2024年03月21日

ぼくの死体をよろしくたのむ 川上弘美

ぼくの死体をよろしくたのむ 川上弘美 新潮文庫

 短い文章が18本並んでいます。短編集です。そのうちのひとつが、本のタイトルと同じです。
 この作家さんで、以前読んだ本があります。『神様 川上弘美 中公文庫』でした。この世にない世界という世界観、この世にない空間、人間(のようなもの)を書く人だという記憶が残っています。

『鍵』
 男の後ろ姿に惚れた(ほれた)。
 男は、筋肉質の体で、右の手のひらに、ダンベルを持って歩いていた。男の後ろ姿を見て恋をした。男は神社の境内に住むホームレスだった。
 語り手は32歳の未婚女性です。これまでに男性とつきあったことはあるけれど、『好き』という言葉を言われたことも言ったこともないそうです。(つまり、恋ではなかった。なんとなくなりゆき。男女の体の関係はあった)
 そんな話が続きます。
 読んでいて、不思議な感覚が自分に広がります。語っている女性の実体が感じられないのです。
 恋した相手であるホームレスの男の年齢は、65歳です。
 詩的な内容でした。

『大聖堂』
 大聖堂というのは、語り手の知人の部屋にある本のタイトルです。本棚の飾り目的だけの本です。異性が来た時に本をみせびらかして、自分に惚れ(ほれ)させるのです。その部屋の住人がどこかで拾ってきた(ひろってきた)本だそうです。
 これもまた、不思議な設定です。
 アパートがあります。家賃は格安ですが、条件として、大家が提供する動物のいずれかを飼って世話をしなければならないのです。動物を死なせると賃貸借契約は打ち切りです。(動物の自然死はOK。事故死は状況次第(しだい))
 語り手は、男子大学生です。
 アパートの家賃は、2万円で、二階建て、二階が大家宅で、一階に4部屋あります。

 作者の文章書きの特徴として、ひらがな表記があります。『案外→あんがい』とか、『関する→かんする』とか。
 
 語り手の男子大学生は、中学時代いじめにあっていた。

 男子大学生は、動物を選びましたが、この世に存在する動物ではないようです。四つ足で、背中に小さな羽がある。オコジョとかテンに似ている。
 動物の分類としての名称がない動物です。大学生は、その動物に『つばさ』と名付けて可愛がります。
 アパートには、住人がいます。
 1号室:カーヴァー(最初不明だった住人に大学生が付けた仮想の名前。カーヴァーは、アメリカの小説家でアル中)。この部屋の住人は、アルコールの瓶と缶のゴミを大量に出す。(あとで、二十代の若くてきれいな女性だということが判明します)
 2号室:ウェストミンスター(1号室に同じ。不明)。三十代ぐらいの男らしい。
 3号室:主人公の大学生
 4号室:河合。男性。フェレットを飼っている。

 読み終えました。なんだかわからない。表現したい言葉は、『虚無(きょむ。からっぽ)』だろうか。

『ずっと雨が降っていたような気がしたけれど』
 静香:語り手の若い女性。同じものをふたつ買う女性です。同じブラウスを二枚買いました。コーヒーカップとかも同じものをふたつ買うのです。そして、買ったあと、ひとつは、壊すのです。ブラウスは、布を切ってバラバラにしました。静香は、アパートでひとり暮らしをしている。
 慶太:静香の兄。親に対して、自分は死んだ兄の代わりではないと思っている。実家で暮らしている。
 草太(そうた):慶太の上の兄。2歳のときに死んだ。慶太は草太が死んでから10年後に生まれた。静香はその翌年に生まれた。
 
 繰り返しになりますが、同じものをふたつ買う若い女性です。同じブラウスを2枚買いました。『喪失(そうしつ。失う)』に備えるためにふたつ買うのです。だけど、自分で、もう片方を壊すなりして喪失するのです。語り手の女性は、変な人です。

