2025年03月25日
猫のお告げは樹の下で 青山美智子
猫のお告げは樹の下で 青山美智子 宝島文庫
神社に猫がいて、猫が人間にお告げをする。お告げを受けた人間は幸せになる。そんなお話でした。
短編が7本あります。
お告げは、『タラヨウ(モチノキ科の常緑高木。葉につまようじなどで傷を付けることで文字が書ける。)』という植物の葉っぱで行われます。この物語では、神社にいる猫が、爪で文字を書くのです。
そんなわけで、短編1本ずつに、「(タラヨウの葉が)一枚目、二枚目……」と、順番が付けられています。
『一枚目 ニシムキ』
ミハル:主人公女性。21歳。美容院で、美容師をしている。佐久間に恋をしている。
佐久間:ミハルの美容院で働いている5歳年上の男性。26歳
時子:ミハルのおば(母の妹)45歳。離婚歴あり。2LDKの中古マンションを買った(これが、タイトルの「ニシムキ」につながります)
バリトンボイス(佐久間の声質):あたたかみと力強さをもつ声
ミハルは、佐久間に、告白めいたことをするのですが、振られます。
佐久間は、近々、結婚するのです。そして、佐久間は、別の支店へ異動してしまいました。
ミハルは、失恋してしまいました。
(ミハル)『走ったら忘れる』(ミハルは、中学・高校と陸上部でした。ミハルは走ります)
この部分を読んで、はたと立ち止まりました。
この本の前に読み終えた本が、『我が家の問題 奥田英朗(おくだ・ひでお) 集英社文庫』でした。短編集で、最後の作品が、『妻とマラソン』でした。奥さんが、ストレスをかかえていたのですが、ストレス解消のために走り始めて、ご家族の励ましで、東京マラソンに参加されたのです。
なんだか、前に読んだ本と話がつながって、楽しい気分になりました。
ミハルは、走っている途中で、たまたまお告げをする猫がいる神社に入っていったのです。
詩的な文章です。うまいなあ。
『二十一歳にして初めての、失恋。』(ミハルは、かなり落ち込んでいます。人は、良かれと思ってやったことが、相手にとっては迷惑だったことがわかるとしょんぼりします)
手水舎(ちょうずや):神社や寺院で、手や口を清める場所
猫がいます。黒と白の模様です。全体的に黒い。
ハチワレ:物語に出てくる猫は、額(ひたい)から鼻にかけて、八の字を描くように白い。瞳は透き(すき)通るような金色をしている。おなかと足が白い。左側のお尻に、白い星のマークがある。
人間と意思疎通ができる猫です。猫は、爪で、タラヨウの葉っぱに字を書きます。その猫を、『ミクジ(おみくじからきているらしい由来の名前)』と呼ぶ。ミクジは、人間に、『お告げ(おつげ)』をする猫なのです。
タイトルにある、『ニシムキ』の意味は、分譲マンションの部屋が西向きであることにやがてつながります。
クロノグラフの時計:ストップウオッチ機能を備えた高精度の腕時計
『…… 誰かを好きになるって、その人が自分に混ざるってっことだもの』
『まあ、失恋には時薬(ときぐすり)が必要だよ』(いいセリフです)
つらい気持ちを、『お金に助けてもらう』
(そのために、コツコツ節約してお金を貯めておく)
以前、東京のホテルの部屋で見た、夕映えを思い出しました。
西向きの部屋は、夏は暑くて苦手ですが、ほかの季節ならだいじょうぶです。
『二枚目 チケット』
なかなか良かった。良質です。ドラマ化されるといいのに。
今回は、父と娘(中学二年生)のうまくいかない話を、猫のお告げが幸せに導いてくれるのです。
父40歳はクサイというところから始まります。(父の思い違いで、父親自体がクサイのではなくて、父の食べる納豆キムチがクサイのでした)。
父親の名前を最後に出す手法が、斬新(ざんしん。めったにない)で、うまいなあと感心しました。
父は、小さなガラスメーカーで営業をしている。父が、出張先にあった細い道をゆくと、神社の鳥居が見えて、お告げをする猫『ミクジ』に出会います。
神社では、『(中2の娘である)さつきと、うまいこと、やれますように』と祈ります。
タラヨウの葉っぱに、『チケット』の文字があります。(この文字は、父親だけにしか見えないそうです。奥さんには見えませんでした。おもしろい)
さつき:ひとり娘。中学2年生。父親を嫌う時期を迎えている。アイドルグループ、『キュービック』のたっちん(葛原達彦)のファン
妻美枝子:38歳。さつきの母
タイトルのチケットは、CD購入とか、コンサートを観るための『チケット』です。
チケットのゲットは、スマホじゃないと申し込めないのです。QRコードがいるのです。(わたしもよく利用しています。最初の頃は緊張しましたが、今は操作に慣れました。便利です)
この家庭では、父親しかスマホをもっていないのです。母の携帯は、ガラケーです。
まあ、猫のお告げのあといろいろあります。対立もありますが、心温まるシーンも多い。
なかなかの良作です。娘のいる父親が読むとほろりとくる部分もあります。
わたしにも娘がいます。ふり返って、けっこういろいろ反省しています。
相手が若いからといって、嫌ってはいけない。中年男は、ついつい若者を下に見てしまいます。
『誰に対しても彼は同じように人あたりよく接することができるんだろう……』と父親が、若い男子のいいところに気づきます。
いいなと思ったフレーズです。
『家族って、電車に乗り合わせたようなもんだ。最初は一緒に乗っていたって、いつか乗り継ぎの駅がきて、子どもは違う場所へといってしまう……』
なんというか、お話の中で、父と娘が、『気持ち』でつながります。感動するシーンがあります。 かなり、練られている(ねられている)作品です。
