2022年07月19日

三体(さんたい) 劉慈欣 早川書房

三体(さんたい) 劉慈欣(りゅう・じきん リウ・ツーシン CIXIN LIU) The Three-Bady Problem 大森望、光吉さくら(みつよし・さくら)、ワン・チャイ[訳] 立原透耶(たちはら・とうや)[監修] 早川書房

 テレビ番組『アメトーク』の『読書芸人』でタレントさんが、おもしろい本ですと紹介されていました。
 カバーを見ると、戦艦の正面の絵ですから戦争ものでしょう。
 番組で紹介された時はまだヨーロッパで戦争が勃発していませんでした。
 数か月を経た戦争状態にある現在このカバー絵を見ると複雑な気持ちになります。

 「三体」というのは、みっつの組織がお互いに対立して、三国志みたいな戦いになるイメージがあるのですが、違うかもしれません。読む前の自分の予想です。
 もしかしたら、人間同士の戦いではなくて、宇宙人もからむのかもしれません。

 かなり時間を要する読書になりそうです。
 口の中で、錠剤をゆっくり溶かすように読みます。
 全体で、433ページあります。
 三部作だそうで、この本のほかにも二冊あります。

 本の中にある登場人物一覧表とは別紙で「三体登場人物表」が添付されています。
 メモ紙にメモをしながらの読書になりそうです。
 人物一覧表の職名などをながめました。理論物理学者、大学教授、天体物理学者、紅衛兵(こうえいへいと読むのだろうか。軍人でしょう)、紅岸基地(こうがんきちと読むのだろうか)、政治委員、最高技術責任者、宇宙論研究者、ナノマテリアル開発者(ナノとは、ごく小さいもののことだろうか。調べたら100nm以下の素材とありました。ナノメートル=よくわかりませんが、まあ目には見えないのでしょう)、警察官、作戦指令センターの陸軍少将(中将の下、大佐の上)、生物学者、数学の天才で引きこもり、天文学者、多国籍石油企業CEO(最高経営責任者)、アメリカ海兵隊特殊作戦専門家。
 察するに、この小説はSF(サイエンスフィクション。空想科学宇宙物語で、大作戦とか、大戦争のようですな。以前孫といっしょに観た「ドラえもんの宇宙小戦争」を思い出しました。

 『狂乱の時代』から始まりました。1967年の中国が舞台です。日本だと、昭和42年です。
 中国の文化大革命が、1966年(昭和41年)から1976年(昭和51年)で、中味は、中国共産党内部の政治権力闘争でした。そのからみだろうか。

 紅色連合が、四・二八兵団総本部(紅衛兵、学生中心の兵士)を攻撃しています。
 四・二八兵団の美しい15歳の少女が銃弾の雨に撃たれて遺体となります。
 
 葉哲泰(よう・てつたい/イエ・ジョータイ):理論物理学者、大学教授。42ページまで読んだところでは、文化大革命のさなかに糾弾されて殺されてしまいました。

 葉文潔(よう・ぶんけつ/イエ・ウェンジェ):1943年6月生まれ。天体物理学者、葉哲泰の長女。拘置所に入れられる。(読後のこととして、実際は、紅岸基地というところに入れられて天体の研究要員として拘束されていたという意味合いでした。その後、天体物理学の教授をしていたが、2004年に退職した。殺人を犯した過去あり。1979年10月21日に2名を殺害した。政治委員の雷志成と紅岸基地の技術者で葉文潔の夫であった楊衛寧を事故死のようにみせかけるようにして殺害した。葉文潔は、当時夫である楊衛寧の子どもを妊娠中だった)

 楊衛寧(よう・えいねい/ヤン・ウェイニン):葉哲泰の教え子。紅岸基地の最高技術責任者。
 雷志成(らい・しせい/レイ・ジーチョン):紅岸基地の政治委員。

 白沐霖(バイ・ムーリン):四・二八兵団の機関紙「大生産報」の記者。細い体、メガネをかけている。

 程麗華(チョン・リーファ):年配の女性幹部。中級裁判所群管会の軍代表。40代。
 共産主義とか社会主義とか政治の話で対立抗争があります。

 汪淼(おう・びょう/ワン・ミャオ):ナノマテリアル開発者。ナノテクノロジー研究センター勤務でチーフ・リーダーを務めている。愛知万博の時に見学した民間の展示に小さなものを扱い活用する仕組みの説明があったことを思い出しました。(この本のなかでは、68ページに「三菱電機」という会社名が出てきます)

 豆豆(ドウちゃん):汪淼(おう・びょう/ワン・ミャオ)の長男。6歳。

 李瑶(リー・ヤオ):汪淼(おう・びょう/ワン・ミャオ)の妻

 常偉思(チャン・ウェイスー):作戦指令センターの陸軍少将

 史強(シー・チアン):警官。隊長。図体がでかくいかつい顔つき。作戦指令センター所属。通称が大史(ダーシー)乱暴な感じがする男だが、人間的な魅力がある。

 楊冬(ヤン・ドン):女性。宇宙論研究者。葉文潔と楊衛寧の娘。(どうも、楊冬は自殺しているらしい。母親は高齢になっているという以降の設定です)

 丁儀(ディン・イー):博士。理論物理学者。楊冬(ヤン・ドン)の恋人

 銭鍾書(チェン・チョンシュー):現代中国作家・文学研究者。1910年-1998年。一度もメディアに出なかった。

 申玉菲(しん・ぎょくひ/シェン・ユーフェイ):物理学者。中国系日本人。科学フロンティアの会員。通勤路線の沿線にある高級別荘地に住んでいる。電報のように簡潔な話し方をする。冷たい印象あり。

 魏成(ぎ・せい/ウェイ・チョン):申玉菲(しん・ぎょくひ/シェン・ユーフェイ)の夫。引きこもり。数学の天才。40歳くらい。

 潘寒(はん・かん/パン・ハン):申玉菲(しん・ぎょくひ/シェン・ユーフェイ)と魏成(ぎ・せい/ウェイ・チョン)の友人で、生物学者。中国で初めての実験コミュニティを建設した。『中華田園』がその名称。生活必需品は都会のごみから調達するコミュニティ。

 沙瑞山(しゃ・ずいさん/シャー・ルイシャン):葉文潔(よう・ぶんけつ/イエ・ウェンジェ)の教え子。天文学者。

 マイク・エヴァンズ:多国籍石油企業CEOの御曹司(CEO:最高経営責任者 御曹司(おんぞうし):名門の子弟)

 スタントン大佐:アメリカ合衆国海兵隊。特殊作戦の専門家

 同仁医院に勤務している有名眼科医:李瑶(リー・ヤオ):汪淼(おう・びょう/ワン・ミャオ)の妻の同級生。

 張チーフ・エンジニア(ジャンチーフ・エンジニア):ナノテクノロジー研究センター勤務

 除冰冰(じょ・ひょうひょう/シュー・ビンビン):コンピューター専門家の女性警官。情報保安課所属。史強(シー・チアン)とつながりあり。

 林雲(リン・ユン):球電研究とマクロ原子の発見に際して、鍵となる貢献をした人物。

 中国人女性から、中国は、ソビエト連邦に編入して社会主義連盟の共和国になるべきだという発想があり、驚きました。そんなことにはならないと思いますが、ロシアによるウクライナ侵攻の今、ロシアと中国は接近しています。

 情景は、昔NHKドラマで観た『大地の子』を思い出します。
 日本人残留孤児となった主人公男性が、中国人教師の両親を養親とし、養父が文化大革命で厳しく責められていました。

 1922年(大正11年)冬アインシュタインが上海を訪れた。
 アインシュタイン:1879年(明治12年)-1955年(昭和30年)76歳没。ドイツの理論物理学者。1922年日本訪問。大正天皇に謁見(えっけん。目上の人に会うこと)した。大正元年は1912年。1926年(大正15年)までが大正時代。

 マルクス主義:社会主義思想体系のひとつ。資本を社会の共有財産とする。階級のない社会をつくる。

 文章を読んでいて、なにかしら悲劇があります。

 1964年(昭和39年)と1967年(昭和42年)に中国が核実験を行った。

 プロパガンダ:特定の思想、意識、主義主張へと誘導する行為。

 知識階級:学者である葉哲泰、葉文潔の属する階級のこと
 Silent Spring:「沈黙の春」レイチェル・カーソン著。
 たぶん鍵を握る文節として『人類のすべての行為は悪であり、悪こそが人類の本質であって……もし人類が道徳に目覚めるとしたら、それは、人類以外の力を借りる必要がある(やはりいずれ宇宙人が出てくるのではなかろうか)』

 三連合:革命的大衆+革命的幹部+人民解放軍代表

 建設兵団の女性戦士:葉文潔のこと。

 天体物理学ジャーナル(アストロフィジカルジャーナル):1966年発行(昭和41年)

 これは、物理学者たちがたくさん出てくるので、原子爆弾とか水素爆弾とかよりももっと強力な爆弾をつくる話ではなかろうか。兵器づくりのために物理学者の頭脳を利用する。

 時代設定は、1969年(昭和44年)です。

(つづく)

第二部 三体
 読んでいる途中で、先日動画配信サービスで観た『エヴァンゲリオン』とか『機動戦士ガンダム』のイメージが湧いてきました。
 その後、ページをめくっていたら435ページにある訳者あとがきに『機動戦士ガンダム』の文字が出てきました。(やっぱりという気持ちです)
 ストーリーの基礎は、長い人類の歴史のなかで、でつくしている。あとは、登場人物設定を変えるだけです。
 三体(さんたい):3個の天体。3個の天体が互いに影響し合う。

 時期設定は、1967年(昭和42年)→1969年(昭和44年)→2009年(平成21年)のイメージです。

 作戦指令センター:57ページ付近を読んでいますが、おそらくここが宇宙人との戦いの基地のようなものにあたるのでしょう。(読後のこととして、違っていたようです。紅岸基地は閉鎖されます)

 科学境界(科学フロンティア):世界的な学術組織。会員は著名な学者たち。

 今後の展開として自分が考えたことです。
 筋書としては、きっとうまくいかないことがたくさん出てくる。大きな視野で、あるべき方向を失わないように対応していくのでしょう。

 72ページに強烈なメッセージがあります。
 『人類の歴史全体が幸運だった…… われわれは運がよかった…… 幸運にはいつか終わりがくる…… われわれは、覚悟しなければならない』

(つづく)
 
 三体というのは、天体が3つあって、互いに影響し合う。たとえば、三つの天体が重なり合って、それぞれの天体で、不思議な現象が起きる。そんなことを考えながら読み続けています。

 ビリヤードのシーンです。ビリヤードの玉の動きが『物理』という学問です。
 そういえば、先日テレビ番組アメトークで、ビリヤード芸人というようなテーマでトークショーがありました。
 文脈が、昔読んだ村上龍作品『半島を出よ』に似ているような感じがします。北朝鮮軍の船団が海峡を渡ってきて、福岡市にある福岡ドームを占拠します。自衛隊はなにもできません。日本国家は、九州地方を北朝鮮に差し出すことで難を逃れようとします。

 キーワードとして『科学は殺される』
 81ページを読んでいる今はまだその意味はわかりません。
 もうひとつのキーワードとして『射撃手と農場主(しゃげきしゅとのうじょうぬし。シューターとファーマー)』SFという略語となる。宇宙の法則の本質を説明するふたつの仮説だそうです。
 射撃手が的に(まとに)10センチ間隔で穴を開ける。
 的の表面には、二次元生物が住んでいる。(二次元:長さと幅。アニメやゲームのキャラクター)
 二次元生物である科学者が、宇宙には10センチごとに穴が開いているという法則があると定義する。(それは、法則ではない。たまたま、射撃の名手が10センチごとに穴を開けただけのこと。誤解が生まれている)
 次が、農場主説。農場主が毎日午前11時に七面鳥に給餌をする(きゅうじ。餌を与える)。
 七面鳥の科学者が、そのことを宇宙の法則と定義する。(そのことは法則ではない。クリスマスの日には給餌はなかった。すべての七面鳥が料理された)
 うーむなんのこっちゃいな。つまり、法則でないことを法則であると誤解することがあるといいたいのでしょう。

 数値の不思議な現象が始まります。
 カウントダウンです。
 汪淼(おう・びょう/ワン・ミャオ):ナノマテリアル開発者の体験です。カメラのフィルムに「12:00:00」という数値が出ます。以降、同人の視界にまで出てきます。不気味なカウントダウンです。数値が減っていきます。12時間なんとか秒に見えますが、もっと長い。0になったとき、宇宙が爆発して消滅するのだろうか。(84ページに1200時間と出ました。50日間です。何が起こるのだろう)
 スリラーでありミステリーです。『ゴースト・カウントダウン』
 
 飛刃:超強度のナノマテリアルのコードネーム。ごく小さな素材ということでいいのか。

 メインラボで、反応装置を停止してメンテナンスをするべき時期が来ている。(と書いてあります。文章を理解するのに時間を要しています)

 ナノマテリアル研究プロジェクトというものあり。
 宇宙背景放射を観測する機関というものあり。
 ゴースト・カウントダウン
 
 汪淼(おう・びょう/ワン・ミャオ)は、Vスーツというものを着用して、どうもバーチャル世界(仮想世界)の体験をしています。フィールドバック全身スーツとヘッドマウントディスプレイを装着します。
 汪淼(おう・びょう/ワン・ミャオの登録名が『海人(ハイレン)』
 ゲームに出てくるのが『周の文王』と『周の文王の従者』時代設定は戦国時代。ほかに『紂王(ちゅうおう)』という人物がいるそうです。
 周の文王が砂時計をもっています。おもしろそうです。『時間』を素材にしてある物語の気配がします。
 
 意味深く意味不明な言葉として『女は(楊冬(ヤン・ドン):女性。宇宙論研究者。葉文潔と楊衛寧の娘)、流れる水のように、どんな障害にぶつかっても、融通無碍に(ゆうずうむげに。障害が無く自由に)その上を乗り越え、まわりを迂回(うかい)して流れていくべきなのに』

 中国科学院国家天文観測センターにある電波天文観測基地に直径9メートルのパラボラアンテナが28基ある。
 直径50メートルの巨大な電波望遠鏡が2台ある。
 宇宙マイクロ波背景放射の探査をするために打ち上げられたのが『人工衛星COBE』『WMAP(ウィルキンソン・マイクロ波異方性探査機衛生)』『人工衛星プランク(Planck)』
 それぞれが観測している天体の背景放射のリアルタイム・データをとることができる。
 物語では、その三つの波形を問題視しています。まったく同じように同期して動いているそうです。宇宙が明滅しえいるそうです。(なんのことだろう)破壊工作の疑いがあるそうです。

 『宇宙マイクロ波全体の、等方性の揺らぎがみたいんだ……』
 なにやらむずかしい。

 葉文潔は、紅岸基地に20年間いた。

 汪淼(おう・びょう/ワン・ミャオ)は、ヴァーチャルゲーム『三体』で、巨大な振り子を見た。

 カウントダウンが終わったら『死の世界』が訪れるのだろうか。

 「三体ゲームの中で」宇宙は、火の海に浮かんでいる中身が空洞の大きな球である。球には、無数の小さな穴とひとつだけの大きな穴がある。火の海の光がそれらの穴から球の内側に入ってくる。小さな穴は星で、大きな穴は太陽だ。(なるほど。なんとか想像できます)
 球体は二重構造になっている。内殻と外殻がある。
 球体はゆっくりと収縮を続けている。

 以前読んだバビロンのなんとかという本を思い出しました。読書メモが残っています。
 『あなたの人生の物語 テッド・チャン ハヤカワ文庫』
 テッド・チャン:米国のSF(サイエンスフィクション。科学空想)作家。1967年生まれ。中国系アメリカ人。
 「バビロンの塔」1990年発表
 バビロン:古代都市。メソポタミア文明。ユーフラテス川付近。イラクバクダッドの南。紀元前18世紀から紀元前6世紀にあった王国。
 バベルの塔(バビロンにあったとされる旧約聖書に登場する伝説の塔。ノアの大洪水のあとに人類が建て始めたが、神の怒りにあって、人類は、多数の言語をもつようになり、意思疎通をはばまれるようになったとされる。
 文章には、すごい想像力と表現力がこめられています。アニメ映画の大作を鑑賞するようです。
 風景や光景の表現がきめ細やかで、ていねいで、わかりやすい。
芥川龍之介作品「蜘蛛の糸(くものいと)」のような雰囲気をもった作品です。
『水面の上に空気があるぞ!』『おれはまた大地の上にもどってきた。』
 てっぺんだと思っていた場所は、足元にある砂漠の下にあった。
バビロンの塔は、地球そのものの形なのか。
 いまひとつピンとこないのですが、脳内で思考体操をしているような気分でした。

