2021年11月17日

此の岸のこと(このきしのこと) 邦画

此の岸のこと(このきしのこと) 邦画 2012年公開 fuluフールー動画配信サービス

 30分ぐらいの短編映画です。
 老老介護のすえに夫婦が心中するのです。
 手こぎボートから湖への入水自殺です。

 車いすのおばあさんがいます。
 リアルです。
 一部のシーンは、今年相次いで亡くなった自分の身内である老夫婦の姿を思い出しました。
 自分たち夫婦の未来の姿と重なりもします。

 昔、お墓の前で自殺されたバラエティタレントさん女性の若かった頃のお顔が思い出されました。
 亡くなったそばに、車いすにのった認知症の老いた母親がおられました。

 映画では、セリフがないことに気づきました。
 新藤兼人作品『裸の島』を思い出しました。

 老老介護です。
 途方(とほう)にくれます。
 思いどおりに前に進まないのが当たり前です。
 前に進んだとしても、どんな経過をたどったとしても、あとはあの世に行くだけです。
 パーキンソン病だろうか。ご主人の右手の手のひらが細かく震えています。
 
 病院待合場所ベンチでのあかちゃんの姿があります。
 可愛い。
 映像では自分たちのこどもさんの姿がないご夫婦です。
 子や孫がいても親元に来てくれないということはあります。

 年寄りは、薬を飲むのが日常です。
 神社でお参りをする。
 祈るしかありません。

 介護に関して身近なのは役所です。
 ご主人は、手が震えて、申請書に文字をうまく書けません。

 ひとりでいても死にたいという。
 ふたりでいても死にたいという。
 生き続けていくためにはどうしたらいいのだろう。
 とりあえず、本を読んだり、映画をみたりしてほしい。
 
 長年使ってきた自分の体が、自分のいうことをきかなくなってくるのが『老い』です。
 だれにでも『老い』は訪れます。
 介護保険サービスの活用で乗りきりたい。
 在宅介護サービスを受けて、できるだけ自宅で、眠るように逝きたい。

 高齢者虐待シーンを見せられるのはつらい。
 愛情が憎しみに変化するのです。

 当事者ふたりは、(入水心中の)発見されたあと処理のことは、考えてくれていないのだろうなあ。

 そうか…… よかった。ほっとしました。
 救われました。
 生きていてこその人生です。
 そして笑顔になれる。
 今年観て良かった一本でした。
 ふと、でも本当は死んでいるのかも。
 現実は厳しい。
 あとは、観ているほうが考える映画です。

(その後)
 この映画を初めて観たと思い込んでいましたが、ふと記録を調べてみたら、2018年に見ていたことがわかりました。
 記録は残っていましたが、記憶が消えていました。かなりショックを受けました。加齢による脳の老化が始まっています。とほほ……