いい話でした。本当に、ドラマにでもなるといいのに。
『三枚目 ポイント』
就職活動がうまくいかない大学生の話です。
竜三:25歳フリーター。バンドマン。アマチュアのロックバンドを組んでいる。ボーカル担当。作詞作曲をしている。ふだんは、CDショップの店員。三男だから、親に将来を期待されていなかった。
田島慎:S大学経済学部の大学生。就活生。主人公。竜三の店でバイトをしている。無気力人間、『僕は、「欲しいもの」が欲しい。』と書いてあります。夢も希望ももっていない男です。
父親につぶしがきくからと勧められて経済学部に入った。
なんでもだれかに決めてもらって、運ばれるように生きてきた。
求職活動面接では不採用が続いている。
自分の人生を自分ではなく、だれかが(父とか母とか)が決めている。就職先もだれかに決めてほしい。
見た目はいいらしく、女が寄ってくるが、中身がないので、女は離れていく。『あたしたち、なんか合わないかも』と言われる。
給料が良くて、楽で、休みが多くて、残業が少なくて、転勤がなくて、定年までいられる仕事に就きたい。(こういう動機の人は採用できません。こういう人がさきざき、会社や組織、人のお金を自分のポケットに入れます。まずは、世のため人のために働くという強い意思をもつことが重要です)
そんな彼が、お告げ猫、『ミクジ』に出会います。ミクジは、神社にあるタラヨウの木のまわりをグルグル回って、彼に、『ポイント』と書かれた葉っぱをプレゼントしたのです。
(つづく)
最後まで読みました。なかなか良かった。
ギターの話が出てきます。ギターの弾き方を知っている人が読んだら、より味わいが深まることでしょう。コードとして、C、G、D7、B7が出てきます。コード:左手の指でギターの弦を押さえて和音(わおん。たいてい3つの音)を出す。
タイトルにある、『ポイント』は、『ポイントカードのポイント』、そして、『位置のポイント』につながっていきます。
田島慎の心の中にある、『対立』がじょうずに書いてあります。人がうらやましい。人がうらめしい。人が成功することがねたましい。田島慎の心の中に、『偽善(悪意がある善意)』が存在します。田島慎の心は汚れて(よごれて)います。
田島慎は、就職活動がうまくいきません。対して竜三は、音楽バンドがデビューに向けて着々と話が進んでいます。
田島慎は、竜三に怒り(いかり)をぶつけます。『あなたはいいな!(わたしはだめだ。くやしい)』
竜三の田島慎に対する問いです。『大学って、どんなとこ?』(竜三は、家庭の事情で大学へ進学できなかった。家族ともめた。仲良しこよしの家族は少ない。家族なんてそんなもの。そんなこんなが書いてあります)
いいなあ。NHKの夜ドラ(22時45分~23時)でやればいいのに。この本を読んでいたころは、『バニラな毎日』をやっていました。蓮佛美沙子さんと永作博美さんが出ていました。
この本をこれまで読んできて、その時間帯の15分間連続ドラマ月曜から木曜で一話完結方式にのせるとちょうどいいのになあと思いました。
ツイッターのリプとは:返事をする。答える。リプレイ
わたしが思うに、人がこの世に生まれてくるときは、人それぞれに、この世での、『役割』を与えられて生まれてきていると思っています。
その、『この世での自分の役割』を探すことが、各自の人生のありようだと思うのです。
田島慎の行動があります。これまでの彼の人生は、ほぼ、両親が決めて来た。言われたとおりに生きてきた。親に世話をしてもらうことが当たり前だった。(それでいいのか。主体性がありません)
田島慎は、わからないことがあるとすぐに対応のしかたをスマホに聞いていた。
スマホに聞くのではなくて、自分で考える。スマホに聞き続けていると、最後に、『闇バイト』にあたる。人生がだいなしになる。
結論(答え)よりも経過の中に人生がある。
TAB譜(ふ):たぶふ。タブラチュアふ。弦楽器の譜面(ふめん)
終活において、マニュアルを見ながらのエントリーシート記入をやめる。
自分の現在地を見つけて、自分はどうしたらいいのかを自分で考えて、決断して、実行する。
『ありがとう』という気持ちを忘れない。
田島慎について、32社目の就職採用面接が始まりました。
いい話でした。
『四枚目 タネマキ』
主人公 木下哲(きのした・てつ):68歳。やっかい者のジジイ。老いぼれ(おいぼれ)。息子の嫁と孫と三世代同居をしている。
3年前まで、プラモデル屋をしていた。『木下プラモデル』。今は年金生活者
『神』なんていないと思っている。いても、ワシを見てくれてはいないと思っている。
元気で、ぽっくり死が希望です。
木下繁子:木下哲の妻。3年前に離婚届を置いて家を出ていなくなった。
看護師をしていた。無口だった。こどもを保育園に預けながら看護師として働いていた。
木下夫婦の息子 木下弘人(きのした・ひろと):大阪へ転勤。単身赴任をしている。
息子の嫁 木下君枝:義父木下哲と同居。30歳そこそこ。こどもがいる。ざっくばらんな人柄
義父にもずけずけと言いたいことを言う。
こどもを保育園に預けて、近所の雑貨屋で働いている。
旧姓、『水沢』。両親と兄夫婦がいる。
木下哲の孫 未央(みお):2歳児。木下君枝が母親
曽根:ご近所さん。骨折で入院中
杉田のばあさん:息子三人は独立した。木下哲宅のお隣さん
ヨシ坊(現在の宮司(ぐうじ)宮司の前は、中華料理屋をしていた)←喜助(昔の宮司。木下哲の三つ年上の幼なじみ。ヨシ坊は喜助のひとり息子。喜助は三年前に他界した)
猫からのお告げのシーンがワンパターンですが、それはそれでいい。
