2022年07月13日
はじめての 島本理生 辻村深月 宮部みゆき 森絵都 水鈴社
はじめての 島本理生(しまもと・りお) 辻村深月(つじむらみづき) 宮部みゆき 森絵都(もり・えと) 水鈴社(すいりんしゃ)
「はじめて」を素材、テーマにして、4人の作家が作品を仕上げています。
書評の評判が良かったので読んでみることにしました。
ただ、どういうわけか、うわべだけの書評がほとんどです。中身がありません。
『はじめて人を好きになったときに読む物語 私だけの所有者』 島本理生
わたしには合わない、わたしの苦手(にがて)な作家さんです。
以前読んだのが『ファーストラブ』でした。
たしか、父親を刺殺した娘の心理を臨床心理士がさぐるという内容で始まるお話でした。
食わず嫌いはいけないので、とにかく読み始まます。(食わず嫌い:食べたことがないのに、嫌いだと決めつけること)
「一通目の手紙」から始まります。以降「二通目」「三通目」と章のように続きます。
最初の10行ぐらいを読んだところで、手紙の差出人がロボットであろうと気づきます。人工知能付きのアンドロイドロボットでしょう。
アンドロイドの設定は14歳で、男性だそうです。未来世界のお話です。(このあと作品は、アンドロイドの性別にこだわりをもつのですが、ロボットに性別があるということがピンときませんでした。ロボットは男でも女でもない性別がない物体です。あえていえば「中性」です)
読み手が、アンドロイドはロボットで、つまり「機械」で、いくらロボットに感情が設定してあったとしても、感情がある人間とは違うと思うと、読書行為が、中断か中止になってしまいます。
中途半端な思考をもつ自分は、読み継いでみます。
アンドロイドロボットの所有者が「Mr.ナルセ」という男性です。昔は妻がいたらしい。
ナルセは、アンドロイドロボットを、始めは、まあ、奴隷か召使いのように扱います。
児童虐待とか、異性間のDV、家庭内暴力、セクハラ、パワハラという言葉まで、頭に浮かんできます。
大きな地震があって、ナルセの弟夫婦とかれらの所有物である少女のアンドロイドロボット(ルイーズ)が出て来て、現在から見た過去の記述なのですが、物語の中では、ナルセのアンドロイドロボットは、手紙を書き続けます。
さきほども書きましたが、ロボットが書く人間である先生あての手紙の内容は、現在から見て、過去を振り返る内容です。
先生からの返信はあるようですが、本の中での先生の手紙の公表はありません。
先生という人にあてた手紙ですが、先生が何の先生なのかわかりません。
若手の女性研究者だそうです。「人口人間理論」の研究者だそうです。
欺瞞(ぎまん):あざむく。だます。
アニメ世界のようでもあります。
どうも核爆発が起きたようです。『光の津波が背後から襲ってきたのです。』とあります。(違っていましたテロ行為による爆発でした。なんだか先日奈良県で起きた元総理の事件を思い出します)
ウェアラブ端末:着用できる、身に着けることができる端末。リストバンドや腕時計、メガネなどがあるそうです。
見当はずれの発想なのですが、読んでいて思いついたのは、身寄りのない年寄りにとっては『自分を介護してくれる、自分を手助けしてくれるアンドロイドロボット』的な存在は、すなわち『お金』ではなかろうか。
内戦の話が出ます。ウクライナ東部の戦闘が思い浮かびます。
少女アンドロイドに対する暴力、連れ去りの話が出ますが、ロボットゆえにピンときません。
人間がアンドロイドロボットをかばう。また、ピンときません。
機械は故障したら修繕します。人間はそうはいきません。
Mr.ナルセの妻について、思うことはあるのですが、ここには書けません。
『初めて家出したときに読む物語 ユーレイ』 辻村深月(つじむらみづき)
始まりの1ページ分を読んだところで気づきます。
これから、今一人称で(私という言葉)で語っている主人公女性は、自殺するのだろうか。
女子高生が登校拒否なわけか。(女子高生ではありませんでした。女子中学生でした)
