2022年01月17日

ドラえもん 第21巻~第25巻 藤子・F・不二雄

ドラえもん 第21巻~第25巻 藤子・F・不二雄 てんとう虫コミックス 小学館

 昭和50年代は、スキーが流行していました。スキーが、マンガの素材になっています。
 なんだか、あの頃、はやっていたもののいろいろなことが、今では衰退化してしまいました。
 冠婚葬祭を筆頭にして、何もしないことが、最近の当たり前のことになってしまいました。
 メリットもありますが、デメリットもあります。
 最近読んだ本の数冊に、資本主義のやり方がゆきづまっているというようなことが書いてあり、実感があります。

 マンガでは、景品の商品がグアム島旅行です。この頃、ハワイ旅行贈呈というのもはやっていました。
 最近は、そういったことは聞きません。

 未来世界のお話です。
 店員がいない衣料品店です。
 人間型ではありませんが、ロボットが対応します。
 現代の無人コンビニみたいです。

 あの頃はやったインベーダーゲームに出てくるような形の宇宙人がたくさん登場してきました。
 こうしてみると、このマンガの素材に、当時の流行が積極的に取り入れられていることがわかります。

 『クーラー』が出てきます。クーラーは冷やすだけの機器で、暖房機能はありません。この当時はクーラーが一般的で、冷暖房除湿が一台でできるエアコンはあまり見かけませんでした。

 シンジケート:このマンガでは、犯罪組織。ギャングの集まり。

 百科事典の訪問販売:そういう営業活動がありました。
 今では、国語辞典や漢和辞典で調べる人も少なくなりました。スマホやパソコンに話しかけるだけで説明が出てきます。
 あのページをめくる作業で、けっこう調べたい言葉以外の複数単語の意味暗記と調べる技能の習得ができたと思うのです。

 合成写真も出てきます。これもまた40年ぐらい前は珍しかった。
 合わせて、自撮りのことがマンガに出てきます。
 いろいろと未来を正確に予想したマンガの仕上がりとなっています。

 『メカ・メーカー』は、3Dプリンターのイメージがあります。

 出木杉くん(できすぎくん):勉強も運動もできる男子です。そういう子って実際にいました。

 ドラえもんのいいセリフです。『科学がすべてではない! 科学は人間の生活を豊かにしたが、同時に心をまずしくしたのではあるまいか!!』

 マンガ『ドラゴンボール』のようなシーンが出てきました。なんでもありです。
 マンガに出てくる『モンスターボール』はポケモンのモンスターボールともかぶります。
 
 敵に囲まれた様な状況で、ドラえもんが『くるならこい』のび太が『でもなるべくならくるな』笑いました。

 『うつしっぱなしミラー』は、現代のスマホで使用するビデオ電話です。

 あたりまえのことですが、登場する人物たちは歳をとらない。
 何年連載していても、ずっと同一学年です。

 『大あばれ、手づくり巨大ロボ』マジンガーZ(ゼット)というマンガを思い出しました。

 マンガを見て、雑誌に文通欄というのがあったなあと思い出しました。
 雑誌に住所氏名を公表して文通相手を募集していたわけで、今ではそんなぶっそうなことは考えられません。これもまたSNSに形を変えて残っているわけですが、人間の志向は、年月が経っても変化がないようです。

 『おりたたみハウス』が素敵でした。紙を広げると家になります。ロマンチックです。暖炉があって、窓の外は海の景色です。夕日が水平線に沈んでいきます。

 ドラえもんの声をしていた大山のぶ代さんのお名前が出てきました。
 そういえば、最近、よく似た声の一般女性が、村上信五とマツコ・デラックスのテレビ番組『月曜から夜ふかし』に出ておられました。

 土を入れたプラスチック製の小型水槽にアリを飼うシーンが出てきます。
 自分もこどものころ、そうやってアリを観察したことがあります。
 迷路のような穴の通路をプラスチックごしにみることができると予想しましたが、プラスチック面に沿ってもぐるように通り道をつくってはくれませんでした。
 マンガでは、蟻地獄という虫も出てきます。自分も山で蟻地獄をつかまえて、自宅の庭に放したことがあります。そのあとどうなったのかは記憶が残っていません。

 家ごと動く電車です。のび太の家がブルートレイン(寝台車)になります。夜通し走る長距離列車ブルートレインにはよく乗りました。新幹線はまだ岡山県あたりまでしか路線がありませんでした。高校生の時の修学旅行でもブルートレインを利用しました。新幹線網が発達して、国内線航空網も広がったので、今はもうブルートレインは廃止されました。ちょっとさみしいけれどしかたがありません。

 マンガの時代設定は、1982年(昭和57年ごろ)となっています。
 
 松田聖子さんとか、田原俊彦さん、近藤真彦さん、河合奈保子さん、キャンディーズなどをモデルにしたキャラクターが登場します。
 浦島太郎を素材にしたお話があります。
 玉手箱を開いて、いっきに歳をとってしまったような現実が、読後感にあります。
 『とつぜんですが、みなさんにおしらせがあります。わたしたち解散します』アイドル歌手キャンディーズです。その後、女優になったスーちゃんは、病気でご逝去されました。しみじみしました。

 そうか、しずかちゃんの氏名は『源静香(みなもとのしずか)』だったのか。
 静御前からきているのでしょう。(しずかごぜん。源義経(みなもとのよしつね)の恋人)
 しずかちゃんの氏名を初めて知りました。
 のび太の結婚前夜のマンガがあります。
 翌日、のび太と結婚式をあげるしずかちゃんが、ご両親とお別れをします。
 自分の娘のときを思い出して、ほろりときました。  

Posted by 熊太郎 at 09:55Comments(0)TrackBack(0)読書感想文

2022年01月15日

ちびっこたちへ絵本のプレゼント

ちびっこたちへ絵本のプレゼント

 親戚に、あかちゃんから就学年齢ぐらい(6歳)までのちびっこたちが10人ちょっといます。
 会うときには、絵本を読んであげたり、絵本を持参してプレゼントしたりするように気を配っています。読み書きができるようになるのは大切なことです。読み書きができるようになったら、数字を理解することができるようになります。

