2012年06月09日

無理 奥田英朗

無理 奥田英朗 文藝春秋

 前半はお役所もので、生活保護を担当する市役所職員相原友則が軸になって、生活保護施策のありようについて問題提起があります。次に、誘拐されてしまう女子高生久保史恵、悪徳商法をしている加藤裕也、宗教団体に所属しながら万引きを捕まえる保安員をしている堀部妙子、犯罪に巻き込まれていく市会議員の山本順一などが、別々の世界の出来事として、からみあっていき、ラストシーンで合体します。
 読み終えて、すがすがしい気持ちにはなれません。登場人物のそれぞれが無理をしています。そして作者も無理をしています。リアルではありますが、若干現実とは違う部分もあります。だから小説なのですが、なんだろう、誰かから誰かへの「愛情」がない作品です。だから読み終えても充足感がありません。ことに生活保護受給者の母子家庭のありようには「愛」も「誠実」もありません。夫婦間にあるのは浮気で、協力とか愛情はありません。親子にしても同様です。淡々とこの世の不幸が記述されていき、最後に鬼火となって燃え上がります。

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