物語の中で、鉄道に乗車して移動している主人公の女子中学生について考えました。
旅をしたことがないこどもさんの心理です。
たとえば、鉄道が好きで、小学生のころから鉄道に乗り慣れている中学生であれば、鉄道を使っての移動はなんてことないのです。距離が長くても、それは「家出」ではなく、「移動」です。(自分は幼児のころから仕事が長続きしない放浪癖のある親父(オヤジ)に連れ回されて、日本各地を転々としました。だから今は、日本は小さな島国でしかないと感じています。父親をうらんだこともありますが、今は、豊富な体験をさせてくれてありがとうと感謝しています。おかげで、精神的につぶれることなく老後を迎えることができました)
短距離の鉄道利用による移動でも、人生体験が少なく、狭い世界で生活してきた中学生にとっては、鉄道旅が『家出』の気分のときもあります。
(実家で生れて、ずっと実家暮らしで、自宅と学校と職場のまわりの地理しか知らないという人もいます。くわえて、ひとり暮らしを一度も体験したことが無いという高齢者もいます。人それぞれですが、体験してきた世界が狭いと、環境の変化にぶつかったときに、生きにくいというときもあろうかと考えます。自立とか自活のために、やろうと思ってやればたいていのことはできます。『気持ち』が大事です)
旅人にとって感動する場所であっても、そこで暮らしている人間にとっては、そこが生活の場所です。旅人と違って、労働者である地元の人間は、ロマン(期待する理想。あこがれ)を感じることはありません。
昔北海道に行ったとき、富良野(ふらの)で花咲くラベンダー畑を美しいと思ったことはないという農家の人の話を聞いたことがあります。まさか、ラベンダーの花を見るために、こんなに観光客が来るとは思いもしなかったそうです。(ラベンダーは、香りを楽しむ商品に加工して収入を得るために育てるもの)
主人公の女子中学生は、海辺の町にある駅で電車を降り、海へ向かい、自殺か事故でだれかが死んだであろう場所にたどりつきました。そして、夜が来ます。
短編のタイトルがユーレイですから、それらしき人物が登場します。
女子中学生は、自分の姿を投影するユーレイに出会ったのだろうか(つまり、もうひとりの自分、自分の影に出会ったのだろうか)
どっちがユーレイなのかわからないという展開もあり得ます。
ユニコーン:一角獣。馬のおでこのあたりに角(つの)が一本生えている馬のような動物。白馬。
70ページまで読んできて、ふと気づいたことがあります。
本の帯を見ると、どうもYOASOBIという音楽グループがあって、グループの歌とこの本にある短編作品につながりがあるのです。
わたしは、YOASOBIというグループのことを知らない老齢者です。
YOASOBI:本の帯を見ると、若い男女がいます。古い世代からいうと、昔の「チェリッシュ」みたいな存在だろうか。男女による歌唱です。(昔、名古屋栄にあった中日ビルの1階フロアーで、チェリッシュおふたりのトークショーと歌を聴いたことがあるのを思い出しました。ラジオ番組の放送でした。現在は、当時の中日ビルは取り壊されて、新しいビルの建築工事が行われています)
YOASOBIの曲がこの本の短編のヒントになっているのかと思いましたが、逆で、小説作品が曲になるそうです。YOASOBIは「小説を音楽にするユニット」というキャッチフレーズが本の帯に書いてあります。
この「ユーレイ」の場合、話の内容からいって、曲名は必然的に『花火』にからんだものなるのでしょう。
読み続けます。
ああ、やっぱり(死ぬつもりなんだ)
遺書も書いてあるらしい。
いじめが原因なんだ。
たぶんシカト(存在無視、存在否定、仲間はずれ、冷遇(れいぐう))というやつであろう。
なにかの出来事があって、相手に不快感を与えると、シカトされるということは、おとなの社会でもあります。シカトしたり、されたりです。のりきるキーワードは『マイペースを変えない。(これがわたしですと強く主張する意思をもち続ける)』です。