 慶太は、草太の代わりに生まれたということで、両親が慶太を可愛がった。
 静香は、慶太の陰に隠れて、『二の次(にのつぎ)』扱いであった。
 こういった事情が、本編に反映されています。(同じものをふたつ手に入れて、ひとつを壊してなくす)

 読んでいて、静香は、よく言えば、『繊細(せんさい。傷つきやすい)』、悪く言えば、『めんどくさい人』です。

 静香に光月(みつき)というカレシができますが、もうひとり、光月と同じスペアがほしい。(でも、壊すんだ)

 短い文章にたくさんの情報を入れてくる作者さんです。

 不気味で怖い(こわい)ショートストーリーでした。
 『欲しいものは、なに?』に対して、『快楽』という返事があります。
 殺人の匂いが(においが)します。

『二人でお茶を』
 いとこ同士の女性のお話でした。ふたりはいっしょに暮しています。
 相手のいとこは、外国暮らしが長くて、帰国後も、国籍は日本人だけど、頭の中は外国人の考え方の人です。日本人のあれこれを不思議に思う人です。
 外国暮らしが長かったいとこのファッションは奇抜です。そして、いとこはお金持ちです。ケチりません。豪華な食事、部屋の暖房もしっかり入れます。
 相手のいとこの年齢は43歳、名前は、トーコさん。5歳から40歳まで外国暮らし。離婚歴1回ですが、話が始まってから結婚して、また離婚します。外国では×1(バツイチ)とか×2とか言わないらしい。(そのような表現は外国では、人権侵害にあたるそうです)。〇1とか〇2とかは言うらしい。(本当かどうかはわかりません)
 この物語を語るのは、トーコさんと同い年のミワさんですが、彼女も離婚歴1回で、今はひとり者です。
 なんだかんだと話は進んでいきます。おもしろい。
 
 珍味佳肴(ちんみかこう):めったに食べられないおいしいごちそう。

 ふたりの関係です。
 お互いにキライじゃないけれど、好きとは言いにくい。
 いっしょに暮していて、楽しいとは思う。

 天性のものを感じる作者の文章です。

『銀座 午後二時、歌舞伎座あたり』
 タイトルの場所は、以前散策をしたことがあります。歌舞伎座内の見学もしました。そんなことを思い出しながらの読書が始まります。

 不思議な話でした。宇宙人みたいな人間の姿をしたものが現れるのです。
 体長は15cmぐらい。髪は薄茶色、白いシャツにジーンズをはいているのです。
 人間の顔をしています。
 生きています。しゃべります。東京武蔵野(むさしの)の集落で暮らしていたそうです。天敵が猫だそうです。

 結婚相手がなかなか見つからない女性が出てきます。叔母の紹介でお見合いを重ねています。両親はすでに亡くなっています。女性は40歳で、地味な外見で、趣味は読書です。周囲からは、かわいそうという目で見られているそうです。
 その女性、歌舞伎座あたりで、背の高い男性とぶつかったときに、さきほどの小さな人間みたいなものに、ふたりが出会います。
 女性にとって背の高い男性は当たり(結婚相手にしたい)なのです。

 星新一氏のショートショートを読むようでもあります。

 偶然出会った男女は、宇宙人みたいな男の願いをききます。彼の恋人を猫から救い出すのです。

 寧子(やすこ):女性のお名前です。
 ななお:男の名前ですが、苗字か下の名前かは、わかりません。ななおは、寧子の質問に、もうあなたと会うことはないと首を振りました。『当たりだったのに』寧子の気持ちです。

 男と女の出会いの話でした。
 それでもまだ寧子は、男との再会をあきらめてはいません。

『なくしたものは』
 女ふたり、男ひとりの三角関係の話です。女たちは女子短大生です。
 『起きたらすぐに、おまじないを唱える』から始まります。
 語り手を変えながら進行していくショートストーリーです。
 作者は、狭い世界のことを深く書く人です。

