2018年03月23日

日本史の内幕 磯田道史

日本史の内幕 磯田道史(いそだ・みちふみ) 中公新書

 歴史オタクの人が書いた歴史の本です。
 本人自身の血筋も良さそうです。そのへんが、歴史好きのとっかかりでしょう。
 
 ながい時間の中で、いろんなひとたちがこの世に文章を残している。古文書を発掘することが著者の日常生活です。日記とか日誌、記録です。それは、膨大な量で、ふだん、関わりがない読み手にとっては意外です。古い記録の記述を読むと、昔の日本、太平洋海岸沿いは、絶景の連続だったことがわかります。自然が豊かです。

 文化財の保護・保存を優先するという考えは、いろいろな利害関係の考え方がある現代社会においては、むずかしい。

 モノ書きの大変さとして、子孫をたずねての電話調査、おでかけがあります。好奇心の固まりであるからできることです。古文書に対する賛辞が惜しみなく語られます。

 いいことなのだけれど、表には出していけないという日本人独特の感覚「慎み」が歴史のなかにあります。上下関係の身分制度(あるいみ差別)がありますが、下の者が上の者に絶対的に服従しているわけでもありません。言いたいことは言っている人もいる。

 日本国の出版文化はすばらしいという著者の言葉に、共感させられました。それが、今は荒れてしまった。目先の利潤を追いかけて、不況になった面もあるようです。著者が育たない世界になった。

 吉田松陰の教えが弟子に引き継がれ、その提言が、明治以降の施策に生かされたということは初めて知り、驚きと納得がありました。死してなお、望みをかなえるのです。その後に続く、歴史と統計の話も良かった。

 そのほか、良かった表現として、「政治家が自分の責任を投げ出さない。戦争を終わらせる決意をした政治家がいた。」、「豊臣秀吉が16歳ぐらいの頃の様子と支配者になってからの征服意識、「権力の都合で情報は操作される。」、「毒味役は、毒味をしない。調理人と配ぜん人が毒味をする。毒味役は毒味をしろと指示をするのみ。」、「江戸後期の人口は3000万人」

 調べた単語は、「箴言集:しんげんしゅう。戒め、教訓」

 最後に、西郷隆盛は、大量に本を読む人だったも良かった。  

Posted by 熊太郎 at 19:24Comments(0)TrackBack(0)読書感想文

2018年03月22日

夢の国

夢の国

さあさ皆さんお出かけですよ。
ついてらっしゃい。



海の上は日差しがサンサン



汽車バスにのりますよー



出発進行!



ららぽーと東京ベイに到着しました。
お買い物、しますよー
バスへの集合時刻は午後3時です。


(撮影地 東京都江戸川区内葛西臨海水族園と千葉県船橋市内ららぽーと東京ベイ 2018年春)
  

Posted by 熊太郎 at 18:53Comments(0)TrackBack(0)東京

2018年03月21日

安楽死で死なせてください 橋田壽賀子

安楽死で死なせてください 橋田壽賀子 文春新書

 92歳の方です。最近多い、超高齢女流作家(この方の場合はシナリオライター)さんの記述です。
 この本の特徴は、「安楽死を望む」 ものです。つまり、薬を自分で飲んで死を選択する。突き詰めてみれば、自死だと読み手は思うのです。その理由は、身内がだれもいないからです。結婚歴もありますが、長生きして、周りにいた人たちが、先にあの世へ旅立たれているということもあります。
 ただ、この方の場合、めんどうを見てくださる人たちがたくさんいるわけで、老後は安定・安心な立場にあるという土台で、本読みを始めました。

 高名な仕事を残されていますが、私生活では、親戚づきあいなし、会いたい友だちなし、天涯孤独、自分の命を永らえることを望んでくれる人もなしとのお話しです。

 結局は、「無駄な延命治療は望まない。」 という結論に達します。

 永い人生のふりかえりです。
 戦時中、中学生が戦闘機の機銃掃射で殺されるシーンを見た。
 戦争で、母親が空襲で死んでよかったなと思った。(こんな世の中で生きていても幸せではないから。) ただし、死んだと思っていた母親は生きていました。
 野菜と芋ばかりを食べたから長命になったは、同感です。
 山形へ行って、救われた。そこには、食べ物があった。生と希望と未来があった。それが、「おしん」 の脚本につながっている。
 戦争の責任は、日本人全員にある。ここらまで読んで、その厳しい経験に頭が下がります。
 差別社会日本、戦争に負けて良かった。負けて解消された差別がたくさんある。
 本音のお話が続きます。
 お嬢さまでも、体を売って食べていくしかない。

