2023年08月14日
僕の心臓は右にある 大城文章
僕の心臓は右にある 大城文章(おおしろ・ふみあき) 朝日新聞出版
著者を、太川陽介さんの路線バス対決旅で見たことがあります。著者であり芸人であるチャンス大城さんは、太川陽介チームのゲストでバス旅に参加されました。
松本利夫チームとの対決でした。
チャンス大城さんはなかなか苦労されていましたが、チャンス大城さんがいた太川陽介さんチームが勝利しました。チャンス大城さんは、その後、テレビ番組『アメトーク』に出ておられました。
ほかに、別のバラエティ番組にも出ておられて、心臓が右側にあるという不思議な体をもっておられることの紹介がありました。心臓を含めて、内臓が反転している位置にあるそうです。(生きるのに問題はないというようなお話でした)
わたしは、いつ情報を仕入れたのか記憶が定かではないのですが、チャンス大城さんのこの本が爆発的におもしろいと聞きました。読んでみたくなりました。
(1回目の本読み)
まずは、1回目の本読みとして、全部のページをめくってみます。
2ページで、チャンス大城さんは、床(ゆか)に座って食事をするそうです。
ホームレスすれすれの生活をしてきたそうです。
1998年に兵庫県の尼崎から東京に出てきて、転々として、今は、2年前に借りた部屋にいる。家賃5万円。エアコン付き。
わたしにも記憶がある兵庫県内の地名が出てきます。『尼崎(あまがさき)』とか『武庫之荘(むこのそう)』とか『塚口(つかぐち)』とか『伊丹(いたみ)』とか。
もう昔の話ですが、1975年代(昭和50年代ごろ)にそのあたりに知り合いがいて、何度か足を運びました。そのうちのひとりは自分の親族で、現地の会社で働いていました。(今はもうそこにはいません)もうひとりは高校時代の友人が家族と暮らしていました。(その後、その友人とは音信不通になりました)
いいにくいのですが、柄(がら)がいい地域には見えませんでした。今はもうないのでしょうが、西宮球場あたりも歩いたことがあります。でも怖い(こわい)と思ったことはありません。自分自身、スラムのようなところで育ったので、荒っぽい環境には慣れていました。
この本には16ページに『……尼崎はとても濃ゆい(こゆい)街です。不良の数が半端(はんぱ)なくて……』とあります。
ソーセージ兄弟という貧乏兄弟の話が出てきました。ふむ。こういう暮らしが昔はあったなと自分のこどものころを思い出しました。
ビンボー話が続きます。今はどうかわかりませんが、昔はどこもそんな暮らしがありました。
著者にとっての伝記、思い出の記録です。
かなりの長文です。あとがきを含めて303ページあります。著者は、この本をつくるために、かなりの時間を使いました。
話し言葉の文章です。テープに録音してから文章化してあるのだろうか。
2022年7月初版です。今年5月で6刷ですからよく売れている本です。
本のタイトル『ぼくの心臓は右にある』は、本を手に取る人の気をひくためのものなのでしょうが、ほかにもっといい感じのタイトルがありそうな気がします。ちょっとあざとい感じがするのです。(ずるさがある)(読み進めながら、ちょっと別のタイトルを考えてみます)(164ページまで読んで、タイトルはこのままでいいという気分になりました)
(2回目の本読み)
ウメヤマソウジとウメヤマセイジ兄弟というのが、話に出てきます。合わせてソーセージ兄弟です。
貧乏な家の兄弟です。着ているものが古くて汚い。
クリスマス会でのプレゼント交換です。
イキる:高飛車(たかびしゃ)。お金持ちのお嬢さんのことが書いてあります。(お嬢さんはまだこどもです)
カリカリ梅:未熟な小さな梅
ザク:ガンダムシリーズに登場する兵器。有人操縦式人型機動兵器
(つづく)
32ページまで読みました。
いい本です。
今年読んで良かった一冊になりそうです。
貧困と富豪が同じような地域に存在している。
『芦屋(あしや)』というところはお金持ちの人たちが住んでいるようで、関西の人たちにとってはいちもく置くような地域なのでしょう。(いちもくおく:優れているので敬意をはらう。うやまう。尊敬する)
ウメヤマ兄弟の父親が自分で家をつくります。わたしの思い出として、わたしの母方の祖父がそうでした。家を建てたとき、大工が忙しくてなかなか来てくれなかったので、大工仕事ができる祖父が家を建てたと祖母が話していました。
著者のお父さんは、ブラジャーのホックをつくる工場で働いていた。
お父さんは自分の仕事に誇りをもっていた。いいことです。お金のためだけでは仕事は続きません。自分がしている仕事は世のため人のためになっているという誇りが自分の心を支えてくれます。