主人公中学生女子のイメージは、顔もスタイルもそこそこ良くて、成績優秀、そつなく人づきあいをこなしてきたのだけれど、このたび、偶然運悪くチョンボをしてしまい、失敗に慣れていないので、ゆきづまっているというふうに思えます。
赤塚不二夫漫画天才バカボンのパパのように『これでいいのだ』と思えれば、前進できるのです。
残響(ざんきょう):音源が消えた後も反響する音。
上手な構成です。
ドラマ『相棒』を観るようでした。
良かった文節として『小さな声で、ありがとう、と呟く(つぶやく)』
『初めて容疑者になったときに読む物語 色違いのトランプ』 宮部みゆき
タイトルを見てまず向田邦子作品「思い出トランプ」が頭に浮かびます。
男女のすっきりしない関係をたどった連作短編集でした。本作品と関係・関連があるのだろうか。(読み終えて、関係はありませんでした)
主人公 安永宗一(やすなが・そういち) 被災地での発掘現場で現場監督職をしている。半官半民の団体職員。
妻:瞳子(とうこ)、主婦
ひとり娘:夏穂(かほ)17歳7か月、高校生
こちらの世界とあちらの世界があります。ゆえに『鏡界人定管理局(きょうかいじんていかんりきょく)』という所属があります。鏡のこちらと向こうのようでもあります。どちらにも同じ姿形(すがたかたち)の人間がいるらしい。かといって、すべてが同一というわけでもない。こういうパターンを以前どこかで読んだことがあるような気もします。
量子加速器(りょうしかそくき)<ロンブレン>というものが出てきます。
物理のお話のようです。
現在、同時進行で読んでいる本が『三体(さんたい) 劉慈欣(りゅう・じきん リウ・ツーシン CIXIN LIU) The Three-Bady Problem 大森望、光吉さくら(みつよし・さくら)、ワン・チャイ[訳] 立原透耶(たちはら・とうや)[監修] 早川書房』です。この本とこの短編が、重なるイメージがあります。三体には、重なる世界(3つの天体と3つの太陽)があります。こちらの短編では、並行する世界があります。
カタストロフ:突然の大きな破滅、悲劇
物語の内容とは離れてしまうのですが、「耳鳴り現象」の部分を読んでいて思いついたことです。
自分の脳みその中にある世界「標準」にあてはまらない人間を排除しようとする人がいます。「標準」にあてはまらない人間をうそつき呼ばわりすることもあります。でも、うそではないのです。「標準」の大きさと範囲は、人によって違ったりもします。
セクト:宗派、集団。この短編の場合は「所属」ぐらいの意味だと理解しました。境界人定管理局中央セクトです。
あちらの世界にある日本は、全体主義国家で、軍事政権が国を支配しているそうです。
入国管理事務所みたいな風景とか、運転免許試験場みたいな景色があります。
渡界(とかい):あちらの世界とこちらの世界をゆききする。第一鏡界(きょうかい)と第二鏡界がある。
剽げる(ひょうげる):ふざける。おどける。
物語では、現状説明が続きます。
快哉(かいさい):愉快で楽しい。
国家公安保全局:第二鏡界にあって、第一鏡界(主人公ファミリーの所属するところ)にはない。
物語が終わりに近づくにつれて、なんだかさみしくなりました。
オルグ:労働組合の用語。この短編の場合は、組織拡充のための勧誘。昭和40年代に、労働組合が盛んにストライキをしていたころの言葉だと、思い出しました。今の若い人たちにはストライキ(職場を放棄して雇用側に労働条件の要求をするための集会を開く。公道を、許可を得てデモ行進することもある。デモンストレーション(集団で主張行為をする))がなんなのか想像もできないでしょう。
読み終わりました。
うーむ。
好みではありません。
自分には合いませんでした。
『はじめて告白したときに読む物語 ヒカリノタネ』 森絵都(もり・えと)
私がいて、彼がいて
私は旅立って、
「取り返しのつかないもの」を
取り返すそうです。
なんのことでしょう?