 昨年末にうちで会った5歳のちびっこに、絵本を読んであげると提案したら、本箱から次の4冊を引っ張り出してきました。
 ちくわのわーさん 岡田よしたか ブロンズ新社
 めっきらもっきら どおんどん 長谷川摂子(はせがわ・せつこ)作 ふりやなな画 福音館書店
 わすれられないおくりもの スーザン・バーレイ 小川仁央(おがわひとみ)訳 評論社
 そらまめくんのベッド なかやみわ 福音館
 このうち、「ちくわのわーさん」が一番の好みだったようです。

 この先、新型コロナウィルス感染拡大第6波が来て、非常事態宣言が出てしまうと会えなくなってしまいますが、宣言が出ず、移動の規制がなければ、絵本数冊のプレゼントをもって、遠方に住むきょうだいの孫たちに会いに行くつもりです。
 プレゼントで予定している絵本は次の4冊です。次は、とりあえず、3歳と1歳のちびっこにあげるつもりの絵本です。
 おれはねこだぜ 佐野洋子 講談社
 ふうせんねこ せなけいこ 福音館書店
 きょだいなきょだいな 長谷川摂子(はせがわ・せつこ)作 降矢なな(ふりや・なな)絵 福音館書店
 ちくわのわーさん 岡田よしたか ブロンズ新社

 いつの日か、わたしが死んだとき、十代、二十代に成長したちびっこたちが、ああそういえば、あのじいさんがくれた絵本がきっかけで、文字の読み書きができるようになったと感謝してくれたら、とてもいい気分で、あの世に旅立てます。

(その後)
 上の文章をつくってから半月ぐらいが過ぎました。
 やはりというかやっぱり、新型コロナウィルス感染拡大の第6波が始まってしまいました。
 また、しばらくは、遠方への移動はできそうにありません。
 しかたがありません。またがまんです。

(さらにその後)
 おもしろい絵本を見つけたので、忘れないようにここに付記しておきます。
 プレゼントの一冊に加えます。
 『いちにち』 ひろたあきら 角川書店 今までになかった新しい発想があります。

(さらに追加)
 ひとまねこざる H・Aレイ 光吉夏弥 岩波書店

(またまた追加)
 キャベツくん 長新太(ちょう・しんた) 文研出版

(その後)
 絵本とともに、バナナを持っていってあげると喜んでくれることがわかりました。
 絵本とバナナとちょっとしたお菓子が、ちびっこへのよきプレゼントです。

(またまた追加)
 いやだいやだの絵本 せな けいこ 福音館
 1969年(昭和44年)ころが初版の絵本群です。ロングセラーです。たいしたものです。
 何年たっても、ちっちゃなこどもの脳みその中にある心のもちようは同じです。
「にんじん」 1969年初版(昭和44年) 2021年132刷(令和3年)
「もじゃもじゃ」 1969年初版(昭和44年) 2021年111刷(令和3年)
「いやだいやだ」 1969年初版(昭和44年) 2021年142刷(令和3年)
「ねないこだれだ」 1969年初版(昭和44年) 2021年202刷(令和3年)

(2022年保育園と小学校が春休みの夜に孫たちからねだられて読んであげた絵本です)
 よるくま 酒井駒子 偕成社
 よるくま クリスマスのまえのよる 酒井駒子 白泉社
 ちょっとだけ 瀧村有子・さく 鈴木永子・え 福音館書店
 きょだいな きょだいな 長谷川摂子(はせがわ・せつこ)作 降矢なな(ふりや・なな)絵 福音館書店
 いっさいはん minchi(みんち) 岩崎書店  

Posted by 熊太郎 at 07:32Comments(0)TrackBack(0)熊太郎の語り

2022年01月14日

表参道のセレブ犬とカバーニャ要塞の野良犬 若林正恭

表参道のセレブ犬とカバーニャ要塞の野良犬 若林正恭 文春文庫

 小説だろうと思って手にしたら、旅行記でした。
 評判がいいので、読んでみます。

(つづく)

 旅の行き先は、『キューバ』『モンゴル』『アイスランド』です。日本人にとっては、一般的な旅先ではないような。

「キューバ」
 2014年2月初め。ニューヨークロケから始まりました。
 金(カネ)、金、金、ニューヨークは金を産む街です。金もうけで、心を興奮させる勢いに満ちた街という文脈で、著者はうかれつつも、胸に疑問をかかえています。

 2016年6月。旅行会社の手続きではホテル、利用する航空機は、満室・満席でしたが、コツコツスマホを操作して、旅行会社を通さずに、運よく予約が取れました。行き先はキューバの首都ハバナです。(三泊五日の短い旅ですが、全体を読み終えると内容は濃い。本作品が、斎藤茂太賞(さいとうしげた・しょう。日本旅行作家協会主催。斎藤茂太氏は、精神科医。随筆家)を受賞した意味がわかります)
 都内にあるキューバ共和国大使館領事部へツーリストカードをとりにいく。調剤薬局のようなところだったとあります。読んでいて、「ふーん」と、関心というか、意外性に当たりました。そういうものなのか。
 
 著者について、小学生時代(私立中学受験)から青年期(就職先)において比較(著者が下)という苦しみがあります。

 文章を読んでいて、ふと気づけば、民主主義について考えていました。
 議会制民主主義だから議員がいます。
 世のため人のためと言いながら、法令や制度制定の経過において、特定の人やグループのために積極的に動いている人が議員という職にある人、あるいは、利益があるメンバーや集団に操られている(あやつられている)人のポジションという印象しかありません。
 本当にこれでいいのだろうか。民主主義国家は、胸を張って、全体主義国家を否定できるのだろうか。疑問が生まれました。だから、著者は、社会主義国家であるキューバ行きを決めたのか。

