転校生だろうとのこと。
 校長が、ハレント先生。
 ハリーのクラスは、五Bだから、ハリーは、アメリカ合衆国の小学校の学年で、5年生で、年齢は、10歳ぐらいでしょう。
 入学は9月です。

7 教室 In Class
 幽霊になったハリーが、自分がいた教室を訪れます。
 マーティーナ:図工が得意
 グレアム・ペスト:字がじょうず。
 オリビア・マスターソン:ハリーのことが好きだった。
 ティリー:オリビアの友だち
 ペトラ:クラスメート
 スロッギー先生
 
 『人が死んでも、ほかの人の人生はつづく(死んだ人の人生は終わっている。いなくなったらおしまい)』

8 ジェリー Jelly
 ハリーと仲が悪かった。J・ドンキンスの作文が紹介されます。
 ハリーは、太っているぼくを(ドンキンスを)ばかにし続けていた。ハリーにばかにされて、ぼくは、ハリーがキライになった。
 ときどきハリーと仲直りをして友だちになりたいと思うことがあった。でも、ハリーは死んでしまった。後悔している。ごめんよ、ハリー。

 洋画、『ゴースト ニューヨークの幻(まぼろし)』のように、幽霊が念力のようなものを使って、ドンキンスが持っていたボールペンを動かします。ハリーの念力です。

 人間は簡単に死んでしまいます。
 病気、事故、自然災害、事件などで命を落とします。
 わたしも長い間生きてきて、死にそうになったことが複数回あります。たぶん、だれしも口にはしないけれど、そういうことってあると思います。
 人間が生き続けていくためには、『運(うん)』が必要です。たとえば、あと5分ずれていたら、あんな事故にはあわなかったのにということはあります。めぐりあわせです。

 読みながら、志(こころざし)なかばで死んでいった、自分の人生で出会った早世(そうせい。平均寿命よりも早く亡くなった。若くして亡くなった)した人たちを思い出しました。
 突然がんの宣告をうけて、泣きながら亡くなっていった人も複数います。しかたがないのです。それが、現実です。

 アーサーがハリーに言います。『あんまり期待するな。人にあまり期待しないことだ。そうすれば、がっかりすることもない』
 
 オーク:樹木の種類。ブナ科コナラ族の木

 命を考える本です。今生きている自分のことを考える本です。そして、自分のまわりにいる人たちに思いやりをもつことを学ぶ本です。

9 映画館 The Cinema
 映画館の座席に幽霊たちがいっぱい座って映画を観ています。満席です。
 どこもいくところがないと、人間も幽霊も映画館に行くようです。
 フレイザー:ハリーのママの友だち。
 ゲームボーイ:任天堂
 ドリームキャスト:セガ。SEGA
 プレイステーション:ソニー

 ノーマン・ティール:デイブ・ティールの兄。デイブ・ティールは、ハリーの学校の上級生で、兄のノーマン・ティールは、卒業して旅行会社に就職したばかり。
 ハリーがノーマンに話しかけたら返事が返ってきたのでびっくりしました。ノーマンは最近突然高熱が出て病死したそうです。
 
 スタン:スーツを着た幽霊。70歳ぐらい。
 ウィンストン:スタンが飼っていた犬(だと思ったら、別の犬だった)
 
 <死者の国への近道>が現れました。虹のアーチ(橋)です。

10 家 Home
 ゆうれいのハリーは自宅に行って、両親と姉を見ます。三人とも、ハリーを失って気持ちが落ち込んでいます。
 
ここまで読んできて、一冊、電子書籍を思い出しました。
『週刊文春 シリーズ昭和④哀悼篇 昭和の遺書 魂の記録 生きる意味を教えてくれる91人の「最期の言葉」 文春ムック 平成29年12月11日発行 2017年11月27日電子版発行 Kindle Unlimited 電子書籍』
 胸にぐっとくるものがありました。
 キャンディーズのスーちゃんの気持ちがせつなかった。そして、川島なお美さんもがんで亡くなりました。

『田中好子』 歌手キャンディーズメンバー 2011年4月21日(平成23年) 55歳没 乳がん
 もっと生きていたかったという思いが切々と伝わってきました。

『川島なおみ』 女優 2015年9月24日(平成27年) 54歳没 胆管がん
 だんなさんに向けて、再婚はしないでねとお願いされています。
 重松清小説作品『その日の前に』では、がんで余命宣告を受けた奥さんが、『(わたしのことは)忘れてもいいよ』と言葉を遺して亡くなります。『忘れないで』ではなくて、遺される(のこされる)ご主人のこれから先の幸せのために『忘れてもいいよ』(再婚してもいいよ)と表現したとわたしは受け止めました。そして『忘れてね(再婚してください)』ではないのです。妻は、本当は、自分のことを夫に忘れてほしくないのです。

