2018年01月13日

夫の後始末 曽野綾子

夫の後始末 曽野綾子 講談社

 老化のお話です。

 夫は、三浦朱門氏、昨年2月3日、91歳で亡くなっています。

 著者の奥さんは、85歳です。お元気です。文章はめりはりきいて、きびきびと、頭はっきり、気持ちしっかりされています。

 自宅で看取る(死を迎える)お話です。

 50年前にバリアフリーな間取りの家を建てられたことはすばらしい。

 認知症だったとあります。まだ、30ページ付近なので、このあと、感想を継ぎ足します。

(つづく)

 介護される人間にとっては、寝かされているスペースが全世界である。自分自身の入院経験を振り返るとそのとおりだとうなずきました。
 読書好きで、2mのLEDの灯りを用意した。読書好きも自分と似通っています。

 著者の介護に関する豊富なアイデアが次々と出てきます。良書です。
 耳がきこえなくなるとボケが早く来る。
 寝床のそばに、ソファーが役立つ。
 
 驚いたこととして、著者は子どもの頃、家庭内暴力を体験していた。
 アフリカの救急車は、高額か、そもそもない。だから老人はいない。

 自己満足のための一方的な奉仕活動は迷惑というのはうなずけます。

 結果的に万引きと思われてしまう行為をする認知症高齢者のために親族が店にお金を預けておく。ああ、そういうことってあるのだ。

 いろいろな実話、実例、アイデア満載の良書でした。

良かった表現です。「人生は、善悪明暗が混然としている」、「老人は先がない」、「老後はケチな経済観念で暮らさなければならないという趣旨」、「作家の資質:運・鈍・根」、「変化のない人生はない」、「体力と釣り合った暮らしをする」、「会話大事(押し黙らない)」、「自分でできることは自分でやらせる」、「世の中は万事思い通りにならない」、「万事が道徳的、人道的になって、つまらなくなった」、「救急車で運ばれて9日間であの世の人となった(91歳という年齢を考えると延命治療は考える)。末期医療の看護を受けた。」、「立春(告別式が)」

調べた言葉です。「変性:性質が変わる」、「悔悟かいご:自分のしたかったことを悪かったと悟り反省する」、「中間宿主:寄生虫の複数の宿主のうち、途中経過で宿主にするもの」、「ER:救急室」、「喧伝けんでん:盛んに言いふらして宣伝する」、「人為的死:安楽死」  

Posted by 熊太郎 at 11:27Comments(0)TrackBack(0)読書感想文

2018年01月11日

芸能界蛭子目線 蛭子能収

芸能界蛭子目線 蛭子能収(えびす・よしかず) 竹書房

2015年4月発行のマンガ含みの本です。
今読むとしみじみします。複雑な気持ちにもなります。
路線バスの旅は終わりました。
この本では、太川さんの奥さんも登場します。

マンガの絵はうまくない。(ヘタとは言いにくい)
その点で、漫画家志望の人には希望を与えてくれる絵です。

記事は、今となっては過ぎたことです。
(現在がどんどん過去になっていきます。)

筆者の写真は、どこにでもいるくたびれたおじさんの姿です。
その点で、平均的な日本人です。
罪のない善人の顔立ちです。
芸能界に染まらない中途半端な位置にいる人です。(後半の孤独感は、冷たく、でも事実として、よく伝わってきました。)

バス旅で歩いて体重10kg減の話が良かった。
太川さんとの行動比較話も良かった。
仕事の内容がだんだん低次元のものになっていく。下り坂を落ちている感じというのが良かった。
セリフ「わたしは無力である」が良かった。
経済的な余裕がないと卑屈になるお話しも良かった。

印象に残ったのは「NHKは王様」

ひな壇の芸人は楽屋では疲れ切っている。
芸能人は、チヤホヤされるか、けなされるかのどちらかひとつとあります。どちらも生きにくい。

夜の付き合いは、キツク、オソロシイ。朝帰りばかりです。
有名になってお金持ちになるって何なのだろう。失うものも大きい。

芸能界の裏話がおもしろかったり、悲しかったりします。

そうか、そうだなと、思わせてくれる1冊でした。  

Posted by 熊太郎 at 18:25Comments(0)TrackBack(0)読書感想文

2018年01月10日

(再読))ふなふな船橋 吉本ばなな

(再読))ふなふな船橋 吉本ばなな 朝日新聞出版

 つらい出だしです。父母離婚、父失踪、母再婚、自分は、母親の妹(叔母)とふたり暮らしをこれからする。主人公女子花さん15歳、選択肢のない年齢です。
 ふなっしーのぬいぐるみを母と思って抱いてくれは、なんと、ひどい母親です(母の分身として)。そんな母も病死します。なんにせよ、母との別れは淋しい。

 柔らかく読みやすい文章です。ここを目指したい。
 とかく、文芸小説は、読めない漢字や意味がわからない珍しい漢字が多用されています。だから売れない。

 本好きの人の話がたくさん出てきます。みなさん本を読んで、いまある自分の境遇の困難に耐えている。

(つづく)