(読み終えて:過去へタイムトラベルをして、失恋を回収するのです)
坂下由舞(さかした・ゆま):高校2年生16歳。女子バレーボール部員。
樋口一花(ひぐち・いっか):坂下由舞の親友。同級生。黒ぶち眼鏡。作家志望。名前は、短命だった明治時代の女性小説家樋口一葉(ひぐち・いちよう)からきているのでしょう。1872年(明治5年)-1896年(明治29年)24歳没。作品として「たけくらべ」「にごりえ」ほか。
この短編を読み終えてから思ったのですが、高校生の樋口一花も樋口一葉と同じように、短命ではあるけれど名作を遺す作家になるという流れで、この短編の続編がつくれないこともない。(自分だけの勝手な空想です)
原田椎太(はらだ・しいた):坂下由舞の幼なじみ。幼稚園からいっしょ。坂下由舞の片思いの相手。ニックネームは「シータケ」
そして、タイトル『ヒカリノタネ』とは何?
ヴィジョン:本作品の場合、「未来」という意味だろうか。将来の見通し。
坂下由舞は、原田椎太のストーカーのようです。
アニメ「ワンピース」そして「ルフィ」が、キーワードです。
もうひとつのキーワードが「柿ピー」です。
タイトルの「ヒカリノタネ」は、柿ピーなのです。(辛い(からい)お菓子。カキの種の形をしている)
デジャヴ:既視感。実際には体験したことがないけれど、前に一度体験したことがあるような感覚がある。
セリフ『私、タイムトラベルの手伝いをしてくれる人、知ってるんだけど』(読んでいる自分の気持ち:ここからが本番か! 前置きは終わった。おもしろそうだ)
悔恨(かいこん):自分の過ちを後悔する。残念に思う。反省する。(ふと、先日、奈良県警本部長がこの言葉を使っていたことを思い出しました)
159ページに来て、不思議な感覚に包まれました。
本短編の前の短編『初めて容疑者になったときに読む物語 色違いのトランプ』を書かれた宮部みゆきさんの作品に『蒲生邸事件(がもうていじけん。昭和11年2月26日軍事クーデターの失敗。2・26事件。大蔵大臣ほかが殺害されています)』があります。
蒲生邸事件の内容は、本作品と同じく、現代から過去へのタイムトラベラーものです。
この本をつくるにあたり、ふたりの作品を並べて、作家2名をつなぐという相乗効果を狙ったのだろうか。
それともYOASOBIというバンドの曲として、時間移動旅行というテーマか素材があるのだろうか。
読んでいて、リズムがある文脈が心地よい。
憐憫(れんびん):かわいそう。哀れむ(あわれむ)
アニメのようでもあります。
ポリシー:方針
GAFA(ガーファ):グーグル、Amazon、フェイスブック、アップル
179ページ、おもしろい!(理由はここには書けません)
もしかしたら、原田椎太(はらだ・しいた)は、同性が好きなんじゃないだろうかと思いつきました(結果は違っていました)。
「小学校5年1組の担任は、点数主義のAIロボットみたいな人だった」じっさいにいそうです。
成績格差の雰囲気が広がって、クラスメンバーの気持ちは沈みます。
フリースクール:学校へ行けなくなったこどもさんが通うスクールらしい。
良かったセリフとして『学校なんて池だよ。池。』(そのとおりです)
読みながら『結婚』について考えました。
まだ自分が結婚する前に「世界で一番好きな人とは結婚できない。世界で二番目に好きな人と結婚することが多い」ということわざみたいな文節を耳にしたか、目にした記憶があります。
ずっとその言葉が気になっていましたが、自分は、世界で一番好きな人と結婚しました。間違っていませんでした。ともに歳をとってみてわかりました。
なるほどという感想をもつ物語の進行、進展具合です。
展開はおもしろい。手品のようです。
良かったセリフとして『私も観察者やめよっかなあ』
いいお話でした。
ちょっぴり涙がにじみました。
「はじめて」を素材、テーマにして、4人の作家が作品を仕上げています。
