2018年03月14日

父・横山やすし伝説 木村一八

父・横山やすし伝説 木村一八 宝島社

 暴れん坊の親子という印象です。
 こどもの頃の息子さんが、相方の息子さんと漫才をしていたのをテレビで見たことが思い出されます。とてもおもしろかった。かわいらしかった。そのときは、あんな終わり方をするとは予想もできませんでした。暴力事件を起こして、もう、消えた人と思っていましたが、本が出ました。今、48歳です。親子の顔はそっくりです。ただし、身長はずいぶん違います。お父さんは160cmぐらいで、体重は50kgはなく、やせていました。息子さんは180cmぐらいあります。
 名前の由来は、いちかばちかで、かずやさんとテレビで見た記憶があります。でも、親父さんはギャンブルはやらない人でした。イメージと実物がずいぶん違うのです。演じていた。最後に、演じきれなくなって、疲れ果てた。だれしも、職業人は、職場で、いい人を演じています。

 インタビューを文章にしてある本だと思います。

 冒頭、父親の教えとして、「嘘をついてはいけない」 が登場します。
 この世は、多かれ少ながれ、どんな社会でも、うそがあります。うその否定は、生きにくい。
 長い前書きでしたが、ちからがこもっていました。読み終えてみて、読んで良かった1冊でした。

 戸籍上、血縁上の家族関係は、ぐちゃぐちゃです。苦労されています。かわいそうで、読みながら涙ぐんでしまいました。
 ただ、特別ではありません。何度も転校したり、親が離婚を繰り返したり、隠し子がいたり、そういうことは、芸能人でなくてもあります。また、このあと出てきますが、組織内のごたごたも、一般社会で起こっていることと類似しています。
 家族関係の不安定は、子どもにも連鎖することがあります。どこかで、くいとめなければなりません。
 トイレ話と男の座りおしっこは、まま、あることです。こちらも珍しくはありません。
 昔はゆるい時代でした。男が小学生の息子を連れてバーに行くこともありました。暗くて、ぼんやりしていた雰囲気を覚えています。まだ、カラオケもありませんでした。
 何事も許容量が大きかったあの時代だから、天才たちも活躍できたということはあります。
 今となっては、なにもかもが思い出です。

 書き方(話し方)の特徴として、「あと回し」の癖があります。こういう話がありますが、あとで出しますというものです。それから、良く出てくる単語として、「リスペクト」 尊敬とか敬うとか、目標にする人とかの意味でしょう。

 読み終えてみて、父親は、天才でした。そして、弱い人だった。「横山やすし」を演じていた。庶民のスーパースターであり続けるために、たいへんな思いをされた。
 西川きよしさんのほうが、横山やすしさんに暴力を振るう。イメージとは逆だと、テレビで紹介されていました。

 お金があるのに借金まみれ。税金の話がありますが、テレビを見ていた記憶では、税金を払っていないと発言したら抗議が殺到して、翌週、事務所が代わりに払っていますと説明がありました。天引きです。そういうものです。

 中盤から、だんだん、低俗的な水準になりますが、味わいはあります。

言葉の意味調べです。「薫陶:くんとう。よい導き」、「ケレン味:はったり、ごまかし」

 マラソンに出られなかったからどうこうという部分があります。そういうふうに考えてはいけない。出られても流れが変わることはありません。

  「笑って近づいてくる人には気をつけろ、叱る人は、味方」は、そのとおりで共感しました。

 漫才の台本は8分間。あとは、ふたりの技量で延ばす。(ほう、そういうものかと感心しました。)

 学歴記述があります。コンビのふたりは義務教育卒です。昔、職人になる人、目指す人は、みな中卒でした。実社会でも、読み書き計算ができれば働けました。相方の「小さなことからコツコツと」は名言です。

 へこんでいる時は、ポイントがたまり続けているときと思えばいい。人生は終わってみれば、+-0(プラスマイナスゼロ)が基本です。

 劇場的な書き方が続きます。

 自分の思いがとおらないと、なぜ、すぐ手を出すのだろう。それから、体裁とか面目にこだわるのだろう。一般人とはその点で、意識がかけ離れています。いちいち怒って殴っていたら生活していけません。教育がありません。書中では、「いじめ」への対抗が理由とあります。
 世界が特定の区域のなかだけで狭い。
 人と会話で解決できないから手が出たというようなことが書いてあります。本を読みましょう。しゃべる努力をしましょう。