(つづく)
 
 ようやく205ページまで読みました。
 正直、何が書いてあるのかわからないのです。
 地球外生物はまだ出てきませんが、出てくるような気配があります。
 出て来たのは『三体』というヴァーチャルゲームに、アリストテレス、ガリレオ、コペルニクス、レオナルドダヴィンチのみなさんです。
 紅岸基地というのは、20年ぐらい使われたあと、今はもう閉鎖されてないらしく、基地の目的は、地球外生物との接触を試みることだったようです。葉文潔が同基地で働いていたそうですが、いまは高齢者になっています。そして、彼女の娘である宇宙論研究者の楊冬は自殺したようです。

 NATOとワルシャワ条約機構と米国グループとの対立も出てきます。ソビエト社会帝国主義とされています。
 両者が、地球外文明と接触を試みているのです。地球外知的生命体探査計画と記述されています。
 今、ウクライナを巡っての対立の構図と似ているので、読んでいてタイムリーです。
 やはり、中国の立ち位置とか役割が微妙で大事です。

 3つの太陽がどうのこうのという議論です。
 読んでいる自分はチンプンカンプンです。
 
 ゲームの中では、馬に乗った中世の騎士が表れて『世界がたったいま滅亡した! …… 脱水だ、脱水だ!』と連呼します。

 うーむ。太陽が3つ現れるとそのときある文明が滅びる。されど、時間がたつと、新たなる文明が生まれるようです。レベルアップです。滅んだのに、レベルが上がるゲームなのだろうか。

(つづく)

 魏成(ぎ・せい/ウェイ・チョン):申玉菲(しん・ぎょくひ/シェン・ユーフェイ)の夫。引きこもり。数学の天才。40歳くらいが語ります。
 ぼくの心の中に『第一の空』を創造した。空は無限の宇宙だった。
 空の中にひとつの球を創造した。
 さらにもうひとつの球を創造した。
 第三の球を導入した。
 第三の球は、空に命を与えた。
 三つの玉は運動した。

 ポアンカレ:フランスの数学者

 申玉菲の言葉として『三体問題を解くことに成功したら(魏成(ぎ・せい/ウェイ・チョン))は、救世主になる。でもやめたら罪人になる』(うーむ。なんのことだろう)

 ガン・オイル:銃に使用するオイル

 申玉菲の銃による遺体が見つかります。他殺なのか自殺なのか。
 『三体』をプレイしていた部屋です。
 三発発射されています。胸に二発、もう一発が左眉の上です。これは、他殺ですな。

 環境保護主義者の潘寒[(はん・かん/パン・ハン):申玉菲(しん・ぎょくひ/シェン・ユーフェイ)と魏成(ぎ・せい/ウェイ・チョン)の友人で、生物学者]と申玉菲が前日午後に日本語で口論していたそうです。

 不俱戴天(ふぐたいてん):同じ天の下にはいっしょにいられない。憎しみある間柄。

 アルゴリズム:計算可能なことを計算する。形式的な手続き。

 『神さま』という存在があるらしい。

(つづく)

 『三体』のレベル2が始まりました。寒い夜明けの風景の中に、巨大なピラミッドがあります。

 アイザック・ニュートン:イングランドの自然哲学者。数学者、物理学者、天文学者。1643年-1727年。84歳没。万有引力の法則を発見した。

 ライプニッツ:ドイツの哲学者、数学者。1646年-1716年。70歳没。微積分法を発見・発明した。

 ジョン・フォン・ノイマン:ハンガリー出身のアメリカ合衆国数学者。1903年-1957年。53歳没。原子爆弾やコンピューター開発への関与あり。核実験の観測などで放射線を浴び癌になって病死した。京都への原爆投下を進言した。

 ノーバート・ウィーナー:アメリカ合衆国の数学者。1894年-1964年。69歳没。連続時間確率過程。

 始皇帝(しこうてい):紀元前259年-紀元前210年。中国の初代皇帝。

 数学の歴史書を読むようです。コンピューターの原理があります。
 三角形の角(かく)の一点が「出力」で、残り二点が「入力1と入力2」で、秦の始皇帝の軍隊3000万人が、人間コンピューターを形成します。『計算陣形(コンピュータ・フォーメーション)』

 太陽は3つ。今いる惑星を含めて4つ。4つが一直線に並んで、引力で引き合って、すべてのものが地面から浮き上がります。
 そして、文明の滅亡があります。文明には番号が振られていて、文明#184が滅亡しました。

 唐突(とうとつ。突然)ですが、ゲーム『三体』のオフ会があるそうです。
 オフ会:オフラインミーティング。愛好者たちが、現実世界で実際に会って親睦を深める。
 7人参加。
 1人目:汪淼(おうびょう)
 2人目:若い記者
 3人目:若い研究者(大学)
 4人目:女性作家
 5人目:中年男性ソフト開発者
 6人目:中年電力会社
 7人目:60~70代男性学者
 幹事は、申玉菲の殺害容疑者である環境保護主義者の潘寒(はんかん)です。

 「三対人」という人種があるらしい。
 三対人が、人類世界を侵略するかもしれないらしい。
 
 アステカ文明:メキシコ中央部に栄えた文明。1428年から1521年までの約95年間。スペインに征服された。

 コペルニクス:1473年-1543年。70歳没。地動説を唱えた。(声に出して言う)ポーランド出身の天文学者。

 アインシュタイン:1879年(明治12年)-1955年(昭和30年)76歳没。ドイツの理論物理学者。1922年日本訪問。大正天皇に謁見(えっけん。目上の人に会うこと)

 鍵を握る言葉として『飛星静止』
 文明#191において、3個の飛星(太陽)が、同時に静止したあと、人類が住む惑星(三体世界)に落下してきた。

 災難から逃れるために『三体星系を離れて、星々の大海に漕ぎ出す(こぎだす)。この銀河の中で、移民できる新しい惑星を見つける』

 巨大な振り子が動きます。
 文明#192が滅びました。

 マイルストーン:節目となる工程。中間目標地点。

 次は、最終ステージだそうです。

(つづく)

 惑星の砂漠に数億人の生きている頭が並んでいる。
 人の海がある。
 静寂がある。
 星は碁盤の目のように並んでいる。
 幻想的な夜です。
 方陣の一辺に30数個の天体がある。
 三体人は、星間航空能力をもっている。宇宙船は光速の10分の1の速度を出せる。
 三体星間艦隊がある。
 アメリカ映画『スター・ウォーズ』のようになってきました。
 地球三体協会反乱軍が登場します。最高司令官が『葉文潔(よう・ぶんけつ/イエ・ウェンジェ):天体物理学者、葉哲泰の長女』です。総帥(そうすい)と呼ばれています。
 (なにやら、むずかしい話です。降臨派という派閥が地球三体協会の中にあって、人類はもはや自分たちで問題解決ができなくなっているから、主(神さま)が、この世に降りて来て、主の力で人類を管理監督しようと主張しています。対して「救済派」という派閥があるようです)

 内輪もめの殺し合いが始まりました。
 
 葉文潔(よう・ぶんけつ/イエ・ウェンジェ):天体物理学者、葉哲泰の長女。
 彼女は20年間仕事人間の生活を送ったようです。紅岸プロジェクト(地球外生命に対して電波信号でメッセージを送り、返答を得る)への取り組みでした。(一般サラリーマンの幹部も20年間ぐらいは仕事いちずの生活を送ります。テレビはほとんど見ません)
 
 どうも地球外生命体から返答があったらしい。ただ、どうも、そのことに気づけていない。

 鍵として『16分42秒』『太陽は電波増幅器』
 
 3つの天体、3つの太陽、引力で、お互いに影響し合っている。

 文化大革命は、中国共産党内部の権力闘争と聞いています。
 毛沢東対劉少奇の構図です。
 社会主義文化の創生は口実だった。(表面上の理由だった)

 沈黙の春:1962年出版。レイチェル・カーソン著。化学物質による健康被害、公害の発生などの問題提起と主張。農薬で鳥が死んで、春になっても鳥が鳴かない。沈黙の春となった。

 原子爆弾よりも強力な破壊力がある恐ろしい力が宇宙にはあるそうです。原爆はろうそくのようなものとたとえてあります。

 葉文潔(よう・ぶんけつ/イエ・ウェンジェ):天体物理学者、葉哲泰の長女は、地球外生命からの返信があることに気づきました。
 メッセージの内容を理解しました。(ここには書けません)

 地球人は移住先の星を求めているけれど、他星人も移住先の星を探している。地球がターゲット(目標とする星)になる可能性もある。

 話はドラマチックな展開に向かいます。(わくわくする)

(つづく)
 
 葉文潔が過去に紅岸基地であったことを語り続けます。
 地球外生命あてに電波を発信した。
 返信が来た。
 返信の内容には危険なことが含まれていた。
 それでも、葉文潔は返信した。(いずれ、危険が来ることになるでしょう)
 ただし、相手は宇宙の彼方(かなた)にいるがゆえに、返信が来るのは、早くて8年後だそうです。
 ただ、相手は、相当進んだ技術をもっている。

 複数回読み直す本なのでしょう。
 歳をとりながら、読む本です。
 ひととおり読んで、数年後にまた読むと味わいが深まる気がします。
 今は、306ページ付近を読んでいます。
 たぶん、きちんと内容を把握できていない部分があると思います。
 なかなかの長文で、むずかしい科学的な言葉もあります。

 地球があって、地球の中で対立する事柄があって、葉文潔をトップとするグループが反乱軍で、いわゆるテロ組織(反政府)扱いをされていた時期があるようです。今の時点では、反政府グループが実権を握ったようにみえる文脈です。

 人間の欲望を扱った作品でもあります。名誉欲、売名行為、歴史に自分の名前を遺したい人がいます。
 人間は、自分の欲望を達成するためには、人をも殺します。

 レーダー峰というのがあるのですが、山の峰自体がレーダーになっているのだと気づきました。
 
 斉家屯(さいかとんと読むのだろうか):屯は集落。人が集まるところ。

 太鳳(ダ―フォン):斉猟師の息子の嫁。葉文潔の娘、あかちゃんの楊冬に母乳を与えた。

 太鳳の言葉『姉やん、なして空の星は落っこちてこないんだべか?』は胸にズキンとくるものがあります。引力。科学があります。

 葉文潔にとって、父親を死に至らしめた集団への復讐心があります。そのうちのひとりが「唐紅静(タン・ホンジン)」という名前の女子です。

 この本は、中国の政治体制を批判する小説なのだろうか。
 歴史に関する考察があります。
 歴史が事実ではないのです。
 人は、次の時代を生きるために、済んだことを「忘れたこと」にする能力があるのです。
 亡くなった人は、英雄でも敵でもなく「歴史」なのです。

(つづく)

 葉文潔は、新しい大規模電波天文観測基地を設計、建設する仕事に就きます。

 マイク・エヴァンズ(白求恩ベチューン):カナダ出身の外科医。大金持ちの石油企業の息子。地球の自然環境保護を主張する。実在の人物です。
 読んでいて、今年の小学生向け読書感想文コンクールの課題図書の内容を思い出しました。『111本の木 リナ・シン文 マリアンヌ・フェラー絵 こだまともこ訳 光村教育図書(みつむらきょういくとしょ)』それから同じく昨年の課題図書『オランウータンに会いたい 久世濃子(くぜ・のうこ) あかね書房』と類似のことが書いてあります。自然環境を大事にして、地球上の生きものの幸せを願うメッセージは、文学創作者全体の願いでもあります。
 マイク・エヴァンズの父親は石油会社の経営者ですから、マイクは父親を嫌います。タンカーが座礁して、大量の重油が海面に流出して、たくさんの海鳥が死んだときの父親の心理が次のものでした。『事故の一報を聞いて、父がすぐに考えたのは、どうやって責任を逃れ、自分の会社の損失を少なくするかということだった。』今年北海道であった遊覧船の沈没事故を思い出します。
 この小説は、環境保全のための小説だろうか。

 心に残った文節として『貧しければ、貧しいほど、住民は反政府的になる』
 
 2022年の世界人口が、79億5400万人ぐらいです。

 物語は宗教の話になっていきます。
 仏教から始まって、キリスト教……
 自然を破壊する人間の行為はストップしない。
 『人類の文明は、もはや自力では矯正できない(ゆえに、地球外知的生物である三体人を降臨してくる神として、三体教を人類に流布して、地球の自然と人間の共存をめざすと読み取れます、三体教をつかさどる組織が、地球三体協会(ETO)です)』
 
 第二紅岸基地=船。6万トンクラスのタンカーを改造してつくった。鋼鉄の浮島。
 地球外知的生物である「三体艦隊」が地球に到着するのは、450年後です。艦隊の現在位置は、4光年先にあるそうです。
 三対人の寿命は、450年以上あるのだろうか。
 
 未来において、過去をふりかえる記述が続きます。
 降臨派:地球三体協会(ETO)の純粋で原理主義的な派閥。人類の文明を滅ぼして、新たな文明を創生することが目的らしい。異星文明を尊敬する。奉る(たてまつる)
 救済派:宗教団体のよう。スピリチュアル(精神世界。目には見えない魂や霊の世界)を重んじる。

(つづく)

 ようやく読み終えました。
 文章量が長く、物理の話なので、ちんぷんかんぷんの部分もあり、調べながらおおまかに読み取るという読書でした。再読するといいのでしょう。一日30ページぐらいずつ、半月ぐらいかかって読みました。ドラマ化されるようなので、映像を観るとちゃんと理解できるかもしれません。

 人類にとって現在は、原子爆弾が、現在最強の武器なのですが、この物語の中では、原爆はちっぽけな破壊力しかない武器という定義です。(たいへん強力な武器が出てきます。宇宙は広い)

 4光年先から敵が攻めてきます。
 敵が地球に到達するのは、450年後です。
 話が壮大です。
 敵の星雲艦隊のスピードが速いので、スピードをゆるめないと、地球を通り過ぎてしまうそうです。
 なんとなく、昔あった、新幹線をどうやって駅のホームにぴったり止めるかという議論を思い出します。人間が手でブレーキをかけるタイミングでは止まれないのです。
 
 450年後に備える話です。
 今の人類の能力では敵に勝てないのです。
 今の人類は敵にとっては『虫けら』同然なのです。
 しかし、最後にいいたとえ話が出ます。
 イナゴは、虫けらだけれど、人類はいつまでたってもイナゴを絶滅させることができない。
 虫けらは、強いのです。そう、イナゴのたとえをゴキブリにしてみましょう。
 ゴキブリは強いのです。案外、地球最後の日に生き残っている生物は、ゴキブリなのです。

 中性子爆弾、神経ガス、なにかしらロシアのウクライナ攻撃の武器を思い出します。
 振動弾、低周波音、いろんな武器があります。
 ベトナム戦争の話も出ます。今の若い人は知らない戦争でしょう。
 パナマ運河:中米にあるパナマ共和国にある運河。太平洋と大西洋とを結んでいる。
 『ナノ技術(小さな物質)』による武器は恐ろしい。物をスライスしていきます。武器は見えません。
 
 葉文潔がめざした知的水準が高いと思われる三体文明による『理想社会』が遠ざかっていきます。
 
 382ページから三体人の事情が書かれます。三体人の社会もうまくいっていません。

 智子(ソフォン):女子の名前ではありません。作戦名です。
 三体惑星全土を統括する元首がいます。
 惑星には、執政官がいます。
 全体で会議があります。
 すでに三体艦隊は地球に向かっていて、2万時間が経過しています。目的は、地球の科学を壊滅することです。そのために3つの計画が用意されています。説明するのは、科学執政官です。ほかに軍事執政官がいます。工業執政官、文部執政官、農業執政官もいます。
 コードネーム「紫色」:科学作用の副作用を強調する。例として「環境問題」
 コードネーム「奇跡」:人類に奇跡を見せる(ただし、意図的につくられた現象。いつわりの宇宙をつくる)
 智子計画(プロジェクト・ソフォン):「巨大粒子加速器」を利用する。陽子をスーパーインテリジェントなコンピューターに改造するそうです。(なんのことか、わたしには、わかりません)九次元とか十一次元という言葉が登場します。陽子を二次元に展開する。
 「微小宇宙(ミクロコスモス)に知的生命が存在し、展開された陽子の中に……」(わかるようなわからないような……)智子は、最小の人工知能だそうです。智子は六次元空間から三次元空間を見ている層です。(やがて智子は十一次元に移行します。智子1号と2号は、地球へ旅立ちました(智子3号と4号は手元に残されました))
 地下深くに智子完成センターがあるそうです。岐阜県にあるスーパーカミオカンデを思い出します。東京大学宇宙線観測所が運用する宇宙素粒子観測施設。