書評の評判が良かったので読んでみることにしました。
ただ、どういうわけか、うわべだけの書評がほとんどです。中身がありません。
『はじめて人を好きになったときに読む物語 私だけの所有者』 島本理生
わたしには合わない、わたしの苦手(にがて)な作家さんです。
以前読んだのが『ファーストラブ』でした。
たしか、父親を刺殺した娘の心理を臨床心理士がさぐるという内容で始まるお話でした。
食わず嫌いはいけないので、とにかく読み始まます。(食わず嫌い:食べたことがないのに、嫌いだと決めつけること)
「一通目の手紙」から始まります。以降「二通目」「三通目」と章のように続きます。
最初の10行ぐらいを読んだところで、手紙の差出人がロボットであろうと気づきます。人工知能付きのアンドロイドロボットでしょう。
アンドロイドの設定は14歳で、男性だそうです。未来世界のお話です。(このあと作品は、アンドロイドの性別にこだわりをもつのですが、ロボットに性別があるということがピンときませんでした。ロボットは男でも女でもない性別がない物体です。あえていえば「中性」です)
読み手が、アンドロイドはロボットで、つまり「機械」で、いくらロボットに感情が設定してあったとしても、感情がある人間とは違うと思うと、読書行為が、中断か中止になってしまいます。
中途半端な思考をもつ自分は、読み継いでみます。
アンドロイドロボットの所有者が「Mr.ナルセ」という男性です。昔は妻がいたらしい。
ナルセは、アンドロイドロボットを、始めは、まあ、奴隷か召使いのように扱います。
児童虐待とか、異性間のDV、家庭内暴力、セクハラ、パワハラという言葉まで、頭に浮かんできます。
大きな地震があって、ナルセの弟夫婦とかれらの所有物である少女のアンドロイドロボット(ルイーズ)が出て来て、現在から見た過去の記述なのですが、物語の中では、ナルセのアンドロイドロボットは、手紙を書き続けます。
さきほども書きましたが、ロボットが書く人間である先生あての手紙の内容は、現在から見て、過去を振り返る内容です。
先生からの返信はあるようですが、本の中での先生の手紙の公表はありません。
先生という人にあてた手紙ですが、先生が何の先生なのかわかりません。
若手の女性研究者だそうです。「人口人間理論」の研究者だそうです。
欺瞞(ぎまん):あざむく。だます。
アニメ世界のようでもあります。
どうも核爆発が起きたようです。『光の津波が背後から襲ってきたのです。』とあります。(違っていましたテロ行為による爆発でした。なんだか先日奈良県で起きた元総理の事件を思い出します)
ウェアラブ端末:着用できる、身に着けることができる端末。リストバンドや腕時計、メガネなどがあるそうです。
見当はずれの発想なのですが、読んでいて思いついたのは、身寄りのない年寄りにとっては『自分を介護してくれる、自分を手助けしてくれるアンドロイドロボット』的な存在は、すなわち『お金』ではなかろうか。
内戦の話が出ます。ウクライナ東部の戦闘が思い浮かびます。
少女アンドロイドに対する暴力、連れ去りの話が出ますが、ロボットゆえにピンときません。
人間がアンドロイドロボットをかばう。また、ピンときません。
機械は故障したら修繕します。人間はそうはいきません。
Mr.ナルセの妻について、思うことはあるのですが、ここには書けません。
『初めて家出したときに読む物語 ユーレイ』 辻村深月(つじむらみづき)
始まりの1ページ分を読んだところで気づきます。
これから、今一人称で(私という言葉)で語っている主人公女性は、自殺するのだろうか。
女子高生が登校拒否なわけか。(女子高生ではありませんでした。女子中学生でした)
物語の中で、鉄道に乗車して移動している主人公の女子中学生について考えました。
旅をしたことがないこどもさんの心理です。