 案外と言っては失礼ですが、この本はいい本ではなかろうか。
 著者だけのひとり旅です。
 飛行機は、日本を出て、カナダトロントで乗り換えです。
 
 以前テレビ番組「旅猿」でキューバに行った東野・岡村コンビを観たことがあるので、そのときの映像を思い出しながら本を読んでいます。街中にあふれるクラッシクカーの話はこの本とも重なります。

 「革命博物館(以前はバティスタという親米政権時の大統領官邸)」1953年から1959年キューバ革命。米国からの離脱。カストロ、ゲバラの勝利があった。
 フィデル・カストロ:1926年-2016年11月25日。90歳没
 チェ・ゲバラ:1928年-1967年。39歳没
 ラウル・カストロ:1931年-存命。90歳。フィデル・カストロの弟
 カミロ・シエンフェーゴスゴリアラーン:1932年-1959年27歳没
 
 タイトルにある「表参道のセレブ犬」は、競争に明け暮れて、上下の格差にこだわる人間たち。人間にABCD……のランク付けをして、Aの人間としか付き合わない人間のことのたとえに思えてきました。
 「カバーニャ要塞の野良犬」についてはまだピンときません。今は70ページ付近を旅するように読んでいます。(78ページに出てきました。キューバにあるカバーニャ要塞は1763年に建造された。著者が旅をしたとき、そこに、死んでいるかのような野良犬がいた。野良犬は飼われていないので腹をすかせていた。腹をすかせていたけれど「自由」を保有していた。いっぽう東京都内ブルジョアの犬は飼育されていた。資産家の犬は、空腹体験はなかった。ただし、資産家の犬には『服従』があって『自由』はなかった)

 ふと思い出しました。
 キューバ―といえば、野球が強い国だ。

 「革命広場」というところを過ぎます。文章を読むと、単なる広場の印象です。
 「アルマス広場」へ移り昼食へ。
 ひとり旅の不安があります。著者だけではなくて、現地ガイドの男性マルチネスも人見知りです。(知らない人を見て、照れたり、恥ずかしがったり、嫌がったりする)

 心に響いた文節などとして『仕事の関係(の人間)が好きな理由として、お互いに「良いもの」を作るという共通目標がある関係性には意外と白々しさがない』『この国は(キューバは)最新の輸入車を受け入れない代わりに守ってきたものがある(クラッシクカー)<意志とか気持ちとかを守ってきたという意味>』『笑いはどこの国でも強い(現地にて、チップがらみで笑い話があります)』『社会主義国なので広告看板がない(東京との比較話あり。ないほうが心には良い)』『東京だと行きたいところがなくひきこもるが、ここ(キューバ)だと、今日はいろんな所にいった。明日も楽しみだという気分になれる』『ぼくは夜間大学を出て芸人になり、20代はバイトをしながら食いつないだ』『家族って楽しいんだろうなあ』『(ここでは)バス停はあるが、バス停の立て看板はない(時刻表もない)』『物が少ないキューバでは古い物を何度も修理して使う』『3日間、日本のニュースはなにも知らない』『これまで見たかったのは、競争相手ではない人間同士が話している時の表情だったのかも……ぼくが求めていたのは血の通った人間関係だった(先日読んだ「スマホ脳」という本を思い出しました)』

 ruta:ルート(スペイン語)
 モヒート:ラムベースの冷たいカクテル。キューバのハバナが発祥地(はっしょうち)ミント(葉っぱ。シソ科ハッカ属)が入っている。
 ダイキリ:ラムベースのショートドリンク。砂糖、氷入り。
 ヘミングウェイ:米国の小説家。1899年(日本だと明治32年)-1961年(昭和36年)61歳没。1954年ノーベル文学賞受賞。作品として「老人と海」「武器よさらば」「日はまた昇る」「誰がために鐘は鳴る(だがためにかねはなる)」など。
 マリコ:キューバ在住の日本人ガイド
 ボン・ジョヴィ:米国のロックバンド
 兌換ペソ:だかんペソ。銀行券や政府紙幣を正貨と取り換える。ペソはスペインの通貨の単位。兌換ペソと現地のキューバ人が使用する国民ペソがある。

 「カテドラル広場」でモヒートを飲む。

 「サラトガ(ホテルの名称)」
 観光地としてのホテル・ナルシオナル・デ・クーパー。
 ジャズ・バーで雰囲気を楽しむ。クラブやジャズ・バーは、社会主義国なので国営となっている。
 
 「福岡詐欺」キューバ人が詐欺目的で日本人に近づいてくる時の口実。「福岡が好きです」東京が好きですだと日本人観光客に警戒されるそうです。お金目的ではなく、飲食代をおごって欲しいときに使うらしい。

 ドラマ『おしん』がこの地でも人気だそうです。たしか、イランでも大人気でした。

 副業をする人が多い。例として、医者や教師が、空き時間で、観光客用のタクシーの運転手をしている。

 「コッペリア(アイスクリーム店)」アイスクリーム5個で、8円から10円は激安です。

 ラテンアメリカはアミーゴ社会:アミーゴは友とか親友とか。友だち関係が濃厚な社会。コネ(縁故えんこ。血族・婚姻による姻族などの知っている者同士のつながり)で利用される。

 「サンタマリアビーチ」ビーチ行きのバスは中国製だったそうです。バスの利用は日本国内でも勇気がいります。地名はよくわからないし、ルートもそうです。バス旅はたいへんだと思います。人の親切が頼りです。
 キューバのバスには車掌さんがいて切符を買って、一日乗り放題のチケットだそうです。そういえば、昭和40年頃(1965年頃)の日本の路線バスには女性の車掌さんがいて車内で切符を売っていました。
 海水浴場で著者はトラブルに巻き込まれますが、まあ日本人観光客がひとりで場違いなところにいたからしかたがないような気がしました。
 