 「なりちゃん(女子。成田)」の語り:自分となるちゃん(鳴海)は、女子短大の同級生。成田は、顔はかわいくないが、色気はあるそうです。

 「なるちゃん(女子。鳴海)」の語り:なりちゃん(成田)は、ともだちだけど、いっしょにいるといらいらする。でもいっしょにいたい。鳴海の顔はかわいい。色気はない。うるさいことは言わない。高校時代から、渚(なぎさ。男)と付き合いがある。

 「渚(男です。鳴海のカレシのようなものだが、渚は鳴海を恋人とは思っていない。成田とも会って付き合いがある)」:渚は、鳴海を気楽な遊び友だちだと思っている。渚は、両親と弟と4人家族で実家に住んでいる。愛犬の小太郎(実はメスだった。母親が性別を間違えて付けた名前)が3年前に死んだことをいまだに引きずっている。小太郎を思い出すと泣けてくる。ラブ:ラブラドールレトリバーという犬種だった。(だけど、犬のほうは、渚をきらっています)

 91ページ、奇想天外です。(きそうてんがい。思いもよらない。奇抜(きばつ))。今度は、死んだ犬の霊(小太郎)がしゃべります。世界一好きだったのが、飼われていた家のお母さんで、次が満(みつる。渚の弟)、その次がお父さんで、ビリが渚。お母さんと満が、自分の食事や散歩の世話をしてくれた。父は仕事だからしかたがない。渚は、わたしを避けていたと主張があります。

 自分が相手を思っているほど、相手は自分のことを思ってくれてはいないということはよくあります。逆に迷惑に思われていたりもします。

 こちらの短編は楽しい小品です。(しょうひん。ちょっとした作品)

 「満(みつる。渚の弟):家を出ることを考えている。父も兄もキライ。母もキライになった。母は兄が好きだ。兄の顔は父に似ているから、母は兄が好きだ。父も兄も顔がキレイだ。自分は背が低い。もっさりしている。見た目はかっこよくない。女にもてたことがない。いちばん好いてくれたのは(すいてくれたのは)、メス犬の小太郎だった。満は、考古学者のような仕事をする人になりたいそうです。

 「(たぶん思うに)邪馬台国の卑弥呼の霊魂」が語ります:小太郎の霊魂と語り合います。

 成田は渚をつまらない男だと評価しています。当たっています。まあ、いろいろあります。
 独特な雰囲気がある文章です。

『儀式』
 天罰を与える儀式を行う女性がいます。見た目はおばさんです。
 女性は、昼夜逆転の生活を送っています。
 夕方6時半ごろ起きて食べる食事が女性にとっては朝食です。
 新聞を読んで(夕刊、朝方に朝刊を読んでから寝る)、記事の切り抜きのようなことをして、天罰を与える人物を選び出すのです。
 天罰にはランクがあるらしく、レベル一(いち)とかレベル三とかの記述があります。
 天罰を与える仕事をしているのかと思いましたが不確かです。
 天罰は一日十件を限度にしているそうです。
 儀式は、長い衣を着て行います。
 
 生活費には困らない精神の病(やまい)がある人だろうか。

『バタフライ・エフェクト』
 蝶がでてきます。英語で、バタフライです。バタフライ・エフェクトは、『バタフライ効果』で、最初は小さなことが、やがておおごとになるということです。

 ふたりの手帳に、それぞれの手書きで、見ず知らずの相手の氏名が書き込まれているのを、ふたりが発見します。でも、ふたりとも自分で書いた記憶がありません。
 二階堂理沙(にかいどう・りさ):27歳未婚。自分の字で手帳の9月1日(未来の日付)に、『後藤光史(ごとう・こうじ)』の氏名が書いてあります。
 後藤光司:ひとり暮らしを始めて5年が経過している。恋人と暮らしたい。二階堂理沙と同様に、後藤光司の手帳の9月1日のページに、二階堂理沙の氏名が書いてあります。自分の筆跡なのに、書いた記憶がありません。

