スピンクの壺 町田康

スピンクの壺 町田康(まちだ・こう) 講談社文庫

 飼い犬と夫婦しか出てきません。
 スピンクは犬の名前です。
 吾輩は猫であるの犬版です。

 ファンが多いのでしょう。
 だから、この本が出て売れる。
 それから、動物好きに支持される。

 犬視線の日常雑記です。
 自分の言葉で書いてあります。
 
 犬は(動物は)車の被害に(交通事故)に気をつけなければならない。

 自宅の通路みたいな庭(犬が遊ぶ)が話題です。そこに洗濯機がからんでくる。

 捨て犬、捨て猫を拾って飼育する趣向があられる。
 かれらの食事代を本の印税で稼ぎ出す。そこに「経済」があります。

 ところどころ、見たことのない単語、熟語が現れますが、今回は調べることはやめておきます。ひとつだけ調べてみます。「洗濁術:作者の造語かも。本では、洗濁機、洗濯機のことです。」、それから、「イラチ:あわてもの。」これは、説明が本にあります。

気に入ったフレーズとして、「雨が降ってきました。」、「インターネットなら、人と対面せずに買い物ができる」  

電車道 磯崎健一郎

電車道 磯崎健一郎 新潮文庫

 ページ全部に文字が落ちています。文字の芝生の上を歩くように読んでいます。
 鉄道会社をつくった人たちの話らしい。神奈川県あたりの話らしい。
 文章には勢いがあります。

 薬局の店主(今はまだ名が知れない)が家出した。人生の浪費の日々はもうけっこうらしい。

 少年が京都にいる。

(つづく)

 読み終えました。
 巻末の解説には、ほら話とあります。
 内容はよくわかりません。これを読んで理解できる人が日本に何人いるのか、少ないとは思いますが、だけどおもしろい。発想の連鎖です。
 給料の話にこだわりあり。
 第二次世界大戦中の日本の地方の様子はリアルです。現実味の乏しい舞台劇めいた日々という表現がいい。

 心地よいリズムです。
 
 モデルがいて、話をつくってあって、リズミカルに文脈が流れていく。音楽を聴いて楽しむような本で、内容はよくわからない。自分にとってのこの本の位置づけです。

調べた単語です。「お内儀:おないぎ。他人の妻」、「判官びいき:源義経に対する同情」

良かった表現です。「人生の浪費」、それから解説で、「あらすじにすると脈絡がない」  

(再読)おらおらでひとりいぐも

(再読)おらおらでひとりいぐも 若竹千佐子 文藝2017冬号

 芥川賞作品です。一度読みましたが、よくわかりませんでした。ということで、再読です。今度は単行本ではなく、雑誌で読んでみます。

 雑誌掲載の文章のほうが読みやすかった。文字が目に優しい。一度読んで、筋書を既読ということもある。

 東北弁を標準語に翻訳しながら読む読書です。昔は、方言表記を避けたものですが、時代が変わりました。頭脳内翻訳はけっこう疲れますが、2回目なので、方言がとろけた感じがします。
 東北弁をからめて、「わたし」と「おら」の対立があります。おらは、おらであって、わたしではないのです。
 スタイルは、一人暮らし高齢者女性のつぶやきです。
 テレビ番組で受賞を知らせる内容をいくつか見ましたが、作者の人となりを取り上げるだけで、作品内容まで言及したものはありませんでした。まだ、読んでない、いや、読む気はないのかもしれない。

 娘との疎遠があります。息子もいるのですが、どうも子育てに失敗しています。
 からめて、実母との対立があります。対して、祖母との密着があります。
 自分の生き方を貫けば、娘からも息子からも見放されて孤独になる。母親に苦労をかけたばちがあたった。

 主人公の名前は、日高桃子さん。理解者だった夫の周造さんは病死されている。

 八角山の麓には、桃子さんがたくさんいて、霊魂となって、死の時を待っている。そこに、宮澤賢治作品がからんでくる。

 こどもよりも自分が大事だった。
 若いころには考えられなかった感情が老いた今ある。

 娘から孫娘への伝承と祖母、母、自分への継承がある。

 命(生きていること)の賛歌でした。


2018年1月5日記事
おらおらでひとりいぐも 若竹千佐子 河出書房新社

 タイトルの意味は、「おらは、おらで、ひとりで、生きていく!」という意思表示ととらえて、読み始めました。(読みながら、やがて、おらは、おらで、ひとりで逝くけれどもという、反対の意味に考えが変わりました。その後、どうも、ひとりで行くが妥当らしいとなりました。)
 東北弁がきつい。全部この調子だったら、理解に苦労する。(そんなことはありませんでした。されど、わかりにくい。)
 どうも、おらは、二人いるようです。自問自答です。

