2021年11月18日

おいしい家族 邦画

おいしい家族 邦画 2019年公開 fuluフールー動画配信サービス

 最近のはやりです。
 お父さんが、お母さんになるのです。

 お化粧がらみのシーンで始まって、女の人はたいへんだなあと同情しつつも、映画では、変身によって、ハッピーになれるということを教えてくれるシーンもあります。

 不思議で、奇妙な映画でした。否定はしませんが、ついていけそうもありませんでした。ただし、世間に訴えたい気持ちは伝わってきました。
 父:50代後半ぐらい。高校の校長先生ですが、三年前に妻を亡くし、三年後に妻の来ていたワンピースを着て女性になり、女子高生の連れ子がいる男性と結婚(養子縁組)をする。
 長女:離島を出て、東京の化粧品店で働く。メイクアップアーティストみたいな仕事です。結婚しているけれど、夫とはうまくいっておらず離婚しそうです。
 長男:長女の弟。スリランカ人の妻がいて、妻は妊娠している。
 長男の嫁:スリランカ人
 父の夫(同性婚のようなものです):40代ぐらい。
 父の夫の娘:父の夫である男性と血縁関係があるかどうかは怪しいとのこと。
 なんだか、くちゃくちゃです。主人公は長女です。

 料理の映画でもあります。おはぎへの思い入れが深い。
 観ていて思いついた自分自身の親族のこととして『はらいっぱい、ごはんやおかずやくだものを食べさせてやりたい(孫たちへ じいじとばあばより)』

 吉本ばなな作品「キッチン」のようでもあります。

 自由な学校(高校)です。
 性別にこだわるほうが少数派の島民です。

 父親が抱く亡くなった奥さんへの強い愛情があります。

 映像に出ているスリランカ人の奥さんのようすをみていて、入国管理事務所の施設で亡くなったというニュースになったスリランカ人女性のことが思い出されました。お気の毒なことをしました。謝って賠償したほうがいい。

 長女の訴えとして「(亡くなって)お母さんはいないし、(父が女性のかっこうをして母になって)お父さんは変だし、ここはわたしの実家なのに(他人がいるし)」と困っていますが、ちょっと重苦しい中に『許容』があります。
 お父さんは心が優しい。いたわりの精神が表れています。
 対立してもしょうがない。
 亡くなったおかあさんが『和』へと導いてくれます。
 お父さんの言葉です。『生きていればそれでいい』そして『ありがとう』

 海への愛着がある映像です。  

2021年11月17日

此の岸のこと(このきしのこと) 邦画

此の岸のこと(このきしのこと) 邦画 2012年公開 fuluフールー動画配信サービス

 30分ぐらいの短編映画です。
 老老介護のすえに夫婦が心中するのです。
 手こぎボートから湖への入水自殺です。

 車いすのおばあさんがいます。
 リアルです。
 一部のシーンは、今年相次いで亡くなった自分の身内である老夫婦の姿を思い出しました。
 自分たち夫婦の未来の姿と重なりもします。

 昔、お墓の前で自殺されたバラエティタレントさん女性の若かった頃のお顔が思い出されました。
 亡くなったそばに、車いすにのった認知症の老いた母親がおられました。

 映画では、セリフがないことに気づきました。
 新藤兼人作品『裸の島』を思い出しました。

 老老介護です。
 途方(とほう)にくれます。
 思いどおりに前に進まないのが当たり前です。
 前に進んだとしても、どんな経過をたどったとしても、あとはあの世に行くだけです。
 パーキンソン病だろうか。ご主人の右手の手のひらが細かく震えています。
 
 病院待合場所ベンチでのあかちゃんの姿があります。
 可愛い。
 映像では自分たちのこどもさんの姿がないご夫婦です。
 子や孫がいても親元に来てくれないということはあります。

 年寄りは、薬を飲むのが日常です。
 神社でお参りをする。
 祈るしかありません。

 介護に関して身近なのは役所です。
 ご主人は、手が震えて、申請書に文字をうまく書けません。

 ひとりでいても死にたいという。
 ふたりでいても死にたいという。
 生き続けていくためにはどうしたらいいのだろう。
 とりあえず、本を読んだり、映画をみたりしてほしい。
 
 長年使ってきた自分の体が、自分のいうことをきかなくなってくるのが『老い』です。
 だれにでも『老い』は訪れます。
 介護保険サービスの活用で乗りきりたい。
 在宅介護サービスを受けて、できるだけ自宅で、眠るように逝きたい。