 文章を読み続けて、162ページの海と砂浜の海水浴場の写真を見ていると、人間の先祖は海から来たという実感が湧いてきます。
 
 日記というよりもリポート(報告)を目的とした日誌を読むようです。

 現地で人に声をかけるときの言葉が「オラ!」です。なんだかけんかを売っているようで反発が怖い。でも、相手の返答は「ウノ、ウノ」でほっとします。お金を支払えば「グラシアス!」の言葉が返ってきます。

 この当時のキューバには、スマホをはじめとしたSNS社会はありませんが、直接人間同士がふれあう交流があります。著者はそのことにこだわります。とくに『家族、親子関係。病死した父親と自分との関係を』深く探求します。自問自答です。『自分はこれまで幸せだったのか』著者にとって自分の父親は、著者を支え続けてくれた感謝に値する(あたいする。価値がある)人物だったそうです。恩人です。ずっと味方だったとあります。

 「マレコン通り」
  父上は2015年春から余命宣告を受けて入院していた。2016年4月14日に逝去されています。(せいきょ。あの世へ旅立った)
  仕事中は分人が違う(ぶんじんがちがう):対人関係において、自分がさまざまに態度を変える。

 キューバ行きの理由が明らかにされます。キューバは、亡くなったお父さんが行きたいと言っていた国です。
 胸にぐっとくるものがあります。
 『現にぼくはこの旅の間ずっと親父と会話をしていた』あたりから不思議な感覚が生まれてきます。
 海が見えるマレコン通りには人がたくさん集まってきますが、なにか有名なものがあるわけではありません。
 人と話をするために人が集まってくるのです。
 キューバのまちには、Wi-Fi(ワイファイ)が飛んでいないので、みんな会って話す。本心はモニターの中の言葉や文字には表れないと著者は強調します。
 
 新自由主義:経済思想。小さな政府、規制緩和、市場原理主義の重視。1980年代に登場した。

 弱者切り捨て:だれが「弱者」なのだろう。弱者を指定するときは、何が基準なのだろう。

 イノベーション:新しいことの発明。これまでの常識が一変する。

 先日読んだタクシー運転手の日記本を思い出しました。(六本木あたりで活動する人たちの中には、クレイジーな人がままいますというような雰囲気でした)

 後半部の記述手法として、( )かっこ内に書いてある幻想的な文章が詩的で良かった。
 今年読んで良かった一冊になりました。

「モンゴル」
 おもに大相撲の力士ぐらいしか思い浮かばない国です。
 あとは、ジンギスカンとか草原とか、移動テント暮らしの生活とか。(遊牧民)
 ずいぶん昔のことですが、愛知県犬山市にあるリトルワールドというテーマパークで、モンゴルサーカスというようなパフォーマンスをこどもたちと観たことがあるのを思い出しました。
 大柄で力持ちの男性が集団の中心におられました。
 さて、本を読み始めます。

 「チンギスハーン国際空港」
  飛行機は韓国で乗り換えです。
  首都ウランバートル。
  ゲル:移動式住居
  羊がいて馬がいる。
  グランドキャニオンは5分で飽きるが、草原はいつまでも飽きない。
  モンゴルでは15歳以下のこどもも働いている。(日本も過去はそうだった)
  シャーマン:霊魂と接触して交渉する人
  承認欲求:認められたい。

 日本にはないものがモンゴルにはあり、その逆もあるという話が生まれます。

 夫婦仲の良いモンゴル人カップルを見て自分も結婚したいと思う。
 馬を乗り回して草原を駆け回る。番犬に吠えたてられて、馬で逃げる。
 なかなかない体験です。

 文章は、短く、短時間で読み終えました。


「アイスランド」
 洋画「ライフ」で観たアイスランドの景色を思い出しました。雪とか氷壁とか絶景の連続でした。されど、人影は少なかった。
 旅行記はこれから読み始めます。
 こちらも短い文章です。
 「ケープラヴィーク国際空港」地図で見ると北極に近い。アイスランドの人口は約35万人。
 かなりきついスタートです。
 日本人はひとりもいないというつもりだったのに、全員が日本人のツアーに入ってしまいました。(あとで全員がロンドン在住のファミリーとかカップルだとわかります)
 タレントさんのひとり旅でのツアー参加は場違いです。
 著者は仮病を使ってツアーの夕食時に、丸テーブルから抜けます。著者は人見知りで心の壁が厚い。(その後、翌日以降、みなさんと打ち解ける(うちとける)ことができました。著者の沈んだ気持ちは救われました。人情は大事です)
 
 時期は大みそかです。アイスランドでは、各個人で、威力の強い花火を上げる風習があるそうです。文章を読むと花火のシーンは、かなり激しい。花火大会のようすを見ることが今回の旅の目的だそうです。掲載されている写真を見ながら、そういうものがあるのかと驚きました。
 とても楽しかったそうです。

 けっこう危険な旅行です。(見学地で事故にあいそうという意味で。花火が激しい。滝の見学で道が凍結していて斜面が急で滑りやすいとか、温泉の噴き出した湯が熱湯だとか)
 『自分の身は自分で守ってください』というガイドからの注意喚起が何度も出ます。
 
 オードリーのコンビで、ツアー客のみなさんの関心は、目の前にいる若林さんよりも、相方の春日さんのほうにあるのはしかたがないのでしょう。

 「また、テレビ見て応援しますね」のみなさんの声援がありがたい。

 最後のほうは下ネタでしたが、それでもいい。

 
 「あとがき」
 かなり、熱い思いが込められたあとがきの文章です。
 長すぎるのではないかと感じられるほどの長文です。
 コロナで非常事態宣言が出たときの東京銀座の風景が、社会主義国であるキューバに似ている(目に入る商品が少ない。店が閉店している)
 「コロナ後は、消費の目的が、モノからコトへ変わる」
 2016年に亡くなったお父さんの人生が重ねてあります。
 「競争」とか「比較」に関する反発があります。
 読んでいて、勝負で負けた元オリンピック選手の言葉が思い出されました。『金メダルよりも大切なものがあることに気づきました』
 著者は、キューバとモンゴルとアイスランドに行って、もう行きたい国はないと言っています。もう行く必要がないのでしょう。三か国を旅して、人間にとって大事なものを見つけたのでしょう。
 テレビ映像ではわかりませんが、「解説」にもあるとおり、人生を生々しく生きている人です。
 この本と、ここ最近読んできた本を通して、資本主義国家は、今は、行き詰まりの時期を迎えているという印象をもちました。  