お父さんが、著者の友だちであるサイトウ君にブラジャーを付けさせて、ブラジャーのホックを一瞬で、はずすやり方を教えます。いやらしくはありません。年配の人がエッチなことを話すときに若い人はいやがりますが、年配の人は、若い人を『これが現実だ!』としかります。現実なのです。人間もしょせんは生き物なのです。
著者の家族全員がクリスチャンという話が出ます。
聖歌隊にお父さんが入っていることが驚きなのですが、オンチで聖歌隊から除外されて、気持ちが落ち込んで、されどがんばって再入隊して、されど、口パク(くちぱく。声はださない。口の開閉だけする)で参加してというくだりに大笑いしました。悲喜(ひき)こもごもです。人生っていいなと思わせてくれます。いい本です。
人にだまされることが多かったおとうさんだそうです。お金を貸しても戻ってこないし、保証人になれば借りた本人に代わり借金を背負うのです。
世の中にはひどいことを平然とする人がいます。わたしも貸したお金は、3割ぐらいしか回収できていません。若いころはたくさんだまされました。笑顔で近づいてくる人間は要注意です。下心(したごころ)があるのです。いくら返済を請求しても返してくれなくて、あげくのはてには、借用書があるのに、借りた覚えはないと言われことがあります。信頼を平気で裏切る人間がいます。
チャンス大城さんのお酒のみのおとうさんが雪の中で倒れていたのを発見されたという話があります。
わたしもこどものころに自分の父親で同様の体験があります。どちらの話も通りかかった人が助けてくれています。
昔は、酒飲みがよく道ばたにころがっていました。
家族のことが赤裸々(せきらら)に書かれています。(あからさまに。かくすことなく。いいのだろうか。ご家族ににらまれそうですが、息子のためならよしかとも思えます)
母親:身長130cmぐらい。老人ホームで働いている。著者に芸人になることを勧めてくれた。
兄チタル(「千足」と書く):ピアノ演奏がうまい。変わった性癖(せいへき。生まれつきの悪い癖)がある。フロに入らない。爪を(足の)切らない。一芸に秀でた(ひいでた)能力をもっている人は、標準からははずれた性癖がありそうです。
以前読んだ『ポンコツ一家 にしおかすみこ 講談社』もすごいご家族の内容でしたが、芸人さんの家は、それなりに苦労があって、生活に『笑い』を求める傾向があるのだろうかと分析しています。
著者の小学生時代に起きた下ネタがおもしろすぎる。『二メートルの大男』という部分でした。
おとんがいて、おかんがいて、おねえ(3歳上)とおにい(2歳上)がいて、狭い家で暮らす四人家族は、騒動の連続です。
いじめのことが書いてあります。
芸人さんは、こどものころいじめられていた人が多いような気がします。
いじめられているあいだに、さきざき、みかえしてやるぞのパワーが蓄積(ちくせき)されるのです。
(つづく)
著者の心臓が右側にある。加えて、内臓の位置が反転しているという話が出ます。小学校入学前の健康診断で指摘されたお話です。
なにかのテレビ番組でそのエピソードの披露を見たことがあります。不思議ですが、だいじょうぶだそうです。珍しいけれどありえる事例だそうです。
ふーむ、生活をしていてなにか苦労がありそうな気がするのですが、本人いわく、何もないそうです。不思議です。正式名称が『内臓逆位(ないぞうぎゃくい)』胃も腸も肝臓も膵臓(すいぞう)も左右反対になっているそうです。びっくりです。
マンガ『北斗の拳』を自分はほとんど知らないのであれですが、(語る資格がない)ケンシロウの敵がサウザーというキャラクターで『内臓逆位』だそうです。
お金持ちの家のこどもが、貧乏な家のこどもをいじめる経過が書いてあります。
頭のいい人は、冷酷ないじめをします。体罰ではなく、心理的な抑圧(よくあつ)です。シカト(無視)がいい例です。いないものとして扱うのです。陰湿です。
著者と著者の友だち(貧乏)は、お金持ちのこどもにお金を使っての心理的ないじめをしかけられてはまっています。悪質ですが、上流階級ではよくある事例なのでしょう。本人にもわからないようにしかけをして、人間のゆれ動く心をもてあそんでいます。いじめる側は、悪魔に近い位置にいる人間です。そういう人間が組織の上層部のポストにつくと部下は悲惨です。
著者の唯一(ゆいいつ。ただひとり)の友だちである「ウメヤマ」くんが、偉才(いさい)を放っています。(貧乏だけど才能をもっている)かなり笑えます。なんだか、小学三年生のウメヤマくんが、かっこいい!