 放物面反面鏡:恐ろしい兵器です。巨大な虫眼鏡で太陽の光線を集中して地球に当てて、地球上の生きものを溶かすイメージがあります。
 『鏡』は、ときおり、創作の素材になります。

 ブラックホール:なにもかもが吸い込まれる穴というイメージがあります。

 中性子、電子、小さなものを大きくとらえる世界です。

 なんでもありの世界です。

 ブレイクスルー:進化や進歩の障壁を従来にない方法で突破する。

 マルチタスク:同時に異なる情報を処理する。

 エントロピー:調べましたが、書いてあることを理解できませんでした。質量の話のようです。

 原子核の中の世界は広い。

 決めゼリフとして『虫けら(文明が進んだ三対人から見た人類を意味する)は、いままで一度も敗北したことがない(いわゆるゴキブリ扱いです。地球上で最後に生き残るのはゴキブリなのです)』

 ずいぶん長い読書メモになってしまいました。
 自分の得意分野ではないため、多少の苦痛がありました。  

Posted by 熊太郎 at 07:20Comments(0)TrackBack(0)読書感想文

2022年07月13日

はじめての 島本理生 辻村深月 宮部みゆき 森絵都 水鈴社

はじめての 島本理生(しまもと・りお) 辻村深月(つじむらみづき) 宮部みゆき 森絵都(もり・えと) 水鈴社(すいりんしゃ)

 「はじめて」を素材、テーマにして、4人の作家が作品を仕上げています。
 書評の評判が良かったので読んでみることにしました。
 ただ、どういうわけか、うわべだけの書評がほとんどです。中身がありません。

『はじめて人を好きになったときに読む物語 私だけの所有者』 島本理生
 わたしには合わない、わたしの苦手(にがて)な作家さんです。
 以前読んだのが『ファーストラブ』でした。
 たしか、父親を刺殺した娘の心理を臨床心理士がさぐるという内容で始まるお話でした。

 食わず嫌いはいけないので、とにかく読み始まます。(食わず嫌い:食べたことがないのに、嫌いだと決めつけること)

 「一通目の手紙」から始まります。以降「二通目」「三通目」と章のように続きます。
 最初の10行ぐらいを読んだところで、手紙の差出人がロボットであろうと気づきます。人工知能付きのアンドロイドロボットでしょう。
 アンドロイドの設定は14歳で、男性だそうです。未来世界のお話です。(このあと作品は、アンドロイドの性別にこだわりをもつのですが、ロボットに性別があるということがピンときませんでした。ロボットは男でも女でもない性別がない物体です。あえていえば「中性」です)
 読み手が、アンドロイドはロボットで、つまり「機械」で、いくらロボットに感情が設定してあったとしても、感情がある人間とは違うと思うと、読書行為が、中断か中止になってしまいます。
 中途半端な思考をもつ自分は、読み継いでみます。
 アンドロイドロボットの所有者が「Mr.ナルセ」という男性です。昔は妻がいたらしい。
 ナルセは、アンドロイドロボットを、始めは、まあ、奴隷か召使いのように扱います。
 児童虐待とか、異性間のDV、家庭内暴力、セクハラ、パワハラという言葉まで、頭に浮かんできます。
 
 大きな地震があって、ナルセの弟夫婦とかれらの所有物である少女のアンドロイドロボット(ルイーズ)が出て来て、現在から見た過去の記述なのですが、物語の中では、ナルセのアンドロイドロボットは、手紙を書き続けます。
 さきほども書きましたが、ロボットが書く人間である先生あての手紙の内容は、現在から見て、過去を振り返る内容です。
 先生からの返信はあるようですが、本の中での先生の手紙の公表はありません。
 先生という人にあてた手紙ですが、先生が何の先生なのかわかりません。
 若手の女性研究者だそうです。「人口人間理論」の研究者だそうです。

 欺瞞(ぎまん):あざむく。だます。

 アニメ世界のようでもあります。

 どうも核爆発が起きたようです。『光の津波が背後から襲ってきたのです。』とあります。(違っていましたテロ行為による爆発でした。なんだか先日奈良県で起きた元総理の事件を思い出します)

 ウェアラブ端末:着用できる、身に着けることができる端末。リストバンドや腕時計、メガネなどがあるそうです。

 見当はずれの発想なのですが、読んでいて思いついたのは、身寄りのない年寄りにとっては『自分を介護してくれる、自分を手助けしてくれるアンドロイドロボット』的な存在は、すなわち『お金』ではなかろうか。

 内戦の話が出ます。ウクライナ東部の戦闘が思い浮かびます。

 少女アンドロイドに対する暴力、連れ去りの話が出ますが、ロボットゆえにピンときません。
 人間がアンドロイドロボットをかばう。また、ピンときません。
 機械は故障したら修繕します。人間はそうはいきません。

 Mr.ナルセの妻について、思うことはあるのですが、ここには書けません。


『初めて家出したときに読む物語 ユーレイ』 辻村深月(つじむらみづき)
 始まりの1ページ分を読んだところで気づきます。
 これから、今一人称で(私という言葉)で語っている主人公女性は、自殺するのだろうか。
 女子高生が登校拒否なわけか。(女子高生ではありませんでした。女子中学生でした)
 
 物語の中で、鉄道に乗車して移動している主人公の女子中学生について考えました。
 旅をしたことがないこどもさんの心理です。
 たとえば、鉄道が好きで、小学生のころから鉄道に乗り慣れている中学生であれば、鉄道を使っての移動はなんてことないのです。距離が長くても、それは「家出」ではなく、「移動」です。(自分は幼児のころから仕事が長続きしない放浪癖のある親父(オヤジ)に連れ回されて、日本各地を転々としました。だから今は、日本は小さな島国でしかないと感じています。父親をうらんだこともありますが、今は、豊富な体験をさせてくれてありがとうと感謝しています。おかげで、精神的につぶれることなく老後を迎えることができました)
 短距離の鉄道利用による移動でも、人生体験が少なく、狭い世界で生活してきた中学生にとっては、鉄道旅が『家出』の気分のときもあります。
 (実家で生れて、ずっと実家暮らしで、自宅と学校と職場のまわりの地理しか知らないという人もいます。くわえて、ひとり暮らしを一度も体験したことが無いという高齢者もいます。人それぞれですが、体験してきた世界が狭いと、環境の変化にぶつかったときに、生きにくいというときもあろうかと考えます。自立とか自活のために、やろうと思ってやればたいていのことはできます。『気持ち』が大事です)

 旅人にとって感動する場所であっても、そこで暮らしている人間にとっては、そこが生活の場所です。旅人と違って、労働者である地元の人間は、ロマン(期待する理想。あこがれ)を感じることはありません。
 昔北海道に行ったとき、富良野(ふらの)で花咲くラベンダー畑を美しいと思ったことはないという農家の人の話を聞いたことがあります。まさか、ラベンダーの花を見るために、こんなに観光客が来るとは思いもしなかったそうです。(ラベンダーは、香りを楽しむ商品に加工して収入を得るために育てるもの)

 主人公の女子中学生は、海辺の町にある駅で電車を降り、海へ向かい、自殺か事故でだれかが死んだであろう場所にたどりつきました。そして、夜が来ます。

 短編のタイトルがユーレイですから、それらしき人物が登場します。

 女子中学生は、自分の姿を投影するユーレイに出会ったのだろうか(つまり、もうひとりの自分、自分の影に出会ったのだろうか)
 どっちがユーレイなのかわからないという展開もあり得ます。

 ユニコーン:一角獣。馬のおでこのあたりに角(つの)が一本生えている馬のような動物。白馬。

 70ページまで読んできて、ふと気づいたことがあります。
 本の帯を見ると、どうもYOASOBIという音楽グループがあって、グループの歌とこの本にある短編作品につながりがあるのです。
 わたしは、YOASOBIというグループのことを知らない老齢者です。
 YOASOBI:本の帯を見ると、若い男女がいます。古い世代からいうと、昔の「チェリッシュ」みたいな存在だろうか。男女による歌唱です。(昔、名古屋栄にあった中日ビルの1階フロアーで、チェリッシュおふたりのトークショーと歌を聴いたことがあるのを思い出しました。ラジオ番組の放送でした。現在は、当時の中日ビルは取り壊されて、新しいビルの建築工事が行われています)
 YOASOBIの曲がこの本の短編のヒントになっているのかと思いましたが、逆で、小説作品が曲になるそうです。YOASOBIは「小説を音楽にするユニット」というキャッチフレーズが本の帯に書いてあります。

 この「ユーレイ」の場合、話の内容からいって、曲名は必然的に『花火』にからんだものなるのでしょう。
 読み続けます。

 ああ、やっぱり(死ぬつもりなんだ)
 遺書も書いてあるらしい。

 いじめが原因なんだ。
 たぶんシカト(存在無視、存在否定、仲間はずれ、冷遇(れいぐう))というやつであろう。
 なにかの出来事があって、相手に不快感を与えると、シカトされるということは、おとなの社会でもあります。シカトしたり、されたりです。のりきるキーワードは『マイペースを変えない。(これがわたしですと強く主張する意思をもち続ける)』です。

 主人公中学生女子のイメージは、顔もスタイルもそこそこ良くて、成績優秀、そつなく人づきあいをこなしてきたのだけれど、このたび、偶然運悪くチョンボをしてしまい、失敗に慣れていないので、ゆきづまっているというふうに思えます。
 赤塚不二夫漫画天才バカボンのパパのように『これでいいのだ』と思えれば、前進できるのです。

 残響(ざんきょう):音源が消えた後も反響する音。

 上手な構成です。
 ドラマ『相棒』を観るようでした。

 良かった文節として『小さな声で、ありがとう、と呟く(つぶやく)』
 
 
『初めて容疑者になったときに読む物語 色違いのトランプ』 宮部みゆき
 タイトルを見てまず向田邦子作品「思い出トランプ」が頭に浮かびます。
 男女のすっきりしない関係をたどった連作短編集でした。本作品と関係・関連があるのだろうか。(読み終えて、関係はありませんでした)

 主人公 安永宗一(やすなが・そういち) 被災地での発掘現場で現場監督職をしている。半官半民の団体職員。
 妻:瞳子(とうこ)、主婦
 ひとり娘:夏穂(かほ)17歳7か月、高校生

 こちらの世界とあちらの世界があります。ゆえに『鏡界人定管理局(きょうかいじんていかんりきょく)』という所属があります。鏡のこちらと向こうのようでもあります。どちらにも同じ姿形(すがたかたち)の人間がいるらしい。かといって、すべてが同一というわけでもない。こういうパターンを以前どこかで読んだことがあるような気もします。
 量子加速器(りょうしかそくき)<ロンブレン>というものが出てきます。
 物理のお話のようです。
 現在、同時進行で読んでいる本が『三体(さんたい) 劉慈欣(りゅう・じきん リウ・ツーシン CIXIN LIU) The Three-Bady Problem 大森望、光吉さくら(みつよし・さくら)、ワン・チャイ[訳] 立原透耶(たちはら・とうや)[監修] 早川書房』です。この本とこの短編が、重なるイメージがあります。三体には、重なる世界(3つの天体と3つの太陽)があります。こちらの短編では、並行する世界があります。

 カタストロフ:突然の大きな破滅、悲劇

 物語の内容とは離れてしまうのですが、「耳鳴り現象」の部分を読んでいて思いついたことです。
 自分の脳みその中にある世界「標準」にあてはまらない人間を排除しようとする人がいます。「標準」にあてはまらない人間をうそつき呼ばわりすることもあります。でも、うそではないのです。「標準」の大きさと範囲は、人によって違ったりもします。

 セクト:宗派、集団。この短編の場合は「所属」ぐらいの意味だと理解しました。境界人定管理局中央セクトです。

 あちらの世界にある日本は、全体主義国家で、軍事政権が国を支配しているそうです。
 入国管理事務所みたいな風景とか、運転免許試験場みたいな景色があります。
 渡界(とかい):あちらの世界とこちらの世界をゆききする。第一鏡界(きょうかい)と第二鏡界がある。
 
 剽げる(ひょうげる):ふざける。おどける。

 物語では、現状説明が続きます。

 快哉(かいさい):愉快で楽しい。

 国家公安保全局:第二鏡界にあって、第一鏡界(主人公ファミリーの所属するところ)にはない。

 物語が終わりに近づくにつれて、なんだかさみしくなりました。

 オルグ:労働組合の用語。この短編の場合は、組織拡充のための勧誘。昭和40年代に、労働組合が盛んにストライキをしていたころの言葉だと、思い出しました。今の若い人たちにはストライキ(職場を放棄して雇用側に労働条件の要求をするための集会を開く。公道を、許可を得てデモ行進することもある。デモンストレーション(集団で主張行為をする))がなんなのか想像もできないでしょう。

 読み終わりました。
 うーむ。
 好みではありません。
 自分には合いませんでした。


『はじめて告白したときに読む物語 ヒカリノタネ』 森絵都(もり・えと)
 私がいて、彼がいて
 私は旅立って、
 「取り返しのつかないもの」を
 取り返すそうです。
 なんのことでしょう?
 (読み終えて:過去へタイムトラベルをして、失恋を回収するのです)

 坂下由舞(さかした・ゆま):高校2年生16歳。女子バレーボール部員。
 樋口一花(ひぐち・いっか):坂下由舞の親友。同級生。黒ぶち眼鏡。作家志望。名前は、短命だった明治時代の女性小説家樋口一葉(ひぐち・いちよう)からきているのでしょう。1872年(明治5年)-1896年(明治29年)24歳没。作品として「たけくらべ」「にごりえ」ほか。
 この短編を読み終えてから思ったのですが、高校生の樋口一花も樋口一葉と同じように、短命ではあるけれど名作を遺す作家になるという流れで、この短編の続編がつくれないこともない。(自分だけの勝手な空想です)
 原田椎太(はらだ・しいた):坂下由舞の幼なじみ。幼稚園からいっしょ。坂下由舞の片思いの相手。ニックネームは「シータケ」
 
 そして、タイトル『ヒカリノタネ』とは何?