Posted by 熊太郎 at 07:37Comments(0)TrackBack(0)読書感想文

2022年01月13日

ドラえもん 第16巻から第20巻 藤子・F・不二雄

ドラえもん 第16巻から第20巻 藤子・F・不二雄 小学館 てんとう虫コミックス

 ジャイアンの下手くそで大声の歌が、このマンガの素材の定番です。
 ジャイアンは、ドラえもんが出した機器で作詞作曲の歌を披露します。
 時代設定は昭和40年代、1975年ころでしょう。『シンガーソングライター』という言葉が生まれて、自作自演のスタイルがはやったころでした。
 それから何十年かが経過して、ドラえもんが出してくれたアイデア機器が実際につくられていると思います。藤子不二雄さんの偉大さがあります。
 合わせて、バーチャルリアリティーのマンガがあります。これもまたゴーグル式の映像を観る機器が現代に誕生しています。

 1979年ごろでも自分は勤め先の独身寮で白黒テレビを見ていました。
 マンガでは、のび太がパパにカラーテレビをねだっています。
 わたしは、その後、親戚から買い替えで使わなくなったカラーテレビをもらって見ていました。

 1979年にいるのび太は、25年後、2004年の自分に会いに行きます。
 2004年の世界は、マンガでは、かなり技術が発達しています。現実よりも進んでいます。
 ただ人間は進化できていないようで、のび太は、仕事のうさばらしで酔っぱらっています。
 
 『四次元ポケット』がおもしろい。何でもポケットの中に入れることができます。
 ごみも物も人もペットも入れることができます。
 
 『ドロン葉(ぱ)』タヌキに関連づけて、人をだます葉っぱです。
 別のマンガですが、「ドロンパ」は、たしかオバケのQ太郎に出ていた登場人物でした。アメリカのお化けでした。作者は同じく藤子不二雄さんです。
 ドロン葉のお話のほうは、童話を読んだあとのような、さわやかな読後感がありました。

 夏の暑さがあります。
 家の中で登場人物のだれもが畳の上であおむけになってだら~としてすごしています。
 そういえば、このころはまだエアコンは国内全体には普及していませんでした。

 空から飴(あめ)がふってきました。
 児童文学矢玉四郎作品『はれときどきぶた』を思い出しました。
 マンガでふってきた飴は、飛行機の荷物室が壊れて落ちてきたそうです。

 マンガの素材で出てくる『ターザン』がはやったのも昭和40年代でした。

 まだ読んでいない巻もありますが、ドラえもんコミック45巻は、聖書形式のアイデア集です。じっと読み込んで活用すれば、製品製作とか特許とかにつながるヒントを生む素材になりえます。
 『雑誌作りセット』は、現代における「Amazon Kindleダイレクト・パブリッシング」と類似の方式です。
 漫画家として、手塚治虫さん、鳥山明さん、ちばてつやさんのお名前が出てきます。1979年頃のマンガですから、ドクタースランプアラレちゃんはこの頃だったと思い出しました。
 最近は耳にしなくなったピンクレディーのことも出てきます。
 まだ、ソビエト社会主義連邦共和国が存在しています。(共和国は君主がいない国。人民が主役)1991年12月に崩壊しました。

 思い出しました。
 昔の映画館には、『指定席』というものはありませんでした。席が空いていないと、立ち見というのはありました。
 マンガでは、映画館の席の予約のことが素材になっています。今だと、スマホやパソコンなどで予約ができます。
 もう20年以上前になりますが、パソコンで初めてホテルの予約をしたときに、心配になって、遠方のホテルに電話をかけて予約してあるかを確認したことがあります。
 
 人工衛星の数のことが書いてあります。マンガの当時(1970年代後半)が4千何百個で、2021年では1万2000個ぐらいだそうです。たいそうな数が地球を回っていることを知りました。よくぶつからないものです。それから、人工衛星が、引力に引っ張られて消滅することも多いそうです。
 ドラえもんは、科学の本でもあります。

 ドラえもんがポケットから出す道具で、自然が豊かだったころの地球に戻してほしい。
 人類は地球を、SDGsとか、脱炭素とか、カーボンニュートラルという言葉が飛びかう現在の地球にしてしまいました。
 
 『どこへいったのでしょうね麦わら帽子。ママ ドゥーユーリメンバー』は何かの映画の決まり文句でした。1980年発行のマンガコミックですから、1977邦画『人間の証明』でしょう。映画館で観ましたが筋立ては覚えていません。

 亡くなったおばあさんに会いに行くのび太です。おばあさんはのび太に優しい。七転び八起きの教えで、おばあさんはのび太に、だるまさんは、なんべんころんでも泣かないでおきると教えます。のび太の『ぼく、ひとりでおきるよ。これからも、なんどもなんどもころぶだろうけれど、かならずおきるから、あんしんしててね、おばあちゃん』にほろりときました。

 『箱家山』は、神奈川県の『箱根』のことでしょう。
 
 お金持ちの子息であるスネ夫は自分の自慢話ばかりをします。
 スネ夫が行った『四丈半島(よじょうはんしま)』は、『八丈島』のことでしょう。

 タイトルがいいのが『天井うらの宇宙戦争』
 スターウォーズのオマージュ(尊敬の意味をこめての物まね)があります。
 昔の映画やドラマでは、お人形さんのような小さな立体人物が映像として出てきて、なんらかのメッセージを発するものがありました。最近は見なくなりました。
 