 そんな話です。
 ミステリーです。
 人と人の縁が素材です。
 あれこれあって、ふたりは、五年後に出会うそうです。
 そうか。不思議なストーリーでした。

『二百十日(にひゃくとうか。立春(りっしゅん。2月2日ころ)から数えて210日目。9月1日ころ。台風警戒日)』
 あたし:女性。40歳。離婚歴あり。ひとり暮らしをしている。こどもは好きじゃない。こどもは、嫌い。出産経験はない。職業は、『カウンセラー』
 萩原の叔母(おば):萩原は、新潟の地名
 萩原の叔父(おじ):病気で死にかけている。寝たきり状態にある。
 るか:こども。男の子。小学生ぐらいだが、学校は行っていないそうです。少し、魔法を使えるらしい。人型のぬいぐるみをひとつもっている。魔法で、時間の流れを変えることができる。変身もできる。ちょっとだけだけど。

 このパターン、『寄居虫女(ヤドカリオンナ) 櫛木理宇(くしきりう) 角川書店』(ホラー作品)に似ていますが、その後の展開は違っていました。

 出窓のところに置いてあった人型の人形が落ちた。
 叔父が亡くなった。
 叔父は、死ぬ前に、大事な人に会いに来たらしい。

『お金は大切』
 お金で人を買うお話です。
 『僕』が女性に買われます。以前類似の本を読みました。『余命一年、男をかう 吉川トリコ 講談社』、がんの宣告を受けた未婚女性がホストと期間限定で契約するのです。四十歳独身女性である、あと一年ぐらいで、がんで死んでしまうらしき片倉唯(かたくら・ゆい)が、病院待合所で、偶然出会ったホストクラブのホスト(片倉唯よりだいぶ年下)瀬名吉高(せな・よしたか)ひとりに、気持ちを入れ込む内容になっています。お金はある。寿命はない。そんな設定でした。

 さて、こちらの短編の話です。
 買われた若い男のほうの話です。
 別れたカノジョの知人女性から、お金を払うから(12万円)、自分と一緒にいてくれと頼まれるのです。
 
 変わった女性です。午前0時にワルツを踊り出します。お金をもらう男もいっしょに踊ります。ふたりは、朝まで踊り続けます。男は、女性と一体化するような体感を味わいます。

 さらに、時が経過します。若かった男は四十歳にまでなりましたが未婚です。
 そして、12万円を返せという話になるのです。
 でも、男は言います。『払えません』
 呪い(のろい)の話でした。

『ルル秋桜(こすもす)』
 死体の話です。
 本物ではなく、人が寝ている写真を切り抜いて、緑色の缶の中に入れてあります。それぞれに名前が付けてあります。また、変な少女が主人公として出てきました。
 う~む。ホラー(恐怖話)か。

 ひとみ:主人公少女。死んだ祖父に似ている。祖父は少し変わった人だった。ひとみは、祖父の生まれ変わりみたいな雰囲気があります。
 みのり:ひとみの1歳年上の姉。見た目がきれい。顔が母親に似ている。かわいがられている。
 隼人:ハーフ、母子家庭の男の子
 杏子(あんこ):ひとみの親友。おとな。絵画教室の先生。ちょっと不気味な女性。
 
 ごうもん(拷問)の話が出ます。
 先日観た阿部サダヲさん主演映画、『死刑にいたる病(やまい)』を思い出しました。
 こちらの短編話は、なかなか独特です。

 標準ではない、少数派の意見があります。
 生まれつきそうなのです。(標準ではない)
 ひとみにとって、姉のみのりは、不快なライバルです。
 
 あとさき長い人生を考えて、『絶望』という悲しみに浸る(ひたる)少数派の気持ちを表現してありました。
 (変わり者と言われる人にとって)ちょっぴり喜びがあったりもします。共感してくれる人の登場です。