 写真を見ていて、「子どもは社会の宝」 だと思う。

 いい本でした。  

Posted by 熊太郎 at 19:24Comments(0)TrackBack(0)読書感想文

2018年03月12日

京都ぎらい 井上章一

京都ぎらい 井上章一 朝日新書

 かれこれ10年ぐらい前、40代の頃、しょっちゅう、古都、京都、奈良を訪れていた。
 仕事に追われていかなくなって久しい。
 そんなことを考えながら読み始めました。

 京都府に生まれて育った人の反骨の書です。(さからう)
 吉田兼好を最初思い浮かべましたが、徒然草とは、ちと違うと、読んでいる途中で思いました。
 冒頭付近にあった「屈辱の数々」 という文節がいい。

 名士の実名入りで、そういうことを書いてもいいのかなあと心配する部分もあります。言論の自由が尊重されるいい時代です。(それ以降もヒヤヒヤする部分はあります。)

 特徴として、漢字をわざとひらがな表記にしてあります。雰囲気づくりでしょう。「そだった」、「なやんだ」、「じたい」、「おちつき」、「わすれられない」、「ふえた」、「こまった」、「くりかえす」

 地図で、右にあるのが、左京区、左にあるのが右京区。南を向いての左右とする。

 京都における差別社会の実情です。排他的でもある。まあ、日本的でもある。

 「嵯峨」のことが田舎とさげすまれるとあります。意外でした。修学旅行で行きました。その後も何度か訪れました。嵯峨野、嵐山、天竜寺など。素敵なところということが一般的な評判だと思っています。先日読んだ寂聴さんの本を思い出しました。

 花街は、さびれてきている。
 おもしろいけれど、ぼんさんのことをこういうふうに書いていいのだろうか。(好色)
 最後は、「お金」 か。

 比較論です。洛中と洛外に始まって、嵯峨と伏見、宇治、京都と東京、大阪と広がっていきます。
差を相当、根(ね)に持っておられます。さらに、明治維新後、江戸時代以前と、時代も素材に上がってきます。

 無血明治維新革命に対する反論、「西陣」の名の由来(戦争の陣地が西)など、おもしろく興味深い。

 京都は、歴史の街、観光の街、寺院の街、自然の街、大学の街

 京都人らしい自尊心、作者は否定するけれど、やはり、京都人です。

 血統にこだわる。怨みを晴らしますの文化(怨霊対策のための寺院建設)、後醍醐天皇への慕情

 言葉調査です。「常套的:じょうとうてき。いつもの。お決まりの」、「黙約:もくやく。暗黙の約束」、「大伽藍:だいがらん。寺の大きな建物」、「行在所:天皇がいくときの仮の宮。あんざいしょ」、「瘴気:しょうき。山川の毒気。熱病のもと」、「手練:てだれ。腕利き」、「てらい:ひけらかす」、「僭称:せんしょう。身分を超えた称号を勝手に名乗る」、「敵愾心:てきがいしん。敵対心」、「大人の事情:はっきり言いにくい。諸般の事情。大人の都合」、「詭弁:きべん。いいくるめるためのごまかしの議論」、「イデオロギー:思想」、「残渣:ざんさ。ろ過したあとの残りかす」

良かった表現として、「だれかの犠牲のうえにあるみちたりたくらし」 同感です。  

Posted by 熊太郎 at 18:21Comments(0)TrackBack(0)読書感想文

2018年03月11日

棲月(せいげつ)今野敏

棲月(せいげつ:ねぐらにすむ。やすらかに暮らす) 隠蔽捜査7 今野敏(こんの・びん) 新潮社

 一行縦流しの文章が続きます。
 ページの見た目は、雨が降っているようです。
 前半は、主人公である大田区大森署長竜崎伸也の個性設定のために大量のページが割り当てられています。頑固、言い出したらきかない。しかし、犯罪に対して的確に反応している。判断しての言動がある。

 良かった表現、「どんな国も警察機構は腐敗している(日本は違うという裏返し)」

「サイバー犯罪:インターネット、コンピューター・システムがらみ」、「十全:万全」

管轄にこだわることへの疑問符があります。管轄にこだわることは当然です。出だしとして、?でした。

 内部犯行ではないだろうか。(鉄道内部、銀行内部)

 仕事をしてもしなくても、毎月決まった日に決まった額の給料をもらえる公務員(この小説の場合は警察職員)には、強い公益サービス意識がいる。

(つづく)

 人事異動の話に興味は湧かない。

 夜回り先生を思い出した。

 仕事を休ませることに心血を注ぐ主人公です。珍しい。それ以外にも、ワーキングマシーンとしては珍しい言動があります。庶民的です。組合的でもある。不思議です。ふつう、こういう人は上司になれない。
 管理職や幹部は理想を目指すという言葉には、小説だからという思いと、現実、そうだといいがという期待が混じります。