『かつてワシのすぐそばにいつもあった、あの白い星のマーク……』(なんのことだろう。伏線です。プラモデルと関係あるのか)
お告げとなる葉っぱの文字は、『タネマキ』です。
(つづく)
読み終えて、こちらもまたいい話でした。
今年読んで良かった一冊になりました。
店をたたんだプラモデル店での出来事昔話、離婚届を置いて出て行った看護師を定年退職した奥さんの話、いつも仕事のことばかりを優先して、妻子に冷たかったご主人の話、いずれもありがちな、昭和時代の男の話です。
ご主人は、こどもです。自分の好きなことはやって、そうでないことはやらずに来ました。その結果、人が離れていきました。
やりたくないことでも、やるべきことは、がまんしてやるのが、おとなです。ご主人はこどもでした。
されど、捨てる神があれば、拾う神ありです。いい話でした。胸にじ~んと広がる幸福感があって、お話は終了しました。泣けてくるようないい話です。
まちコン:男女の出会いの機会をつくるイベント。街ぐるみで開催される合同コンパ
『五枚目 マンナカ』
小学4年生の転校生男児が学校でいじめられています。かわいそうな話です。
暗い雰囲気で始まりましたが、この短編集では、最後は、幸せな状態になりますから、安心して読めます。健全なお話集です。
深見和也:転校生。4年3組しゃべらない根暗なやつ。コケ(苔)が好き。父親の会社がだめになって、転校してきた。一戸建ての家から、アパートになった。父親はガラス工場の工員、母親はスーパでレジ打ちをしている。ひとりっこ。
岡崎:いじめっこ。柔道を習っている。体が大きい。とりまきがいる。学級委員長。優等生を装っている(よそおっている)。
楠田:学級副委員長
日下部(くさかべ):クラスメート男子
手塚:深見和也の隣の席に座っている男子
牧村由紀先生:4年3組深谷和也のいるクラスの担任。児童40人のクラス。新卒後3年目の女教師。頼りない。クラスで起きているいじめを認識していない。逆に、いじめっ子といじめられている子がいるのに、ふたりが仲良くしていると勘違いしている。先生として、あてにならない。頼れない。
山根正先生:4年2組の担任。牧村由紀先生と同じぐらいの年齢。男性だけど、ひょろひょろで色白、朝礼のときに倒れた。いつもおどおどしていて、ガリガリの体をしている。
姫野さゆり:小学校養護の先生。パワフルな体格。児童からはきらわれている。太っている。チリチリの髪の毛、腕も足も太い。
『ぼくにとって最高に美しいものが誰かにとっては気味の悪いもので(苔(こけ)のこと)……』から始まりました。
まあ、今どきの小学生は、プレステ(ソニーのゲーム機)とかウィー(任天堂のゲーム機)とか、ゲーム遊びばっかりですな。外で体を動かす遊びもしましょう。
深見和也は、悩んでいます。でも、相談相手はいません。
今は幸せじゃないけれど、神社で、猫の『ミクジ』に会うと幸せになれるよ!(わたしの声です)
深見和也は、おとなしいいい子だけれど、もっと正直に、イヤなことはイヤと言ったほうがいい。がまんしないほうがいい。
いじめがない学校なんてないんじゃないかな。社会に出てからだっていじめはあります。負けちゃだめです。
深見和也は学校だけでなく、学習塾でも、いじめっ子の岡崎に出会ってしまいます。
最悪ですな。
神社です。
『学校に行くのが、つらくなくなりますように』
人は、自力で、願いを達成できそうもないときになると、神さまや仏さまを頼ります。
深見和也が、クラスメートを自宅に呼んで、家にあった、『エゾスナゴケ』、『ナミガタタチゴケ』をかわいいだろと言ったら、気持ち悪い奴(やつ)という反応があった。
神社に行ったら、『ホンモンジゴケ』があった。
『……学校に行くのが、つらいんだ』
猫のミクジが出てきました。
葉っぱにかかれたメッセージは、『マンナカ』です。
はて? どういう意味だろう。どういうことだろう。
(つづく)
合唱コンクールの指揮者とピアノ演奏者を決める。
指揮者:岡崎(学級委員長)
ピアノ演奏者:もめる。松坂(腱鞘炎でできませんとの申立てあり)、遠藤(やりたくないと言ったのに、岡崎の誘導でなんとなく遠藤に決まる。担任牧村由紀も岡崎の後押しをした。無理やりです。形だけ整えばそれでいいといういいかげんな仕事です。無伴奏で歌えばいいだけのことです)
養護の先生姫野さゆりが、深見和也に言います。
『(君の居場所があるよという意味で。保健室に)机と椅子があるよ』
親は無力です。とくに父親が無力です。こどもを怒るだけです。
教師は悪の味方です。こういう教師の人っています。地元の有力者や権力者のほうに顔が向いているのです。彼らの関係者がいじめっ子ということもあります。
つらく当たる人もいれば、優しく包んでくれる人もいます。それが、人間界です。
『マンナカ』は、中心という意味以外にも意味がある。『中立(ちゅうりつ。どちらにも属しない』。物語では、さらに解釈が発展していきます。まんなかとか、はしっこというのは、人間が勝手に判断しているだけだと。自分で自分が自分としてまんなかにいると思えば、自分はまんなかにいるのだと。(なるほど。ステキな解釈です)
なんというか、相手のことが怖い(こわい)と思っていても、いざ対決してみたら、自分のほうが強かったということはあります。
わたしは、小学二年生のときに、いつもわたしをいじめてくる男の子ふたりと女の子ひとりと、体育のすもうの授業でそれぞれと戦って、三人とも土俵の外へ投げとばしてやったことがあります。なんだ、弱いじゃんか。お~れは、あんがい強いじゃんか。自信がつきました。
『六枚目 スペース』