 実母の妹と実父ができていたり、心中事故物件の分譲マンションで父親に殺された女児の霊が夢に出てきたりして、不気味ですが、生きることには前向きな主人公です。
 
 繊細です。生きていくのに苦しい。

 船橋市を讃える小説でもあります。

 そして、若い。

 漢字のひらがな表記(たとえば、けんめい)がやわらかで味わいがあっていい。

 生きていることの追求が「小説」の目的と思わせてくれる良作でした。

調べた言葉として、「チャネリング:自己睡眠に入り霊界と交信して情報を現実世界に流す」、「冥界:死後の世界」

良かった表現として、「館山の静かな海」、「(男が)性欲が強くて、ついていけなかった」、「本に支えられて大きくなった」、「もう人生にはなにも残っていない」、「だれのことも裁かない人」、「失ったものを別のもので埋めようとしない」、「もう男性はいらない」、「彼の支配下で生きてしまった」、「好かれたいから合わせていた」、「条件付きが嫌だった」、「ぺちゃんこになっていたわたしの心」、「自分を罰する」



2015年12月14日記事
ふなふな船橋 吉本ばなな 朝日新聞出版

 明るい内容ではありません。
 168ページまで読みました。
 実父は借金をつくって失踪、15歳の立石花は、実母と千葉県船橋市の駅前で立っています。雨が降っています。実母はこれから再婚します。花は継父と彼の連れ子(花からみて義理の妹)とは暮らしません。実母の妹奈美さんと彼女のマンションで二人暮らしを続けます。その後、実母は病死しています。
 立石花28歳、恋人との別れ話から始まります。

 船橋という街を讃える。その街にいる人が好きだから、ふなっしー(妖精として)が好きだから、そういう思いが込められた作品です。
 作家さんの文章です。わずか数ページで、長い歴史を深く表現してある文章です。読んでいると、「こども」がかわいそうになってきます。こどもは非力です。かよわい。
 花は、継父・義理妹、実母と自分の4人で暮らしたくないと言ったけれど、本当は、強引に暮らそうと言ってほしかった気持ちが伝わってきます。ほとんど天涯孤独みたいな身分です。
 孤独だから、本読みが好きになります。だから書店で働くようになりました。ひきこもりの親友幸子さん32歳がいます。千葉県佐倉市川村記念美術館で知り合いました。
 落ち着いた安心感のある文章が続きます。立石花を囲む状況はさらに悪化するのですが、幻想的です。気に入った表現として、「私はしばらくそおっと暮らした」。太宰治に対する愛着が見受けられます。太宰も昔船橋にいたらしい。ふなっしーは、先日読んだ本にいたコロボックル(アイヌ語の妖精。こびと)と合い通じます。

(つづく)

 ときおり登場するのが、「ロスコの絵」です。川村記念美術館にある壁画だそうです。深い色が特色とあります。小説にある人の経歴の深さと重ねてあります。
 異父・異母きょうだいの物語です。暮らしていると表面には出てこないのですが、そういう境遇の人って多いのでしょう。ふつうの家族関係で育つ人ばかりではありません。
 小説の登場人物たちは、それに悩みながらもそれを受け入れてひっそりと生活しています。女子にとっては、いざ結婚というようなときに、壁とまではいかなくても相手方親族がすんなり受け入れてくれるか不安になるでしょう。
 そんなところを恋愛にからめて、立石花28歳女性に決断を求めていきます。

 母は、恋愛のために子を捨てることがあります。
 花は、結婚のために、船橋を離れることはしませんでした。見事でした。   

Posted by 熊太郎 at 18:55Comments(0)TrackBack(0)読書感想文

2018年01月09日

お金をかけない「老後の楽しみ方」 保坂隆

お金をかけない「老後の楽しみ方」 保坂隆 PHP文庫

 コンビニの書架で手にしました。
 魅力的なタイトルです。571円と安価です。2013年1刷、17年39刷、よく売れています。
 長引く出版不況の中、文芸書は売れていませんが、実用書は売れていると思うのです。

 実用書は、必要な部分だけを拾い読みします。
 冒頭付近第一章の外国のお話は身近ではありませんので、割愛(かつあい。思い切って省略)するように飛ばし読みをしました。

 良かった点です。
 定年後こそ健康診断にお金を使う:体第一です。お金を惜しまない。
 おごらない。おごられない。:友情を長持ちさせる手法です。
 家族・親族への一番の贈り物:一緒に過ごす時間
 
 お金よりも命、お金よりも時間です。

 借金がないこと。
酒もたばこもやらない。車も手放す。これだけで、かなりのお金が残ります。
 毎月生活保護基準額以下で暮らしている人はいくらでもいます。
 身の丈に合った暮らしをしていく。
 粗衣粗食。原則として、外食はしない。
 ただし、数点豪華主義。めりはりをつけて支出する。
 