 ヴィジョン:本作品の場合、「未来」という意味だろうか。将来の見通し。

 坂下由舞は、原田椎太のストーカーのようです。

 アニメ「ワンピース」そして「ルフィ」が、キーワードです。
 もうひとつのキーワードが「柿ピー」です。
 タイトルの「ヒカリノタネ」は、柿ピーなのです。(辛い(からい)お菓子。カキの種の形をしている)

 デジャヴ:既視感。実際には体験したことがないけれど、前に一度体験したことがあるような感覚がある。
 
 セリフ『私、タイムトラベルの手伝いをしてくれる人、知ってるんだけど』(読んでいる自分の気持ち:ここからが本番か! 前置きは終わった。おもしろそうだ)

 悔恨(かいこん):自分の過ちを後悔する。残念に思う。反省する。(ふと、先日、奈良県警本部長がこの言葉を使っていたことを思い出しました)
 159ページに来て、不思議な感覚に包まれました。
 本短編の前の短編『初めて容疑者になったときに読む物語 色違いのトランプ』を書かれた宮部みゆきさんの作品に『蒲生邸事件(がもうていじけん。昭和11年2月26日軍事クーデターの失敗。2・26事件。大蔵大臣ほかが殺害されています)』があります。
 蒲生邸事件の内容は、本作品と同じく、現代から過去へのタイムトラベラーものです。
 この本をつくるにあたり、ふたりの作品を並べて、作家2名をつなぐという相乗効果を狙ったのだろうか。
 それともYOASOBIというバンドの曲として、時間移動旅行というテーマか素材があるのだろうか。

 読んでいて、リズムがある文脈が心地よい。

 憐憫(れんびん):かわいそう。哀れむ(あわれむ)

 アニメのようでもあります。

 ポリシー:方針

 GAFA(ガーファ):グーグル、Amazon、フェイスブック、アップル

 179ページ、おもしろい!(理由はここには書けません)

 もしかしたら、原田椎太(はらだ・しいた)は、同性が好きなんじゃないだろうかと思いつきました(結果は違っていました)。

 「小学校5年1組の担任は、点数主義のAIロボットみたいな人だった」じっさいにいそうです。
 成績格差の雰囲気が広がって、クラスメンバーの気持ちは沈みます。

 フリースクール:学校へ行けなくなったこどもさんが通うスクールらしい。
 良かったセリフとして『学校なんて池だよ。池。』(そのとおりです)

 読みながら『結婚』について考えました。
 まだ自分が結婚する前に「世界で一番好きな人とは結婚できない。世界で二番目に好きな人と結婚することが多い」ということわざみたいな文節を耳にしたか、目にした記憶があります。
 ずっとその言葉が気になっていましたが、自分は、世界で一番好きな人と結婚しました。間違っていませんでした。ともに歳をとってみてわかりました。

 なるほどという感想をもつ物語の進行、進展具合です。
 展開はおもしろい。手品のようです。
 
 良かったセリフとして『私も観察者やめよっかなあ』
 
 いいお話でした。
 ちょっぴり涙がにじみました。  

Posted by 熊太郎 at 07:01Comments(0)TrackBack(0)読書感想文

2022年07月05日

認知症になった蛭子さん 蛭子能収 光文社

認知症になった蛭子さん 蛭子能収(えびす・よしかず) 光文社

 38ページまで読んだところです。
 状況は深刻です。
 ここまでは、えびすよしかずさんの奥さま蛭子悠加さん(えびすゆかさん)の苦悩が綴られています。
 奥さまは、離婚を考えていたこともあるそうです。
 テレビを見ている自分は、えびすさんは、気楽なキャラクターの人なので好感をもっていましたが、夫婦としていっしょに暮らすとなると話が違ってくるでしょう。
 へんな話ですが、(えびすさんは、いいかげんなところがある)いっしょに仕事はしたくないけれど、そばで見ているだけの関係でよければ親しくなりたい人っています。

 えびすさんは、認知症以前に自己中心的、自己本位な性格の方です。(本書中では『自分ファースト』と表現があります)そのキャラクター(個性)が『太川陽介&えびすよしかずのローカル路線バス乗り継ぎ人情旅』では、力いっぱいおもしろさが発揮されていて、映像を見ていて楽しかった。
 えびすさんは、いいかげんといもいえるキャラクターに重ねて、今回、認知症を発症されたわけですから、奥さまである蛭子悠加さん(えびすゆかさん)はたいへんです。

 えびすさんは、もともと、ぼけているふうでした。
 この本を読んでいると、認知症がひどいので、もう、あの路線バスで、えびすさんが活躍していた時代は戻ってきそうにありません。
 ドラえもんの声優だった大山のぶ代さんの顔も頭に浮かびました。大山のぶ代さんも認知症になられてしまいました。

 自分には、認知症というのは、脳みその中でたんぱく質がどうかこうかして、脳細胞が死んでいくというぐらいの知識しかありません。
 先日、テレビだっか、ラジオだったかで、さきざき認知症になる人が700万人ぐらいになりそうだといっていて驚きました。そのなかに自分が入ってはいけません。そして、自分の妻も入ってはいけません。(読み進めていたら、本書の40ページに類似の記事がありました)
 されど、いっぽう、自分たちが認知症になったとしたらということも考えておかなければなりません。あまり考えたくありませんが…… 準備は必要です。
 長生きはしたいけれど、できるだけ普通な心身で長生きをしたい。

 そんなことをもんもんと考えながらこの本を読んでいます。
 えびすさん本人が書いたとか、語ったというよりも、ここまでは、えびすさんのそばにいる人たちが、現在の状況を教えてくれているというふうです。
 おそらく、いろんな人の話を聞いて、編集者がまとめているのでしょう。

 2007年(平成19年) 結婚。週刊誌『女性自身』のお見合い企画で縁があった。奥さまは、漫画家のえびすよしかずさんのファンだった。
 えびすさんより19歳年下です。えびすさんの前妻だった方は、2001年にご病気で亡くなっています。

 2014年(平成26年) 軽度認知障害と診断される。人の話を聞かない。他人に興味がない。人の名前を忘れる。毎晩のように離婚の話し合いが続いていた。

 2017年(平成29年) 夜中に奥さんを叩く。(翌朝えびすよしかずさん本人に記憶なし)レム期睡眠行動異常症。レム期:脳が活動している。ノンレム期:ぐっすり眠っている。

 2020年(令和2年) アルツハイマー型認知症とレビー小体型認知症(幻視あり)を併発していることが判明した。

 奥さまは、えびすさんを『よっちゃん』と呼びます。

 結婚後はケンカが多かったそうですが、夫婦ゲンカは必要です。
 ケンカしてお互いにどこかの線で折り合いをつけます。
 いいこともあれば、そうでないこともあります。
 それが夫婦です。

 異常発汗、夜間頻尿(やかんひんにょう)、お風呂でお湯の出し方がわからない、シャンプーがどれかわからない、4回も5回も頭を洗い続ける。風呂上がりに体をふかずに濡れたまま下着を着用する。異常な言動が、まだらぼけのように現れます。正気(しょうき。まとも)になったり、おかしくなったりです。
 だれもいないのに人が見える。デパートの売り場を電車が走っている。洗濯物のカゴが妻の倒れた姿に見える。
 世話をしている奥さまのほうも夫の世話をする負担が重たくて、精神状態がおかしくなっていきます。充分な睡眠をとることができません。
 えびすさんが外で道に迷う。家の中でトイレがどこにあるのかわからなくなって迷う。バス旅のことを妄想のように言う。
 
 奥さまは『ありがとう』という言葉に救われています。
 えびすさんは、長いこと、奥さまに『ありがとう』と言ってくれたことがなかったそうです。
 病気になって、えびすさんの口から奥さまに『ありがとう』と感謝の声かけが始まったそうです。

 えびすさんに、認知症という病気を理由に仕事を減らしてやめてもらおうとしたら、本人の気持ちがものすごく落ち込んだそうです。
 その経過のなかで、仕事をやめることは、心身によくないので、このまま仕事を続けるという結論を出されたそうです。ご立派です。

(つづく)

 良かったフレーズです。(文節)
『介護は……マラソンレースのようなもの。100メートル競走のつもりで走り続けたら、いずれ燃え尽きてしまいます』

 認知症になったとして、身の回りの世話をしてくれる配偶者やこども、兄弟姉妹がいない人はどうするのだろう。
 お金がなければ、法令等に基づいて、行政等が助けてくれるのでしょうが、お金があって、家族等がいなくて、本人に自覚がないまま本人が認知症になったときは、どうするのだろう。
 なかなかむずかしいものがあります。悪徳商法の餌食になってしまいそうです。

 認知症の人は働けないのかという問題提示があります。
 えびすさんには、働きたいという強い意思表示があります。
 『稼ぎたい(かせぎたい)』のです。
 えびすさんの不思議なところは、稼ぎたいと言っているわりに、いくらギャラをもらっているのかも、家に貯金がいくらあるのかもご本人は知らない。気にしていないというところです。奥さまが管理しています。いいだんなさんです。
 今どきの高齢者がこどもの頃に受けた教育として『とにかく働く』『貯える』『倹約する。節約する』というものがあります。小さなころに教え込まれたことが魂(たましい)として体に植えつけられているのでしょう。
 認知症の人でも働ける範囲で働くことはできるし、癌の人でも、癌だから働いてはいけないということもないのでしょう。

(つづく)

 次は、えびすさんの芸能事務所マネージャーさんのお話です。森永さんという方です。本のなかでは、16年間のふたりの付き合いだそうです。(本は2021年の発行です)
 今は、42歳ぐらいの男性です。ちなみには、えびすさんは、現在は74歳です。
 2018年ころから(本人が71歳ぐらいから)物忘れがひどくなられたそうです。

 62ページにえびすさんが腕時計を5分間進めている話が出ます。
 路線バスの旅で、太川陽介さんがそのことを指摘してきちんと時刻を合わせて、本人が混乱したシーンがありました。
 以下、その番組を観た時の自分の感想記録の一部です。
『太川陽介&えびすよしかずのローカル路線バス乗り継ぎ人情旅 第3弾 北海道函館から宗谷岬 2008年(平成20年)ロケ分 動画配信サービス』
 太川陽介さんに指摘されて、時刻が間違っているえびすさんの腕時計の針を正しく直したら、以降、えびすさんは、時刻を間違えてばかりいた。(腕時計はもともと意図的に時刻を進めてあった)えびすさんは、さらに時間の感覚がおかしくなって、バスセンターの構内で、おそらく、ロケ撮影を見ていた一般の人たちも巻き込んで、爆笑の渦に包まれていました。一般の人たちの姿は映っていませんが、まわりにいるみなさんが大笑いされているようすが、映像から伝わってきました。えびすよしかずさんはおもしろい。』

 経歴です。
 1986年(昭和61年) 漫画家をしながら柄本明(えもとあきら)さんの劇団「東京乾電池」に参加。当時えびすさんは39歳です。タレントとしてテレビに出演し始める。
 1998年(平成10年) かけマージャンで逮捕されてしまう。3か月間謹慎。51歳ぐらいのとき。
 2007年(平成19年) ローカル路線バス乗り継ぎの旅シリーズ開始で人気者になる。60歳ぐらいのとき。

 自分の記録だと2019年(令和元年)が、太川陽介さんたちとの最後の路線バス乗り継ぎの旅でした。
『太川・蛭子の旅バラ最終回スペシャル 路線バスの旅 奥州山脈攻略の旅 テレビ番組』
 福島県郡山から山形県銀山温泉までの路線バスによる乗り継ぎ旅です。
 加藤紀子さん:しっかり者の感じ。山形観光大使をしていた。
 さとう珠緒さん:以前出演した時に2万キロ歩いたと話あり。(じっさいは2万歩歩いた)
 熊切あさ美さん:(タクシーの中で、自分たちが行き先を告げたのに、運転手に)わたしたちは、どこに向かっているんですか。ゲストは以上の3人でした。
 えびすさんは、当時72歳でした。
 (この本を読み続けていたら194ページにそのことが出てきました)
 
 えびすさんが、人生で大切にしているものとは『オッパイと競艇』だそうです。
 オッパイは、奥さまのオッパイです。ギャンブルはやるけれど、今は競艇だけということはどこかで聞きました。
 言葉は過激ですが、家庭、とくに奥さん、そして、趣味としての競艇が好きなのです。
 
 森永マネージャーの認知症だったおとうさんのお話も出てきます。
 わりと、認知症の人は身近にいます。
 近所にいたり、この本を読んでいる読者の身内にもいたりします。珍しい事ではありません。
 突然認知症になるのではなく、予兆のようなものがあります。
 家に閉じこもって、食が細くなって、話し相手がいないとやばいようです。
 まともなときとおかしなときが交互に現れて、最後はおかしなことだらけになるという経過をたどるようです。
 
 えびすさんは佐良直美(さがらなおみ)さんの歌が好きで、マネージャーさんが車の中でかけるそうです。なつかしい。こどものころに聞きました。「世界はふたりのために」というヒット曲でした。「いいじゃないの幸せならば」もありました。
 このあと読んでいた115ページにご本人から別の曲名が紹介されていました。「私の好きなもの」(YouTubeで聴いてみました。こどものころに聴いたことがあるのを思い出しました。ボサノバ(南米ブラジル生まれのリズム)のリズミカルな歌です)

(つづく)

 次は、2002年の暮れ(前妻死去後)からえびすさんを担当している雑誌「女性自身」山内記者のお話です。「蛭子能収のゆるゆる人生相談」のコーナーを担当されているそうです。
 これまでの方も含めて、ご自身のご家族、ご親族に認知症の方がおられて、そのこともからめてお話が出ています。
 今この本を読んでいる自分自身にも世話をする方の立場としての体験があります。読んでいて、共感できることが多い。
 
 えびすさんのキャラクターについて書いてあります。
 どちらかといえばいいかげんそうに見える人です。
 たとえば、邦画「男はつらいよ」のフーテンの寅さん(渥美清さん演じる)と似て、見ている人が、あれなら、自分だって、社会でやっていけるとか、自分だって、俳優になれるような気がするという自信を与えてくれるキャラクターです。
 神経質に悩むことが、ばかばかしくなってくるのです。
 えびすさんの口癖が「ま、いいか」だそうです。
 救われる言葉です。

 されど、えびすさんは気配りの人だそうです。
 そういえば、路線バスの旅をしているときのえびすさんは、バスの車内でもほかのお客さんに気軽に声をかけて、雑談を楽しんでおられました。本文では知らない人との会話はにがてだとおっしゃっていますが、映像を見ていると何にでも興味をもって知らない人に話しかけていました。

 記者自身の認知症だったお母さんのお話がありのままに書いてあります。
 勇気ある発言もあります。
 両親や義父母の介護をするということは、自分や自分たち夫婦が自由に使える自分たちの時間を失うということです。もっと強く言うと、自分たちの時間を奪われるということです。
 ああしたい、こうしたい、あるいは、あれをしなければならない、これをやらなければならないということがやれなくなります。行きたい所へ行けないことも出てきます。
 そして、その状態が延々と続いて、なかなか終わりが見えないのです。
 いつまで続くのだろうかと、とほうに暮れるときがあります。
 記者は正直に「もう死んでくれ」と思ったことがありますと書かれています。わたしも不謹慎ですが「いつまで生きるのだろうか」とため息をついたことがあります。精神的にもしんどいのです。
 それが現実です。それでも、終わりは必ず来ます。

 元気でまわりに負担をかけないお年寄りなら、そんなことはないのです。
 だから、がんばって、心身の健康管理に力を入れます。

(つづく)

 104ページからは読者からの相談にえびすよしかずさんがアドバイスを送るコーナーです。
 腰痛の相談に対して、オレに相談するより病院に行ってください。ごもっともです。
 相談に対する答は、フツーなようで、フツーではありません。
 そもそも相談者は、えびすさんにまともな答えを求めていません。
 気持ちがいやされる雰囲気を求めています。
 認知症に関する相談もあります。えびすさんは、自分が認知書であるという自覚がありません。自覚がないから病気なのでしょう。
 
 労働者の基本的な意識を感じる受け答えです。
 『仕事は楽で給料が良くて休みが多い仕事がいい』
 それだけでは、生きがいを得られないので『世のため人のために働く』という動機付けをします。
 しっかりした動機付けがないと不祥事が頻発します。
 えびすよしかずさんはお金のことをあれこれ言いますが、基本的には、働くことを生きる使命(しめい。責任)と受け止めておられます。責任感が強いのです。

 えびすさんは、旅猿に出てくるお笑い芸人東野幸治さんのことを、東尾さんと呼び続けます。
 西鉄ライオンズでピッチャーをしていた東尾修さんを思い出しました。

 レビー小体型認知症:幻視。変動(ぼんやりしたり、しっかりしたり)。気持ちがへこむ。手足が震える。睡眠中に大声を出したり暴れたり。たちくらみ。便秘。
 脳神経細胞に「レビー小体」というたんぱく質ができる。レビー小体が脳細胞を壊す。

 根本敬(ねもと・たかし):漫画家。本にお名前が出てきます。

 キレる夫について妻から相談がありました。(昔は瞬間湯沸かし器と言っていました。すぐに激高(激しく怒る(いかる)のです)。
 パワハラ人間がいっぱいいます。大きな組織には必ずと言っていいほどパワハラ人間がいます。競争社会には、自分の思いどおりならないと暴れる人がいます。
 まわりの人は、そういう人が権力を握っているから黙って従っているふりをします。
 
 漫画の描き方の話が出ます。
 えびすさんは、定規を使うことが面倒くさいので、背景として、都会のビルは描かずに、山ばかり描いていたそうです。よくそれでギャラをもらえたものだと感心しつつあきれました。

 小学4年生のときにそろばんを習ったそうです。おかけで、ギャンブルの計算が得意だそうです。
 
 夫に、おしっこは、洋式トイレで座ってしてほしいという妻からの要望相談があります。
 たしかに、飛び散ります。わたしはずいぶん前から自宅では座ってします。
 ご主人も座ってやってください。