いくつかの感動できる話があります。いい本です。
リリー・フランキーさんの名作『東京タワー ~オカンとボクと、時々、オトン~』の冒頭付近にある福岡県炭坑地域での小学生時代の記述と重なる人間臭い生活ぶりがあります。
お金がないから幸せになれないということはない。されど、苦しい。
公序良俗(こうじょりょうぞく。常識とか道徳とか)に反する内容が多いので、売り出しにくい本ではあります。
ノンフィクション(事実をもとの書かれている)ので、昔のこととはいえ、書中に登場してくる人物が関係者ならだれかもわかってしまいます。
トラサルディ:イタリアのファッションブランド。ダボダボのジーンズをはいた不良が出てきます。(中学生不良なのですが、幼稚園時代はリス組で、著者と同じクラスでした。10年ぶりの再会です)
1989年(平成元年)、14歳の著者が、関西のお笑い番組のしろうと挑戦コーナーに出場して優勝します。
平成元年あたりは、日本だけではなくて、世界中が転換の年でした。自分も若かった。
なんだろう。この本はもしかしたら、いじめた人間への復讐本という位置づけのような気がしてきました。
シンナー中毒の話が出ます。
わたしは小学生の頃、公民館で、シンナーを吸うと人間の脳がおかしくなるという映画を見ました。
自分がこどものころに、シンナー中毒の若い男性を見たことがあります。言動が異様です。
中学生である著者のまわりは、かなり崩れた人格の人たちがいます。よくがまんされました。
されど、影響されたときもあったようです。120ページに『その後の人生、酒に溺れて(おぼれて)しくじった時、自分の子供に会えなくなった時、自分の情けなさに泣けてきた時……』とあります。
著者の心の弱さが、さらけだしてある本です。今年読んで良かった一冊です。
定時制高校のところを読んでいて思い出したことがありました。
場所は忘れましたが、伊丹市だったか、尼崎市だったかにある定時制高校をもうずいぶん前、半世紀ぐらい前に見学したことがあります。親族が通っていて、そういう機会がありました。
体育の授業で、生徒たちは、夜の体育館で楽しそうにバレーボールをしていました。
ところが、今回この本を読んで、学校での出来事が書いてあって、いろいろあるのです。
あいつも(自分の親族)も苦労したのだろうなあと感慨が湧きました。(かんがい:感じて、身にしみる。しみじみする)
もの悲しいなかにも笑いがあります。ちょっぴりの幸せがあります。
ガーゴイル:西洋建築の屋根にある怪物の彫刻
メチャクチャな青春の記録です。
(つづく)
地面に埋められた話はもう犯罪です。
でも、警察には届けはしていないし、発見者もその気がありません。その土地の風土(ふうど)です。土地柄(とちがら)です。
親御さんも(おやごさんも)無頓着(むとんちゃく。気にしない)ですから、親御さんご自身も似たような体験があるのでしょう。
メチャクチャです。
なんというか、著者自身に『意思』とか『意志』がみられません。生き方において、なにかが足りていません。
定時制高校を4年間で卒業することはたいへんなことです。入学式で100人、卒業式で30人ぐらいです。その点で、卒業した著者はたいしたものです。
著者は、1995年1月17日の阪神淡路大震災を体験します。
驚いて母親にしがみついた著者の背中に大きな棚が落ちてきます。母親は息子が自分を守ってくれたと感謝して息子にお礼として1000円札を1枚渡します。どこからしら、かみあわないなかにもユーモアがあります。
災害の避難所で過ごすのにはけっこう神経が疲れます。
なにもすることがないのです。
過ぎていく時間をどうやってつぶしていくか迷い悩みます。
著者の友人ワダさん:父親が7人変わった。(ある意味、生きる勇気をもらえます)(ワダさんは、そのうち、インド人のおとんにぶつかります(義父として))
くわばたりえさんと付き合っていた話が出ます。
人生いろいろです。
流れている。あるいは、流されている日常生活です。
かなりハードではある。
210ページ『……何を目標にして生きていけばいいのかわかりませんでしたが、かといって他にやることも、行く場所も、もうありませんでした……』
借金をかかえた人たちが岐阜県の山奥にあるガラス工場で仕事の行き帰りだけのバスにのって毎日を過ごす生活が書いてあります。寮と工場を往復するだけです。まるで、監禁生活です。お金を使う場所はありません。ただ、離職することは自由だったでしょう。そしてお金は貯まります。