たとえば、鉄道が好きで、小学生のころから鉄道に乗り慣れている中学生であれば、鉄道を使っての移動はなんてことないのです。距離が長くても、それは「家出」ではなく、「移動」です。(自分は幼児のころから仕事が長続きしない放浪癖のある親父(オヤジ)に連れ回されて、日本各地を転々としました。だから今は、日本は小さな島国でしかないと感じています。父親をうらんだこともありますが、今は、豊富な体験をさせてくれてありがとうと感謝しています。おかげで、精神的につぶれることなく老後を迎えることができました)
短距離の鉄道利用による移動でも、人生体験が少なく、狭い世界で生活してきた中学生にとっては、鉄道旅が『家出』の気分のときもあります。
(実家で生れて、ずっと実家暮らしで、自宅と学校と職場のまわりの地理しか知らないという人もいます。くわえて、ひとり暮らしを一度も体験したことが無いという高齢者もいます。人それぞれですが、体験してきた世界が狭いと、環境の変化にぶつかったときに、生きにくいというときもあろうかと考えます。自立とか自活のために、やろうと思ってやればたいていのことはできます。『気持ち』が大事です)
旅人にとって感動する場所であっても、そこで暮らしている人間にとっては、そこが生活の場所です。旅人と違って、労働者である地元の人間は、ロマン(期待する理想。あこがれ)を感じることはありません。
昔北海道に行ったとき、富良野(ふらの)で花咲くラベンダー畑を美しいと思ったことはないという農家の人の話を聞いたことがあります。まさか、ラベンダーの花を見るために、こんなに観光客が来るとは思いもしなかったそうです。(ラベンダーは、香りを楽しむ商品に加工して収入を得るために育てるもの)
主人公の女子中学生は、海辺の町にある駅で電車を降り、海へ向かい、自殺か事故でだれかが死んだであろう場所にたどりつきました。そして、夜が来ます。
短編のタイトルがユーレイですから、それらしき人物が登場します。
女子中学生は、自分の姿を投影するユーレイに出会ったのだろうか(つまり、もうひとりの自分、自分の影に出会ったのだろうか)
どっちがユーレイなのかわからないという展開もあり得ます。
ユニコーン:一角獣。馬のおでこのあたりに角(つの)が一本生えている馬のような動物。白馬。
70ページまで読んできて、ふと気づいたことがあります。
本の帯を見ると、どうもYOASOBIという音楽グループがあって、グループの歌とこの本にある短編作品につながりがあるのです。
わたしは、YOASOBIというグループのことを知らない老齢者です。
YOASOBI:本の帯を見ると、若い男女がいます。古い世代からいうと、昔の「チェリッシュ」みたいな存在だろうか。男女による歌唱です。(昔、名古屋栄にあった中日ビルの1階フロアーで、チェリッシュおふたりのトークショーと歌を聴いたことがあるのを思い出しました。ラジオ番組の放送でした。現在は、当時の中日ビルは取り壊されて、新しいビルの建築工事が行われています)
YOASOBIの曲がこの本の短編のヒントになっているのかと思いましたが、逆で、小説作品が曲になるそうです。YOASOBIは「小説を音楽にするユニット」というキャッチフレーズが本の帯に書いてあります。
この「ユーレイ」の場合、話の内容からいって、曲名は必然的に『花火』にからんだものなるのでしょう。
読み続けます。
ああ、やっぱり(死ぬつもりなんだ)
遺書も書いてあるらしい。
いじめが原因なんだ。
たぶんシカト(存在無視、存在否定、仲間はずれ、冷遇(れいぐう))というやつであろう。
なにかの出来事があって、相手に不快感を与えると、シカトされるということは、おとなの社会でもあります。シカトしたり、されたりです。のりきるキーワードは『マイペースを変えない。(これがわたしですと強く主張する意思をもち続ける)』です。