 サラリーマンと結婚して永久就職する。(動機が不純とはいえない。)
 家族がいないから、何を書いても家族からクレームがくることがない。
 
 家族がいたとしても、老いて最後はひとりぼっちにされる女性もいる。
 
 AEDなんて使わないでくれ。
 救急車は呼ばないでくれ。
 ちょっと聞くと、非常識に聞こえる著者のお願いです。
 点滴も胃ろうもやめてくれと続きます。

 人間として、ちゃんとした状態で死にたい。

 毎日、10種類以上薬を飲んでいる。毎日200グラムの肉を食べる努力をする。お金を使い切って死ぬ。

 未亡人になると、女子は明るくなる。

 お手伝いさんが5人ぐらいいる。

 一般人には、驚くことばかりです。

 「安楽死」は、なかなか議論しにくい素材です。

 心優しい医師は悩む。

 看取りの部分は、最近言葉が広まっている「地域包括ケア」の部分なのでしょう。

 京唄子さん、89歳で死去。

 自分の意見として、自分の寿命は、ある程度、自分で予測ができると思う。なんといっても、自分の体です。
 そして、いざというときに備えて、意思表示を残しておくのです。  

Posted by 熊太郎 at 11:40Comments(0)TrackBack(0)読書感想文

2018年03月19日

健康という病 五木寛之

健康という病 五木寛之 幻冬舎新書

 著者は、書中では、85歳ですが、その後、86歳になられています。
 いま、半分程度を読んだところですが、戦後70年間ぐらい受診がなく、85歳で歯科以外の受診をするまで、病院にかかったことがない、健康診断を受診したことがないということは驚きです。
 それでいて、体のあちこちが痛い様子です。戦中派の独特な感じ方、戦争で亡くなった人のことを思うと、生き残って申し訳ないとか、生活費を稼ぐことが受診より優先される状況だったとかは、世代の特徴でしょう。

 さて、感想を順番に書いていきます。
 ゆきすぎた健康志向活動に警鐘をならされています。医師が書いたものではないので、小説家が見た健康対策です。
 大きな文字で書いてあるので読みやすい。読む対象者が高齢者だからでしょう。
 睡眠時無呼吸症候群か始まります。次に左足の痛み。絶食治療(わたしには無理)、癌の原因はストレス、入浴好き、いまの北朝鮮地域での暮らし、触診のない診察など続きます。
 病院・医師の実名があり、宣伝本だろうか。
 
 自殺願望者がいる中で、死にたくない、寝たきりになりたくない、認知症になりたくないという人たちがいる。生きることが人間の本能です。自殺したいと言っている人も、本当は生きたいと思っていると思いたい。

 健康情報類が、一種の産業になっています。そこを、止めることはできません。

 小説家、自由業である作者の日常生活はその名称のとおり自由です。好きな時に寝て、好きな時に働いてです。昼夜逆転の生活です。しかもそういう生活を50年間ぐらい続けていらっしゃる。サラリーマンにはまねできません。よく、長生きできている。
 大量の本は読む。入浴時に読む。本はふやける。

 活動範囲が狭いのか、新聞からの引用が多い内容です。

 小太りを推奨されています。標準体重がいいとわたしは思います。ときに、メタボにやさしい発言がありますが、そうは思えません。重い体重は足に負担がかかります。

 本人は長命ですが、ご家族は、はやくに亡くなっています。その人たちの分の命をいただいたと考えるわたしは昔人間です。

「健康でありたい」 風潮を問題にする。

(つづく)

 お勧めの「横臥位で眠る。」 は、わたしには無理です。
 
 悲観的な部分があります。老いて弱気なのだろうか。

 戦時中を体験された方なので、規則正しい生活はできなかった(突然の空襲など)という部分は、体験のない世代なので、読んでいて斬新でした。

 1億2000万人のなかの団塊の世代が800万人、また、将来は、少子化により、人口は4000万人減って、8000万人になる。

 早く情報を仕入れて、対策を立てて動く。

調べた単語、「フレイル:高齢で筋力、精神面が衰える。」、「捨て鉢:久しぶりに目にした言葉です。やけくそ」、「蝟集:いしゅう。多くのものが寄り集まる。」、「水毒;水分代謝の変調。漢方。すいどく」、「喧しい:かまびすしい。やかましい。」、「誤嚥性肺炎:食べ物、唾液が誤って気管支に入り、細菌が肺に入る。肺炎」、「エントロピー:まじりぐあい。この言葉の意味、よくわからない。」、「跛行性歩行:はこうせいほこう。歩行異常。びっこをひく。」、「輾転:てんてん。読めませんでした。」、「ハイパーインフレ:需要が増加しない。貨幣の価値が不安定になる。物価高騰」、「始原:はじまり」

うまい表現として、「生まれてから老化が始まる」、「保存療法:病巣の摘出や手術を行わない。対処療法」、「老いるショック(オイルショック)」、「老いドル(アイドルの高齢者版)」、「老いと折り合う。」  

Posted by 熊太郎 at 20:50Comments(0)TrackBack(0)読書感想文

2018年03月16日

碧くて痛くて脆い(もろい) 住野よる

碧くて痛くて脆い(もろい) 住野よる 角川書店

 どうしてこの人の作品は売れるのか。そこが読む動機です。

 読みはじめてしばくらくして、君の膵臓が食べたいパターンです。彼女がもういない。大学生小説かと思いながら100ページ手前付近を今読んでいます。死んだのか、生き別れなのか。