著者は、54歳になったらお笑いの世界で売れるという占いです。(占いは当たっているのではないか)
X JAPAN hide:ロックバンド。1998年(平成10年)急逝(きゅうせい)
[東京編]
これまでは、関西の話でしたが、219ページから東京のことです。
ここまで読んで思うのですが、これだけの長文をわかりやすい文章で書く能力が著者にあるとしたら、たいしたものです。多少の疑問はあるのですが、編集者の手は入っているのでしょう。
わたしが見学したことがある『築地本願寺(つきじほんがんじ)』が冒頭に出てきます。内容は、X JAPAN hideさんという方の葬儀です。(あいにく自分は存じ上げません。1998年当時のわたしは必死で働いていました)
次のページでは『東中野駅』が出てきます。わたしは先月、東京観光の途中、電車で東中野駅を通過したので身近に感じます。
そこで著者が借りたアパートの家賃は、1万8000円です。
河岸(かし)を変える:文中では、椎名林檎(しいな・りんご)さんが、コンビニを変えるという意味で使ってあります。
昔、福岡県にある嘉穂劇場(かほげきじょう)という和風の劇場(芝居小屋)を見学したときに、椎名林檎さんのコンサートがあったというようなポスターを見て不思議な感じがしたことを思い出しました。調べたら椎名林檎さんは福岡県育ちの体験がある人でした。
(この本を読んでいた時に千鳥のテレビ番組『相席食堂』に著者が旅の案内人として、ツチノコ探しのイベントに参加したという映像を観ました。ものまねというか、人間じゃないイリオモテヤマネコの顔でフクロウが鳴くというようなものまねが良かった。じょうずです)
230ページ付近まで読んで、著者は、成育歴の影響で、心に壊れている部分があります。
まともな結婚はできなさそうです。(そう思っていたらこのあと結婚、男児まで生まれていますが、経過はまともではありません)
不肖の息子です。(ふしょう:おろかな)
母心がありがたい。
酒が人間をだめにします。
お酒のみの人は、自分が何をしてもまわりにいる人間は自分を許してくれると勘違いしています。許してはくれません。(本書では、288ページで、千原兄弟の兄せいじさんが400人の観客がいる舞台上で著者に『おまえ、酒やめろ!』と本気で言っています)
たばこもだめです。酒とたばこの大量摂取は自殺行為です。(書中では著者の目の前に「死神(しにがみ)」が登場する幻視らしきものが現れます)(酒とたばこには気をつけないと、心身を壊して悲惨な状態で死に臨む(のぞむ。向かう)ことになります)
ほろにがくて、泣けてきそうな人生です。
著者は、こどものまま、おとなになって、まわりの人たちに迷惑をかけていた人です。
やりたいことはやる。やりたくないことはやらない。いつまでたっても、こどもです。
妻からみれば、ひどい夫であり、こどもからみれば、ひどい父親です。
著者は当時34歳ぐらいです。
メチャクチャな生活です。(その素行(そこう。ふだんの言動)には、芸名にあるような「チャンス(大城)」はない。
266ページまで読んだときに『不作為の人(ふさくいのひと)』という言葉が頭に浮かびました。
気が向くことは徹底的にやれるけれど、気が向かないことは簡単なことでもいっさいやりません。やるべきことをやらないことで、被害者や損害が出ることがわかっていてもやりません。ゆえに、転落していきます。その性癖(せいへき。生まれつきの癖)のようなものは、一生なおりません。
274ページ付近の段ボール箱の話は、爆笑できます。
2013年(平成25年)著者38歳にチャンスが回ってきました。
ブリッジ:ネタの間にはさむ「言葉」や「動作」。著者の場合は「オッヒョッヒョ」
立川談志師匠の言葉として『落語とは人間の業の(ごうの)肯定である』(人間とはしょせん、どうしようもないものなのだ。業:ごう。悪行(あくぎょう))
読み終えて、うーむ。(評価が)むずかしい本です。いいところ半分。そうでないところ半分。されど、それが人間のありようともいえます。
著者を、太川陽介さんの路線バス対決旅で見たことがあります。著者であり芸人であるチャンス大城さんは、太川陽介チームのゲストでバス旅に参加されました。
松本利夫チームとの対決でした。