芝浦千咲(ちさき):悠(ゆう。5歳)の母親。35歳。日に当たっての頬骨付近の小さなシミ複数が気になる年齢。外出時は、サングラスに長そでシャツで完全防備。
十代のころから漫画家志望だったが、あきらめた。
幼稚園の広報班で、『ひまわりだより』をつくっている。マンガ絵がじょうずなことに周囲が気づいた。
孝:千咲の夫
里帆(りほ):きららの母親。25歳。半そでTシャツに、クロップドパンツ(クロップドは、切り取られた。袖丈(そでたけ)が短い。6分から8分のパンツ)
添島(そえじま):幼稚園における広報班の班長
『ひまわりだより』を班員たちとつくっている。こどもの名前は、瑠々(るる)
輝也パパ:『ひまわり』のコラムを書く人。拓海くん(5歳)の父親。主夫をしている。妻が働き手の大黒柱。(輝也パパは、実は、トリックアートのアーティスト)。
すっきりとして感じがいい男性。保護者ママたちに人気がある。女ばかりの集団の中で、男の華となっている。
妻は広告代理店で働くキャリアウーマン。スーツとバーキンのバッグ姿。バーキン:エルメスが発表した高級ブランドバッグ
露吹ひかる(つゆぶき・ひかる):漫画家。アシスタントを募集している。53歳女性。ヒューマニズム系の漫画を描く人
ネーム:漫画をおおまかに表したもの。
漫画を描く時の道具:ケント紙、インク、ホワイト、スクリーントーン(半透明の粘着性のあるシート)、ペン先、ペン軸
女性の厄年(やくどし):33歳、37歳が本厄。その前後が、前厄と後厄、三十代はほとんどが厄年
『ちゃんと夢をあきらめますように(漫画家になりたい夢です)』
猫からのメッセージが、『スペース』です。範囲とか、領域とか、場所、区域だろうか……
コンビニの雑誌購入から、『断捨離』へ。
2LDKの自宅マンションです。
だんなの書斎はあるけれど、妻やこどもの部屋がありません。
ついでに、だんなの妻に対する興味もありません。
『ぽかーんとする』、『神様が入るスペースを作るんです』(なるほど)
神様は、自分の外にいるのではなく、自分の心の中にいるのです。ときおり、神様が自分にメッセージをくれるのです。
柴崎千咲は、もんもんと悩みます。漫画家になりたい夢にきっぱりと別れを告げたいけれど、それができない35歳です。
新しいものを入れるためには、まず、今あるものを外に出さねばならぬ。出せば、新しいものが入る、『スペース』ができる。(なるほど)
読み終えて、ほろりとくるいい話でした。なかなかいい。光っています。
『七枚目 タマタマ』
最後のお話になりました。
占い師の彗星ジュリア(すいせいジュリア。ジュリアは、チェッカーズの歌からきている。『ジュリアに傷心(ハートブレイク))。派手なかっこうをしてテレビに出ている。メイクを落とすと、ジュリアだとは、わからない。
本当の名前は、『笑子(えみこ)』で、同級生からは、『ニコ』と呼ばれている。45歳。バツイチ。ひとり暮らし。居住地は東京。25歳で結婚して、36歳で離婚した。こどもはできなかった。
ともちゃん:彗星ジュリアの高校の同級生(岐阜県)。友谷茂(ともや・しげる)。税理士。自分の税理士事務所をもっている。
仕事以外のときは、リーゼントでかっこをつけている。
居住地は、東京。名古屋の大学を卒業した。眼光鋭い奥二重の目、キリッとした太い眉(まゆ)、鼻筋が通っている。美形だが、ヤバい人に見える。ただ、見た目と中身は違う。優しい人である。高校野球の球児だった。
以上のふたりは、偶然東京で1年前に再会した。
清水:彗星ジュリアが出版した本の出版社で編集を担当している。トークイベント担当でもある。
玉木たまき:83歳。高級老人ホームの入居者。息子が東京に、娘が海外にいる。5年前にホームに入った。
中川:老人ホームの施設長。ショートカットの小柄な女性
占いの実態として、『自分はうまくいっていない』というお客さんが多い。話を聞くと、そうではなくて、『うまくいかないと(自分で)思っている人』が多いのが実態である。
スガキヤのクリームぜんざい:名古屋の人だとわかります。地元のラーメン屋です。こどもさんから高校生向け、家族連れ向けです。うちの孫たちも大好きで、たまにいっしょにお店でラーメンやチャーハンを食べます。まだ、小学校低学年の孫はいつも、ちいさい体のくせに、『チャーハン大盛り!』と注文します。
神社のネコからのお告げは、『タマタマ』です。
ワンオラクル:タロットカード占いの用語。シャフルしてカードを1枚引く。カードのメッセージが書かれている。
玉木たまきは、大切な小箱の鍵をなくして困っている。(小箱は、父のフランスみやげ。たまきが7歳のときに父からもらった)
玉木たまきは、その小箱の鍵がどこにあるか、彗星ジュニアに占ってほしい。
さて、どうなる。
それからなんだかんだあります。
ラベリング:この人は、〇〇な人と、決めつける。評価する。あるいは、自分は、役に立たないと自分で自分を評価する。
ホロスコープ:天体図
オチです。(話の締め(しめ))
そうか…… すごいなあ。そういうことか。(ここには書きません。本を買って読んでください)
人が生きるヒントがあります。ヒント:手がかり
人の縁(えん)のことが書いてあります。
出会いです。つながりです。
なかなか良かった。
『ここだけの話』
巻末に、この文章が加えられています。
掲載されている短編に出ていた人たちのその後のことが書いてあります。
それから、猫のことが書いてあります。
単行本は、2018年(平成30年)に発行されています。
文庫本は、2020年(令和2年)に発行されて、2024年で14刷発行されています。
よく売れている本です。
いい本でした。