『憎い二人』
 旅行のお話です。しゃべるのは、女三人旅の女性です。くみちゃん(語り手)とマコちん、すずです。三人とも、もうすぐ三十歳になる。
 なんとなく、同じルートをたどるのが、男ふたりの旅人です。(同性愛者ではないかとの疑惑がありますが、純粋な友人同士です。30歳過ぎのメガネの男と40歳すぎの目つきがきつい男です)
 新幹線で、東京からとある温泉地へ向かいます。
 
 スカジャン:背中に大きなししゅうがあるスタジアムジャンパーのような上着。30歳過ぎメガネの男が来ている。描かれている絵が、ナスカの地上絵に似ている。
 モッズコート:米軍で使用されていた上着。40歳過ぎの男が来ている。

 『友だち、わたしも、ほしいな』
 読み終えて、う~む。なんだかわかりませんでした。

『ぼくの死体をよろしくたのむ』
 黒河内璃莉香(くろこうち・りりか):ミステリー作家。この短編の語り手女性の亡父親の知り合い。年に2回語り手の女性と会う。父の遺言にそうしてくれと書いてあった。語り手が中学生のときから続いている。
 黒河内璃莉香は、男を変えながら恋愛を続けた。
 黒河内璃莉香は、語り手女性の父親にたくさんお金を貸した。父親とは、同級生になる。
 
 語り手である女性の父親は弱い人間だった。
 父親は、何度か自殺未遂をして、最後に自殺で死んだ。
 父が黒河内璃莉香にあてた遺言がある。
 父の死体と晴美とさくらをよろしくたのむ。(語り手の母親と語り手本人の名前です)
 
 味わいがある内容の文章です。
 
 実は、語り手女性にも自殺願望があります。
 黒河内璃莉香の問いに、『死にません』が良かった。

 娘を死なせないための父親の遺言なのか。

『いいラクダを得る』
 わたしたちは、中華料理屋に集合する。夢見という名前の女性の語りです。
 大学生の集まりです。男子大学生の父親が自営している中華料理店です。
 サークルの名称が、『逆光サークル』です。時代に逆行することを行って楽しむ。
 第二外国語のアラビア語のクラスで知り合いになった。
 メンバーは、5人です。
 
 なんだか、大学生たちが、ヒマをもてあましているような内容です。
 
 日文(にちぶん):大学で、日本文学の略。
 偶蹄目(ぐうていもく):この物語では、ラクダのこと。草食、ヒズメあり。哺乳類。

 サヨナラ。一時的な(大学での)付き合いということか。

『土曜日には映画を見に』
 日曜日のお昼は、そうめんを食べるということが、最後まで貫かれます。
 人生を表現してあります。

 男にもてない、デートにだれも誘ってくれない市役所勤務の35歳未婚女性が、伯母さん(おばさん)の紹介で、47歳の未婚男性とお見合いをします。男性は、マンガオタクです。仕事はダンボール製造会社の総務課長です。太っています。丸顔で眉毛(まゆげ)が濃い。汗っかきで、早口です。
 女友だちに男性の写真を見せたら、みんなが沈黙しました。忍び笑いをしました。
 『今なら、まだやめられるのよ』
 伯母からそう言われますが、女性は結婚します。
 
 長い時間が経過して、後半に、現在の話になることが、この作家さんの文章づくりの特徴です。
 ふたりに、こどもはできません。
 男性は定年を迎えました。ふたりは、ふたりの両親を見送りました。(逝去された)
 女性も定年退職しました。
 ふたりは、淡々と老後を送ります。
 日曜日には、そうめんを食べます。(にゅうめん。あたためたそうめん)
 結婚は、見た目の良しあし(顔やスタイル)でするものではなくて、性格の相性が合う人とするものという含みがあります。(ふくみ)
 結婚と恋愛は違います。結婚においては、まず経済力がなければ、結婚生活は続けられません。

