2025年04月05日

紙の月 邦画 2014年

紙の月 邦画 2014年(平成26年) 2時間6分 動画配信サービス

監督:吉田大八
俳優:宮沢りえ、池松壮亮、大島優子、田辺誠一、小林聡美

 宮沢りえさん出演の作品で、先日動画配信サービスで見たのが、『父と暮らせば』でした。関連付けて、こちらの作品を観てみました。
 もう終わりましたが、日曜夜のバカリズム脚本ドラマ作品、『ホットスポット HOT SPOT』に、日テレ番組、『月曜から夜ふかし』のスタッフとして出ていた池松壮亮さん(いけまつ・そうすけさん)が、宮沢りえさんの彼氏役(大学生)で出てきたのでびっくりしました。
 池松壮亮さんは、撮影当時23歳ぐらいです。
 いっぽう宮沢りえさんは、40歳ぐらいの役で、ご本人の年齢も映画撮影当時はそのぐらいでした。銀行の契約社員で出ておられます。夫は、ベトナム赴任があるような会社勤務です。商社だろうか。
 全体を通してですが、今回の悲劇(銀行員が、顧客のお金に手を付けた)は、妻に理解が足りない夫の言動に真因(しんいん。真の原因。本当の理由)があります。ただ、そういう夫は、現実には多い。

 池松壮亮さんは、へんな男を好演されています。

 男の愚かな(おろかな)面が、あちこちで出てきます。男よ、反省しろ!です。

 『紙の月』という言葉で思い出すのは、洋画作品、『ペーパームーン』です。もう50年ぐらい前の映画ですが、いい映画でした。人間は、理屈じゃなくて、気持ちで生きているのです。

書損(しょそん):書き間違い。書き損ない(そこない)

 女の世界がありますなあ。

 夫婦には生々しい生活臭があります。住宅ローンの繰り上げ返済の話が出ます。
 男尊女卑の夫婦です。バブル経済がはじけた、このころの世の中は不景気でした。
 時代設定は、1994年(平成6年)から1995年(平成7年)です。昭和の時代の男女関係をひきずっています。途中、震災のことも出てきますが、それは、1995年の阪神淡路大震災のことです。

 小林聡美さんが出てきました。去年のNHKBSドラマ、『団地のふたり』がとても良かった。小泉今日子さんとセットで団地のふたりでした。
 おだやかな人柄だった団地のふたりとは違って、小林聡美さんは今回、厳しいベテラン女性銀行員の役回りです。

 映像を見ながら、このころは、電子マネーはなかったなとか、デスクトップパソコンの出始めで、パソコンは当時、非常に高価であり、大きくて重たかった。なのに、今と比較して、パソコンの能力はそれほど容量があるものではなかったとか、いろいろ思い出しました。
 
 原作は、角田光代小説作品であることを知りました。わたしはこの映画を観るのは初めてですが、うちの家族はこの映画を観たことがあるそうです。

 男女の出会い→ときめき→(冷えた夫婦関係が下地にある)→主婦が、若い男と浮気という流れですな。ただ、ちょっと、二十歳すぎの男性と四十歳女性のラブは、考えにくい。お金めあて、体目当て、愛情はないのでしょう。たぶん。男と女ですから、押したり引いたりが始まりますなあ。

 『現金』を扱う仕事は、危険です。不正がやれちゃいます。
 
 昔、タクシーに乗った時、タクシーの運転手が言っていました。
 『浮気というものは、最初は、やってはいけないと、がまんするのだが、1回やると、何回でもやれるようになる』
 まあ、なんでもそうでしょう。やってはいけないと思っていても1回やると、何回でもやれるようになる。自制心がなくなる。コワイコワイ。あとがコワイ

 福澤諭吉さんの顔が書かれた壱万円札がいっぱい出てきます。渋沢栄一さんの壱万円札の登場は、まだかなり先です。

 宮沢りえさんが演じる梅澤梨花は、心に不満がたまっていた。
 人のお金で豪遊することを、『紙の月』とたとえておられました。ニセモノの月なのです。月=幸福なのでしょう。紙は、お札のことなのか。

 男女の体のからみが映像で美しく描かれているのですが、現実とは違います。現実はもっとたいへんです。映像は、妄想(もうそう。願望)で、つくりものです。虚構です。現実は映像のようにはいかないのです。痛いし、重たいし、苦しいのです。人間はなんでこんなことをするのだろうと思うこともあります。互いの気持ちの交流ならハグだけで十分満たされます。虚構にだまされて人生の将来を見誤ってはいけません。

 アホな夫です。

 お金持ち相手の仕事もたいへんです。まあ、お金がない人の相手もたいへんですが。

 梅澤梨花は、幽霊みたいな女の人です。

 池松壮亮さんは、ドラマ、『ホットスポット』と同じ調子のセリフ言い回しです。それでいい。味わいがあります。静かに語ります。大声は出しません。

 上映時間が経過しましたが、なんだか広がりがありません。

 カードローンはやらないこと。貯蓄の鉄則です。
 主人公女子は、金融機関で働く人とは思えません。
 金融機関で働く人は、カードローンを顧客に勧めることが仕事です。自分がローンを背負ったら、お話になりません。
 浮気相手の男子は、お金がなければ、大学へは行かなくていい。
 昔は、働いて、お金を貯めてから、大学に入る若い人もいました。
 昼間働いてお金を貯めて、夜間の学部から、昼間課程に転籍する人もいました。

