2018年09月24日

ハレルヤ 保坂和志

ハレルヤ 保坂和志 新潮社

 短編4本とあとがきです。最初の「ハレルヤ」を半分ぐらい読んだあと、最後のあとがきに目が行き、あとがきなれど、先に読んでしまいました。
 「あとがき」の感想から書くと、短編は、「死」を考察する内容だと受け止めました。猫の話なのですが、人の話でもあります。死をもって生きる喜びを掴むことかと。読者に考えさせる小説です。自分が死んでも世界はあるとか、自分の死は世界にとってはたわいもないことというような趣旨は強烈です。
 調べた単語として、「ポテンシャル:潜在的な力」

「ハレルヤ」
 かぐや姫が月に帰るのは「死ぬ」ことを意味するから始まり、次に飼い猫複数の死の話に至ります。
 「ハレルヤ:神を賛美し喜ぶ」
 エッセイ風です。作者の私生活をそのまま書いてあるようです。
 印象的だった文節などとして、「猫と月の記憶」、「目が見えない猫だからわたしたちに幸運をもたらした」、「ぼくはっきり言って死んでます」
 過去・現在・未来、時間の考察があります。
 調べた単語として、「籠った:こもった」
 老衰した猫の花ちゃんを天国へ見送ります。葛藤があります。花ちゃんは生きたいのです。飼い主夫婦である作者は生かしたいのです。
 リンパ腫を治す特効薬は長続きしません。「射とう:うとう。ここでは注射をうつ」、薬に2か月の命をもらう。「幽ける:かそけく。かすかである。淡い」
 哲学的です。

(つづく)

「十三夜のコインランドリー」
 「キャロル・キング:アメリカ合衆国のシンガーソングライター76歳」「ハイドパーク:ロンドンの王立公園」「ジャニス・ジョプリン:女性。アメリカ合衆国歌手1970年27歳没」「ジミ・ヘンドリックス:アメリカ合衆国ロックミュージシャン1970年27歳没」「レナード・コーエン:カナダのシンガーソングライター、小説家。2016年82歳没」
 猫の話。フィドル(バイオリン)の話。音楽はお金のためにやるものではないという趣旨の話。猫との再会は因果応報か。(過去の原因と現在の結果のつながり)

「こことよそ」
 ほどよく力が抜けた記述に雰囲気があります。
 「涯のない:はてしのない。果てしない」「僥倖:ぎょうこう。偶然の幸運」「フロイト:オーストリア。1939年83歳没。精神科医、心理学者」「耽った:ふけった」「懊脳:おうのう。悩みもだえる」「収斂:しゅうれん。異なる複数のものが同質化していく」
 印象に残ったのは、これしかできない(小説家しかできない)
 「サチモス:男性6人組ロックバンド」
 ここまで読んできて、「…(さんてん)」記述がなくて、「はい、」というようなかっこ書きと点のみで、無言の空間を出していることが印象的でした。
 読みながら、若くして病気や事故で亡くなった自分のそばにいた人たちを思い出しました。

「生きる歓び(よろこび)」
 わりと自由な書き方をしてあるので、その点で、ほっとできる面があります。独特なリズムがあります。そして、猫のお話です。もう死にそうなほど体が弱っているちいさな捨て子猫がいます。カラスが子猫を狙っています。人間たちはそれを見守るだけで救おうという人はなかなか現れません。
 猫をとおしての生きる歓びが書いてありました。
 「草間彌生:89歳、画家、芸術家」  

Posted by 熊太郎 at 06:37Comments(0)TrackBack(0)読書感想文