主人公中学生女子のイメージは、顔もスタイルもそこそこ良くて、成績優秀、そつなく人づきあいをこなしてきたのだけれど、このたび、偶然運悪くチョンボをしてしまい、失敗に慣れていないので、ゆきづまっているというふうに思えます。
赤塚不二夫漫画天才バカボンのパパのように『これでいいのだ』と思えれば、前進できるのです。
残響(ざんきょう):音源が消えた後も反響する音。
上手な構成です。
ドラマ『相棒』を観るようでした。
良かった文節として『小さな声で、ありがとう、と呟く(つぶやく)』
『初めて容疑者になったときに読む物語 色違いのトランプ』 宮部みゆき
タイトルを見てまず向田邦子作品「思い出トランプ」が頭に浮かびます。
男女のすっきりしない関係をたどった連作短編集でした。本作品と関係・関連があるのだろうか。(読み終えて、関係はありませんでした)
主人公 安永宗一(やすなが・そういち) 被災地での発掘現場で現場監督職をしている。半官半民の団体職員。
妻:瞳子(とうこ)、主婦
ひとり娘:夏穂(かほ)17歳7か月、高校生
こちらの世界とあちらの世界があります。ゆえに『鏡界人定管理局(きょうかいじんていかんりきょく)』という所属があります。鏡のこちらと向こうのようでもあります。どちらにも同じ姿形(すがたかたち)の人間がいるらしい。かといって、すべてが同一というわけでもない。こういうパターンを以前どこかで読んだことがあるような気もします。
量子加速器(りょうしかそくき)<ロンブレン>というものが出てきます。
物理のお話のようです。
現在、同時進行で読んでいる本が『三体(さんたい) 劉慈欣(りゅう・じきん リウ・ツーシン CIXIN LIU) The Three-Bady Problem 大森望、光吉さくら(みつよし・さくら)、ワン・チャイ[訳] 立原透耶(たちはら・とうや)[監修] 早川書房』です。この本とこの短編が、重なるイメージがあります。三体には、重なる世界(3つの天体と3つの太陽)があります。こちらの短編では、並行する世界があります。
カタストロフ:突然の大きな破滅、悲劇
物語の内容とは離れてしまうのですが、「耳鳴り現象」の部分を読んでいて思いついたことです。
自分の脳みその中にある世界「標準」にあてはまらない人間を排除しようとする人がいます。「標準」にあてはまらない人間をうそつき呼ばわりすることもあります。でも、うそではないのです。「標準」の大きさと範囲は、人によって違ったりもします。
セクト:宗派、集団。この短編の場合は「所属」ぐらいの意味だと理解しました。境界人定管理局中央セクトです。
あちらの世界にある日本は、全体主義国家で、軍事政権が国を支配しているそうです。
入国管理事務所みたいな風景とか、運転免許試験場みたいな景色があります。
渡界(とかい):あちらの世界とこちらの世界をゆききする。第一鏡界(きょうかい)と第二鏡界がある。
剽げる(ひょうげる):ふざける。おどける。
物語では、現状説明が続きます。
快哉(かいさい):愉快で楽しい。
国家公安保全局:第二鏡界にあって、第一鏡界(主人公ファミリーの所属するところ)にはない。
物語が終わりに近づくにつれて、なんだかさみしくなりました。
オルグ:労働組合の用語。この短編の場合は、組織拡充のための勧誘。昭和40年代に、労働組合が盛んにストライキをしていたころの言葉だと、思い出しました。今の若い人たちにはストライキ(職場を放棄して雇用側に労働条件の要求をするための集会を開く。公道を、許可を得てデモ行進することもある。デモンストレーション(集団で主張行為をする))がなんなのか想像もできないでしょう。
読み終わりました。
うーむ。
好みではありません。
自分には合いませんでした。
『はじめて告白したときに読む物語 ヒカリノタネ』 森絵都(もり・えと)
私がいて、彼がいて
私は旅立って、
「取り返しのつかないもの」を
取り返すそうです。
なんのことでしょう?