 酒もギャンブルもやらないのに貯金がないという相談があります。
 不思議です。ニコチンとアルコールをやる人は、たいていお金がたまりません。
 ギャンブルのことはわかりませんが、儲かっている人は見たことがありません。儲かったと自慢している人は、そのときの儲け以上に、これまでに損しているものです。(えびすさんはこの本の中で、これまでに1億円ぐらい負けたというようなことをおっしゃっています)
 えびすさんは、賭けマージャンで逮捕されて(レート(かけ金)はそれほど高いものではありません)テレビ出演を自粛していた時に、ラスベガスでギャンブルをやっていたそうです。まあ、病気ですな。(151ページに一時期(いちじき)週刊誌やワイドショーで話題になった検事長のかけマージャンの話が出ます。たしかえびすさんと同じレートでした)

 議員やテレビ局幹部の言動に関する批判があります。
 頭がおかしげな人がいっぱいいます。
 怒られそうですが、えびすさんの言うとおりだとも思えます。

 この先、生きていても将来に希望をもてないというような相談があります。
 生きていれば絶対いいことはあると返答されています。

 今年読んで良かった一冊です。

 夫から『ありがとう』という言葉を聞きたいという妻からの相談があります。
 『ありがとう』ぐらい言ってあげてほしい。自分はしょっちゅう言っています。それから『おいしい』も言うようにしています。

 この本は、認知症を素材にした社会福祉の本として仕上がっています。

(つづく)

 パート6まできました。
 平和島というところで、人生最後のギャンブルをするそうです。
 ボートレースです。

 えびすさんは、本は読まないそうです。本は読まないのに本を何冊も出しています。ふつう本を読まない人は、本を書こうとは思いません。
 仕事だから原稿は書けるのでしょう。インタビュー形式もあるのでしょう。
 おそらく、記者や編集者の手助けがあるのでしょう。

 この部分のコーナーでは、人生最後のギャンブルと誓いをたててボートレースに挑んでいますが、最後には、(これでギャンブルはやめる)「そんなこと言ったっけ」みたいに終わっています。
 えびすさんらしくて、いい終わり方でした。
 個人事業主のような仕事は、引退も復帰も自己申告で自由自在です。
 読み始めでは、お金を賭けずに見るだけならOKじゃないのかとも思いました。

 ボートレースって、去年・おととしあたり八百長の不祥事があった記憶です。給付金の不正受給もありました。どこも信頼を裏切られるような出来事ばかりです。うそつきは、人間の行いの本質なのでしょう。うそつきは人間の始まりなのです。

 えびすさんは、全国の競艇場に行ったことがあるそうです。
 路線バスの旅と性質が通じるものがあります。

(つづく)

 パート7は、2017年から2020年の「蛭子能収のゆるゆる人生相談」からのピックアップだそうです。

 ピラミッドや万里の長城を見たことがあるけれど、石を積み上げてあっただけだったという、えびすさんのコメントです。割り切ると悩みが消えます。
 『(自分のしまむらの商品券を奥さんに使われて)オレのモノは女房のモノ、女房のモノは女房のモノ、悲しいけれどそれでいい』というコメントもいい。
 現実的で納得できる回答が多い。
 忘れ物、心配性の人で家を出たあとすぐまた家に戻る人に対して、メモの効用を説かれています。そのとおりです。

 えびすよしかず語録ができそうです。
 『オレはほとんど買い物をしません。だってお金が減るから。何か買うぐらいだったら競艇資金にします。(そのくせ競艇では、かなり負けているふうです。157ページに奥さんから先月は21万円もまけたと叱られたという記述があります)』
 財布をもたず、ズボンのポケットに裸銭を(はだかぜに)を入れているらしい。財布の代わりが、銀行ATMのそばに置いてある銀行の封筒だそうです。(もうびっくりすることばかりです。こんな人でも働いて結婚して生活できているわけですからみなさん自信をもちましょう)
 路線バスの旅で、どこへ行ったか、ゲストがだれだっかを思い出せないそうです。どこへ行っても初めて来たという新鮮な気持ちをもてることが嬉しいそうです。(前回訪れたことがあるのに初めて来たと言う)
 ともだちなんていなくていいという趣旨の発言があります。友だちは、めんどうくさいそうです。奥さんがいればいいそうです。
 バス旅の相方太川陽介さんの奥さんがらみのトラブルの話まで出てきます。えびすさんが本能むき出しのコメントをされています。ただ、昔の人の働き方(給料が安かろうが、労働時間が長かろうがつべこべ言わずに働け)を押す強い気持ちには古い世代の人間として自分も共感します。事実は関係ないのです。太川陽介さんが「シロ」だと言ったら「シロ」なのです。事実よりも、これからも続ける信頼関係のほうが大事なのです。

 『オレは自分のこどもをたたいた経験がありません』(わたしもありません)
 『仕事は死ぬ気になってやるものではなく、死んだふりをしてやるものです』(名言だと思います。マニュアルに沿って人工知能ロボットのようになって労働者を演じればいいのです)
 『子どもとギャラは少し低く見積もっておいたほうがいいことがあるかもしれません』(同感です)
 (自分がこれから先、出たい旅番組として)『歩かないで、知らない人と会話もしないで、その土地のファミリーレストランでミックスグリルを食べて、全国各地の競艇場を巡る旅』(たしか、千鳥の「相席食堂」で淡路島を旅して、ボートレース場にも行かれました。ギャンブルの結果は、負けたと思います)

 相談として『彼氏の口癖が「死ね」です』とあります。答は、すぐ別れなさいです。(昔、ドーム球場へプロ野球観戦にいったとき、階上席からグランドの選手に向かって、「死ねー」とか「殺せー」を連呼する若い男性がいました。隣席の彼女がたしなめてもやめません。またあるときは、大相撲を観に行ったときに、やはり「ぼこぼこにしろー」とか「いてまえー」と土俵に向かって大声をあげる若い男性ふたり組を見たことがあります。いずれも脳みその中にゆがみがある人たちです。即刻、きっぱりと別れたほうがいい)

 『コロナでフリーの仕事がなくて困っている』という相談があります。アドバイスがまともで感心しました。求職活動をしながら、食事をきちんととりなさいと、規則正しい生活の重要性を説いておられます。生活の正しいリズムを常日頃からキープしておかねば、すみやかに働くことはできません。

 不倫の相談があります。不倫はするなと説いておられます。失うものが大きい。外でエッチするより家なら女房とタダでできるというのはえびすさんらしい。

 自分はがんばらないほうがいいと言ったことはないのに、世間からは、がんばらないほうがいいと言ったと思われている。言ったことはないそうです。『オレは、子どもを育てるために必死になって金を稼ぎました』と強く主張されています。

 生命保険の相談があります。
 長い人生をふりかえってみて、いらなかったなと思うもののひとつが『生命保険』です。

 読んでいると、奥さんの偉大さがわかります。
 たいしたものです。よっぽどのえびすさんファンなのでしょう。
 夫婦というものは、なにかひとつでも相手に尊敬できる部分があれば、婚姻を継続していけます。

 エッセイスト(随筆家)になるにはどうしたらいいですか? という質問があります。
 まずは日記を書きなさいとアドバイスがあります。
 的確なアドバイスです。

 30歳で女性経験がないという相談があります。(逆もあるのでしょう)
 気にするなというアドバイスのあと、自分は吉祥駅(きちじょうじえき)の近くにある井の頭公園(いのかしらこうえん)の森の中でやった。金がなかったというような思い出話があります。まあ、すごい人生相談です。

 たまに、末尾が『ま、いっか!』の決めゼリフで終わります。赤塚不二夫漫画天才バカボンのパパの『これでいいのだ』を思い出します。『これでいいのだ』と思えば、何でも肯定できて、前に進めます。

 上司にお金を貸したら返してくれないという相談があります。
 だれしも一度は体験するような知人間の貸し借りの話です。
 いやなことはいやだと言えるようになったら立派なおとなです。
 えびすさんは、ビートたけしさんがえびすさんの家に行きたいという申し出を断っておられます。

 実質母子家庭だった長崎県でのことが書いてあります。父親と兄は遠洋漁業、姉は集団就職で名古屋へ行かれています。たぶん中学を出て、蒸気機関車に乗って名古屋まで行かれた時代の人でしょう。
 家族がみんなそろって長い間いっしょに暮らせる家庭は幸せです。そうでない家も案外多いのが現実です。

 えびすさんは、募金はしない主義です。それもいいと思います。
 一度すると、何度も募金の催促が来たりもします。

 奥さんから『なめとんのか、コラ』と怒鳴られたことがあるそうです。
 奥さんのお気持ちがわかります。

 『ゴーンさんのような大富豪はそうとうなドケチだと思いますよ』
 ドケチだからお金がたまるということはあります。

 不登校の中学2年生女子について相談があります。
 自分からのアドバイスです。
 人生は自分にとって快適な居場所探しです。
 高校を卒業したらたいていは、自分の好きなところに住めます。(昔は中卒でもそうできる環境でした)
 それまでは日本各地の土地を見て、候補地を考えるのも楽しい作業です。
 最低限の読み書き計算の能力は身につけておいたほうが自分のためです。楽しいこともいっぱいあるはずです。なんとか学校へ行って、卒業はしましょう。

 クレバ:ラッパー、シンガーソングライター。えびすよしかずさんの奥さんが好きだそうです。

 ながながと時間をかけながら読んでいます。
 まあ、競艇(きょうてい)キチガイですな。

 ときどき施設に宿泊するショートステイを利用しているそうです。
 奥さんが介護から解放されて休養できるようにという奥さんのためなのでしょう。
 ご本人は施設で泊まるのはさびしいそうです。

 「おわりに」でご本人のコメントがあります。
 文章を読んでいると、認知症のせいなのか、二重人格のような状態になっている感じがします。
 日付は、2021年4月です。
 ご本人のお写真は、七福神のえびすさんか、ほていさんのようです。
 なかなかいい本でした。
 力がこもっていました。

 えびすさんの本を読んでいて思い出した本2冊です。
『ペコロスの母に会いに行く 岡野雄一 西日本新聞社』
 これは漫画で、ドラマや映画、舞台劇にもなった作品です。
『明日の記憶 荻原浩 光文社文庫』
 こちらは、だんだん記憶がなくなっていく男性のお話です。映画にもなりました。名作です。  

Posted by 熊太郎 at 09:54Comments(0)TrackBack(0)読書感想文

2022年06月28日

江戸時代の瀬戸内海交通 倉知克直

江戸時代の瀬戸内海交通 倉知克直(くらち・かつなお) 吉川弘文館

 昔、四国香川県の高松港から小豆島(しょうどじま)にある土庄港(とのしょうこう)をフェリーで往復したことがあります。小豆島では一泊しました。
 フェリーの甲板から瀬戸内海をながめながら思ったことです。
 瀬戸内海は、海というよりも湖のようだ。以前何度か観たことがある栃木県日光市の山奥にある中禅寺湖(ちゅうぜんじこ)の湖面に似ている。
 瀬戸内海は、静かで、穏やかな(おだやかな)海面でした。

 その後、安芸の宮島(広島県)を数回訪れ、あわせて、広島県尾道市などを自家用車で巡って旅をしたときになどに瀬戸内海を見ました。

 歴史の本や小説を読むと、昔は、船が、現在の車の役割を果たしていたのだと理解できます。
 海上交通を利用して移動することが移動しやすい手段だったのです。

 そんなもろもろのことを考えていたころにこの本と出会いました。
 読む意欲が生まれたので、読んでみます。

(つづく)

 船と言えば、今年思いだすのは、知床半島遊覧船沈没事故です。
 映像では邦画「男はつらいよ フーテンの寅さん」の知床旅情とか、東野&岡村の旅猿ロケのシーンを思い出します。それほど、危険な海域とは思えませんでした。
 信頼を裏切られた感じがあります。事業主の脳みその中には、金のためという意識しかありません。この事故は、全国の同業者へのイメージダウンにもつながりました。

 まず、1回目の本読みです。ゆっくり全ページをめくります。
 この本では最初に書いてある文章が気に入りました。
 『瀬戸内海は古くからヒトやモノが行き交い、知識と文化が交流する場であった……(さらに東南アジアの世界とも直接結びつきがあったと記述は続きます)』

 豊臣秀吉、徳川家康の国内統一後、日本列島を江戸と大阪を結んで船で回る東廻り航路(ひがしまわりこうろ。1670年整備)、西廻り航路(1672年整備)ができた。
 
 先日千鳥の「相席食堂」という番組でダンサーの菅原小春さんという女性が旅をした『牛窓』という地名が本に出てきます。(岡山県瀬戸内市牛窓町うしまど)菅原小春さんはなんだか激しい人でした。びっくりして笑いました。

 38ページあたりをながめていて、自分が生まれて初めての記憶が『海』から始まっていることを思い出しました。
 たぶんまだ4歳半ぐらいでした。海のそばにある家で暮らしていました。

 48ページあたりには、海運事業にからむお金の話が書いてあります。
 日本郵船のような株式を思い出します。

 52ページに『湊(みなと。港)』をもたない藩の船と蔵本とあります。
港は、現在の鉄道駅のようなものだろうとイメージが湧きました。
 海難事故は、交通事故のようなものでしょう。
 海難事故に関して考えたのことは、お金もうけも命がけです。
 
 村上水軍とか九鬼水軍(くきすいぐん)、壇ノ浦の源平合戦などが思い浮かびます。
 
 ページをめくっていると、海難事故の歴史書を見ているようでもあります。
 ジョン万次郎とか音吉を思い出します。

 ジョン万次郎:1827年(江戸時代)-1898年(明治31年)71歳没。高知県出身。英語通訳として江戸幕府で働く。14歳のときに漁師仕事で漂流、ハワイを経由して、アメリカ合衆国に渡り、その後24歳ぐらいで帰国。アメリカ合衆国の捕鯨船の船長に養子のようにして育ててもらった。1860年に咸臨丸(かんりんまる)に乗船して、勝海舟の補佐を務める。坂本龍馬に米国のことを教えた。

 音吉(おときち):1819年(江戸時代)-1867年(1868年が明治元年)49歳没。初めてイギリスに帰化した日本人。現在の愛知県知多郡美浜町生まれ。1832年13歳ぐらいのころに14か月間太平洋を東に漂流。アメリカ合衆国のインディアンもしくは、イヌイットに救助される。その後、イギリス船に奴隷として売り飛ばされてイギリスに移り住んだ。1837年に日本に帰国をしようとしたが、三浦半島付近で乗船していた船が、江戸幕府の砲撃を受けた。その後いろいろあって、帰国をあきらめて、シンガポールで亡くなっている。福沢諭吉と面識あり。

 自分なりに思うことは、江戸幕府は、漂流者を、外国の文化をもちこむ危険な人物としており、基本的に漂流者の帰国を拒んでいます。
 人を人とも思わない。人よりも組織(江戸幕府)の維持優先です。
 たぶんほかにもいたであろうと思われる漂流者たちも家族に再会したかったことでしょう。

 191ページに米の輸送とあります。
 米どころ北陸のお米を、船を使って、全国に運ばねばなりません。
 あわせて、全国各地の名産品、文化とか技術とか情報とかも流通させます。
 塩、海産物、材木、石材、農作物、手工業製品などと書かれています。

 あとがきには、筆者は、海が好きで、岡山県に41年間住んでいると書いてあります。
 
 (つづく)

 さて、2回目の本読みをします。
 
 船は、帆船です(はんせん)。風の力によって進みます。いまどきのエコロジー(環境に優しいエネルギーです)
 木綿帆(もめんでつくられたほ)と筵帆(むしろでつくられたほ)があります。
 北前船(きたまえせん。日本海海運)は、北海道から肥料となるニシンを運んでいたそうです。

 海難事故の数は14年間に600件近いとあります。年間43件ぐらいです。天候が良くない時が多かったのでしょう。
 
 いま、61ページまで読んだところですが、おもに、岡山県の歴史です。
 戦国時代のことが書いてあります。
 やはり、戦争は、まちを衰退させます。
 朝鮮半島との交流が盛んだったことがわかります。1624年(関ケ原の合戦が1600年)に朝鮮からの使節団を各藩の接待で受け入れています。使節団は何度も日本を訪れています。遣唐使とか遣隋使方式の反対の立場で日本が外国を受け入れていたようです。
 先日動画配信サービスで邦画「関ケ原」を観たのですが、豊臣秀吉の朝鮮出兵とか、毛利家のこととか、ほかのことと重なる記事があります。
 熊本県・長崎県の天草の乱(あまくさのらん1637年)があります。島原城は見学したことがありませんが、天草の富岡城は見学したことがあります。ぼんやりグーグルマップを見ていたのですが、天草四郎時貞が島原へ行くために乗船した地という場所があり、自分は中学生のときにその場所に立っていたことがあるということに、半世紀以上たった今ごろになって気がつきました。オレンジ色の夕日が美しいところでした。
 江戸幕府は、キリスト教を布教しようとするポルトガルと国交を断絶して、キリスト教の布教はしないオランダと交易を続けます。
 