チャンス大城さんはなかなか苦労されていましたが、チャンス大城さんがいた太川陽介さんチームが勝利しました。チャンス大城さんは、その後、テレビ番組『アメトーク』に出ておられました。
ほかに、別のバラエティ番組にも出ておられて、心臓が右側にあるという不思議な体をもっておられることの紹介がありました。心臓を含めて、内臓が反転している位置にあるそうです。(生きるのに問題はないというようなお話でした)
わたしは、いつ情報を仕入れたのか記憶が定かではないのですが、チャンス大城さんのこの本が爆発的におもしろいと聞きました。読んでみたくなりました。
(1回目の本読み)
まずは、1回目の本読みとして、全部のページをめくってみます。
2ページで、チャンス大城さんは、床(ゆか)に座って食事をするそうです。
ホームレスすれすれの生活をしてきたそうです。
1998年に兵庫県の尼崎から東京に出てきて、転々として、今は、2年前に借りた部屋にいる。家賃5万円。エアコン付き。
わたしにも記憶がある兵庫県内の地名が出てきます。『尼崎(あまがさき)』とか『武庫之荘(むこのそう)』とか『塚口(つかぐち)』とか『伊丹(いたみ)』とか。
もう昔の話ですが、1975年代(昭和50年代ごろ)にそのあたりに知り合いがいて、何度か足を運びました。そのうちのひとりは自分の親族で、現地の会社で働いていました。(今はもうそこにはいません)もうひとりは高校時代の友人が家族と暮らしていました。(その後、その友人とは音信不通になりました)
いいにくいのですが、柄(がら)がいい地域には見えませんでした。今はもうないのでしょうが、西宮球場あたりも歩いたことがあります。でも怖い(こわい)と思ったことはありません。自分自身、スラムのようなところで育ったので、荒っぽい環境には慣れていました。
この本には16ページに『……尼崎はとても濃ゆい(こゆい)街です。不良の数が半端(はんぱ)なくて……』とあります。
ソーセージ兄弟という貧乏兄弟の話が出てきました。ふむ。こういう暮らしが昔はあったなと自分のこどものころを思い出しました。
ビンボー話が続きます。今はどうかわかりませんが、昔はどこもそんな暮らしがありました。
著者にとっての伝記、思い出の記録です。
かなりの長文です。あとがきを含めて303ページあります。著者は、この本をつくるために、かなりの時間を使いました。
話し言葉の文章です。テープに録音してから文章化してあるのだろうか。
2022年7月初版です。今年5月で6刷ですからよく売れている本です。
本のタイトル『ぼくの心臓は右にある』は、本を手に取る人の気をひくためのものなのでしょうが、ほかにもっといい感じのタイトルがありそうな気がします。ちょっとあざとい感じがするのです。(ずるさがある)(読み進めながら、ちょっと別のタイトルを考えてみます)(164ページまで読んで、タイトルはこのままでいいという気分になりました)
(2回目の本読み)
ウメヤマソウジとウメヤマセイジ兄弟というのが、話に出てきます。合わせてソーセージ兄弟です。
貧乏な家の兄弟です。着ているものが古くて汚い。
クリスマス会でのプレゼント交換です。
イキる:高飛車(たかびしゃ)。お金持ちのお嬢さんのことが書いてあります。(お嬢さんはまだこどもです)
カリカリ梅:未熟な小さな梅
ザク:ガンダムシリーズに登場する兵器。有人操縦式人型機動兵器
(つづく)
32ページまで読みました。
いい本です。
今年読んで良かった一冊になりそうです。
貧困と富豪が同じような地域に存在している。
『芦屋(あしや)』というところはお金持ちの人たちが住んでいるようで、関西の人たちにとってはいちもく置くような地域なのでしょう。(いちもくおく:優れているので敬意をはらう。うやまう。尊敬する)
ウメヤマ兄弟の父親が自分で家をつくります。わたしの思い出として、わたしの母方の祖父がそうでした。家を建てたとき、大工が忙しくてなかなか来てくれなかったので、大工仕事ができる祖父が家を建てたと祖母が話していました。
著者のお父さんは、ブラジャーのホックをつくる工場で働いていた。
お父さんは自分の仕事に誇りをもっていた。いいことです。お金のためだけでは仕事は続きません。自分がしている仕事は世のため人のためになっているという誇りが自分の心を支えてくれます。