 映像を観ていて、『お金ってなんなんだろうなあ』と、考えました。
 不正なお金ですが、豪遊できたことは、それはそれで、さきざき、いい思い出になりそうです。
 ふつう凡人には、豪遊体験は思い出にないからです。(やっぱり、映画の後半で、そんな話が出ました)
 
 主人公宅は、夫婦として、終わっています。
 夫は、妻を夫の従属物と思っているだけです。召使い。オレが食わせている。オレに従えです。
 銀行顧客のお金を窃盗したのは、妻ですが、根本的な原因は夫の妻いじめにあります。
 妻は、おとなしくて、まじめだった。まじめすぎて、反発する手段を身に付けていなかった。堕ちるところまで堕ちていった。(おちるところまでおちていった)
堕ちる:おちる。不正に手に入れた金額がどんどんふくらんでいきます。何千万円という単位になっていきます。オソロシイ

 梅澤梨花が、キリスト教系の女子高校に通っていたときのことが流れます。
 きれいごとだけを教えていたら、こどもの心は壊れてしまいます。
 ただ、そのシーンでは、もともと梅澤梨花に盗難壁があったと紹介されます。う~む。そういう癖はなかなか治りません(なおりません)。よく梅澤梨花は、銀行員になれたものです。
 まあ、堕ちるところまで堕ちるしかありません。
 痛い目にあわないとわからないこともあるでしょう。
 
 20歳ぐらい年上の女性とのラブです。
 観ていて、若い男は若い女のところへいくだろうと思う。(そのとおりになりました。梅澤梨花はみじめです。そうなることがわかっていたのに、がまんできないのね)

 梅澤梨花と大学生彼氏は、三泊四日で、146万円ぐらい使ってしまいました。盗んだお金を使いました。
 梅澤梨花は、犯罪行為をしていますが、いい思い出ができたという記憶は残るのでしょう。

 サスペンス、スリラー映画です。

 梅澤梨花は、感覚がマヒしている。このままだと、逮捕、収監されてしまいます。
 どんどんエスカレートしていきます。
 観ていて、映像よりも、話の筋立てをこれからどうするのかに興味が湧きます。
 銀行職員間の冷たい世界があります。
 
 小林聡美さん演じるベテラン銀行員が厳しい。(発覚するという予感あり)
 発覚して、ドタバタ騒ぎになって、終息に向かうという流れはありきたりです。どうなるのだろう。

 正義を訴える小林聡美さんを排除しようとする動きが出てきます。不正は、ひとつではありませんでした。
 かけひき、条件闘争が始まりました。ややこしくなっていきます。
 (そういう、話のやりくりか。おもしろい。現実にありそうです)
 『(盗んだお金を)返して済む話ではない』(ただ、銀行にとっては、この事件が世間に明らかになるとダメージが大きい不祥事です。隠蔽(いんぺい)したい)
 小林聡美さんの女の意地もあります。ちゃんと働いてきた自分がなぜ排除されなければならないのか。
 
 大学生の男は大学を辞めます。彼のために、学費を不正に用意した梅澤梨花の考えは甘かった。
 大学生だった平林光太(池松壮亮)は、ダメ人間です。

 梅澤梨花の立場になると、死を選ぶこともあるかなと。
 借金がかさんで、返せないとなると、首をくくるしかない。地獄のスタートです。
 
 そうくるか。色仕掛けでお金をゲットしたい。
 うそをつくためのチラシや、証書のカラーコピー、1995年ごろのパソコンとか、プリンターとか、世の中のアナログ(手作業)事務手続きだとできた手法です。

 いまさらもう戻れない。梅澤梨花は、やつれました。

 人からほめられたい。
 人からほめられるためには、うそもつくし、盗みもやる。
 人を助けてあげたいではなくて、自分がほめられて認められていい気分になりたい。
 
 『あなたはみじめじゃない。やりたいことをやった。やりたいことができた。あなたは、幸せ者です。だって、人のお金だけれど、いっきに何千万円も使ったんですもの』
 小林聡美さんと宮沢りえさんの問答が続きます。
 偽物の月だから、月は、いつかは消える。偽物の月は、いつかは終わる。
 月=お札なのかなあという推測をしましたが、あたっているかはわかりません。最後の理屈は、理解できませんでした。

 梅澤梨花の器物損壊シーンが良かった。犯罪ですが、いい終わり方でした。
 飛び降り自殺をしたのかと思いましたが、逃走でした。大音響で讃美歌が流れました。
 開き直ったのです。『わたしが何をしたっていうの! わたしに何の責任があるというの! わたしは、わたし、これがわたしです!』という強い主張を感じました。だから、死なないのです。彼女は生き続けることを決心したのです。考えてみれば、人殺しをしたわけではありません。お金をいっぱい使っただけという解釈もできます。ただ、人のお金ですけど……

 ラストのベトナムのシーンは???でしたが、原作者の角田光代さんは、世界を旅する人なので、このシーンを入れたかったのかなあと考えました。
 昔、本を一冊読んだことがあります。
 『いつも旅のなか 角田光代 アクセス・パブリッシング』
  海外旅行記です。登場する国々は、モロッコ、ロシア、ギリシャ、オーストラリア、スリランカ、ハワイ、バリ、ラオス、イタリア、マレーシア、ベトナム、モンゴル、ミャンマー、ネパール、タイ、台湾、アイルランド、中国、韓国、スペイン、キューバと多彩です。ひとつのところにじっとしていられない性格のお人です。

 へんな終わり方の感想メモになってしまいました。

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