 高齢者虐待シーンを見せられるのはつらい。
 愛情が憎しみに変化するのです。

 当事者ふたりは、(入水心中の)発見されたあと処理のことは、考えてくれていないのだろうなあ。

 そうか…… よかった。ほっとしました。
 救われました。
 生きていてこその人生です。
 そして笑顔になれる。
 今年観て良かった一本でした。
 ふと、でも本当は死んでいるのかも。
 現実は厳しい。
 あとは、観ているほうが考える映画です。

(その後)
 この映画を初めて観たと思い込んでいましたが、ふと記録を調べてみたら、2018年に見ていたことがわかりました。
 記録は残っていましたが、記憶が消えていました。かなりショックを受けました。加齢による脳の老化が始まっています。とほほ……  

2021年11月16日

春にして君を離れ アガサ・クリスティー

春にして君を離れ アガサ・クリスティー 中村妙子訳 早川書房

 アガサ・クリスティー:1890年(日本だと明治23年)-1976年(昭和51年)85歳没。イギリスの推理小説家。「春にして君を離れ」は、1944年の作品(昭和19年)

 ジョーン・スカダモア:主人公女性。48歳ぐらい。夫は弁護士のロドニー・スカダモア。長男がトニー(ローデシアでオレンジ園経営。ローデシアはアフリカザンビア、ジンバブエあたり。既婚)、長女がエイヴラル(既婚)、次女がバーバラ・レイ(バクダッド居住。既婚)、バーバラの夫がビル・レイ。こどもの名がモプシー。ジョーン・スカダモアは、女学生時代はコチコチの堅物だったらしい。スカダモア家は、代々弁護士の家柄だそうです。

 ブランチ・ハガード:主人公女性の聖アン女学院同級生。学生時代は美少女でモテモテのアイドルだった。今は、落ちぶれて60歳ぐらいに見える。若い獣医ハリー・マーストンと不倫、その後保険会社員トム・ハリデーと結婚した。こどもが、レンとメアリ。その後、こどもたちを置きざりにして、ジョニー・ぺラムと駆け落ちをした。自称過去は男好きだった。現在の夫は、ドノヴァンである。
 ブランチ・ハガードはジョーン・スカダモアから25ポンド借金したことがあり、いまだに返済していないし、再会した今も返す気がない。仕事は本づくり。ウォレン・へースティングの本。フランクリンの伝記などをてがけた。
 15年ぶりに偶然再会したふたりの女性の比較で物語は始まります。

 (時代設定は、あとでわかることですが、第二次世界大戦1939年(昭和14年)イギリスとドイツの戦争開始前ぐらいです)

 ふたりの再会場所は、イラクの首都バクダッドからロンドンへの行程にある砂漠に建つイラク側に建つ鉄道宿泊所(テル・アブ・ハミドというところにあるレストハウス)です。
 ジョーン・スカダモアは、バクダッドから離れる旅。ブランチ・ハガードは、バクダッドに向かう旅です。イラクにあるレストハウスから車で、トルコにある鉄道駅へ行きます。汽車は、月・水・金に駅を出ます。
 ふたりは親しいわけではない。ジョーンのほうは、ブランチのことを良くは思っていない。ブランチはジョーンから借りたお金を返していない。

 主人公の女性ジョーン・スカダモアの一人称ひとり語りで話は進行していきます。

 マナー・ランドルフ:ジョー・スカダモアの夫ロドニー・スカダモアのテニス仲間だった。彼女は、アーリントン青年と婚約した。

 ジョーン・スカダモアとブランチ・ハガード、ふたりの比較が続きます。女学生時代と今、現在の状態、ふたりは仲良しではなく、知り合い程度で、ジョーン・スカダモアは、ブランチ・ハガードを昔から良くは思っていない。どちらかといえば、会いたくない人です。
 見栄の張り合いです。(見栄:みえ。見た目や物事の外観を飾って、うわべや体裁を整える)
 