お父さんが、著者の友だちであるサイトウ君にブラジャーを付けさせて、ブラジャーのホックを一瞬で、はずすやり方を教えます。いやらしくはありません。年配の人がエッチなことを話すときに若い人はいやがりますが、年配の人は、若い人を『これが現実だ!』としかります。現実なのです。人間もしょせんは生き物なのです。
著者の家族全員がクリスチャンという話が出ます。
聖歌隊にお父さんが入っていることが驚きなのですが、オンチで聖歌隊から除外されて、気持ちが落ち込んで、されどがんばって再入隊して、されど、口パク(くちぱく。声はださない。口の開閉だけする)で参加してというくだりに大笑いしました。悲喜(ひき)こもごもです。人生っていいなと思わせてくれます。いい本です。
人にだまされることが多かったおとうさんだそうです。お金を貸しても戻ってこないし、保証人になれば借りた本人に代わり借金を背負うのです。
世の中にはひどいことを平然とする人がいます。わたしも貸したお金は、3割ぐらいしか回収できていません。若いころはたくさんだまされました。笑顔で近づいてくる人間は要注意です。下心(したごころ)があるのです。いくら返済を請求しても返してくれなくて、あげくのはてには、借用書があるのに、借りた覚えはないと言われことがあります。信頼を平気で裏切る人間がいます。
チャンス大城さんのお酒のみのおとうさんが雪の中で倒れていたのを発見されたという話があります。
わたしもこどものころに自分の父親で同様の体験があります。どちらの話も通りかかった人が助けてくれています。
昔は、酒飲みがよく道ばたにころがっていました。
家族のことが赤裸々(せきらら)に書かれています。(あからさまに。かくすことなく。いいのだろうか。ご家族ににらまれそうですが、息子のためならよしかとも思えます)
母親:身長130cmぐらい。老人ホームで働いている。著者に芸人になることを勧めてくれた。
兄チタル(「千足」と書く):ピアノ演奏がうまい。変わった性癖(せいへき。生まれつきの悪い癖)がある。フロに入らない。爪を(足の)切らない。一芸に秀でた(ひいでた)能力をもっている人は、標準からははずれた性癖がありそうです。
以前読んだ『ポンコツ一家 にしおかすみこ 講談社』もすごいご家族の内容でしたが、芸人さんの家は、それなりに苦労があって、生活に『笑い』を求める傾向があるのだろうかと分析しています。
著者の小学生時代に起きた下ネタがおもしろすぎる。『二メートルの大男』という部分でした。
おとんがいて、おかんがいて、おねえ(3歳上)とおにい(2歳上)がいて、狭い家で暮らす四人家族は、騒動の連続です。
いじめのことが書いてあります。
芸人さんは、こどものころいじめられていた人が多いような気がします。
いじめられているあいだに、さきざき、みかえしてやるぞのパワーが蓄積(ちくせき)されるのです。
(つづく)
著者の心臓が右側にある。加えて、内臓の位置が反転しているという話が出ます。小学校入学前の健康診断で指摘されたお話です。
なにかのテレビ番組でそのエピソードの披露を見たことがあります。不思議ですが、だいじょうぶだそうです。珍しいけれどありえる事例だそうです。
ふーむ、生活をしていてなにか苦労がありそうな気がするのですが、本人いわく、何もないそうです。不思議です。正式名称が『内臓逆位(ないぞうぎゃくい)』胃も腸も肝臓も膵臓(すいぞう)も左右反対になっているそうです。びっくりです。
マンガ『北斗の拳』を自分はほとんど知らないのであれですが、(語る資格がない)ケンシロウの敵がサウザーというキャラクターで『内臓逆位』だそうです。
お金持ちの家のこどもが、貧乏な家のこどもをいじめる経過が書いてあります。
頭のいい人は、冷酷ないじめをします。体罰ではなく、心理的な抑圧(よくあつ)です。シカト(無視)がいい例です。いないものとして扱うのです。陰湿です。
著者と著者の友だち(貧乏)は、お金持ちのこどもにお金を使っての心理的ないじめをしかけられてはまっています。悪質ですが、上流階級ではよくある事例なのでしょう。本人にもわからないようにしかけをして、人間のゆれ動く心をもてあそんでいます。いじめる側は、悪魔に近い位置にいる人間です。そういう人間が組織の上層部のポストにつくと部下は悲惨です。
著者の唯一(ゆいいつ。ただひとり)の友だちである「ウメヤマ」くんが、偉才(いさい)を放っています。(貧乏だけど才能をもっている)かなり笑えます。なんだか、小学三年生のウメヤマくんが、かっこいい!