 一人暮らし高齢者おばあさんのお話です。
 一人称のようで、一人称ではない。「桃子さん(主人公のおばあさん)は…」
 
 休憩場所のない長文が続きます。読むのに少ししんどい。
 8ページのジャズセッションの表現はリズミカルで良かった。おもしろい。
 詩が挿入されているのですが、うーむ。詩の挿入をすると小説の構築が崩れる気がして、わたしはお勧めしません。
 
 桃子さんを支える人として、「ばっちゃ(亡くなった祖母)」
 娘直美さんとの関係にこだわりあり。(こだわらないほうが、幸福になれると読み手は思う。)
 
 44ページあたりからおもしろくなってきました。(されど、具体的な伸びはなかった。)
 なかなか理解することがむずかしい作品です。

 孤独と付き合う内容です。
 東京オリンピック(昭和30年代開催)がからめてあるのは、2年後のオリンピックを意識してあるのかも。

 今は一人暮らしとなった75歳日高桃子さんの過去の生活内容は苦しい。
 猛烈な孤独感が満載された作品です。
 夫が病死、ふたりのこどもは家を出てしまった。
 自分は何をしてきたのだろう。

 ところどころ難しいのか、感覚の違いなのか、意味がわからない部分があります。笑いでいっぱいという作品ではありません。
 ひとりぼっちの淋しさを笑ってごまかす。心の声は、桃子本人の声以外にも亡夫の声であったり、祖母の声であったりもする。

調べた文字です。「弄う:いらう。いじる。さわる。」、「身罷う:みまかう。死ぬ」、「深く肯んずる:がえんずる。承諾する。聞き入れる。」、「独りごつ:ひとりごとを言う」、「太母たいぼ:祖母。書中ではこどもを大切に育てた母親」、「贖罪しょくざい:キリスト教。罪への償い」、「仮託かたく:他の物事を借りて言い表す」、「燭光しょっこう:火の灯り」、「屹立きつりつ:高くそびえ立つ」、「睥睨へいげい:にらみつける」、なんだか、漢字検定みたいになってきました。「恣意的しいてき:論理的でなくその場しのぎで、きままに扱う」、「けんじゅう:宮澤賢治作品の登場人物」、「朋輩ほうばい:同僚」、「歓心:よろこび」、「十全:十分に整っている」、「何如なんじょ:どうであるか」

良かった表現などです。「吐き出ほきだす」、「長年の主婦という暮らし」、「桃子さんの心情を地球の地層で表す。地学のようです。」、「この人には、この人の時間が流れている」、「(心の動きを)柔毛突起」、「早く起きても何もすることがない」、「目的がある一日はいい」、「町も老いる」、「人の期待を生きる(ことが苦行)」、「全体でもあり部分でもある」、「食べらさる(さあ、食べるぞ!)」、「まぶる(見守る)」、「自分の心を友とする」

ちょっとわたしには、むずかしすぎました。  

マウス 村田紗耶香

マウス 村田紗耶香 講談社文庫

 おもしろい。
 半分ぐらい、121ページ付近まできました。
 小学校5年生少女たちの物語です。
 いじめられっこ塚本瀬里奈がいます。もうひとり、おとなしい女の子がいます。田中律です。彼女がものがたりの進行役です。
 いじめられっ子の塚本瀬里奈が、「くるみ割り人形」の登場人物マーサに感化されて強くなっていきます。

マウスは、パソコンのマウスを想像しましたが、ネズミのほうのマウスでした。そして、マウスは田中律です。臆病者を指します。

田中律の回想です。いまは、おとなに成長していると思う。

読んでいると不思議な世界が見えてきます。

「復讐」。小説の下地の基本

「くるみ割り人形:くるみ割り人形とネズミの王様の戦い」

今後、瀬里奈との一騎打ちになるのだろうか。

(つづく)