 シルバーパスを使うよりも、健康のために歩く。

 書中にもあるとおり、マスコミの「老後何千万円必要」記事に不安を抱かない。そんなに用意できないし、そんなに必要でもない。

 著者の定年前退職、アルバイト体験は意外でした。自由な「時間」が欲しかった。同感です。読んで良かった1冊です。親族や親しき友と過ごす時間が大事です。何か目的をもって過ごすのではなく、ただ、一緒にいて、歩いたり、ながめたり、飲んだり、食べたりするだけでいい。思い出づくりです。
 束縛されない何もしなくていい時間がたっぷりあることが最高の贅沢です。(ひきこもりが頭に浮かびましたが、それとは違う。これまでにさんざん働いてきたのです。)

 いつものように、内容に賛同する部分もあるし、そうでない部分もあります。自分のスタイルに取り込んでいける部分を取り込んでいきます。  

Posted by 熊太郎 at 18:40Comments(1)TrackBack(0)読書感想文

2018年01月08日

笑うお葬式 野沢直子

笑うお葬式 野沢直子 文藝春秋

 別の本を買ったときにその本にはさまれていたチラシをみて、おもしろそうな内容だなということで、書店で手に取りました。

 まだ、読み始めてまもなくの感想ですが、ろくでもないオヤジさんです。80歳過ぎで亡くなっていますが、ご家族のご苦労、お察しします。こんな家にはいられません。自立心が育ちます。ただ、人間界、デメリットがあれば、メリットもあります。プラスマイナス0(ゼロ)が、世の習わし(習慣、慣例)です。このオヤジさんだったからこそ、いまの作者の地位があるのです。
 オヤジさんは、自己顕示欲が強くて、自制心が弱い、爆発、自己破滅型です。あと経済感覚はなく、金銭管理ができない人でした。

 いろんな親がいますが、作者宅は普通ではありません。
 オヤジさんは、晩年はアル中です。生活不安定。
 浮気性。すごい出だしです。「壮絶」という言葉がぴったりです。「破天荒」でもあります。書中にありますが、同居する家族は、正しくなくても受け入れるしかない。そういう時期がありました。
 オヤジさんの生い立ちを調べるといい。どうやったら、このような人格ができあがるのか。自分は何をやっても周囲は許してくれると甘えている。
 そんな部分を読んでいたら、自分はまだましだと、救われる思いがしました。

 文章が切れ目なく続くので読みづらいです。著者は、学校の成績は悪かったとありますが、本を出して売れるぐらいですから、学力は高い方でしょう。
 とくに後半は文章に力が入りすぎで、読み手は疲れます。

(つづく)

 芸能人は家庭に恵まれていない人が多い。だから芸能人になる。

 脳梗塞で倒れて、その後亡くなったお母さん。
健康第一です。「売れる」よりも「生きる」を優先して選択したい。

 バスをタイムマシンにたとえる記述があります。飛行機や、電車も同様にタイムマシンになれるときがあります。

 お金について考えさせられました。住宅が狭くても幸せ。広くても幸せ。気持ちの持ち方次第。そんな生き方について書いてあり、人生哲学っぽい。そのとおりですが、最低限のお金はあったほうがいい。作者はお金があったから、こんな素行の悪い親の世話ができた。
 借金取りは悪党みたいな部分は共感しかねます。お金を貸した人間、返してもらえない苦労があります。催促するのは当然です。催促するための時間や手間やめんどうさのことを借りた人間は考えてくれません。公共料金の滞納も感心しません。払うべきものを払わない。払えるのに払わない。最低です。

 亡くなったから書ける部分もあります。基本的には、子どもから見て、世話することに耐えられな父親です。離れて住んでいたから書ける部分もあります。

 読んでいて、NHKのルーツを探す番組みたいになってきました。作者も思い出の中で生きる年齢に達しました。

 自分のせいで、父が酒浸りになったと、自分を責めることはやめたほうがいい。81歳、十分長寿です。

 ひまわりのような母親の要因を知りたい。生い立ちに理由があるのでしょう。

 著者の長女についていえば、オヤジさん譲りの遺伝子を受け継いだのでしょう。

 良かった部分です。「手に職」、「(タイに)来て良かった」、「娘さんの戦闘シーン」、「子育ての苦労はやったことのある人しかわからない」、「大学という学歴にこだわらない趣旨」

 父親を描きつつ、自分自身を浮き彫りにしていく書き方、作品としてできあがっています。

 調べたことです。「ターコイズブルー:緑がかった明るい青色」、「ポンデリング:ミスドのドーナッツ」、「ローラーコースター:ジェットコースターとは違うのだろうか。調べました。アメリカではローラーコースターというそうです」、「バイタリティー:活力、活気、生命力」  

Posted by 熊太郎 at 07:55Comments(0)TrackBack(0)読書感想文

2018年01月07日

2018年新年の展望(東山スカイタワーから)

2018年新年の展望(東山スカイタワーから)





去年は、鳥インフルエンザのための動物園閉園で災難でしたが、今年は快晴で順調なスタートを切りました。名古屋駅方向です。バックに雪をかぶった山並みが見えて、ビューティフルでした。  

Posted by 熊太郎 at 08:56Comments(0)TrackBack(0)名古屋市