(読み終えて:過去へタイムトラベルをして、失恋を回収するのです)
坂下由舞(さかした・ゆま):高校2年生16歳。女子バレーボール部員。
樋口一花(ひぐち・いっか):坂下由舞の親友。同級生。黒ぶち眼鏡。作家志望。名前は、短命だった明治時代の女性小説家樋口一葉(ひぐち・いちよう)からきているのでしょう。1872年(明治5年)-1896年(明治29年)24歳没。作品として「たけくらべ」「にごりえ」ほか。
この短編を読み終えてから思ったのですが、高校生の樋口一花も樋口一葉と同じように、短命ではあるけれど名作を遺す作家になるという流れで、この短編の続編がつくれないこともない。(自分だけの勝手な空想です)
原田椎太(はらだ・しいた):坂下由舞の幼なじみ。幼稚園からいっしょ。坂下由舞の片思いの相手。ニックネームは「シータケ」
そして、タイトル『ヒカリノタネ』とは何?
ヴィジョン:本作品の場合、「未来」という意味だろうか。将来の見通し。
坂下由舞は、原田椎太のストーカーのようです。
アニメ「ワンピース」そして「ルフィ」が、キーワードです。
もうひとつのキーワードが「柿ピー」です。
タイトルの「ヒカリノタネ」は、柿ピーなのです。(辛い(からい)お菓子。カキの種の形をしている)
デジャヴ:既視感。実際には体験したことがないけれど、前に一度体験したことがあるような感覚がある。
セリフ『私、タイムトラベルの手伝いをしてくれる人、知ってるんだけど』(読んでいる自分の気持ち:ここからが本番か! 前置きは終わった。おもしろそうだ)
悔恨(かいこん):自分の過ちを後悔する。残念に思う。反省する。(ふと、先日、奈良県警本部長がこの言葉を使っていたことを思い出しました)
159ページに来て、不思議な感覚に包まれました。
本短編の前の短編『初めて容疑者になったときに読む物語 色違いのトランプ』を書かれた宮部みゆきさんの作品に『蒲生邸事件(がもうていじけん。昭和11年2月26日軍事クーデターの失敗。2・26事件。大蔵大臣ほかが殺害されています)』があります。
蒲生邸事件の内容は、本作品と同じく、現代から過去へのタイムトラベラーものです。
この本をつくるにあたり、ふたりの作品を並べて、作家2名をつなぐという相乗効果を狙ったのだろうか。
それともYOASOBIというバンドの曲として、時間移動旅行というテーマか素材があるのだろうか。
読んでいて、リズムがある文脈が心地よい。
憐憫(れんびん):かわいそう。哀れむ(あわれむ)
アニメのようでもあります。
ポリシー:方針
GAFA(ガーファ):グーグル、Amazon、フェイスブック、アップル
179ページ、おもしろい!(理由はここには書けません)
もしかしたら、原田椎太(はらだ・しいた)は、同性が好きなんじゃないだろうかと思いつきました(結果は違っていました)。
「小学校5年1組の担任は、点数主義のAIロボットみたいな人だった」じっさいにいそうです。
成績格差の雰囲気が広がって、クラスメンバーの気持ちは沈みます。
フリースクール:学校へ行けなくなったこどもさんが通うスクールらしい。
良かったセリフとして『学校なんて池だよ。池。』(そのとおりです)
読みながら『結婚』について考えました。
まだ自分が結婚する前に「世界で一番好きな人とは結婚できない。世界で二番目に好きな人と結婚することが多い」ということわざみたいな文節を耳にしたか、目にした記憶があります。
ずっとその言葉が気になっていましたが、自分は、世界で一番好きな人と結婚しました。間違っていませんでした。ともに歳をとってみてわかりました。
なるほどという感想をもつ物語の進行、進展具合です。
展開はおもしろい。手品のようです。
良かったセリフとして『私も観察者やめよっかなあ』
いいお話でした。
ちょっぴり涙がにじみました。
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