2014年03月03日

聖なる怠け者の冒険 森見登美彦

聖なる怠け者の冒険 森見登美彦 朝日新聞出版

 文章を読み続けて、最終ページまできて、何が書いてあったのかがわからないということが率直な感想です。
 京都市内、7月の祇園祭、土曜日の一日を舞台にして、八兵衛明神と狸が素材らしいぽんぽこ仮面(生身の人間)について書いてありました。
 冒頭付近は面白い。つくりはこっています。最初にイラスト付き登場人物像の紹介が新鮮です。文章にはリズムがあります。読者と会話をしているようでもあります。
 地図で言うところの京都市東側の風景です。実際に散策したことがあります。昔見た自然に包まれた風景です。こどもの頃に田舎で体験した心あたたかい生活がよみがえりました。
 ぽんぽこ仮面は優しいという性格設定です。強くも勇ましくもないのです。弱いというほうが正確かもしれません。(冬季オリンピックの頃に読んでいたので、浅田選手の「メダルよりも大切なものがあった」という言葉と共通するものが、この小説にも含まれていると感じました。)
 ぽんぽこ仮面を捕まえるということがどういうことなのか。昔、学生運動をしていた人たちの内ゲバ闘争を思い出しました。政治的なことが比喩化された小説という一面があるという受け取り方をしました。わたしより少し上の世代が読むと理解できるのかもしれません。
 印象に残った言い回しは、「なぜわれわれの手から休暇が失われたのか」、「マグロのように泳ぎ続ける。動きを止めない。正しいリズムを維持する」でした。
 別の見方として、京都市を舞台にして幻想的な空想小説を仕上げたというものもあります。宗教、祭りの灯り、歴史、京都で大学生活を送られたことのある人向きの小説です。


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