いくつかの感動できる話があります。いい本です。
リリー・フランキーさんの名作『東京タワー ~オカンとボクと、時々、オトン~』の冒頭付近にある福岡県炭坑地域での小学生時代の記述と重なる人間臭い生活ぶりがあります。
お金がないから幸せになれないということはない。されど、苦しい。
公序良俗(こうじょりょうぞく。常識とか道徳とか)に反する内容が多いので、売り出しにくい本ではあります。
ノンフィクション(事実をもとの書かれている)ので、昔のこととはいえ、書中に登場してくる人物が関係者ならだれかもわかってしまいます。
トラサルディ:イタリアのファッションブランド。ダボダボのジーンズをはいた不良が出てきます。(中学生不良なのですが、幼稚園時代はリス組で、著者と同じクラスでした。10年ぶりの再会です)
1989年(平成元年)、14歳の著者が、関西のお笑い番組のしろうと挑戦コーナーに出場して優勝します。
平成元年あたりは、日本だけではなくて、世界中が転換の年でした。自分も若かった。
なんだろう。この本はもしかしたら、いじめた人間への復讐本という位置づけのような気がしてきました。
シンナー中毒の話が出ます。
わたしは小学生の頃、公民館で、シンナーを吸うと人間の脳がおかしくなるという映画を見ました。
自分がこどものころに、シンナー中毒の若い男性を見たことがあります。言動が異様です。
中学生である著者のまわりは、かなり崩れた人格の人たちがいます。よくがまんされました。
されど、影響されたときもあったようです。120ページに『その後の人生、酒に溺れて(おぼれて)しくじった時、自分の子供に会えなくなった時、自分の情けなさに泣けてきた時……』とあります。
著者の心の弱さが、さらけだしてある本です。今年読んで良かった一冊です。
定時制高校のところを読んでいて思い出したことがありました。
場所は忘れましたが、伊丹市だったか、尼崎市だったかにある定時制高校をもうずいぶん前、半世紀ぐらい前に見学したことがあります。親族が通っていて、そういう機会がありました。
体育の授業で、生徒たちは、夜の体育館で楽しそうにバレーボールをしていました。
ところが、今回この本を読んで、学校での出来事が書いてあって、いろいろあるのです。
あいつも(自分の親族)も苦労したのだろうなあと感慨が湧きました。(かんがい:感じて、身にしみる。しみじみする)
もの悲しいなかにも笑いがあります。ちょっぴりの幸せがあります。
ガーゴイル:西洋建築の屋根にある怪物の彫刻
メチャクチャな青春の記録です。
(つづく)
地面に埋められた話はもう犯罪です。
でも、警察には届けはしていないし、発見者もその気がありません。その土地の風土(ふうど)です。土地柄(とちがら)です。
親御さんも(おやごさんも)無頓着(むとんちゃく。気にしない)ですから、親御さんご自身も似たような体験があるのでしょう。
メチャクチャです。
なんというか、著者自身に『意思』とか『意志』がみられません。生き方において、なにかが足りていません。
定時制高校を4年間で卒業することはたいへんなことです。入学式で100人、卒業式で30人ぐらいです。その点で、卒業した著者はたいしたものです。
著者は、1995年1月17日の阪神淡路大震災を体験します。
驚いて母親にしがみついた著者の背中に大きな棚が落ちてきます。母親は息子が自分を守ってくれたと感謝して息子にお礼として1000円札を1枚渡します。どこからしら、かみあわないなかにもユーモアがあります。
災害の避難所で過ごすのにはけっこう神経が疲れます。
なにもすることがないのです。
過ぎていく時間をどうやってつぶしていくか迷い悩みます。
著者の友人ワダさん:父親が7人変わった。(ある意味、生きる勇気をもらえます)(ワダさんは、そのうち、インド人のおとんにぶつかります(義父として))
くわばたりえさんと付き合っていた話が出ます。
人生いろいろです。
流れている。あるいは、流されている日常生活です。
かなりハードではある。
210ページ『……何を目標にして生きていけばいいのかわかりませんでしたが、かといって他にやることも、行く場所も、もうありませんでした……』
