2012年06月09日

娘心にブルースを 原由子

娘心にブルースを 原由子 ヴィレッジブックス

 サザンをはじめ幾人かの音楽DVDを見たことがあります。意外だったのはみなさんシャイ(恥ずかしがり屋)で、内向的な人が多かったことでした。舞台上では雄弁でも私生活ではおとなしくて静かです。押し出しの強い政治家と同類と思っていたのは間違いでした。
 さて、本の中身は、母親の若い頃の昔話を聞いているようです。読んでいると不思議な感覚に陥ります。就学前の記述が多い。後半でも幼児の記録が顔を出します。1歳半からの記憶があるらしく驚かされます。
 旦那さんに関する記事は少ない。音楽に関する記事は膨大まではいかずともかなりの量を割(さ)いておられます。音楽が好きな人です。冒頭で両親の出会い話から始めることは珍しい。作中何度も肥満の話が出るのは、そう見えないので違和感があります。
 音楽は環境であることがわかります。ドイツ製のピアノで練習をされています。特攻隊に行った音大生たちのことを書いた「せんせいの忘れられないピアノ」を思い出しました。音大生たちが弾いたのも、やはりドイツ製のピアノでした。
 華やかな大学生活と比べて、14歳から16歳にかけての思春期は暗い。私立中学不合格を何度か経験されています。自分が希望する高校に合格したにもかかわらず、母親の勧める高校に無理やり進学させられて、教室で孤独を味わっておられます。母親の勧めに従ったから結果的に今があるわけですが、基本的に親はこどもの進路に口出しをしないほうがいい。運がよかっただけです。著者は、淋しかった高校時代は、音楽に助けられたと記しています。全般的に普通の人という印象がただよっています。違うのは、音楽への集中力が人並み以上であることです。

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