神社に猫がいて、猫が人間にお告げをする。お告げを受けた人間は幸せになる。そんなお話でした。
短編が7本あります。
お告げは、『タラヨウ(モチノキ科の常緑高木。葉につまようじなどで傷を付けることで文字が書ける。)』という植物の葉っぱで行われます。この物語では、神社にいる猫が、爪で文字を書くのです。
そんなわけで、短編1本ずつに、「(タラヨウの葉が)一枚目、二枚目……」と、順番が付けられています。
『一枚目 ニシムキ』
ミハル:主人公女性。21歳。美容院で、美容師をしている。佐久間に恋をしている。
佐久間:ミハルの美容院で働いている5歳年上の男性。26歳
時子:ミハルのおば(母の妹)45歳。離婚歴あり。2LDKの中古マンションを買った(これが、タイトルの「ニシムキ」につながります)
バリトンボイス(佐久間の声質):あたたかみと力強さをもつ声
ミハルは、佐久間に、告白めいたことをするのですが、振られます。
佐久間は、近々、結婚するのです。そして、佐久間は、別の支店へ異動してしまいました。
ミハルは、失恋してしまいました。
(ミハル)『走ったら忘れる』(ミハルは、中学・高校と陸上部でした。ミハルは走ります)
この部分を読んで、はたと立ち止まりました。
この本の前に読み終えた本が、『我が家の問題 奥田英朗(おくだ・ひでお) 集英社文庫』でした。短編集で、最後の作品が、『妻とマラソン』でした。奥さんが、ストレスをかかえていたのですが、ストレス解消のために走り始めて、ご家族の励ましで、東京マラソンに参加されたのです。
なんだか、前に読んだ本と話がつながって、楽しい気分になりました。
ミハルは、走っている途中で、たまたまお告げをする猫がいる神社に入っていったのです。
詩的な文章です。うまいなあ。
『二十一歳にして初めての、失恋。』(ミハルは、かなり落ち込んでいます。人は、良かれと思ってやったことが、相手にとっては迷惑だったことがわかるとしょんぼりします)
手水舎(ちょうずや):神社や寺院で、手や口を清める場所
猫がいます。黒と白の模様です。全体的に黒い。
ハチワレ:物語に出てくる猫は、額(ひたい)から鼻にかけて、八の字を描くように白い。瞳は透き(すき)通るような金色をしている。おなかと足が白い。左側のお尻に、白い星のマークがある。
人間と意思疎通ができる猫です。猫は、爪で、タラヨウの葉っぱに字を書きます。その猫を、『ミクジ(おみくじからきているらしい由来の名前)』と呼ぶ。ミクジは、人間に、『お告げ(おつげ)』をする猫なのです。
タイトルにある、『ニシムキ』の意味は、分譲マンションの部屋が西向きであることにやがてつながります。
クロノグラフの時計:ストップウオッチ機能を備えた高精度の腕時計
『…… 誰かを好きになるって、その人が自分に混ざるってっことだもの』
『まあ、失恋には時薬(ときぐすり)が必要だよ』(いいセリフです)
つらい気持ちを、『お金に助けてもらう』
(そのために、コツコツ節約してお金を貯めておく)
以前、東京のホテルの部屋で見た、夕映えを思い出しました。
西向きの部屋は、夏は暑くて苦手ですが、ほかの季節ならだいじょうぶです。
『二枚目 チケット』
なかなか良かった。良質です。ドラマ化されるといいのに。
今回は、父と娘(中学二年生)のうまくいかない話を、猫のお告げが幸せに導いてくれるのです。
父40歳はクサイというところから始まります。(父の思い違いで、父親自体がクサイのではなくて、父の食べる納豆キムチがクサイのでした)。
父親の名前を最後に出す手法が、斬新(ざんしん。めったにない)で、うまいなあと感心しました。
父は、小さなガラスメーカーで営業をしている。父が、出張先にあった細い道をゆくと、神社の鳥居が見えて、お告げをする猫『ミクジ』に出会います。
神社では、『(中2の娘である)さつきと、うまいこと、やれますように』と祈ります。
タラヨウの葉っぱに、『チケット』の文字があります。(この文字は、父親だけにしか見えないそうです。奥さんには見えませんでした。おもしろい)
さつき:ひとり娘。中学2年生。父親を嫌う時期を迎えている。アイドルグループ、『キュービック』のたっちん(葛原達彦)のファン
妻美枝子:38歳。さつきの母
タイトルのチケットは、CD購入とか、コンサートを観るための『チケット』です。
チケットのゲットは、スマホじゃないと申し込めないのです。QRコードがいるのです。(わたしもよく利用しています。最初の頃は緊張しましたが、今は操作に慣れました。便利です)
この家庭では、父親しかスマホをもっていないのです。母の携帯は、ガラケーです。
まあ、猫のお告げのあといろいろあります。対立もありますが、心温まるシーンも多い。
なかなかの良作です。娘のいる父親が読むとほろりとくる部分もあります。
わたしにも娘がいます。ふり返って、けっこういろいろ反省しています。
相手が若いからといって、嫌ってはいけない。中年男は、ついつい若者を下に見てしまいます。
『誰に対しても彼は同じように人あたりよく接することができるんだろう……』と父親が、若い男子のいいところに気づきます。
いいなと思ったフレーズです。
『家族って、電車に乗り合わせたようなもんだ。最初は一緒に乗っていたって、いつか乗り継ぎの駅がきて、子どもは違う場所へといってしまう……』
なんというか、お話の中で、父と娘が、『気持ち』でつながります。感動するシーンがあります。 かなり、練られている(ねられている)作品です。
いい話でした。本当に、ドラマにでもなるといいのに。
『三枚目 ポイント』
就職活動がうまくいかない大学生の話です。