 セイタン:加工食品。代用肉。
 テル・アブ・ハミド:トルコ鉄道の終着駅
 イラクのバクダッドからロンドンまで:七日間の旅程(風景として、回教寺院(イスラム教寺院)-アナトリアの平原-雪をいただいたトロス山脈、不毛の高地、峡谷沿いにボスポラス海峡、イスタンブール、バルカン半島、アドリア海、スイスアルプス…… 汽車の旅)
 ホッドストン:下ミード農場の老人
 ジョーン・スカダモアの夫である弁護士ロドニーの勤務先法律事務所:妻方であるスカダモア一族の経営。ジョーン・スカダモアの伯父ハリーが共同経営者。
 ジョーン・スカダモアの夫で弁護士のロドニーは実は事務仕事が苦手で嫌い。弁護士ではなく、農場経営者になることが夫ロドニーの夢だった。リトル・ミード農場を買いたかったが、当時恋人だったジョーン・スカダモアに説得されてあきらめた。
 マイケル・キャラウェイ:ジョーンが過去に浮気した若い画家
 アレッポ:シリア北部にある都市
 町の銀行の支店長シャーストン氏の奥さん。支店長は公金横領をした。
 
 ジョーンによる男女関係の妄想が始まります。あるいは「推理」か。恋愛における本気とか浮気とかのお話です。

 手練手管を弄する:てれんてくだをろうする。人をだますためにいろいろな方法を用いる。

 ジョーンは自分の留守中にイギリスの自宅にいる自分の夫が浮気をしているのではなかろうかと不安になります。

  お話はシェークスピアの詩の話になり、やがて、ジョーンの家の親子の不和に関する話へと移っていきます。
 たぶん、なにかミステリーが秘められているのでしょうが、自分にはそれを把握できるだけの読解力ありません。
 タイトル「春にして君を離れ」は、シェークスピアの詩の一節で、「春にして」は、「春になって」あるいは「春ゆえに、春だから」という意味だろうかと想像しています。「君を離れ」は別れることを意味するのでしょう。

 イラクにいるジョーン・スカダモアは、天候が悪くて車でトルコにある鉄道駅まで行けません。悪路です。
 ジョーン・スカダモアはいらいらし始めます。足止めです。江戸時代の東海道大井川水かさが増したという足止めのようです。邦画『雨あがる』を思い出しました。いい映画でした。

 ジョーン・スカダモアは、夫婦における三角関係のようなもので嫉妬心が出てきます。(しっと。やきもち)
 『人生は時間の有効活用である』というようなジョーン・スカダモアの主張があります。
 ジョーン・スカダモアは自意識過剰(自分中心の考え方)で、私は素晴らしいという人です。

 レスリー・シャーストン:ジョーン・スカダモアの友人。ジョーン・スカダモアの夫の浮気相手なのでしょう。1930年没。不正をはたらいて服役していた銀行員チャールズ・エドワード・シャーストンの妻。夫婦の息子がピーター。
 
 ゲッセマネの苦しみ:エルサレムのオリーブ山にあった地名。イエスがユダに裏切られて捕らえられた場所。
 ワーズワース:イギリスの詩人。1770年-1850年、80歳没
 エロキューション:発声法、セリフ、演説、朗読など。
 
 各人が自由恋愛を謳歌しています。(楽しんでいる)だれにも止めることはできません。各自が経過と結果に責任を負うのです。
 『結婚』という契約の意味がありません。
 名声を得る人は、実績を汚す(けがす)男女関係をもっているというお話が出ます。ありそうなことです。人間には二面性が存在します。

 202ページまで読み進めてきましたが、どうも自分には合わない小説なので、流し読みに入ることにしました。あと100ページちょっとあります。

 夫を愛しているけれど、夫が不倫をしているのではないだろうかと疑う苦しみがある女性というお話なのだろうか。

 物語のほうは、ようやく天候が回復してきて、鉄道駅までの車の手配ができました。宿泊所での足止め解除です。
 シリア北部にある都市アレッポというところからトルコ最大の都市イスタンブールへ向かう列車です。
 
 ジョーン・スカダモアは、列車の中で、新しい人と出会います。
 ロシア人のサーシャ(ホーエンバッハ・サルム)という名の公爵夫人です。(公爵:上位の貴族)背の高い黒服のご婦人だそうです。
 コスモポリタン:世界的視野をもつ人。国際人。国籍、民族、国民感情にこだわらず、多言語を使いこなす。世界を渡り歩く。
 サーシャの言葉で心に残ったのが「人間の寿命って限られておりますしね……」
 サーシャの分析があります。イギリス人とロシア人の比較、(この部分を読んでいると、ひとつの民族日本人と複数国家・国籍地域のヨーロッパとの比較による違いにも通じます)
 サーシャから「(イギリスでは、結婚している女性に)赤ちゃんはいつ?」という質問は女性に対して失礼であり、女性にとって負担であるというご意見が披露されます。ロシア人は違うということです。
 聖者:キリスト教で、偉大な信徒。煩悩を(ぼんのう。人が悩む原因)をぬぐいさった人。
 サーシャが分析するイギリス人の国民性として:自分たちの長所をうしろめたそうに表現して、短所を進んで認めて自慢する。
 第二次世界大戦中の時代背景で、ユダヤ人根絶は馬鹿げているとか、ヒットラー・ユーゲントの話も出ます。ナチズムはそう悪いとばかりはいえないって聞いているというロシア人公爵夫人サーシャの発言があります。