 当時の港のつくりについて、細かな情報があります。
 読んでいて、ああ、こういう世界があるのかという発見があります。

 加子とか、水主(かこ):水夫のこと、船員

 船の売買が幕府に管理されています。
 なんとなく、役人と商人との間で、賄賂のやりとりがありそうです。(わいろ:不正行為の代償として金銭等のやりとりをする)
 
 池田恒興(いけだ・つねおき):織田家重鎮。1536年-1584年。49歳没。犬山城主、大垣城主など。

 津山藩:岡山県津山市。

 宇喜田秀家(うきたひでいえ):1572年-1655年。安土桃山時代の武将。
 
 海難事故の記述が続きます。
 木造船です。
 板子一枚下は地獄ともいいます。(いたこいちまいしたはじごく。海の事故は怖い。危険です。その分、給与は良かったのでしょう。たぶん)
 気象予想が大事です。
 台風が海難の一番の原因でしょう。夏から秋が危ない。
 幕府や藩の役割は、船の安全運航推進です。

 助け舟を出すとあります。
 救助を頼まれたら助けるのです。
 法令が必要です。
 
 克明な遭難の記録が残っているようです。
 米の運搬船が主な輸送船です。船が大型になるほど操作がむずかしい。
 ニシンというのは、食べ物として使うのではなく、肥料として使うことは初めて知りました。北海道小樽の鰊御殿(にしんごてん)もそのような目的で鰊を捕っていたのでしょう。良質な肥料になったそうです。

 自分には地名と位置を考える地理がぼんやりとしかわからないので、ぼんやりとした読書を続けています。
 けっこう海難事故が多い。
 四国にある金比羅(こんぴら)参りの船の事故も多かったそうです。
 以前読んだ本を思い出しました。犬が飼い主の主人の代わりに、江戸から四国にあるこんぴらさんまで、お参りをしに行くのです。『こんぴら狗(こんぴらいぬ) 今井恭子(いまい・きょうこ) くもん出版』歴史上の事実です。

 118ページに、当時の船の事故は、現代の交通事故と同様と書いてあります。
 命が、灯(ともしび)のようにはかなく消えていきます。

(つづく)

 海難事故の話が終わって、物流のお話になりました。

 江戸時代のこととしての説明に興味が湧きます。
 人や物の移動には、陸上と海上があった。徒歩、馬、船です。
 船は大量のものを運ぶことができたが危険があった。
 船は物を運ぶ。陸上は人が移動するという区分けができた。
 人のための街道宿場があって、船のための船宿があります。
 船で運ぶもので多いのは、お米です。
 米が税金代わりということもあって(年貢米)、税の果たす役割が大きいことに気づきます。現代も同じです。会費を集めて会員のために使います。
 船だと『損害保険』の考えが発想できます。
 163ページに『分散』という取扱いが出てきます。船主と荷主が共同で海難事故による損害を補填(ほてん)する制度です。
 債務者の資産を債権者で分割する。分散=破産だそうです。
 荷物の損失は荷主が、船の損失は船主が負う。
 きっと、事故が無ければ、莫大な資金を売ることができる海運事業だったと思います。もうかっているときにもうけをしっかりためておいて、万が一の事故が起きたときのために準備していたことでしょう。

 国旗「日の丸」の起源になるお話が出てきます。船に『官幟(よみはたぶん「かんし」ではなかろうか。幕府の幟(のぼり)』が日の丸のデザインだったそうです。以前、東野&岡村の旅猿で、薩摩藩が日の丸の旗を付けた船、たしか昇平丸という名称の船で江戸に行ったことが日本の国旗制定のきっかけと紹介されていました。(記録を見つけました:1855年島津藩の昇平丸という船が江戸の品川に入港した時に、日の丸を掲げて入港したそうです。(明治維新が、1868年)
 この官幟が立っている船は、入港税という税が免除されたそうです。

 船の積み荷に鯨油があります。江戸時代から世界的に捕鯨があったことがわかります。
 米国の捕鯨船に助けられたのがジョン万次郎でした。

 島や湊(みなと。港)の話とお金の話が続きます。

(つづく)

 おおまかにですが、全体を読み終わりました。
 文章を読みながら、いろいろ想像したり、空想したりしました。
 ひとつは、船の設計図のイメージが脳裏にありました。
 きっと職人さん気質の強い当時の人が、きちんとていねいに設計図の線を引いたことでしょう。西暦1600年代のことです。
 全体的に海難事故のお話とか記録が多かったのですが、海が荒れる日ばかりではなかったと思います。すがすがしい青空が広がって、海は穏やかにきらきらと輝く、夜は満点の星空とか月光か、静岡当たりでは雪をかぶる富士山が見えたとか、風光明媚(ふうこうめいび。自然の眺めや景色が清らかで美しい)な日本の海岸線の景色を当時の船員は満喫できたことと想像します。

 87ページにある図9には能登半島のさきっぽに『狼煙(のろし)』という地名があります。たしか、以前太川陽介&えびすよしかずローカル路線バス乗り継ぎの旅で、ゴールまで、最後に乗った路線バスの行き先が『狼煙(のろし)行き』でした。(記録にありました:太川&えびすのローカル路線バス乗り継ぎの旅 第14弾 名古屋から能登半島最北端の岬 2013年4月放送分 ゲストはその後芸能界を引退された森下千里さんでした。路線バスのチャレンジは、無事成功されています)
 この部分を書いたあと、最近ですが、現地で大きな地震が起こりました。びっくりしました。死傷者がなくて良かった。

 1600年代の船は、今でいうところの飛行機のような気がするのです。
 風にのってしまえば、歩くよりも早い。
 列車のようでもあります。
 大量の食糧を輸送することができます。
 運搬する品物として、米、塩、大豆、小豆、畳表、松葉、薪(まき)、干し鰯(いわし)、紙、車、小間物、海産物、材木、石材などと紹介があります。

 地名としては、岡山県の『牛窓(うしまど)』が何度も登場しました。
 対象期間は、1673年~1688年が中心でした。
 現代においても船舶の安全運航を祈願いたします。
 1682年:井原西鶴 好色一代男
 1683年:八百屋お七の放火
 1685年:お犬様五代将軍徳川綱吉。生類憐みの令(しょうるいあわれみのれい)
 1685年:バッハ誕生
 1687年:ニュートンが万有引力を発見
 そのような時代背景がありました。  

Posted by 熊太郎 at 06:57Comments(0)TrackBack(0)読書感想文

2022年06月20日

クジラの骨と僕らの未来 中村玄

クジラの骨と僕らの未来 中村玄(なかむら・げん) 理論社

 本の帯に『クジラ博士の研究航海記』と書いてあります。
 今年5月、自分は長野県松本市にある旧制松本高等学校の校舎を見学しました。亡くなった作家・精神科医の北杜夫さん(きたもりおさん)が在籍していた学校です。(1945年6月から(昭和20年)当時18歳。1947年に東北大学へ進学)どくとるマンボウという愛称で『どくとるマンボウ航海記』シリーズを高校生のときに楽しみました。きっとこの帯のキャッチフレーズは、そこからきているものなのでしょう。

 まずは、全体のページを1ページずつ最後までゆっくりめくります。
 プロローグがあって、第一章から第三章まであります。最後が、エピローグです。
 プロローグ:はじめに
 第一章:墓あばきから始まった
 第二章:南氷洋航海記
 第三章:クジラの骨と僕
 エピローグ:おわりに

 第一章の目次に『そうだ、南米に行こう!』とキャッチフレーズ(目に留まる文節)が書いてあります。
 観光旅行を誘うコマーシャル『そうだ、京都行こう!』からきているのでしょう。(JR東海、1993年からのキャッチフレーズです。平成5年)

 『骨』です。
 なんとなく、『解剖(かいぼう)』のにおいがします。

 第一章 『墓あばきから始まった』です。さし絵には『ハムの墓』と書かれたお墓を少年がシャベルで掘り起ししています。ハムはハムスターなのでしょう。
 その絵を見て、思い出したことがあります。
 自分の娘や息子たちがまだ小学生だったころ、ペットとして飼っていた亀が死にました。
 こどもたちは、当時住んでいたマンションのそばにある里山に亀の死体を埋めてお墓をつくりました。
 その後、何か月かたったあと、何をどう思ったのか知りませんが、こどもたちは、死んだ亀を埋めたお墓を掘り起こしました。相当不気味なものを見たようで、こどもたちは、ゲロを吐きそうになったと恐れおののいていました。

 なんだか、ホラー(恐怖小説)作品を読む前のような心理で、この本を読み始めます。

 ざーっと文章に目をとおしながら読んでいますが、作者は、かなりユニークな人のような感じです。(ユニーク:あまりいない人)

 99ページにクジラのさばき方の絵があります。
 解体ショーです。
 
 最後に作者紹介があります。
 小学生のころは、ダンゴムシが好きだったようです。
 先日読んだ読書感想文の課題図書『セカイを科学せよ! 安田夏菜(やすだ・かな) 講談社』にダンゴムシが好きな少年少女のことが書いてありました。

 さて、それでは、これから最初に戻って読み始めます。

(つづく)

 読み終わりました。
 狭い世界の出来事を深く語る本の内容でした。
 これから、大学関係で学者になりたい人、公益組織で研究者になりたい若い人向けのアドバイス書物です。
 いわゆるオタク(特定のことを極める人)を励ます本だと受けとめました。
 著者の大学卒業までの二十年間ぐらいのことが書いてあります。

 『鯨類額(げいるいがく)』を極める。(きわめる)
 自分が小学校低学年ぐらいまでのこどものころ、クジラをよく食べていました。
 熊本県の当時離島だったところで暮らしていたのですが、(現在は橋がかけられている)半農半漁の集落でした。
 冷凍クジラ肉をスライスした刺身が、冷たくておいしかった記憶が残っています。
 今どきは、捕鯨反対運動もあってか、クジラを食べたことがある人は少なくなったと思います。

 学者になるということは、学問の分野にもよるのでしょうが、一般サラリーマンとは暮らし方が違う暮らしを送ることになる人もいます。
 調査のために家をあけることが多いと、家族との交流をする時間が少なくなります。
 そういうことも考えながら学者をめざしたほうが無難です。

 中学生の時の著者のあだ名が、爬虫類(はちゅうるい)が由来の(ゆらい、起源)の『ハチュウ』でイヤだったそうです。
 先日テレビで、あだな使用禁止の小学校のことが出ていました。賛否両論あるのでしょうが、いやな人がひとりでもいれば、やめたほうがいいのでしょう。
 うちの妻も小学生のときに、肌の色が白かったので「しろぶた」と呼ばれるのがイヤだったそうです。わたしは肌の色が白い人が好きだったので、妻を好きになったと話したことがあります。

 『カナヘビ』のことが出てきます。トカゲのような姿をしたヘビです。同じく読書感想文コンクールの課題図書になった『セカイを科学せよ! 安田夏菜(やすだ・かな) 講談社』で、昆虫類生きもの好きの女子中学生がカナヘビがらみの言動をしていました。
 あわせて、グリーンイグアナのことが書いてあります。たしか、名古屋の東山動物園に自然動物館という建物があって、そこで飼育されています。爬虫類(はちゅうるい)や両生類(りょうせいるい)をおもに展示してある建物です。
 
 著者は、中学2年生で『フトアゴヒゲトカゲ』を飼います。オーストラリア原産です。
 本体1万9800円、必要な水槽等を準備して3万円以上を自分の貯金でつぎこみました。
 中学校で変わり者扱いをされますが、その後、大学へ行くと、もっとすごいメンバーがゴロゴロいます。全国からお仲間集合です。
 
 師弟関係があります。中学校の理科の女先生がすごい。牛や豚を生徒の前で解体します。
 すごい授業です。
 牛や豚は、一般的には『食べるための家畜』です。商業用家畜というようなことを聞いたことがあります。愛玩動物(あいがんどうぶつ。ペット)ではありません。

 25ページに著者が飼育した動物類の絵と文章があります。
 わたしも小学生の時はたくさん生き物を飼っていましたが、その数は、全然負けています。

 『ハムの墓』は、やっぱりハムスターのお墓でした。
 ゴールデンハムスターです。
 うちで小学生だったこどもたちが飼っていたのは、ジャンガリアンハムスターだったような記憶です。
 著者は、死んだハムスターの墓を掘り起こして、白骨化したハムスターの骨格標本をつくりあげています。著者は当時中学生です。すごいなあ。

 意外だったのは、高校受験で第一志望の公立高校で不合格になっていることです。第二志望の私立高校へ入学されています。高校受験の失敗が、人生全体の失敗になるわけではないのです。
 著者は、高校一年生の秋に、交通事故死したタヌキの骨格標本をつくっています。タヌキとアナグマの食べた時の味の違い、ムジナという呼び方については、初めて知りました。

 高校の理科室にあるウシガエルのオタマジャクシの液体漬けの標本のことが出てきます。
 昔、うちの息子が小学生だった時に、愛知県の佐久島(さくしま)というところで夏休みのこども向け一泊二日の活動に参加してつくったウニのホルマリン漬けみたいなビンが、今も本棚にあります。そんなことを思い出しました。
 透明骨格標本というものの説明が本にあります。自分はそういうものを見たことがありません。もう、オタク(マニア、ファン)の世界です。
 大学の話が出てきたところまで読んで、大学は、目的をもって行くところだと判断します。資格をとるとか、学者で食べていくとか、学閥(がくばつ)を利用して就職するとか、目的が必要です。ただなんとなく行くのならやめたほうがいい。

 『そうだ、南米にいこう!』という文章の項目からは、南米には生き物がたくさんいるからだという理由と意欲が伝わってきます。
 母親が高校時代に外国に留学していたことがあるそうです。たいていは、親がしたことをこどももします。
 著者の行き先は、アルゼンチンです。生き物の宝庫だそうです。アルゼンチンは、治安が良くて、美人が多くて、お肉がおいしいそうです。
 同じ南米でもブラジルの都市は治安が悪そうです。アルゼンチンの治安がいいのはちょっと意外でもあります。首都ブエノスアイレスの意味は「いい空気」だそうです。
 スペイン語が出てきます。
 テンゴ アンブレ:おなかがすきました。
 ソコーロ:助けて!
 ドンデエスタエルバーニョ:トイレはどこですか?
 同じく読書感想文の課題図書で、スペイン語がちょこちょこ出てきた本に『海を見た日 M・G・ヘネシー/作 杉田七重(すぎた・ななえ)/訳 すずき出版』がありました。
 世界各国から来た60名近くの留学生です。そのうち日本人は6人だったようです。
 ホストファミリー:外国からの留学生を受け入れて世話をしてくださるご家族

 アルゼンチンでの滞在期間は長い。高校三年生のときです。一年間の外国留学でした。
 著者は帰国して高校三年生を2回体験しています。
 東京水産大学に合格できて良かった。

 ビスカーチャ:うさぎみたいな生き物
 マリネ:肉、魚、野菜をつけ汁(酢やレモン汁)につけこむ。ビスカーチャを食べるときマリネにする。パンにはさんで食べる)

 49ページに、骨を観察する絵があります。

 アルゼンチンで見られるクジラとして『ミナミセミクジラ』:体長18メートル、体重18トン以上になる。

 著者は、自宅の台所で、魚の骨格標本をつくります。
 大きなカツオの頭蓋骨が始まりでした。
 同じもの(カツオの頭)をふたつ用意して取り組んでおられます。同じものがふたつあれば、心の余裕も十分です。
 多種多様なお魚がいますが、構成している骨の種類と個数はみんな同じだそうです。知りませんでした。祖先が同じなのです。

 マグロの解体ショーが出てきます。
 次回のテレビ番組『旅猿』のテーマが、和歌山でマグロの解体ショーに挑戦でした。ジミー大西さんと岡村隆史さんがチャレンジします。
 岡村隆史さんは、大阪堺の包丁づくりの会社で、何万円もするいいマイ包丁を購入しました。
 見るのが楽しみです。

 64ページに『ないわホネホネ団』による『ホネホネサミット』と書いてあります。
 いろんな世界があるのだなあと感心しました。
 『ホネの水族館』という展示があります。ふーん。たくさんの魚の骨が展示されています。