 131ページから大学生編になりました。やはり、最初の固まりは、小学生の時の回想でした。
 
 自分らしく生きる。最後は、さわやかな読後感が残りました。

調べた単語として、「軋む:きしむ。よめませんでした。」  

書きあぐねている人のための小説入門 保坂和志

書きあぐねている人のための小説入門 保坂和志 中公文庫

 まだ、40ページ程度しか読んでいませんが、良書です。これから、小説家を目指す人が読む本です。

 特異であること。最初はそう受け取りました。個性。小説のスタート地点にあるものです。小説家は凡人とは違うこと。

 いろいろ、創作の参考になりそうです。

 けっこういいかげんです。著者は、勤務時間中に創作活動をしていました。

 小説とは、小説とは何かを問い続けながら書き続けること。答えはない。マニュアルはない。テクニックはいらない。
 新人賞は、千本を超える応募作品のうち、2・3本しか読めるものはない。新人とは、新しいものをもった人。

 著者は、文学賞新人賞の審査員です。読んでいて、小説を書くために真摯に突き詰めて物事を考えている人という印象です。

(つづく)

 ジャズのことはわかりません。拾い読みをしながら前へ進む読書です。
 古典文学の話も、自分には下地がなく、むずかしい。
 
 テーマに重きをおかない。ルールを設定する。

 小説を生き物ととらえて創作していくことかなと思いました。

 小説は1本ずつ書く。(複数同時進行でもいいような気がします。)

 現代人には、「出会いと別れ」がない。理由は、スマホがあるからという説には納得させられました。

 主人公は、ポジティブな人間にする。この本は、しばらく、間(あいだ)をおいて再読してもいい。

 実際の会話は、身振り手振りが入るから、文章で表すのはむずかしい。なるほど。

 名文である必要はないという言葉には励まされます。生身でごつごつした感じでも良さそうです。

 ストーリーは出尽くしているというのは、音楽界のメロディーは出尽くしていると共通します。物語のパターンは、旧約聖書の中にあり、そこにあるものがすべてに近いという趣旨に感心しましたが、あいにく旧約聖書を読んだことがありませんでした。

 遠回りが小説の道。

 なかなかいい本です。

(つづく)

 回想シーンに関して記述が長い。回想をどう考えるか。同調できない部分もある。

 15年前の本で、インタビューを書籍化してあるそうです。
 純文学の人という印象をもちました。

調べた単語です。「矮小化:わいしょうか。小さくすること」、「ドラスティック:徹底的で激烈」、「予定調和:読者の予定通りの進行をとる」、「カタルシス:気持ちが浄化される」、「自家撞着:じかどうちゃく。自己矛盾」

(以上を書いた数時間後)
 この本に書いてあるとおりに創作すると、世界が狭くなる。本にも書いてあるとおり、この本のとおりに書くものではないというところを押さえて読まねばなりません。  

やばい老人になろう さだまさし

やばい老人になろう さだまさし PHP研究所

 もう今は亡き人たちのお話でした。
 さださんのルーツ(祖父母)から始まって、さださんがお世話になったお年寄りたちの話です。
 一般人からみたら、ヘンな人たちです。でも、さださんをつくってくれた人たちです。

 やばいの定義として、
 1 知識豊富
 2 痛みを共有してくれる
 3 ひとつスゴイものをもっている
 とあります。そういう、人たちです。並みの人たちではありません。

 無難にすまそうとするのは「愛」じゃない。むしろ、「薄情」

 作者が人々から叩かれまくったというような記述があるのですが、そうかなと首をかしげた。あまり知らないから、そうなのだろう。そういうときに彼を支えてくれた年寄りたちです。ちょっと、老人をもちあげる本でもあります。

 九州地方に住んでいたことがあるので、知っている地名が出てくると親しみがわきます。

 ロシアでの祖母のお話はかなりおもしろい。

 さださんが、ドラマチックな歌「精霊流し」で、父親の借金を返済した話は良かった。

 九州人のはちゃめちゃさが、わたしは、怖い。破滅型です。作者はそれを「ロッカー」と呼ぶ。

 曲作りの様子は、臨場感(その場にいるような感じ)があって、この本はいい本です。
 作者は天才です。

 三世代同居を推奨する内容でした。書かれていることを実行することは、むつかしい。

 良かった文節です。「49歳で、ようやく小説を書くようになった」、「外国のこどもは、国の未来を心配するが、日本のこどもは、自分ファースト」、「この国は、教育を見失った」

 調べた言葉です。「洗い張り:和服の洗濯。ばらしてきれいにする」、「ロシアの匪賊:盗賊」、「歌のポピュラリティ:大衆性、人気、広く知られていること」、「挽歌:いなくなった人を歌う」、「気障り:相手の言動を不快に感じること」、「アンチテーゼ:反対理論」