 ハリーは、自分のお墓も見に行きます。ていねいに整備されているお墓です。ご家族がお墓の世話をされています。
 ハリーの言葉で、ハリーのお墓の世話をしているパパのことが語られます。10歳ぐらいの年齢の男子で、パパが好きな息子というのはなかなかいません。もう反抗期の入口にいます。

 『それから三人は、さびしそうな顔で座っていた……』
 パパとママと三歳年上の姉です。

 モノポリー:ボードゲーム。すごろく。不動産ゲーム
 スクラブル:ボードゲーム。盤上に、アルファベットを並べて、単語をつくって得点を競う
 トリヴィア:雑学を競うゲーム

 読んでいて、涙がこぼれそうです。
 『ママ、かっこいい墓石をありがとう……』
 突然ですが、児童虐待について考えました。
 どうして自分のこどもを虐待して殺すのか。
 わけがわからない。
 こどもを虐待する親は、気が狂っています。(くるっています)

11 二階 Upstairs
 オルト:飼い猫ですが、動物は、幽霊が見えています。オルトはハリーを認識します。オルトの名前の由来は、パソコンのキーボードの『Alt(オルトキー)「どっちか」という意味』からきているそうです。パパが名付けました。

12 エギー Eggy
 ハリーの姉エギーとの再会(ハリーはゆうれいですが)は、せつない気持ちにさせてくれます。(せつない:悲しくて胸がしめつけられる)

 『(家族写真に)ぼくがいた。家族と一緒に。もう二度と四人が一緒になることはない。』

 (僕には使命がある)自分が交通事故で死ぬ直前に、口喧嘩(くちげんか)をした姉と話して、お互いを許さなくちゃいけない。
 このあと、ハリーは、困難を成し遂げます。(なしとげます)
 『文字』のありがたみが伝わってきました。

 『だけどぼくのやり残したことは、今、終わった。ごめんねって言うことができた……』
 <彼方の(かなたの)青い世界へ旅立つことができる。>
 
 メンバーが、それぞれいい人だったから、ハリーはこう思える。(思うことができる)

13 彼方の青い世界 The Great Blue Yonder(向こうという意味)
 さわやかな終わり方でした。
 良かった。

 主人公の年齢から、自分が小学二年生のころの給食の時間を思い出しました。
 給食を食べているときに、校内放送で、短い物語の朗読がされていました。彦一とんちばなしだったことを覚えています。
 当時は、給食を食べるためと、校内放送の物語を楽しみに聴く(きく)ためだけに小学校へ行っていました。勉強の成績はぼろぼろで、通知表には2と3がたくさん並んでいました。それでもなんとか生きてきて、老後を迎えることができました。この物語を読みながら、そんなことを考えました。

 物語の中で、長い間お母さんを探し続けていたゆうれいのアーサーは、ゆうれいのお母さんにようやく会うことができました。
 
 いいお話でした。  

Posted by 熊太郎 at 07:09Comments(0)TrackBack(0)読書感想文

2024年03月14日

謝罪の王様 邦画 2013年

謝罪の王様 邦画 2013年(平成25年) 2時間8分 動画配信サービス

 金曜日夜のドラマ、『不適切にもほどがある』を毎週楽しみにして観ています。
 主役の阿部サダヲさんが、こちらの映画の主役と知り、観てみました。
 脚本は、宮藤官九郎さんで、さきほどの不適切のドラマとも重なります。
 阿部サダヲさんの演技、言動のやり方は、両方の映像とも同じで安定感がありました。

 阿部サダヲさんは、『東京謝罪センター』という会社の黒島譲(くろしま・ゆずる)を演じます。所長です。
 相談者の女性や男性が、東京謝罪センターのスタッフに加わっていくような流れで人が増えていきます。

CASE1(ケース1) 倉持典子
 甘やかされて育った帰国子女の若い女性です。
 行動は豪快です。反社会の人たちともめます。マル暴の人の車に自分の車をぶつけます。
 土下座(どげざ)がクローズアップされます。土下座の映画です。

CASE2 沼田卓也
 セクハラ行為をして、裁判に訴えられた若い男です。
 BGM(バックグラウンドミュージック)がいい感じです。
 ピッタリ合っています。
 謝罪のしかたのマニュアル(手引き)です。
 ①相手に誠意をみせる。
 ②相手の言い分をしっかり聴いて、相手の目を見て、あいづちを打つ。
 ③相手をほめまくる。
 ④目上の人に同席してもらい、サポートしてもらう。