竜三:25歳フリーター。バンドマン。アマチュアのロックバンドを組んでいる。ボーカル担当。作詞作曲をしている。ふだんは、CDショップの店員。三男だから、親に将来を期待されていなかった。
田島慎:S大学経済学部の大学生。就活生。主人公。竜三の店でバイトをしている。無気力人間、『僕は、「欲しいもの」が欲しい。』と書いてあります。夢も希望ももっていない男です。
父親につぶしがきくからと勧められて経済学部に入った。
なんでもだれかに決めてもらって、運ばれるように生きてきた。
求職活動面接では不採用が続いている。
自分の人生を自分ではなく、だれかが(父とか母とか)が決めている。就職先もだれかに決めてほしい。
見た目はいいらしく、女が寄ってくるが、中身がないので、女は離れていく。『あたしたち、なんか合わないかも』と言われる。
給料が良くて、楽で、休みが多くて、残業が少なくて、転勤がなくて、定年までいられる仕事に就きたい。(こういう動機の人は採用できません。こういう人がさきざき、会社や組織、人のお金を自分のポケットに入れます。まずは、世のため人のために働くという強い意思をもつことが重要です)
そんな彼が、お告げ猫、『ミクジ』に出会います。ミクジは、神社にあるタラヨウの木のまわりをグルグル回って、彼に、『ポイント』と書かれた葉っぱをプレゼントしたのです。
(つづく)
最後まで読みました。なかなか良かった。
ギターの話が出てきます。ギターの弾き方を知っている人が読んだら、より味わいが深まることでしょう。コードとして、C、G、D7、B7が出てきます。コード:左手の指でギターの弦を押さえて和音(わおん。たいてい3つの音)を出す。
タイトルにある、『ポイント』は、『ポイントカードのポイント』、そして、『位置のポイント』につながっていきます。
田島慎の心の中にある、『対立』がじょうずに書いてあります。人がうらやましい。人がうらめしい。人が成功することがねたましい。田島慎の心の中に、『偽善(悪意がある善意)』が存在します。田島慎の心は汚れて(よごれて)います。
田島慎は、就職活動がうまくいきません。対して竜三は、音楽バンドがデビューに向けて着々と話が進んでいます。
田島慎は、竜三に怒り(いかり)をぶつけます。『あなたはいいな!(わたしはだめだ。くやしい)』
竜三の田島慎に対する問いです。『大学って、どんなとこ?』(竜三は、家庭の事情で大学へ進学できなかった。家族ともめた。仲良しこよしの家族は少ない。家族なんてそんなもの。そんなこんなが書いてあります)
いいなあ。NHKの夜ドラ(22時45分~23時)でやればいいのに。この本を読んでいたころは、『バニラな毎日』をやっていました。蓮佛美沙子さんと永作博美さんが出ていました。
この本をこれまで読んできて、その時間帯の15分間連続ドラマ月曜から木曜で一話完結方式にのせるとちょうどいいのになあと思いました。
ツイッターのリプとは:返事をする。答える。リプレイ
わたしが思うに、人がこの世に生まれてくるときは、人それぞれに、この世での、『役割』を与えられて生まれてきていると思っています。
その、『この世での自分の役割』を探すことが、各自の人生のありようだと思うのです。
田島慎の行動があります。これまでの彼の人生は、ほぼ、両親が決めて来た。言われたとおりに生きてきた。親に世話をしてもらうことが当たり前だった。(それでいいのか。主体性がありません)
田島慎は、わからないことがあるとすぐに対応のしかたをスマホに聞いていた。
スマホに聞くのではなくて、自分で考える。スマホに聞き続けていると、最後に、『闇バイト』にあたる。人生がだいなしになる。
結論(答え)よりも経過の中に人生がある。
TAB譜(ふ):たぶふ。タブラチュアふ。弦楽器の譜面(ふめん)
終活において、マニュアルを見ながらのエントリーシート記入をやめる。
自分の現在地を見つけて、自分はどうしたらいいのかを自分で考えて、決断して、実行する。
『ありがとう』という気持ちを忘れない。
田島慎について、32社目の就職採用面接が始まりました。
いい話でした。
『四枚目 タネマキ』
主人公 木下哲(きのした・てつ):68歳。やっかい者のジジイ。老いぼれ(おいぼれ)。息子の嫁と孫と三世代同居をしている。
3年前まで、プラモデル屋をしていた。『木下プラモデル』。今は年金生活者
『神』なんていないと思っている。いても、ワシを見てくれてはいないと思っている。
元気で、ぽっくり死が希望です。
木下繁子:木下哲の妻。3年前に離婚届を置いて家を出ていなくなった。
看護師をしていた。無口だった。こどもを保育園に預けながら看護師として働いていた。
木下夫婦の息子 木下弘人(きのした・ひろと):大阪へ転勤。単身赴任をしている。
息子の嫁 木下君枝:義父木下哲と同居。30歳そこそこ。こどもがいる。ざっくばらんな人柄
義父にもずけずけと言いたいことを言う。
こどもを保育園に預けて、近所の雑貨屋で働いている。
旧姓、『水沢』。両親と兄夫婦がいる。
木下哲の孫 未央(みお):2歳児。木下君枝が母親
曽根:ご近所さん。骨折で入院中
杉田のばあさん:息子三人は独立した。木下哲宅のお隣さん
ヨシ坊(現在の宮司(ぐうじ)宮司の前は、中華料理屋をしていた)←喜助(昔の宮司。木下哲の三つ年上の幼なじみ。ヨシ坊は喜助のひとり息子。喜助は三年前に他界した)
猫からのお告げのシーンがワンパターンですが、それはそれでいい。
『かつてワシのすぐそばにいつもあった、あの白い星のマーク……』(なんのことだろう。伏線です。プラモデルと関係あるのか)