 ときに、素朴過ぎる絵のときがあります。無表情に近い小さな女の子とか、人魚姫とか、王女とかです。不思議でした。

 『カップルテストバッヂ』隣の家の夫婦ゲンカを楽しみにしているふたりです。
 1980年ころ(昭和55年ころ)、この当時のこどもたちには、結婚に対する夢があるし、結婚することが当然という雰囲気があります。
 男目線で描かれている漫画です。しずかちゃんは理想の結婚相手です。のび太を支えてくれます。しずかちゃんなら、のび太よりももっといい男性がいるような気がします。もったいないかも。
 ところが、マンガは、のび太の『結婚するの、こわくなった』で終わりました。
 (このあと、第20巻の後半部で、ドラえもんが「(しずかちゃんのような)あんないい子がなんだってよりによってのび太くんなんかと(未来で結婚したのか)。もう少しましな男がいっぱいいるのに…」という言葉が出てきました。同感です)

 雨が降り出して、家族が駅まで傘を持って仕事帰りのパパを迎えに行きます。こういう光景は、最近は見かけなくなりました。
 自分が小学一年生だったときに、まだ若かった母親と幼かった弟が小学校まで傘を持って来てくれたことを思い出しました。もう遠い日の出来事になりました。嬉しかった。

 Amazonの宅配便のようなシステムが出てきます。
 昭和50年代なかば(1980年ごろ)にクロネコヤマトのサービスは一般的ではなかったと思います。郵便小包か国鉄でチッキとよぶ方法で大きなものを運んでもらっていました。
 ドラえもんのマンガを読みながら「昭和時代」の歴史を勉強しているような気分です。

  郷ひろみさんをモデルにしたタレントさんが出てきます。
 マンガは、1970年代後半のことであり、2021年の紅白歌合戦でも郷ひろみさんが現役歌手で健在であることを考えると、たいしたもんです。郷ひろみさんは人間として超越したものをもっているのでしょう。

 こどものころ『秘密基地遊びごっこ』はよくやりました。楽しかった。
 野原や木が生い茂ったやぶの中につくりました。また、自分がこどもだった当時は、まだ戦時中の防空壕が残っていて、そこに潜んだりしました。(数人でひそんでたむろした)。防空壕は山に開けた横穴で、中はかなり広かった記憶です。

 『実物立体日光写真』昔は写真一枚を撮るのにも時間をかけていました。
 小学生のときに、こども向けの雑誌の付録で、紙製のカメラをつくった覚えがあります。写真屋にフィルムを買いに行ったら、店主から、どうしてこんな特殊なフィルムを買うのだと聞かれて、気が小さかったので、うまく説明できず、黙り込んで、フィルムを買えたかどうかまでは覚えていません。たしか「ブロニー版のSS」とかいうフィルムでした。

 しずかちゃんの入浴シーンが多いのは、男の本能が表に出ているからでしょう。

 銀河鉄道999(スリーナイン)とか、宮澤賢治作品『銀河鉄道の夜』が素材のマンガもあります。
 「オンボロメダ発、ハテノ星雲行き」の蒸気機関車が夜空を走ります。
 ライバルは、新幹線かと思ったら、「どこでもドア」でした。笑いました。

 マンガ雑誌を映像データで保存するカメラが出てきます。
 いまどきの電子書籍です。

 酔っ払いのおじさんの立ちションのおしっこの暖かい温水で、写真映像になっていたのび太が、人間に戻りました。
 愉快でした。
 
 スイスみやげの腕時計が出てきます。
 そういえば、スイス製の高級腕時計がもてはやされた時代がありました。

 テストで、30点もとったとママからほめられるのび太です。
 いつもは、0点ばかりです。

 『細菌』の話が出ます。
 抗生物質、調味料のもと、なかなか本格的な理論展開があります。

 硬貨のお年玉の話がでます。
 電子マネーが浸透してきています。
 未来のお年玉は貨幣ではなくなるのかも。味気ない。(あじけない)

 全体をとおして、基本は、少年少女向けのギャグマンガです。(読者の笑いを誘うマンガ)  

Posted by 熊太郎 at 07:03Comments(0)TrackBack(0)読書感想文

2022年01月12日

タクシードライバーぐるぐる日記 内田正治

タクシードライバーぐるぐる日記 内田正治(うちだ・しょうじ) 三五館シンシャ フォレスト出版

 第一章を読み終えたところです。
 人生の厳しさが伝わってくる内容です。

 タクシーには年に数回しか乗りません。
 車内の会話は苦手です。
 ひとりで乗る時は話しません。
 利用するときはおつりが出ないように小銭を用意してから乗ります。
 夫婦で乗る時は夫婦でけっこうしゃべります。
 運転手さんともしゃべります。
 饒舌(じょうぜつ。おしゃべり)な運転手さんも多い。
 いろいろ教えてもらえます。

 たいへんな仕事だと思います。
 自分にはできません。自分は旅行が好きですが方向オンチです。徒歩でも自家用車でもカーナビがあっても、よく道を間違えて迷います。
 スマホの地図があっても、東西南北が理解できなかったりもします。むずかしい。

 最近のタクシー運転手さんたちは、コロナ対策で、ビニールボックスに包まれたような状態で運転をされています。

 運転業務は、釣銭というお金をもっているので、タクシー強盗も怖い。

 タクシーの後席で、お客さんがスマホで電話をされるのは嫌だろうなあと察します。
 
 ヒエラルキー:階層性、階級制、上下の序列

 お金の話が出ます。昔はお金がなくて高校・大学への進学をあきらめる人がたくさんいました。
 そういう人たちが社会をしっかり支えてきました。
 働きながら定時制高校に行ったり、夜間大学に通ったりしました。
 愚直(ぐちょく。ばか正直になって)に働き続けました。