 大学4年生で、マッコウクジラの解体に立ち会います。
 場所は茨城県大洗海岸です。(おおあらいかいがん)
 自分は小学生の時に大洗海岸へ行ったことがあります。思えば、放浪癖のある亡くなったオヤジに連れられて、こどものころは、日本各地のいろんなところに行きました。

 輪読(りんどく):同じ本を複数で読んで、感想を各自が発表して、本の内容を分析、検討する。勉強会です。

 沖縄美ら海水族館(ちゅらうみすいぞくかん)が出てきます。
 沖縄海洋博(昭和50年)のあとの水族館を見学したことがあります。
 
 ブリーチ:クジラのジャンプ

 文章を読んでいて思ったことがあります。
 先日の知床半島遊覧船沈没事故以来、観光地での乗り物に危機感をもつようになりました。人に対する不安感も同時に生まれました。
 信頼関係がなくなったら、この世ではなにもできなくなります。

 クジラというのは、目が見えているのか。
 クジラのほうが人間に寄ってきます。クジラの観察会ではなくて、クジラによる人間の観察会みたいな雰囲気になってきました。
 クジラには知能があります。

 朝が早い生活です。
 クジラとかお魚の研究は早起きでなければなりません。
 鮎川(地名):宮城県牡鹿半島の南にある港
 
 きちんと記録をとって残す人の文章です。

 今度は、ミンククジラです。小型。体長7メートルぐらい。
 深さ2メートル、3×4メートルぐらいの穴をほって、肉がついたクジラの骨を埋めます。
 2、3年後に掘り起こして、クジラの骨格標本にします。いいものをつくるのには時間がかかります。

 尾籠(びろう):不潔、無作法(ぶさほう)

 98ページから99ページにかけて、クジラの解体のしかたが絵で描いた説明があります。
 死んでいるからモノ扱いです。

 第一章が終わりました。
 第二章から南極です。
 大学4年生の中頃に南氷洋行きの話が舞い込みます。前向きな著者ですから当然申し込みます。
 南極海鯨類捕獲調査船団(なんきょくかいげいるいほかくちょうさせんだん)によるクジラの調査に参加します。調査母船、三隻(せき)の目視採集船、二隻の目視専門船、けっこう大所帯なことに驚かされました。総勢230人ぐらいです。
 日本の山口県下関市を2006年11月に出発して、翌年3月末に帰国します。帰国まで、日本の港を出たら、船から地上に降りることはありません。好きでなければやれないことです。5か月かかります。
 山口県下関の港の話あたりには、旅のだいご味があります。(期待、おもしろさ、楽しみにしている気持ち)。下関あたりは何度か行ったことがあるので、文章を読みながら、光景を想像することが楽しい。
 106ページにある調査母船の構造図は、まるで、ひとつのまち(町、街)のようです。
 
 南極まで、時速約26キロメートルで船は進みます。1か月ぐらいかかっています。南半球ですから、12月ころは夏です。
 なんでもそうですが、まずは好きでないと続きません。対象物が好きだったり、その行為が好きだったりします。
 お金はその次です。
 根気がいります。(こんき:続ける気持ち。長く続ける気力)

 118ページのおふろに入っているときの絵がおもしろい。
 船ですから揺れます。おふろも揺れます。

 フィールドワーク:現地調査

 調査捕鯨でクジラを捕獲して観察、分析をします。クジラの命は失われます。3か月で800頭を調べるそうです。(この部分を読んでいて、なんとなく、捕鯨反対団体の活動のことが頭をよぎりました)
 読んでいると、調査員のほうも命がけです。
 クジラも暴れます。
 先日読んだ課題図書『建築家になりたい君へ』を書いた建築家の隈研吾さん(くま・けんごさん)も若い時にアフリカで原住民の住む住宅調査をされています。
 運が良かったのだと思います。殺されても仕方がないような立ち入った調査を現地の集落で行っておられました。

 一頭目のクジラの体に日本酒をかけて、これからの調査の無事をみんなで祈ります。
 太古の時代、おそらく卑弥呼(ひみこ)がいたときには必ずあった祈りの儀式です。
 神さまは目には見えませんが、神さまは存在すると信じたほうが安心して暮らせることもあります。
 儀式は大事です。

 クジラを始めとした南氷洋の生きものの食べ物がナンキョクオキアミです。
 エビのように見えます。体長が4センチほどだそうです。
 どうしてオキアミという名前なのだろう。
 調べました。『アミ』は、日本の古い言葉でエビのことだそうです。沖にいるエビだからオキアミだそうです。驚いたのは、ナンキョクオキアミは、名古屋港水族館にいるそうです。何度も行ったことがある水族館です。ペンギンばかりを見ていました。

 ほーっと感心したことがあります。
 クジラは眠らないというような記述があります。正確には眠るのですが、『半球睡眠』というそうです。右脳と左脳が交互に眠るそうです。

 いろいろ読み進めていると、クジラ解体のグロテスクなシーンも出てきます。
 捕鯨反対の人が読んだら、さらに捕鯨に反対する気持ちが強まりそうな記述内容です。調査捕鯨の必要性と重要性を補記しておいたほうがよさそうなこの本です。
 そう思いながら読んでいたら、やっぱり、141ページで、『シーシェパード』が出てきました。2月9日のことです。
 かなり過激な抗議行動があります。シーシェパードの人たちは、クジラがかわいそうという人情で動いているのでしょう。
 臭い爆弾みたいなものが調査船に投げ入れられます。びんの放り投げ攻撃です。発煙筒も投げ込まれます。
 読んでいると、捕鯨に反対しているというよりも、騒いであばれて、ストレス解消をしているようにも思えます。さわぐことで、気持ちすっきりです。
 シーシェパードの乗組員が海に転落して、捕鯨団が乗組員を救助に向かっています。それでもシーシェパードのメンバーは、調査船への攻撃をやめてくれません。なんなんだろう。そのことは、テレビニュースで見た覚えがあります。

 それも、過去のことになってしまいました。
 2018年12月に日本は国際捕鯨委員会を脱退して、南極での捕鯨をやめて、日本近海だけの捕鯨をすることになりました。
 著者の考えでは、南氷洋のクジラ資源は、世界の食糧不足に備えるための資源だと残念がっておられます。
 ウクライナが戦争で穀物輸出ができず、世界の貧困地域での食糧危機が予想されている今、クジラの食料資源が必要になるかもしれないとこの本を読んでいて思いました。

 最後は、クジラの骨の話に戻ります。
 アルゼンチンでの活動と表彰歴について書いてありました。  

Posted by 熊太郎 at 06:35Comments(0)TrackBack(0)読書感想文

2022年06月17日

高齢ドライバーの意識革命 安全ゆとり運転で事故防止 松浦常夫

高齢ドライバーの意識革命 安全ゆとり運転で事故防止 松浦常夫 福村出版

 今から15年ぐらい前に、農家が多い地域で働いていたことがあります。
 おばあさんがですね、かなり高齢のおばあさんが、軽トラを運転しているわけです。軽トラを杖代わりに(つえがわりに)しているのです。荷台が付いた軽自動車のトラックです。
 そのときは、高齢者の運転の危険さに気づけませんでした。
 なにせ、ゆっくりとしか走れないのです。ゆるゆる走っているから安全だろうと、そのときは、思っていました。おばあさんが、ゆっくり運転しているとわかるから、ほかの車は気をつけながら追いぬいていました。田舎(いなか)だから、顔見知りが多いのです。お互いに、そのあたりの地主関係親族の一員だったりもします。
 そのときは、交通事故のことよりも、自分が思ったのは、家に軽トラがある家は、お金持ちだということです。一般サラリーマンの家の駐車場に、自家用軽トラックは駐車してありません。
 農家には、まず乗用車があって、次にセカンドカーの軽自動車(4人乗り)があって、さらに農作物や農機具を運搬する軽トラックがあって、農耕用の耕運機などがあるのです。車は、ひとりに1台の所有だったりもします。
 交通の便がとても不便なところだったので、わたしも車通勤をしていました。自家用車だと自宅から職場まで30分もかからないのですが、鉄道や徒歩だと、大まわりで乗り換えもあって、片道1時間半ぐらいかかりました。
 毎日、車通勤で、プライベートな休みの日でも車で移動するようになって、結局人事異動で職場を変わる5年間ぐらいは、毎日ハンドルを握っていました。車のハンドルを握らなかった日は、5年間のうちで、一日もなかったという記憶です。
 それだけ、田舎では、移動手段として、車が必要なところに住んでいる人がいるということです。それは、高齢者になってからも変わりはありません。ゆえに、なかなか、運転免許証の返納をしてくれません。
 身内は毎日ヒヤヒヤものです。いつ、自分の親たちが、交通事故の加害者になるかもしれません。死亡事故を起こしたら、運転をやめさせなかった家族一同が、社会的制裁を受けることもあります。
 そのうち、自分も運転をやめてくれとこどもたちに言われる時期がくるのでしょう。さからう気持ちはありません。ただ、さみしくはなります。移動の自由の確保は、心の健康を保つために大事です。
 そんなことを思っていたら、この本に出会いました。読んでみます。

 『補償運転』この言葉がキーワード(鍵を握る単語)だそうです。
 単純にいうと「ゆとりある運転」のことだそうです。言い換えて『安全ゆとり運転』を強調されています。
 加齢による運転技能の衰えを保障するための運転をする。

 自分は、車の運転は下手(へた)くそだと思っています。だから、慎重に運転します。
 喜怒哀楽の感情を殺して、自分の意識をロボットのように「無」にして、機械的にハンドルやアクセル・ブレーキ操作をすることに努めています。目標と目的は『安全』です。『お金』とか『速さ』とか『効率』ではありません。
 前方をしっかり見て、左右にある車線の枠からはみでないようにして、前の車がブレーキを踏んで赤いブレーキランプが点灯したら、自分もブレーキペダルを踏むようにして、絶対に追突事故を起こさないようにしています。
 本当はいけないことかもしれませんが、うしろは、ほとんど見ません。うしろに車が付くと気になるので見ないようにしています。それよりも、前と左右をしっかり見るようにしています。もしかしたら、何かが飛び出してくるかもしれないという意識を常にもっています。
 ゆっくり、ていねいに、スピードを出し過ぎないようにして、一旦停止はしっかりと止まって、基本的に『譲る(ゆずる)』運転を心がけています。自分に優先権があったとしても『ゆずる』気持ちを基本的にはもっています。
 どんくさいと言われることもあります。交通事故が多い道や交差点はなるべく走りません。遠回りでも安全な道を選択します。
 高速道路では、車間距離を長めに開けるので、右側の追い越し車線からどんどん割り込まれます。なんだか、自分は、うしろに向かって走っているのではないかと思うこともあります。
 コロナウィルス対策みたいに『三密(密閉、密集、密接)』のような雰囲気になりそうな場所には行かないようにしています。
 もうリタイアした年金生活者ですので、車で出かける時は、土日祝日をさけて、道がすいている平日のかつ、お天気がいいときを選んでいます。
 観光は、雨が降らない日のほうが、景色がいいからということもあります。
 あとは、なるべく毎日短時間でもいいからハンドルを握って車を動かすようにしています。運転操作の慣れという身体感触を失いたくありません。勘がにぶらないようにしたい。
 
 高齢者が起こす事故は気になります。
 アクセルとブレーキを踏み間違えて、建物に突っ込んだあとのシーンを見たことがあります。破壊のようすがありました。
 高齢者の運転手と、同じく助手席に高齢者が乗った高齢者二人乗りの軽自動車が、工事現場で、ゆっくり逆走してきたのを見たことがあります。
 高齢者マークがはってある車を見かけると、なるべく近づかないようにしています。
 そのうち、自分が高齢者マークを付けることになるのですが、ちゃんと付けるつもりです。どうか、近づかないでほしい。

 思うに、高齢者の大事故はいきなり起こるわけではなくて、予兆があります。
 車がボコボコに、へこみだすのです。自損の物損事故です。車を最初は軽くぶつけることが多くなります。
 コンビニや飲食店、クリニックでの車庫入れに失敗します。
 他車と、こすった程度の軽い物損事故を起こします。
 予兆が起き始めたら、運転免許証は取り上げなければなりません。
 ところが、高齢者は、運転免許証が手元になくてもハンドルを握ってしまいます。運転免許証を返納しても運転します。
 認知力の低下があります。
 困ったではすまされないことが起こります。おそろしいです。

(つづく)
 
 もくじの項目=(イコール)運転のポイントです。
 『生き方や態度まで含めた運転行動の階層モデル』とあります。なんだか、むずかしそうです。
 『高齢ドライバーの死亡事故:死ぬのは誰だ』とあります。死ぬのはたぶん高齢者ドライバーではなく相手のほうなのでしょう。そして、相手のほうがとても若い。うらまれます。
 『夜間の運転をひかえる』歳をとると目が見えにくくなります。
 『雨の日の運転をひかえる』やっぱり。雨の日は危ないのです。
 『長距離の運転をひかえる』わかります。長距離で移動するときは、交代要員がいります。
 『安全運転をサポートする車を運転する』高価でもしかたがありません。お金で安全を買います。
 第6章で『運転をやめる決意→準備→返納→返納後の生活』と流れていきます。

第1章 運転行動とその変化
 自分なりの考察も加えて書きます。
 知覚技能:危険な状況を視覚・聴覚等で発見する。
 社会的技能:歩行者や車が、次はどう動くかということを推測する。
 認知技能:状況に対応した意思決定をする。ブレーキを踏むと決定する。ハンドルを切ると決定する。
 車両操作技能:スムーズな運転操作をする。
 ふと思う。自動車専用道路の走行車線を走っていると、追い越し車線をものすごい猛スピードで駆け抜けていく車に出会うことがあります。今は、大丈夫(事故にはならない)だろうけれど、いつかはぶつかるだろうと思います。相手がよけてくれればいいけれど、同じタイプ(ゆずらない者どうし)が、がちあうと事故につながります。遠い昔、自動車学校の教官が教えてくれました。事故は、片方だけが違反した時に起きるのではなく、両方が違反した時に起きる。

 そういえば、JAF(ジャフ)の毎月来ていた雑誌がこなくなりました。発行の回数が減るというような通知がきていました。
 昔はよく読みましたが、最近は読まなくなりました。加齢による老眼がいちばんの理由です。

 19ページに『高齢になると、心身の働きや健康が損なわれて、獲得した運転技能がだんだん発揮できなくなってしまう』と書いてあります。
 男性は70歳、女性は60歳を越えると運転の態度が不良な状態になるそうです。80代や90歳近いドライバーがいる現在、ちょっと怖い。
 読んでいて、高齢のタクシードライバーはだいじょうぶだろうかと不安になります。
 
 ほうと思ったことが『1993年のEU統合(欧州連合)』があります。
 そんなに長い年数がたったのか。

 車の運転でむずかしいことがあります。
 きょうの被害者が、あすは加害者になることもあるのが、車の運転です。
 抗議する立場から抗議される立場に逆転します。
 
 車は、戸口から戸口までの移動なので便利です。くわえて、荷物も運べます。
 重たいかばんをもって、鉄道で旅行するのはたいへんです。
 やはり運転ができる年寄りにとっては、車が大事です。
 安全に運転するのにはどうしたらいいのかをこの本から学びます。

 車で出かけて駐車するときに、お年寄りは、めんどうくさがって、バックから駐車せずに、車を前から突っ込んで駐車することが多いそうです。
 自分は出る時のことを考えて、基本的にはバックで車庫入れをします。

 準高齢者:55歳から64歳
 前期高齢者:65歳から74歳
 後期高齢者:75歳以上

第2章 高齢ドライバーの事故
 2019年に東京池袋で起きた超高齢者の運転ミスによる悲惨な死傷事故について触れてあります。事故後の加害者の態度に批判が集中しました。
 自分が思うに、高齢者だからといって、なにをやっても許されるわけではありません。認知機能を始めとした身体の機能が低下している高齢者になにを言っても通じないということがあります。悲劇が繰り返されないように警察や行政は対策を考えなければなりません。
 たとえば、もしかしたら、遠い未来においては、75歳以上あるいは、80歳以上は運転禁止という法律ができているかもしれません。あるいは、目的地を入力して、ボタンを押すだけで、目的地に行ける自動運転の乗り物ができているかもしれません。