借金をかかえた人たちが岐阜県の山奥にあるガラス工場で仕事の行き帰りだけのバスにのって毎日を過ごす生活が書いてあります。寮と工場を往復するだけです。まるで、監禁生活です。お金を使う場所はありません。ただ、離職することは自由だったでしょう。そしてお金は貯まります。
著者は、54歳になったらお笑いの世界で売れるという占いです。(占いは当たっているのではないか)
X JAPAN hide:ロックバンド。1998年(平成10年)急逝(きゅうせい)
[東京編]
これまでは、関西の話でしたが、219ページから東京のことです。
ここまで読んで思うのですが、これだけの長文をわかりやすい文章で書く能力が著者にあるとしたら、たいしたものです。多少の疑問はあるのですが、編集者の手は入っているのでしょう。
わたしが見学したことがある『築地本願寺(つきじほんがんじ)』が冒頭に出てきます。内容は、X JAPAN hideさんという方の葬儀です。(あいにく自分は存じ上げません。1998年当時のわたしは必死で働いていました)
次のページでは『東中野駅』が出てきます。わたしは先月、東京観光の途中、電車で東中野駅を通過したので身近に感じます。
そこで著者が借りたアパートの家賃は、1万8000円です。
河岸(かし)を変える:文中では、椎名林檎(しいな・りんご)さんが、コンビニを変えるという意味で使ってあります。
昔、福岡県にある嘉穂劇場(かほげきじょう)という和風の劇場(芝居小屋)を見学したときに、椎名林檎さんのコンサートがあったというようなポスターを見て不思議な感じがしたことを思い出しました。調べたら椎名林檎さんは福岡県育ちの体験がある人でした。
(この本を読んでいた時に千鳥のテレビ番組『相席食堂』に著者が旅の案内人として、ツチノコ探しのイベントに参加したという映像を観ました。ものまねというか、人間じゃないイリオモテヤマネコの顔でフクロウが鳴くというようなものまねが良かった。じょうずです)
230ページ付近まで読んで、著者は、成育歴の影響で、心に壊れている部分があります。
まともな結婚はできなさそうです。(そう思っていたらこのあと結婚、男児まで生まれていますが、経過はまともではありません)
不肖の息子です。(ふしょう:おろかな)
母心がありがたい。
酒が人間をだめにします。
お酒のみの人は、自分が何をしてもまわりにいる人間は自分を許してくれると勘違いしています。許してはくれません。(本書では、288ページで、千原兄弟の兄せいじさんが400人の観客がいる舞台上で著者に『おまえ、酒やめろ!』と本気で言っています)
たばこもだめです。酒とたばこの大量摂取は自殺行為です。(書中では著者の目の前に「死神(しにがみ)」が登場する幻視らしきものが現れます)(酒とたばこには気をつけないと、心身を壊して悲惨な状態で死に臨む(のぞむ。向かう)ことになります)
ほろにがくて、泣けてきそうな人生です。
著者は、こどものまま、おとなになって、まわりの人たちに迷惑をかけていた人です。
やりたいことはやる。やりたくないことはやらない。いつまでたっても、こどもです。
妻からみれば、ひどい夫であり、こどもからみれば、ひどい父親です。
著者は当時34歳ぐらいです。
メチャクチャな生活です。(その素行(そこう。ふだんの言動)には、芸名にあるような「チャンス(大城)」はない。
266ページまで読んだときに『不作為の人(ふさくいのひと)』という言葉が頭に浮かびました。
気が向くことは徹底的にやれるけれど、気が向かないことは簡単なことでもいっさいやりません。やるべきことをやらないことで、被害者や損害が出ることがわかっていてもやりません。ゆえに、転落していきます。その性癖(せいへき。生まれつきの癖)のようなものは、一生なおりません。
274ページ付近の段ボール箱の話は、爆笑できます。
2013年(平成25年)著者38歳にチャンスが回ってきました。
ブリッジ:ネタの間にはさむ「言葉」や「動作」。著者の場合は「オッヒョッヒョ」
立川談志師匠の言葉として『落語とは人間の業の(ごうの)肯定である』(人間とはしょせん、どうしようもないものなのだ。業:ごう。悪行(あくぎょう))
読み終えて、うーむ。(評価が)むずかしい本です。いいところ半分。そうでないところ半分。されど、それが人間のありようともいえます。