 まえがきを読んだところですが、この先、なんだか暗くつらい内容になりそうです。

 客側の様子を読んでいると、日本人が情けなくなってきます。
 
 著者は、家業の倒産、離婚、老親の世話とあり、かなりきつい人生です。

 ハートにズキッとくる表現などとして『人の不幸は蜜の味』『見て見ぬふり』『サンコロ兄弟(一日の営業収入が3万円代ばかりで低い)』

 東京都内のタクシーです。
 知らなかったこととして、お客さんには、東京特別区以外で乗車してもらうことはできない。都内から都外へお客さんを運んだあとならOK。
 ハイヤーは街を流さない。完全予約制。メーターではない。出庫から帰庫までが課金となる。
 黒タクは、優良乗務員が運転する。
 1台の車を2人で交代して使用することは知っています。勤務時間18時間のうち、実車は(乗客あり)5時間から7時間ぐらいだそうです。
 営業所には、タクシーが500台超えの数である。勤務者が事務職も含めて1000人ほどだそうですので、とても大きなタクシー会社です。
 ドライバーのひとり仕事とはいえ、気の合う同僚ができると気晴らしになるのでしょう。
 燃料はLPガス(液化石油ガス)を使用する。
 ライバルは自社のドライバーだそうです。
 
 この出版社のこのシリーズを読むと、人間の嫌な部分や汚い面が出てきます。
 そして、努力があります。
 頭が下がります。自腹を切って、都バスで周遊しながら地理を覚えます。ドライバーであることを隠してタクシーに乗って道を覚えます。同業者のルートどり(道路選択)を学ぶのです。
 成績がいつもいい先輩を尊敬して真似をする。

 仕事のひとつのパターンとして、まずは、お金の世界、次に人情、そして、やりがい、生きがいがあります。

(休憩のあと、読書はつづく)

 長距離移動タクシーのお話があります。
 著者自身のことではありませんが、横浜市から鳥取市まで600km以上(そんな遠くてもタクシーは行くのかと驚きました)ありました。結果は無賃乗車でした。
 もうひとつ著者自身のことではありませんが、東京都内上野から富山まで。約800km。料金約20万円。ちゃんと支払いがあったそうです。運転手側の判断として、なかなかできることではありません。
 
 96ページ付近ではため息がもれます。
 あまりにも痛ましくてここには書けません。(まわりの人の借金話です)
 命をお金に変えるために生命保険を利用してはいけません。
 重苦しいお話が続くので、休み休み読みます。
 107ページ付近では、自分なりに『人生はいつでもどこにいても一時的滞在地』という文節が思い浮かびました。乗客との出会いと別れは、一期一会(いちごいちえ。一度だけの出会い)です。

 本を読みながら『文字』とは何だろうと考えます。『文字』に関する考察です。『文字』とは、自分の気持ちを記録して、後世に残すもの。自分が伝えたいメッセージをだれかに知ってもらいたいと訴えるもの。
 
 借金の話が出るので、お金は人を幸せにも不幸にもすると気づきます。
 秀逸です。
 お金をうまくコントロールできればお金持ちになれるのでしょうが、コントロールできなければ、倒産、借金対策のための離婚、一家離散、貧困、つらい日々を体験することになります。
 借金問題が解決しても『別れた奥さんと再び一緒になろうというパワーはなかった』というお言葉には、うなだれるしかありません。
 
 東京都心部で生活している人たちの意識って、地方に住む人間の立場で文章を読むと普通じゃありません。都内中心部に近づきたくなくなりました。
 うわべだけの仲よしごっこに見える接客サービス関係があります。
 華やかな見送りのあと、車内では、車の外でサヨナラの手を振ってくれた人への悪口が始まります。
 いっぽう、見送った人も客になれば、見送ったお客さんの悪口を言います。
 人間がお金(商品)に見える世界があります。
 人間には表と裏があります。世の中は、錯覚と誤解で成り立っていて、上手にサギ的行為をしたものが大きな収益を得ることがあります。

 なんというか、運転手を誘って来るオカマの男性客とか、人間の裏面を見せられる商売です。
 ほがらか風俗嬢には人生を教えられます。
 人間は気持ちのもちかたしだいで、幸せな気分にもなれるし、不幸せな気分にもなれる。
 
 タクシードライバーだった著者ですが、自宅では、クルマやバイク、自転車さえも所有していないそうです。ちょっとびっくりですが、ここまで読んできて、そういうものなのだろうと妙に納得できました。
 東京都が70歳以上に交付しているシルバーパスを利用されています。
 
 青タン:深夜割増料金。メーターが青くなる。

 読んでいて、仕事でつらくなったときには『ばかになる』ことが苦境を乗り越えるコツだったことを自分も思い出しました。

 読み終えてひとこと『(働くこと、生きることは)厳しい』  

Posted by 熊太郎 at 06:53Comments(0)TrackBack(0)読書感想文

2022年01月11日

マンション管理員オロオロ日記 南野苑生(みなみの・そのお)

マンション管理員オロオロ日記 南野苑生(みなみの・そのお) 三五館シンシャ フォレスト出版

 現場で働く人の仕事に関するエッセイというのは、ありそうでこれまでなかったパターンです。
 守秘義務が課せられているので発表しにくい性格があるのでしょう。
 この出版社では、シリーズ化されるように次々と同類の本を出しています。
 タイトルを観て興味が湧いたものは読むようにしています。

 72歳夫婦住み込みのマンション管理員業務とあります。
 もうずいぶん昔のことですが、マンションで十年ちょっと生活したことがあります。
 管理員は通いの人で、週2回、午前中のみ。清掃と蛍光灯の消耗品交換、建物や設備の点検立ち合いなどをされていましたが、あいさつ程度の関わりで頼みごと等をお願いしたことはありませんでした。
 管理員の方はおそらくいったん定年退職されたあとに働いているのであろうという年配の男性だったこともあるし、パート仕事のような女性だったこともあります。かけもちでマンションを巡回されていたのではないかと推測します。