 若者たちとサイバーとどうつながっていくのか。

 「管理官」って何だろう。調べました。係長か。

 「半グレ」って何だろう。これも調べました。暴力団に入らない集団。

 「組対係:読めません。調べました。組織犯罪対策部。暴力団。読みは、くみたい」

 ルナティック:狂気的。月の人。月を調べる学者

 いいなあと感じた「進行してよろしいか」。話というものは繰り返しが多く、なかなか前へ進みません。「憶測に基づいた発言はできない。」もいい。

 「蓋然性:がいぜんせい。確からしさの度合い。確率」

 主人公の竜崎という人は、理想の上司なのか。その後を読むとどうも左遷されて警察署長になっている。

 警察は、人を疑う特殊な世界

 「リアリスト:現実主義者」

 呼出し音〇回で出る。のフレーズが作者のクセです。

 自宅に返らず、署で仮眠する職員の姿がいい。

 俺の城

 令状主義

 世間に認められたいという願望

 なりすまし。ハッカ―(コンピューターに侵入する人)

 「いじめられている少年は鑑が濃い:かんがこい。感情が不安定でいいのだろうか。不明。」

 殺された被害者の心理がミステリー。考える。考える。考える。50万円

 金儲けをしない。

 名前を騙る:かたる。読めませんでした。

 主人公の竜崎伸也所長の言動はロボットのようだ。

 「職場に過剰な思いは必要ない。」古い平社員にとっては、該当しない考え方です。

 たてつく主人公の様子は、昔引退に追い込まれた暴れん坊の横綱のようです。ときに、気持ちがいい。

 「いじめは徹底的に心を痛めつける。」

 将棋の持ち時間切れのような緊迫感の表現です。

 「判押し」

 うーむ。こういう書き方もあるのか。そして、ファンがいる。  

Posted by 熊太郎 at 12:21Comments(0)TrackBack(0)読書感想文

2018年03月09日

ロボット・イン・ザ・ガーデン デボラ・インストール

ロボット・イン・ザ・ガーデン デボラ・インストール作(女性・イギリス在住) 松原葉子訳 小学館文庫

 イギリスからアメリカへと展開する英語小説を日本語訳してあります。おもしろいらいしい。

 「庭にロボットがいる。」 というタイトル通り始まりました。突然庭にポンコツのロボットがいるのです。ロボットが家事手伝い人の役割を果たす未来生活です。
 ご主人がベン、奥さんがエイミー(裁判所が仕事場の弁護士)、ふたりには、こどもがいないので、そのロボットがこれから子供代わりになるのかもしれません。まだ39ページまで読んだところです。

「髪をシニヨンにまとめる:髪を丸くまとめる。丸がいっぱい。お団子型」

(つづく)

 100ペーあたりまで読みましたが、いまのところ、まだ、おもしろくありません。
 ベンとエイミー夫婦には離婚話があります。
 エイミーがロボットのタングを嫌うのですがその理由が定かではありません。アンドロイド(人造人間)と比較して、レベルが劣るという部分ぐらいしか理由としてありません。

 タングの心臓の隣にあるシリンダー部分が故障している。
 タングとご主人ベンは、それを修理するためにイギリスからアメリカに飛びます。レンタカーを借りて、そこからロードムービー形式になります。

 「ロボットの胸のフラップ:ふたのようになっている部分。パタパタと開閉するもの。」、「セーム皮:カモシカ、ヤギの皮」、「スエード製:ヤギほかの皮の内側をサンドペーパーで起毛させる。」、「エキセントリック:様子や行動が普通じゃない。」、「ダッジ・チャージャー:アメリカの車。マッスルカー。ごついでかい車」

 ロボットは、こどものような扱いだし、障害児とか病児にも見える。

 ロボットがセックスフレンド、しかも男性人間と男性ロボットのような誤解というような記述があり、理解しがたい。

(つづく)

 うーむ。173ページまできましたが、この本の良さがまだわかりません。

 古い型のロボットがいて、別れた妻が遠くにいる。
 新しい女性との出会いがあるけれど、発展性は不明。
 ロボットの素性調査が鍵を握っているようです。
 元夫である男ベンが、子ども嫌いなのか、子ども好きなのか、はっきりしない。

 カトウ・オーバジン(茄子なす)という日本人技術者の登場はびっくりです。
 
 ディーゼル・オイルが、なにか、秘密を明かしてくれそうだ。

(つづく)

 読み終えました。ふーむ。こういうつくりの小説もあるのか。
 途中、舞台が東京になったのは驚きました。(ただし、未来のTOKYOです。)また、パラオ諸島も、ロボットの修理目的とはわかるのですが、それが、なぜ暑い土地のパラオを舞台に設定したのかがわかりませんでした。思いつき、なりゆきだけにみえます。東京でのカトウとの出会いも同様です。