 本では分析が続きます。
 走行距離のこと、死亡事故のこと、75歳を超えると表れる自死の事故が増える現象のこと。
 加齢によって、ヒューマンエラーが起きやすくなる。(人為的ミス。不注意。発見の遅れ)
 ルールを守るという『良心』が薄れていく。
 視力低下(白内障ほか)
 アクセルとブレーキの踏み間違い。
 どうも、75歳がひとつの線引きになっています。
 
 以前、横断歩道を青で渡っていて、左折車にひかれそうになったことがあります。
 びっくりしました。
 後方へとんでよけて、ひかれずに済みました。
 運転していた五十代ぐらいの男性をにらみつけたのですが、どうもようすがおかしい。表情がないのです。放心状態の顔でした。心ここにあらず。無関係、無関心な顔つきなのです。精神状態がおかしい。高齢者にもそんな人がいます。

 交差点での直進車と右折車の衝突事故が多いそうです。
 右折するときは、右折の矢印が出るまで待つ。車を動かさない。あるいは、前方に車がまったく見えなくなってから右折する。後続車のことは考えない。そう理解して実行することにしました。
 特に二輪車が直進してくる時は、前に出ない。二輪車が通り過ぎてから右折を始める。

 今年読んで良かった本です。
 この本を読んだおかげで、交通事故を避けられます。

 自分が思うに、アクセルとブレーキを踏み間違えるということは、自分にとっては、ありえないことです。
 さらに、ブレーキだと思って、アクセルを踏み続けるなどという行為は信じられません。どうしてそうなるのだろうか。
 『思い込み』が強いというのは、個人差があるような気がします。

 高齢者は軽自動車を運転することが多いそうです。
 農家の軽トラという冒頭に書いた話が思い出されます

3章 安全ゆとり運転の勧め
 高齢者の生きがいについて書いてあります。
 1次的制御:まわりの環境に働きかける。入会、勧誘、健康づくりなど。
 2次的制御:親族との交流。あるがままを受け入れる。こだわらない。
 SOC理論というものについて解説があります。自分なりに、(範囲指定-手法-依存)と理解しました。

 車の速度が速くなると、安全余裕が小さくなってくる。高齢者になるにつれて、どんどん余裕がなくなってくる。
 スピードは抑える。
 自分で自信をもって車をコントロールできる範囲内の速度に抑える。

 83ページにあるアドバイス『早めに出発する(時間に余裕をもつ。待ち時間や余り時間(あまりじかん)があってもよしとする)。
 体調を整える。車の点検をする』は役に立ちます。

 以前各種大きさのレンタカーを多用していたことがあります。同時に、職場の車で、いろいろな車種の車を運転していたこともあります。小さな車から大きな車まで、いろいろなサイズの車を運転していました。交通の便が不便なところで効率よく動こうとすると車が手離せません。高齢ドライバーも同様でしょう。

 同乗者を乗せることが安全につながると思えます。
 ただ、高齢者だけが同乗していても安全効果が薄いということはあります。

 「攻撃的な運転」はしない。
 高速道路で、追い越し車線しか走らない人がいます。
 自分には無理です。
 そんな運転行為は、自分だったら、精神的に疲れます。

 88ページに『自分の運転が下手だと思っている人は、安全ゆとり運転をする人が多い』とあります。自分はそういう人です。
 下手だけれど、運転することが好きだということはあります。自由自在に行きたいところへ行けます。
 この本はテキストなのでしょう。(教科書)。97ページに、警察や行政向けに書いたというような記述があります。
 ドライバーの教育者向けです。自動車学校職員向けということもあるでしょう。

4章 運転前の安全ゆとり運転
 
 シルバー人材センター:公益社団法人。高齢者の就業機会を提供する。

 『車間距離は、距離よりも「時間」が大事』3秒を意識するそうです。
 緊急時に反応してブレーキを踏むまでの時間が3秒ぐらいということでしょう。

 安全運転をサポートする車のシステムに、ラインの枠をはみだすと、センサーが感知して、警告音(ピー ピーという音)がする車があります。わたしの車がそうです。ただ、実際運転していると、必要があってはみ出すときに、線をまたがねばならないときもあるわけで、警告音がすると(どうしろというのよ)という思いがはじめのうちはしていました。今はあきらめています。

 もうひとつ、うちは、バックミラーは、カメラ式にしてあります。ワンタッチで、鏡に変えることはできます。
 カメラ方式は、後方の左右の車線の映像まで映るので便利です。慣れるまでは、見にくさと距離感が近すぎるように感じましたが、慣れれば重宝します。特に、左側車線からの自動車専用道路の合流のときに楽です。
 夜やトンネル内などの暗いときは、カメラ式バックミラーが、暗い車の室内で、テレビの画像映像のように明るく輝くので、それが、うしろの車から見えるらしく、後方にいる車は警戒して、車間距離を開けているときもあります。なんだろうと、興味をもって近づいてくる車もありますが、その数は少ない。

 『時間に余裕をもって出発する』年金生活者は、時間に追われていません。時間の感覚がなくなるほどゆったりしています。毎日が日曜日ですから、曜日の感覚、ひにちの感覚がうすれます。そのかわり、現役の時は、サービス残業も含めて、一日24時間365日、長時間勤務を体験した人が多い。だから、退職後に現役のときに失った自由時間を取り戻せているという実感はあります。

 時間の流れに関して、運の悪い流れというものがあります。車で動き出して、生活道路内の小さな交差点ごとに対向車と、タイミングが悪く、がちあうとか、幹線で、走りづらくなる路線バスとか大型車とかに、がちあうとか、そういうときは、今自分がのっている時間の流れを変えるために立ち止まって、時間をずらすことをしたりします。(運勢の流れのようなものです)
 あの日あの時、あの場所にいなければ、あんな不幸に、がちあうことはなかったということはあります。

 『体調を整えてから運転する』体調がすぐれないということはありませんが、忘れ物をするということはままあります。出かける時には、忘れ物がないように何度も確認します。それでも忘れて、出発した途端引き返すということはあります。
 歳をとると、体というよりも、脳みそのほうに問題ありです。

 アルコール依存のおじいさんが酔っ払い運転をするということはあります。若い頃に見たことがあります。ぐでんぐでんのよろよろです。警察を呼んで逮捕です。酒酔い運転は、一発取り消しです。(運転免許取り消し)

 ドライブ中におしっこが近くなってあせるということが心配です。ゆえに休憩ばかりです。尿意がなくても排尿しておきます。

 『車の点検や車内の整とんをする』自分は、たいてい、その日最初に乗車する前にフロントガラスを中心に窓ガラスをガラス吹きのペーパーで吹きながら車体全体のようすをみます。老齢で視力に自信がないので、フロントガラスが汚れているととても気になるからです。車内の掃除やボンネットをあけて、ウォーッシャー液量の確認などを月に2回ぐらいします。
 以前、若い女性と話をしていて、車を買ってから何年もたつけれど、一度もボンネットをあけて中のエンジン部分を見たことがないと聞いて、ひっくりかえりそうになるぐらい驚いたことがあります。安全管理は大事です。

 145ページに『ためこみ症』という単語があります。ごみ屋敷ではなく、ごみ車内です。発達障害のある人だろうか。
 新陳代謝は、整理整とんの基本です。古い物を処分して、新しいものを購入します。あるいは、新しいものを購入したら、古い物は処分します。

 『安全運転をサポートしてくれる同乗者を乗せる』遠出をするときは、自分もなるべくひとりだけでは運転しないようにしています。たいていは、助手席に妻がいます。ただ、ペーパードライバーに近い人なので、あまり頼りにはなりません。

第5章 運転時の安全ゆとり運転
 ここまで読んできて、やはり、今年読んで良かった一冊になりました。
 この本のおかげで、もしかしたらありえた交通事故体験を避けられたかもしれません。
 
 『後ろの車を先に行かせる』
 あおり運転がテレビの話題になることがありますが、自分はこれまでに、あおったこともあおられたこともありません。とにかく、安全第一で、メンツ(プライド、名誉、誇り)なんか関係ありません。運転に関しては、常に「譲る」気持ちがあれば衝突することも少ないと信じています。

 『制限速度を守って運転する』高速道路を高速で走るのは心身ともに負担に感じています。自分は77キロぐらいで走るのが快適です。なにかあっても危険を回避できるスピードです。

 急いで運転しても到着時刻にはそれほど変わりはないということは、若い頃に聞いたことがあります。たしか、ラジオでそういう内容で流れていました。
 年金生活者の高齢者は、急ぐ必要はないのです。時間の拘束(こうそく。しばり。遅れても怒られない。あきらめてもらえる)がない立場です。

 自分の心構えとして、生活道路はなるべく通らないようにしています。
 なにが飛び出してくるかわかりません。ときに、パトカーが一旦停止違反をつかまえるために、ひっそりと待ち伏せしています。

 『ながら運転をしない』ながら運転ができるほど運転に自信がないので、自分はぜったいに「ながら運転」はしません。スマホが鳴っても無視です。
 話ははずれますが、年金生活者になって、ふだんの移動は、徒歩か自家用車で、鉄道にはめったに乗らない生活をしています。
 先日久しぶりに鉄道を利用したら、みなさんマスク姿で、スマホを見ながらうつむいて、ずらりと座席に座っていて、異様な光景に見えました。わたしは、電車の中でもスマホは見ません。なんだか、昔の日本とは違う世界になってしまいました。

 アンケート結果を分析しながら解説が続きます。
 パターンがあります。人間を5つに分類してあります。
 ①いつも
 ②しばしば
 ③ときどき
 ④たまに
 ⑤ほとんどしない
 どれかひとつにすべてが固まるということはありません。
 人間の脳の性質を表しているようでおもしろい。いろんな人がいるのです。

 追い越し車線を超高速で走っている人を見ると「死に急ぐ人」だと判断しています。巻き込まれないように近づきません。

 あおり運転の理由は、脳みそが未成熟なのではないかという考察から始まって、以前読んだ本『ケーキの切れない非行少年たち 宮口幸治(みやぐち・こうじ) 新潮新書』に出ていたこどもたちの脳みそを想像します。いくらいいきかせても理解が無理なのです。運転免許証を与えてはいけない人なのです。懲役、罰金がありますが、永久に運転免許証は、はく奪することが妥当だと考えるのです。

 すれちがいのときに『停止して待つ』これは苦手です。どうしても自分から動いてしまいます。じっとしておれない性格です。
 前のめりにならずに、待つ技術を身に付ける。
 アニメ『一休さん(いきゅうさん)』の言葉を思い出しました。『あわてない、あわてない。一休み(ひとやすみ)、一休み』
 前に進むだけではなく、うしろにさがる技術も身に付ける。

 ハザード:危険。前方の危険な状態を、後方の車に知らせる。

第6章 運転卒業までのステップ
 これが最後の章です。
 運転免許証を返納するところまできました。
 いつかは、運転をやめるときがきます。
 めやすとして、15の項目が書いてあります。できるかできないかです。7個以上該当するものがあれば、運転免許証の返納を考えたほうがいい。
 わたしは、軽い物損事故が始まったら、必ず返納したほうがいいと思います。大事故の予兆です。

 自家用車を失ったあとの移動手段について列記してあります。
 鉄道、バス、タクシーなどです。
 デマンド:需要に応じて。要求に応じて。
 
 車を手離すと、車にかけていたお金の負担が減るということはあります。
 けっこう車の維持にはお金がかかります。

 本では、車がなくても生活できるアイデア出しがあります。

 そうなのかといろいろ納得できるところがあります。
 高齢者の運転免許証の返納者は、ペーパードライバーが多いそうです。あまり、高齢者運転事故の減少にはつながりそうもありません。
 返納者は、数的にも少ないそうです。
 2019年東京池袋の暴走死亡事故のあと自主返納者が全国で60万人に達したというニュースを聞いたときは、たくさんの人たちが返納したのだなと納得しましたが、この本によると、65歳以上の高齢ドライバーは、1900万人もいるそうです。
 この本を読まなければそのことを知ることもありませんでした。まだ、あのような悲惨な事故がこれからも続くのだろうか。不安です。なにか、対策が必要です。


(追記:2023年7月下旬)
 車を買い替えました。
 この本に書いてあったことを思い出して、安全装備の充実を図りました。
 自分が書いた感想にある文章として、
 『安全運転をサポートする車を運転する』
 高価でもしかたがありません。お金で安全を買います。
 もしかしたら、今回の車の買い替えが、人生で最後に買う車かもしれません。
 未来を見据えて、自動運転で、ボタンひとつ押せば、人間を安全に目的地まで運んでくれる車がいずれは誕生するのかもしれませんが、それまで自分の寿命がもちそうにもありません。
 今回買った車はだいじに乗ります。

 この本を読んだときに、自分なりに驚きのこととして記憶に残っていることがあります。
 『2019年東京池袋の暴走死亡事故のあと自主返納者が全国で60万人に達したというニュースを聞いたときは、たくさんの人たちが返納したのだなと納得しましたが、この本によると、65歳以上の高齢ドライバーは、1900万人もいるそうです。』まだまだ高齢者による交通死傷事故は続きそうです。自衛しなければなりません。加害者にならない。被害者にならない。

 以下が、今回わたしが車に装備したシステムなどです。

1 衝突回避システム(ぶつからない対象物として:歩行者、自転車、自動二輪車。前方にある壁など。前を走る車、横を走る車。右折時の対向車。レーダーとカメラ方式の感知(センサー)による防御)。相手を感知すると警告と自動ブレーキの作動がある。

2 レーンからはみださない。
  警告とハンドル操作支援あり。隣の車線の車と接触する可能性があるときは音声で警告がある。

3 車速追従機能
 前の車に自動的についていく。前の車が止まると自車も止まる。

4 ハイビーム
 ライトのハイビームが自動的に上下に切り替わる。

5 ロードサインアシスト
 道路標識の見逃しを防止する。「最高速度」「はみだし通行禁止」「一時停止」「転回禁止」「進入禁止」「信号機」などの標識を見落としたと判断されると、画面に表示が出てブザーが鳴る。

6 ドライバー異常時対応システム
 ドライバーの無操作状態が継続したときは、警告音、表示、ゆるやかな減速が行われ停車する。自動的に、ハザードランプの点滅、ホーンの鳴り、ストップランプで車外に異常を知らせる。停車後は、ドア開錠、(ネットでつながっているので)自動接続による救命要請がある。

7 発車遅れ告知機能
 信号待ちほかで、前にいる車が発車しても自車が発進しなかったときに警告音が鳴る。信号が青になって発信し忘れたときにも鳴る。

8 ドライブレコーダー(前後)

9 ブラインドスポットモニター
車線変更の時に、サイドミラーの視界が広がり、隣接するレーンの後方最大約60mまで自動的に見えるようになる

10 自動駐車システム
 駐車スペースの横に車を止めたあと、画面にある開始スイッチを押すと、自動的に駐車スペースに駐車してくれる。

11 駐車時に、車の位置を真上から見た映像が出る。
 手動による駐車を安全でやりやすくする。

12パーキングサポートブレーキ
 駐車場で、アクセルとブレーキの踏み間違いが起きたときに、自動ブレーキが作動して、前後の物体に車が衝突しないようにする。

*とにかく人や車やモノにぶつからないように設計してあります。もしぶつかっても被害を少なくするという効果があります。
 先日、交差点でわたしたち夫婦が信号待ちで立っていて、信号機が青になったので横断歩道を渡ろうと数歩踏みだしたら、なんと、対抗する方向にある右折車が、反対方向に直進車がいるのにもかかわらず、強引に、瞬間的に、右折してきて、横断歩道に突っ込んできました。ひどい! あやうくその車にわたしたち夫婦ふたりともが、ひかれそうになりました。運転者は、高齢者の男性でした。あきれました。なにがなんでも自己中心です。人をひいて相手が死んだとしても、なんとも思わないのでしょう。車にひかれて殺されたほうは、やられ損です。被害者の親族は泣きます。
 認知症がかった高齢者の運転は恐ろしい。(おそろしい)
 考えましたが、家族がもう運転はやめてくれと訴えても、そういう高齢者は家族の声を無視します。されど、身内の高齢者が、一発(いっぱつ)死亡事故の加害者になれば、運転はしていなかった当事者ではない親族も責められます。徹底的に社会的制裁を受けます。
 家族の申し立てによって、親の運転免許証をとりあげることができる制度ができるといいのになと思いついたのです。  

Posted by 熊太郎 at 07:28Comments(0)TrackBack(0)読書感想文