お告げとなる葉っぱの文字は、『タネマキ』です。
(つづく)
読み終えて、こちらもまたいい話でした。
今年読んで良かった一冊になりました。
店をたたんだプラモデル店での出来事昔話、離婚届を置いて出て行った看護師を定年退職した奥さんの話、いつも仕事のことばかりを優先して、妻子に冷たかったご主人の話、いずれもありがちな、昭和時代の男の話です。
ご主人は、こどもです。自分の好きなことはやって、そうでないことはやらずに来ました。その結果、人が離れていきました。
やりたくないことでも、やるべきことは、がまんしてやるのが、おとなです。ご主人はこどもでした。
されど、捨てる神があれば、拾う神ありです。いい話でした。胸にじ~んと広がる幸福感があって、お話は終了しました。泣けてくるようないい話です。
まちコン:男女の出会いの機会をつくるイベント。街ぐるみで開催される合同コンパ
『五枚目 マンナカ』
小学4年生の転校生男児が学校でいじめられています。かわいそうな話です。
暗い雰囲気で始まりましたが、この短編集では、最後は、幸せな状態になりますから、安心して読めます。健全なお話集です。
深見和也:転校生。4年3組しゃべらない根暗なやつ。コケ(苔)が好き。父親の会社がだめになって、転校してきた。一戸建ての家から、アパートになった。父親はガラス工場の工員、母親はスーパでレジ打ちをしている。ひとりっこ。
岡崎:いじめっこ。柔道を習っている。体が大きい。とりまきがいる。学級委員長。優等生を装っている(よそおっている)。
楠田:学級副委員長
日下部(くさかべ):クラスメート男子
手塚:深見和也の隣の席に座っている男子
牧村由紀先生:4年3組深谷和也のいるクラスの担任。児童40人のクラス。新卒後3年目の女教師。頼りない。クラスで起きているいじめを認識していない。逆に、いじめっ子といじめられている子がいるのに、ふたりが仲良くしていると勘違いしている。先生として、あてにならない。頼れない。
山根正先生:4年2組の担任。牧村由紀先生と同じぐらいの年齢。男性だけど、ひょろひょろで色白、朝礼のときに倒れた。いつもおどおどしていて、ガリガリの体をしている。
姫野さゆり:小学校養護の先生。パワフルな体格。児童からはきらわれている。太っている。チリチリの髪の毛、腕も足も太い。
『ぼくにとって最高に美しいものが誰かにとっては気味の悪いもので(苔(こけ)のこと)……』から始まりました。
まあ、今どきの小学生は、プレステ(ソニーのゲーム機)とかウィー(任天堂のゲーム機)とか、ゲーム遊びばっかりですな。外で体を動かす遊びもしましょう。
深見和也は、悩んでいます。でも、相談相手はいません。
今は幸せじゃないけれど、神社で、猫の『ミクジ』に会うと幸せになれるよ!(わたしの声です)
深見和也は、おとなしいいい子だけれど、もっと正直に、イヤなことはイヤと言ったほうがいい。がまんしないほうがいい。
いじめがない学校なんてないんじゃないかな。社会に出てからだっていじめはあります。負けちゃだめです。
深見和也は学校だけでなく、学習塾でも、いじめっ子の岡崎に出会ってしまいます。
最悪ですな。
神社です。
『学校に行くのが、つらくなくなりますように』
人は、自力で、願いを達成できそうもないときになると、神さまや仏さまを頼ります。
深見和也が、クラスメートを自宅に呼んで、家にあった、『エゾスナゴケ』、『ナミガタタチゴケ』をかわいいだろと言ったら、気持ち悪い奴(やつ)という反応があった。
神社に行ったら、『ホンモンジゴケ』があった。
『……学校に行くのが、つらいんだ』
猫のミクジが出てきました。
葉っぱにかかれたメッセージは、『マンナカ』です。
はて? どういう意味だろう。どういうことだろう。
(つづく)
合唱コンクールの指揮者とピアノ演奏者を決める。
指揮者:岡崎(学級委員長)
ピアノ演奏者:もめる。松坂(腱鞘炎でできませんとの申立てあり)、遠藤(やりたくないと言ったのに、岡崎の誘導でなんとなく遠藤に決まる。担任牧村由紀も岡崎の後押しをした。無理やりです。形だけ整えばそれでいいといういいかげんな仕事です。無伴奏で歌えばいいだけのことです)
養護の先生姫野さゆりが、深見和也に言います。
『(君の居場所があるよという意味で。保健室に)机と椅子があるよ』
親は無力です。とくに父親が無力です。こどもを怒るだけです。
教師は悪の味方です。こういう教師の人っています。地元の有力者や権力者のほうに顔が向いているのです。彼らの関係者がいじめっ子ということもあります。
つらく当たる人もいれば、優しく包んでくれる人もいます。それが、人間界です。
『マンナカ』は、中心という意味以外にも意味がある。『中立(ちゅうりつ。どちらにも属しない』。物語では、さらに解釈が発展していきます。まんなかとか、はしっこというのは、人間が勝手に判断しているだけだと。自分で自分が自分としてまんなかにいると思えば、自分はまんなかにいるのだと。(なるほど。ステキな解釈です)
なんというか、相手のことが怖い(こわい)と思っていても、いざ対決してみたら、自分のほうが強かったということはあります。
わたしは、小学二年生のときに、いつもわたしをいじめてくる男の子ふたりと女の子ひとりと、体育のすもうの授業でそれぞれと戦って、三人とも土俵の外へ投げとばしてやったことがあります。なんだ、弱いじゃんか。お~れは、あんがい強いじゃんか。自信がつきました。
『六枚目 スペース』
芝浦千咲(ちさき):悠(ゆう。5歳)の母親。35歳。日に当たっての頬骨付近の小さなシミ複数が気になる年齢。外出時は、サングラスに長そでシャツで完全防備。