 ハリソン・ウィルモット夫人:ジョーン・スカダモアのロンドンに住む長女エイヴラルの夫の母親。エイヴラルの夫の名前はエドワード。

 307ページで、いちおうジョーン・スカダモアは、ひとりで、イギリスの自宅へ帰着しました。
 不思議な気分になりました。ジョーン・スカダモアは、本当に旅に行ったのだろうか。すべてが、彼女の妄想のような気がします。(本当に行ったのでした)

 ジョーン・スカダモアの語りはここで終わり、次に彼女の夫が語る「エピローグ」が始まります。
 11月初めの小春日和です。(こはるびより。ぽかぽかと暖かい)
 (妻ジョーン・スカダモアのこととして、娘たちに)良かれと思ってやって、嫌がられるのは、親の立場としてはつらいものがあります。それが親というものでもあります。同じく、夫に対しても強制力を伴った誘導(指示)をするのがジョーン・スカダモアだと、夫は妻を分析して評価しています。(ジョーン・スカダモアは夫の農場主になりたいという職業選択希望をつぶして夫を弁護士にしています)
 『(妻は)自分の作りあげた明るい、自信に満ちた世界の中で幸せで、安泰な毎日を送り続ければいいじゃないか』妻は妻で勝手にやってくれという投げやりな夫の気持ちが表現されています。

 コペルニクス:1473年-1543年。70歳没。ポーランド出身の天文学者。「天動説」をくつがえして「地動説」を唱えた。地球が太陽のまわりを回っている。

 4フィートの距離(夫と夫の浮気相手が座っていた位置関係):30.48cm×4=121.6cm

 ジョーン・スカダモアの夫ロドニーの異性に対する強い愛情は、妻とは別の女性であるすでに病気で亡くなったジョーン・スカダモアの友人だったレスリー・シャーストンのところにあります。
 底抜けに怖いお話でした。夫は妻をもう、あるいは、最初から、愛してはいないのです。それでも夫は、これから死ぬまで妻と一緒に暮らすのです。最期(さいご)まで偽りの気持ちを胸に秘めながら妻と寄り添っているふりをするのです。
 先日テレビで観た「徹子の部屋」で、フォーソングシンガーの南こうせつさんが、お父さんのお葬式が終わったあとお母さんが「(夫のことを)本当は好きじゃなかった」と言って、たいへんショックを受けたと聞きました。
 案外、そういうことはあるのでしょう。

(今は亡き栗本薫さんの巻末にある解説から)
 怯懦:きょうだ。臆病で気が弱いこと。
 夫婦は似た者同士だ。  

Posted by 熊太郎 at 07:01Comments(0)TrackBack(0)読書感想文

2021年11月15日

東野・岡村の旅猿20 とろサーモンおすすめ宮崎県の旅

東野・岡村の旅猿20 とろサーモンおすすめ宮崎県の旅 fuluフールー動画配信サービス

 お笑いコンビ「とろサーモン」宮崎県出身
 久保田かずのぶ
 村田秀亮(むらた・ひであき)

 以前番組で、とろサーモンによる「お勧めの旅聞きまくり」の回は観ました。
 上沼恵美子さんがらみの炎上騒ぎで撤去されたふたりの観光用銅像が、宮崎市役所の倉庫に横に切断された状態で保管されているそうで、旅先提案説明の時は、銅像を見せてもらうような話をしていましたが、断られたそうです。4人のメンバーたちはスタッフの話を聞いて、いっせいに怒っていましたが、まあ、特段見たいとも思いません。