『スミレ』
 こちらも不思議なお話です。
 実年齢と精神年齢の話があります。未来のことなのか、宿舎にいるときは、精神年齢に応じた顔かたちに変化します。
 精神年齢で入る宿舎があります。宿舎にいるときは、精神年齢で動きます。
 精神年齢18歳、実年齢53歳:市役所勤務の女性(この短編での語り手)
 精神年齢33歳、実年齢14歳:村松(男子)
 ふたりは、恋愛中だそうです。
 
 精神年齢15歳、実年齢非公開:女性。殿山(とのやま)さん。
 殿山さんが、村松さんを好きになった。
 
 『時間』というものが、意味のない世界にいる。

 語り手の女性は、仕事のストレスで、精神年齢が18歳から40歳になります。外見が40歳に変化して、宿舎にいられなくなりました。
 そして、今は53歳になって、これからは、ゆっくり生きて行くそうです。
 
 う~む。そうですか。おだいじにとしか言いようがありません。

『無人島から』
 とらお:弟。ふみちゃんと同棲していたが、ふみちゃんはアパートを出て行った。
 みはる:姉(この短編の語り手)。自宅アパートはあるけれど、(フロなしアパート)、親族宅を転々としている。
 
 恒子:ふたりの母親。わたしを「おかあさん」とよばないでくださいという発言があります。「恒子さん」と呼んでください。
 新吉:ふたりの父親。山師だった。(やまし)。山の中を歩き回って、金属の鉱脈を見つけてお金につなげる。(わたしは、若い頃、父親が山師だったという人と親しかったことがあります。その人から、自分がこどもの頃は、ものすごい貧乏生活を味わったと話を聴(き)きました。おもしろおかしくてちょっぴり悲しいお話でした)

 パイレックスの皿:耐熱ガラスの皿

 お笑いコンビ麒麟の田村さんの、『ホームレス中学生』みたいです。
 とらおが二十歳になったとき、両親がこどもふたりに言いました。
 『家族、今月でおしまいにするから』
 たしか、田村さんのほうは、オヤジさんが、『解散!』と言った記憶です。
 こちらのお宅の方は、戸建ての自宅を売却してしまいました。家を売ったお金をこどもたちにも分配しました。だから、とらおは、大学の授業料を払えます。アパートも借りることができました。

 家族って何だろう。
 なるべくいっしょにいるものという概念を否定する斬新な(ざんしんな)作品でした。

『廊下』
 男と別れた話です。
 男はバイオリンを弾きます。
 
 朝香(あさか):語り手の女性。30歳で飛夫と出会い付き合い始めた。飛夫と1年間同棲した。
 飛夫(とびお):朝香の年下のカレシ、20歳で、朝香と付き合い始めた。
 摩耶(まや):朝香の祖母。85歳ぐらいで亡くなる。
 山田:祖母である摩耶のカレシ。祖母より10歳年下。
 
 飛夫は、1年前にわたしの前から姿を消した。
 飛夫は、『ちょっと、時計台に行ってくる』と言って、家を出たまま、帰ってこなかった。

 タイムトラベルものです。

 中性脂肪値:空腹時30~149mg/dL
 辛気くさい(しんきくさい):じれったい。重苦しい。

 時間が経ちます。(たちます)。10年後に飛びます。
 
 幻視が見えます。
 死んだ人と会う話です。
 『もう、ここに来るのは、やめなさい。時は戻らないのよ』(過去を変えることはできません)

 認知症の人の脳内にある世界を表現してあるのだろうか。
 少女の頃の朝香さんが出てきます。
 
 う~む。この本の全体をとおして、独特な世界観がありました。  

Posted by 熊太郎 at 07:09Comments(0)TrackBack(0)読書感想文