 内容的には、感動を呼ぶものではありませんでした。
 最後半部のこどもをめぐる三角関係の展開は理解できません。なんだかわからない展開です。
 和解と協調の手段が、「ゴルフ」というのも、理解できません。

 ロボットのセリフがもっと多いほうがいい。
 
 ロボットを人と思えるか思えないかが読み手の感想の違いになります。わたしは、思えません。ロボットはあくまで、機械です。わたしは、夢のないおとなです。

 途中、ロボットとアンドロイドの比較が、「人種差別」を表しているようにみえました。

 ただ、こういう形式でもいいんだというのは、世界が広がり、良かった。
 ロボットのかわいらしさが売りなのです。  

Posted by 熊太郎 at 18:54Comments(0)TrackBack(0)読書感想文

2018年03月07日

おもかげ 浅田次郎

おもかげ 浅田次郎 毎日新聞出版

 死にそうになっているのは、竹脇正一さんです。定年退職送別会の帰り、花束を手にして、地下鉄の中で倒れ、救急搬送されて、今は、病院の集中治療室で意識を失っています。

 もう、つくり話だなと、そんな下地の気持ちで読むものだから、流し読みになります。

 「会社員としての余命」、いい言葉です。

 「薬を嚥む:くすりをのむ。読めませんでした。」

 まだ、第一章47ページを読み終えたところです。

(つづく)

 フランス語で、「雪:ネージュ」。マダム・ネージュは何者なのか。(死神ではないとある。)

 「地下鉄」にこだわりをもつ作家さんです。

 第二章の内容は身近ではなかった。

 
(つづく)

 テレパシー(精神通信手段・方式)

 書中の65歳よりも、59歳、60歳が危ない。(突然死)
 長寿と言われても、大部分に属しない単体としての人間は、それほど進化していない。

 (親がいないから)親孝行も親の介護もしなくていい。
 
  榊原勝男は生まれ変わるのか(輪廻)

(つづく)

 今、目の前にいるのが、「家族」です。遠方にいる人は、昔の「家族」です。
 遠い、昔のことに、なぜ、こんなにこだわるのかが解せません。(げせません。)

 主人公の自分は立派だという思い上がりです。相手は、気にしていません。
 
 「審美:美しさを見極める。」
 
 「サードレール:鉄道関係者、鉄道に興味がある人にしかわからない。地下鉄には通常3本のレールがある。3本目のレールに電気が流れている。架線の役割を果たしている。」

 何度も出てくる言葉として、「区役所」

 湿っぽくてイヤです。
 設定はわかります。意味はわかりますが、加えて、味わいも伝わってきますが、あまりにも悲しすぎる。そして、とってつけたような終わり方です。
 地下鉄で生まれて地下鉄で死ぬ。  

Posted by 熊太郎 at 19:16Comments(0)TrackBack(0)読書感想文

2018年03月05日

「話のおもしろい人」の法則 野呂エイシロウ

「話のおもしろい人」の法則 野呂エイシロウ アスコム

 プロローグからスタートです。そこを読んで、自慢話だろうかという印象をもちました。著者は放送作家です。

 相手に合わせてカメレオンになる。(軽率な気がします。)

 相手を心地よくさせて、お金儲けをする。(詐欺と言う。)
 それが、金儲けのベースです。

 カメレオンになることはできません。おもしろい人と思われなくてもかまいません。
この本はベストセラーだから、そのコツを学ぶために読んでいます。

 秘けつは、実行するにはなかなかむずかしい。

 問答無用で断らない。(場合によっては断ります。けんかになってもかまいません。)

 読んでいて、ごますりの仕方の本にも思えます。

 アルコールの席にはもう出たくない年齢になりました。
 ふつうでいい。
 
 「正解はひとつじゃない。」は、Goodです。

 がりがりくんのプレゼントは、あとのごみ処理が気になります。

 著者のするサプライズは真似できません。無理です。

 事前調査は面倒くさい。なんらかの利益を得ることを目的とした事前調査です。自然ではない。
 章後のふりかえりは、くどい。

 テレビ番組の画一化(それ以外は認めない。)

 マニュアル(手引き)本です。実用書という位置づけです。

 神経質すぎてノイローゼ(精神症状、バランス崩壊)になりそう。
 
 「優しさを追求する。」、「知らぬふり」はGoodです。

 手のうち(心)をこんなにさらしていいのか。

 仕事用の顔をつくる。(ふだんは、素のままでいたい。)

 人の失敗はおもしろいもの。

 自然でありたい。  

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