 タイトルの意味は、こどものまま(青春)大人になるということだろうか。
 いまどきの若者像からスタートです。他人に近づきすぎない。反論しない。そうやって自分の身を守る。

 秋好寿乃(あきよし・ひさの)がいなるであろう女性で、主人公は、田端楓(たばた・かえで) という男性で、ふたりとも大学1年生からスタートします。

 なりたい自分になりたかったけれど、あれから3年がたっても、なりたい自分になりきれていない。

 モアイと戦う。

 後輩が、ポンちゃん。ポンちゃんのキャラが、秋好(あきよし)に似ている。
 モアイをつくった人間が、モアイの外にいる。わかりにくい。

(つづく)

 読み終えました。
 「モアイ」が、大学のサークルなのですが、どういう内容のものかわからず抽象的です。
 たこ焼きパーティを開きながら、飲料水を飲んで、語り合う。
 人間関係づくりをする。
 途中、異性間で遊ぶ犯罪に近い交遊バーティみたいな扱いの印象を受ける部分もあります。またなんとか真理教みたいな宗教の雰囲気もあります。
 大学内の狭い世界、まだ、就職前の未成熟な人たちの集まりです。
 モアイの理想は、できるだけ多くの人を幸せにすることです。

 読み終えてみると、まじめな作品だったという感想をもちます。

 主人公田端楓が秋好寿乃に恋をするけれど、告白できない。秋好寿乃は、ほかの男が好きになる。そこから、田端楓の葛藤が始まる。三角関係と復讐劇。人づきあいに距離をもつ性質が沁みついている田端楓のキャラクター。

 経過のなかで、人が人を利用する手法・時間があります。そこで、各自が悩む。だれしも、自分中心主義で人を利用しようとする。それを悪ととらえて悩む。

 うわべだけの仲良しこよし。偽善者的なのか。

良かった表現として、 「後天的に自分をつくっていくタイプ」、「人見知りセンサー」、「理屈を求める人間」、「安全圏で笑っている」、「話題を広げようとしない」

調べたこととして、「ヒロのデレ:恋愛でデレデレする。」

 田端楓は人との距離感を保ちたい。傷つきたくないから、人づきあいをしない。

 作者は何を発信したいのだろう。青春時代の葛藤だろう。

 登場人物たちは、みんな若い。
 昔の若者たちのアルコールやタバコが、今の、スマホやSNS、中毒の対象なのだろう。

 名前をカタカナ変換するから、同一人物なのに、違う人かと勘違いするけれど、それは、作者の策略の一部なのだろう。

 構築と破壊。その繰り返しが人生。
 
 悪人は、人を利用しようとする。自分では中心に自分を置かない。責任をかぶるから。

 人間不信。信頼関係のない世界では、みんな不毛に向かって走っている。

 秋好寿乃の個性として、「自分はなにをやっても許される。」 というものがある。強烈な自己肯定である。

 やっぱり、かなり、まじめな作品です。

著者紹介文のところで、「よなよなエール:長野県の地ビール」  

Posted by 熊太郎 at 08:47Comments(0)TrackBack(0)読書感想文

2018年03月15日

おとなになるってどんなこと? 吉本ばなな

おとなになるってどんなこと? 吉本ばなな ちくまプリマ―新書

 思春期のこどもさんに向けた小説家である著者の熱いメッセージです。
 自殺防止、うつ脱出、負けるなという気持ちがこもっています。孤独を乗り越える。
 1時間程度で読み終えることができる文章量です。
 魅力ある文章を書かれる人です。

 この本で、一番強調されていることは、タイトルにおとなとありますが、「おとなになるのではなく、なりたい自分になる」 ことを目標にして生きなさいです。
 著者は、高校生の頃、小説家になりたかった。だから、小説家になった。されど、簡単になれたわけではない。
 そのあたりの話は、わたしにも、強いメッセージとして伝わってきました。
 
 著者のこどもの頃の家庭環境は恵まれていませんが、昔のテレビで放映されていたホームドラマに登場するようなしあわせ家族の家庭はそれほど多くありません。どこの家庭も何かが欠けています。

 自分のためではなく、ひとの幸せのために働こうと思う。それが、おとなの意識。そう思えない人は、いつまでも子ども。

 イラストの絵で、山の下に小さな山があって、うしろの山から両手が出て、まえの山を抱いています。親子でしょう。
 
 作家になるために常に勉強をする。

 けんかをしても仲直りできるのが親友(夫婦もそうです。)

 何年かに1回しか会わなくてもすぐに打ち解けられるのがきょうだい。

 著者がなぜ小説家になりたいと思ったかの動機は書かれていません。その理由は、想像するだけです。

 告白があります。母とは仲良しではなかった。母は、姉ばかりを可愛がった。
 親に「さよなら」 と言う。そのときが、おとなになれたとき。

 49日の霊魂話もgoodです。

 人に冷たくされた人は、人に冷たいことができる人間になる。(自説です。)

  いい本でした。  

Posted by 熊太郎 at 18:42Comments(0)TrackBack(0)読書感想文