十代のころから漫画家志望だったが、あきらめた。
幼稚園の広報班で、『ひまわりだより』をつくっている。マンガ絵がじょうずなことに周囲が気づいた。
孝:千咲の夫
里帆(りほ):きららの母親。25歳。半そでTシャツに、クロップドパンツ(クロップドは、切り取られた。袖丈(そでたけ)が短い。6分から8分のパンツ)
添島(そえじま):幼稚園における広報班の班長
『ひまわりだより』を班員たちとつくっている。こどもの名前は、瑠々(るる)
輝也パパ:『ひまわり』のコラムを書く人。拓海くん(5歳)の父親。主夫をしている。妻が働き手の大黒柱。(輝也パパは、実は、トリックアートのアーティスト)。
すっきりとして感じがいい男性。保護者ママたちに人気がある。女ばかりの集団の中で、男の華となっている。
妻は広告代理店で働くキャリアウーマン。スーツとバーキンのバッグ姿。バーキン:エルメスが発表した高級ブランドバッグ
露吹ひかる(つゆぶき・ひかる):漫画家。アシスタントを募集している。53歳女性。ヒューマニズム系の漫画を描く人
ネーム:漫画をおおまかに表したもの。
漫画を描く時の道具:ケント紙、インク、ホワイト、スクリーントーン(半透明の粘着性のあるシート)、ペン先、ペン軸
女性の厄年(やくどし):33歳、37歳が本厄。その前後が、前厄と後厄、三十代はほとんどが厄年
『ちゃんと夢をあきらめますように(漫画家になりたい夢です)』
猫からのメッセージが、『スペース』です。範囲とか、領域とか、場所、区域だろうか……
コンビニの雑誌購入から、『断捨離』へ。
2LDKの自宅マンションです。
だんなの書斎はあるけれど、妻やこどもの部屋がありません。
ついでに、だんなの妻に対する興味もありません。
『ぽかーんとする』、『神様が入るスペースを作るんです』(なるほど)
神様は、自分の外にいるのではなく、自分の心の中にいるのです。ときおり、神様が自分にメッセージをくれるのです。
柴崎千咲は、もんもんと悩みます。漫画家になりたい夢にきっぱりと別れを告げたいけれど、それができない35歳です。
新しいものを入れるためには、まず、今あるものを外に出さねばならぬ。出せば、新しいものが入る、『スペース』ができる。(なるほど)
読み終えて、ほろりとくるいい話でした。なかなかいい。光っています。
『七枚目 タマタマ』
最後のお話になりました。
占い師の彗星ジュリア(すいせいジュリア。ジュリアは、チェッカーズの歌からきている。『ジュリアに傷心(ハートブレイク))。派手なかっこうをしてテレビに出ている。メイクを落とすと、ジュリアだとは、わからない。
本当の名前は、『笑子(えみこ)』で、同級生からは、『ニコ』と呼ばれている。45歳。バツイチ。ひとり暮らし。居住地は東京。25歳で結婚して、36歳で離婚した。こどもはできなかった。
ともちゃん:彗星ジュリアの高校の同級生(岐阜県)。友谷茂(ともや・しげる)。税理士。自分の税理士事務所をもっている。
仕事以外のときは、リーゼントでかっこをつけている。
居住地は、東京。名古屋の大学を卒業した。眼光鋭い奥二重の目、キリッとした太い眉(まゆ)、鼻筋が通っている。美形だが、ヤバい人に見える。ただ、見た目と中身は違う。優しい人である。高校野球の球児だった。
以上のふたりは、偶然東京で1年前に再会した。
清水:彗星ジュリアが出版した本の出版社で編集を担当している。トークイベント担当でもある。
玉木たまき:83歳。高級老人ホームの入居者。息子が東京に、娘が海外にいる。5年前にホームに入った。
中川:老人ホームの施設長。ショートカットの小柄な女性
占いの実態として、『自分はうまくいっていない』というお客さんが多い。話を聞くと、そうではなくて、『うまくいかないと(自分で)思っている人』が多いのが実態である。
スガキヤのクリームぜんざい:名古屋の人だとわかります。地元のラーメン屋です。こどもさんから高校生向け、家族連れ向けです。うちの孫たちも大好きで、たまにいっしょにお店でラーメンやチャーハンを食べます。まだ、小学校低学年の孫はいつも、ちいさい体のくせに、『チャーハン大盛り!』と注文します。
神社のネコからのお告げは、『タマタマ』です。
ワンオラクル:タロットカード占いの用語。シャフルしてカードを1枚引く。カードのメッセージが書かれている。
玉木たまきは、大切な小箱の鍵をなくして困っている。(小箱は、父のフランスみやげ。たまきが7歳のときに父からもらった)
玉木たまきは、その小箱の鍵がどこにあるか、彗星ジュニアに占ってほしい。
さて、どうなる。
それからなんだかんだあります。
ラベリング:この人は、〇〇な人と、決めつける。評価する。あるいは、自分は、役に立たないと自分で自分を評価する。
ホロスコープ:天体図
オチです。(話の締め(しめ))
そうか…… すごいなあ。そういうことか。(ここには書きません。本を買って読んでください)
人が生きるヒントがあります。ヒント:手がかり
人の縁(えん)のことが書いてあります。
出会いです。つながりです。
なかなか良かった。
『ここだけの話』
巻末に、この文章が加えられています。
掲載されている短編に出ていた人たちのその後のことが書いてあります。
それから、猫のことが書いてあります。
単行本は、2018年(平成30年)に発行されています。
文庫本は、2020年(令和2年)に発行されて、2024年で14刷発行されています。
よく売れている本です。
いい本でした。
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