 住み込み管理員だといろいろめんどうなことを要求されそうな労働環境です。(そのわりに給料は安い。されど、住居は提供されている。年金収入があればなんとかがまんできそうかも)一日24時間、365日、こき使われそうです。
 自分が就職した時にお世話になっていた独身寮の管理員ご家族を思い出しました。
 ご夫婦と大学生の息子さんと高校生の娘さんがおられました。ご夫婦はもう亡くなっているであろうと思われる年齢です。寮生だった先輩で、もう亡くなった方もおられます。ひとつの時代がありました。

 マンションの住人からの『タクシーを呼んでちょうだい』という要求から始まります。
 (そんな人がいるのか)
 世の中にはいろんな人がいると驚きながら読み始めました。
 お金を払えばなんでもできるという考え方に、うーむとうなりました。

 ごみ屋敷というのはけっこうあるようです。
 密室なので外からはわかりません。
 漏水の原因を知って、そういうこともあるのかと、新しい気づきがありました。
 
 『保険』というものは、使わずに残る金額のほうがたくさんあるものだろうか。
 一年間使い切り、残った保険掛け金は還付が基本のような気がします。
 保険掛け金を使って経済を回す。
 保険の掛け金が、税金みたいです。

 住み込みの場合、管理員と清掃員が別々の人であることを初めて知りました。
 
 あれはだめ、これはだめの張り紙がたくさんはってある公園などをみると、ああ、だれかクレーマーみたいな人がいるのだろうなあと思うことがあります。
 張り紙など、何もないのが一番美しいのに。
 マンションでも似たようなことがあるようです。

 著者は、奥さんの存在に助けられています。

 「水道メーター検針」の話が出ています。
 先日、検診員が廃止になって、遠隔操作によるコンピューター管理で使用量がわかるようになるというような記事を読みました。水道メーターではなくて、電気メーターだった記憶です。
 これからはなんでも電算管理で、人間が雇用される場所がなくなっていきます。

 3段式ガレージというのは使ったことがありませんが、駐車場所の間違いというのはありそうです。
 大規模な移動式立体駐車場というのは、トラブルの原因になりやすいことがわかりました。

 第一章の終わり近く、1991年ころのバブル経済崩壊から1995年の阪神淡路大震災に至るまでの経過が書かれた文章が、ドキュメンタリー映像を観るようで秀逸でした。
 同じ時代を知る者として共感できる部分があります。
 夫婦で住み込みのマンション管理員を始めることになったきっかけが書いてあります。

 第二章に入って『フロントマン』というのは聞いたことがありませんが、管理員の上司にあたる管理会社の社員のようです。上司といっても年齢的には若い人のようです。

 権限があることを利用して悪事に手を染める責任者がいます。
 逮捕ですな。
 読んでいると、先日ニュースになった、大学のなんとか理事長を思い浮かべます。
 人のお金で飲み食いするのが当然のこととする人はいます。
 権限を握る者同士がグル(仲間)になると止めるのが大変になります。
 とはいえ、これが世間によくある縮図・構図なのでしょう。

 なんだか、暴力事件でも起こりそうな気配です。
 悪事を働く人を守ろうとすると、秩序が崩壊します。

 うーむ。かなりひどい目にあっておられます。
 自分の経験から考えると、そういう会社はいずれ倒産します。
 現象はその1スポット(ワンスポット)だけではなく、複数の現場で発生していることでしょう。
 『信頼関係』とか『信用』は大事です。
 
 頭に残る言葉として『自慢しい(じまんしい。知識の披露)』『素人同士の推断は時間のムダ』
 
 共同住宅のトラブルといえば騒音問題です。
 どうするのか。
 読みましたが、やはり音の発生地の当事者にわかるようにするのです。

 いろいろと文句を言う人は、未来において、それなりの人生を送っていくのでしょう。
 さきゆきは幸せそうにはみえません。

 以前、コンビニ店員さんの体験本を読んだことがあるのを思い出しました。
 きついお客さんがいるけれど、優しいお客さんもいますという話がありました。
 世の中はいつでもどこでもふたつの面があるのでしょう。
 いやな人が、別の場所ではいい人だったりもします。同一人物に対する評判です。

 認知症高齢者ご夫婦の入居者のお話は、明日は我が身かもしれないので読んでいてしみじみしました。
 若い頃、美男美女、スタイル良く健康で生き生き、はきはきしていたような人であっても、老いは万人に平等に訪れます。
 歳をとれば、最後はみんなが障害者になるということが、実感としてあります。目が見えにくい。耳が聞こえにくい。歩行がゆっくり。体の節々のあちこちが痛む。歯がぐらぐらになる。言葉が出てこない。頭の中がうまく機能してくれない。

 昔の人情がらみのやり方が、新世代の人たちに通用しにくくなっている世の中があります。

 トラブルの原因の第一が無断駐車、次にペット、そして生活騒音だそうです。
 なんだかなあという展開です。
 騒ぎを一種のお祭りみたいなイベントとしてとらえて楽しめるようになると、自信あふれるたいした人物として、勤労生活を楽しむことができるのでしょう。
 まあ、まじめに考えて悩むと、心の病気になりそうです。

 『防犯カメラ』は、防犯というよりも、犯罪後の記録証拠でしかない。
 防犯カメラの画面を隠されて犯行がなされ、防犯の役に立たないこともあるそうです。
 
 なんでも人にやらせようとする人が多い。
 
 後半は『やりがい話』です。
 人に感謝される。
 人の命を守る。
 そういう仕事ってたくさんあります。
 情景は、ドラマチックで映画のシーンを観ているようでした。

 読み終えました。
 お疲れさまでした。
 ゆっくり余生を楽しんでください。
 今はもう管理員はされていないそうです。住み込み管理員制度は廃止になって、通いの管理員に変更されたそうです。やってくれる人がいないということもあるのでしょう。  

Posted by 熊太郎 at 06:59Comments(0)TrackBack(0)読書感想文