 番組では出演者がたくさんの場所を巡りました。
 観ていて自分なりに気に入ったところをメモしました。

①高千穂峡
 きれいです。一見(いっけん。一度見ること)の価値があります。
 神秘的でもあります。ひんやりとしていて、幽玄とか、霊気漂うとかの雰囲気です。
 パワースポットらしい。(超自然的なエネルギーで体力回復、体力増強、精神力集中、精神力強化ができる)
 滝のそばは気持ち良さそう。時間の流れを忘れさせてくれます。
 滝に願いをかけて祈ります。
 久保田さんのカッパハゲをネタにした笑いが延々とこのあとも続きます。お気の毒でした。
 ハゲ=髪の毛が生えますようにと願掛けをします。
 二人乗り手こぎボートには若い女性ばかりで、観光地での女性の元気さも伝わってきました。

②高千穂鉄道の絶景風景が良かった。
 鉄橋は高い。高さ105m、長さ352mだそうです。
 久保田さんの笑顔をつつむシャボン玉の映像が良かった。
 シャボン玉はすごい数です。太陽光線に当たってきれいでした。

③荒立神社(あらたてじんじゃ。芸能の神さま)
 神殿の扉を開けるときの音「ギー」に威厳があって良かった。
 宮司の言葉「一歩、半歩と力強く進んでください」が良かった。

④開運の旅館
 宮崎県の郷土料理がおいしそうでした。
 すっぽん、焼酎など。

⑤男ばかりの入浴シーンは、あいかわらずのすっぽんぽんでゲロゲーロでした。あけっぴろげに感心します。

⑥朝日と雲海
 宮崎県は自然の風景が美しいところです。光の加減がいい。古事記の記述を思い出します。神さまが国をつくったのです。

全体をとおして。
東野幸治さんが、のびのびとしていた回でした。ご満悦でした。  

2021年11月12日

百万円と苦虫女 邦画

百万円と苦虫女 邦画 2008年公開 fuluフールー動画配信サービス

 苦虫:にがむし。にがにがしい。不愉快

 いい映画でした。今年観て良かった一本です。
 蒼井優さんの熱演があります。
 21歳の姉と12歳の弟の姉弟愛(きょうだいあい)が大きな柱です。
 お互いに支え合います。
 
 本人に責任があるとは思えない罪で服役した姉です(器物損壊)
 三人組の同級生男子に厳しくいじめられている小学生の弟です。
 両親は頼りになりません。妻は浮気、夫も不倫です。コメディの部分もあります。
 仲良し家族とはいかない日本映画独特のだれた雰囲気で始まります。
 不思議な映画です。表面に出ない感情を表に出します。

 自分のやりたいようにやって底に落ちていくことを良しとする若い男性がいます。
 観ていると気が重たくなってきます。

 女の体だけが目的の男たちばかりです。
 女性はたいへんです。
 自分でしっかり意思表示をしないと自分を守れません。たいていだれもかばってくれません。
 人間のもつどす黒い部分をさらけ出す映画です。

 1時間10分が過ぎて、形式的にエピソードでつないでいるだけのようで、つまらなくなってきました。
 働く研修ビデオのようです。
 アルコール好きはやっかい者です。カラオケも行きたくない。
 時間が経過して、いい展開になってきました。
 心に優しい映画です。最後はどうするのだろう。あと40分間ぐらい。
 100万円貯めてどうなるのか。
 良かったセリフとして「(自分探しはしなくても)今ここに(自分は)いる」
 「自分のことを知らない人たちの中で暮らしてみたいと思ったことはないですか?」という問いがあります。自分はそう思ったことはありませんが、そういう体験は何度もあります。だから何ということはありません。可もなく不可もなしです。ただ、18歳から自立した生活を始めて、ふりかえると、あの当時いくら貯金をもっていてどうやってやりくりして生活していたのかは思い出せません。たいした貯金額ではなかったと思いますが生活には困っていませんでした。思うにぜいたくというものを知りませんでした。

 蒼井優さんと森山未來さんが速足歩き(はやあしあるき)で猛進しながらしゃべりまくる演技シーンがいい。
 中身にこだわる映画です。
 蒼井優さんは熱演です。
 そして、最後に『好きです』のセリフが飛び出します。
 食べものに使うネギのシーンが良かった。(セリフとして「おばあちゃんち(家)みたい」)
 幸せを手にする手法です。

 弟が小学校でいじめられるシーンと姉が仕事場で苦労するシーンが交互に映像で出てきます。
 いじめをするやつとは、こぶしを振り上げて闘わなければなりません。自分を助けるのは自分です。