 う~む。映像を観ていて、なんだかくだらない内容に思えてきました。

CASE3 南部哲郎・檀乃はる香
 離婚寸前の俳優夫婦です。
 
 このへんから伏線が出てきます。(後半で、感動を生む種)
 アメリカニューヨークにある「自由の女神」のわき毛がボウボウというようなセリフです。
 3歳半のノンちゃんという女の子が、そのセリフを延々と言い続けます。

CASE4 箕輪正臣(みのわ・まさおみ。国際弁護士)
 少人数の演劇を観ているようです。(後半の王国シーンでは、群衆演劇となります)
 箕輪正臣は、娘が6歳のときに離婚したそうです。娘に手を上げた(ひっぱたいた)ことがある。そのことを後悔している。娘にあやまりたいそうです。
箕輪正臣は、アメリカニューヨークマンハッタンのアパートに家族3人で暮らしていたとき、3歳半の娘ノンちゃんをたたいたそうです。
 箕輪正臣は、カレーライスをスプーンでぐちゃぐちゃに混ぜて食べる癖があります。(これもまた伏線です)

CASE5 和田耕作
 俳優の荒川良々(あらかわ・よしよし)さんが出てきたのでびっくりしました。昨年再放送された、『あまちゃん』の登場人物の役で楽しみました。その後、ご本人を見たくて、東京下北沢にある『本多劇場(ほんだげきじょう)』で行われる公演を観に行こうとしましたが、とても人気があってチケットをとれませんでした。
 映像を観て、荒川良々さんは、体の大きい人なんだなあとびっくりしました。
 こちらの映画では、映画のプロデューサーという役で出ておられました。映画の内容のことで、マンタン王国という国から抗議を受けて悩んでおられるのです。王国への謝罪が必要だそうです。(もうこのあたりから、現実味のない話になっていきます。脳みその働きがついていくのに、ちょっとつらくなりました)
 この映画は、ギャグコメディ映画です。

 シーンが、重なっているわけか。
 おもしろい。
 ドラマ『不適切にもほどがある』と似たパターンの映像づくりもあります。

 濱田岳さんの演技がおもしろい。じょうずです。
 彼のくちぐせが、『だいたい、心配ない。』。『だいたい』が強調されて、繰り返されます。いい感じです。
 
 映像を観ていて、撮影地であるこの場所は見たことがある場所だと思いました。
 映画の最後に流れるクレジット(関係者紹介の表記文字)に、『名古屋市市政資料館』とありました。ああやっぱりと思いました。二階にあがる階段とか、廊下とか、かなり古い文化的な建物です。たしか半世紀ぐらい前は、家庭裁判所だったという記憶があります。
 そのほかに、ロケ地として愛知県犬山市にある明治村もクレジットに出ていました。どのシーンだったのかは気づけませんでした。

 三島という日本兵を描いた、『ビルマの竪琴(たてごと)』みたいなシーンがありました。

CASE6 黒島譲
 土下座(どげざ)という行為を自分は好みません。出川哲朗さんの充電バイクの旅でも、出川チームが少年野球で負けると、少年たちに土下座しますが、やめたほうがいいと思っています。
 人間の人格を否定するような謝罪のしかたです。
 映画では、所長(阿部サダヲ)さんが、土下座にこだわるようになった歴史を、彼のこども時代にさかのぼって説明があるのですが、まあ、なんとも、理由にならないような理由です。(実家の旅館にあった露天風呂でザリガニ50匹を育てようとしたら、全部ゆだって死んでしまったことを土下座して謝った。下からみんなの顔を見上げたら、全員の視線が自分の背中に集中していて、それが快感だった。そんな流れの説明でした。まあ、なんだか、わかりません。

 ラーメン店での接客トラブルの話が出ます。
 店員のお湯切り(麺から(めんから)湯を切る)のとき、熱い湯が客である阿部サダヲさんにかかります。店員はそのことに気づかず謝りません。
 阿部サダヲさんの怒りに対して、店の代表者たちは謝りますが、加害者は阿部サダヲさんに謝らず店を辞めてしまいました。
 その後、店はつぶれたそうです。
 阿部サダヲさんは、ただ、『ごめんなさい』が聞きたかっただけだそうです。(このへんのくだり(話)は、その話を映画のここにもってくる必要性がわかりません)

 太川陽介さんと路線バス鬼ごっこで対決するEXILE(エグザイル)の松本利夫さんが出てきたのでびっくりしました。映像の中のシーンで、いっぱいダンスをされていました。
 
 映画全体が終わってみれば、なかなか良かった。
 3歳半の女児の思い出もなかなかいい。
 言葉で意思を伝え合うことはだいじです。