 『生きることはつらい』がすべてとは思いたくありません。ちゃんとやっていれば、最後は報われます(むくわれます。ごほうびがあります)。

 ロードムービー(成長物語)でした。

 最後付近の展開はいじり過ぎです。
 計略の練り過ぎです。
 すっきりする感じで終わってほしかった。

 自転車で追いかけるスピードシーンが良かった。
 恋愛映画でした。  

2021年11月11日

静かな雨 邦画

静かな雨 邦画 2020年公開 fuluフールー動画配信サービス

 交通事故で最近の記憶が消える障害をもった女子と男子の恋物語です。
 事故前の過去のことは記憶にあるが、事故以降の記憶が翌朝までには消えてしまうという記憶障害です。
 毎朝女子の「ここゆきさんち(家)? 雨があがったんだね」から始まり、男子が「おはよう」とあいさつするところから始まります。何度も同じ出だしのパターンが繰り返されます。

 どうして女子の職がタイ焼き屋なのか。屋台で若い女性ひとり営業で、まわりになにもない駐車場のような場所で、場所借り許可とか使用代金とか、余計なことが気になる職業人だった今はリタイアした自分です。(映画ではこのあとちょっと触れられていました)
 タイ焼きの焼き方を見ながら、お嬢さんの趣味で焼いているような焼き方で、生活臭とか商売の雰囲気がありません。
 タイ焼きに、特別おいしいということがあるのだろうか。
 タイ焼き1個を食べることで、あんなに時間はもたない。
 うーむ。愚痴ばかりになってしまいそうです。
 疑問だらけです。
 製作経費節減のためか、ふたり芝居が続きます。
 映画に出てくるアパートって、どうしてたいてい二階建て外階段の古い物件なのだろう。いまどきなら、ワンルームの賃貸マンションです。

 風景映像はきれいです。夜を移動する列車の窓の灯りのシーンが良かった。
 急な登り坂をバックにして、パノラマのように広がる風景映像が出たのですが、足が不自由な主人公男子であり、足が悪いのにあのような急な上り坂をあがってきたというのは不自然でした。
 大学構内の建物の中で、人と人とが、ばったり出会うのも不可解でした。
 酔っ払い男性の演技と設定が芳しくなかった。(かんばしくなかった。良くなかった)

 足をひきずるリズムだけが、脳に残り続けました。
 どうしてふたりは、男子の足の話をしないのだろう。
 彼は彼女のどこが好きなのだろう。(見た目しか思い浮かびません)
 スローな流れで退屈です。
 女性の母親と主人公男子の会話はもどかしい。
 映像重視の作品です。会話、ストーリー展開が少ない。
 男子が職場に着くと、パソコンのふたを開けてすぐに作業を始めます。パソコンはそんなに早く使えるようにはなりません。パソコンがあんなに早く立ち上がるとは思えないのです。情報保護のためにパスワードの入力とか顔認証システムの利用とかもあります。自分は細かいことが気になるドラマ「相棒」の杉下右京みたいなものです。
 なにもかもがあいまいで、霧が広がる中の風景を見えないのに見ようとする鑑賞でした。
 恋愛関係があるような男女には見えなかったのでした。

 伏線として、毎日日記を書く年配の男性のこと。
 伏線として、ブロッコリーのこと。なんで、男子は、ブロッコリーぐらい食べられないのだろう。なんで、女子は、毎日ブロッコリー料理ばかりつくるのだろう。
 途中、どうしてメモを活用しないのか気になりましたが、やはり女子はメモを残していました。なのにメモの情報が生かされていない。これまた不可解でした。わたしの理解力不足な部分があるのでしょう。
 伏線として、目玉焼きの卵の黄身が、ひとつからふたつに増える。
 
 いつの時代の設定だろう。
 昭和40年代から50年代を思い出します。だけど当時ノートパソコンはありません。
 街の本屋、たばこ屋、映像に出てくる店舗体系は古い。
 
 同類の映画として「博士が愛した数式」がありました。ちょっと違いますが、土屋太鳳(つちや・たお)さん出演作品の「8年越しの花嫁」が良かった。感動しました。あと「50回目のファーストキス」も良かった。

 病気=あきらめるしかない。

 足を引きずる必要はなかったのではないか。

 これで終わってしまうのかというラストシーンでした。

 「記憶が心臓に宿る。記憶が腸に宿る」の部分は、ハテナでした。
 全体的にわたしには合わない映画でした。