2019年04月21日

昭和の消えた仕事図鑑 澤宮優

昭和の消えた仕事図鑑 澤宮優(さわみや・ゆう) 原書房

 図鑑なので、網羅する読み方ではなく、ポイントで目を落としていきます。
 職に盛衰があります。
 歴史の流れのなかで、そのときどきで必要な職があります。
 時間がかかる作業、たとえば、職人技が機械化されていきます。
 ドラマや映画になった職もあります。
 かやぶき屋根をふき替える作業は見たことがあります。
 電話交換手は、代表電話でまだ残っている法人もあります。
 山師(鉱脈を探す職の人)には会ったことはありませんが、山師の息子だった人には会ったことがあります。半世紀前、子どもはたいてい貧しかった。二本の棒をさしたアイスキャンデーは、ひとつのキャンデーを半分に分けて食べられるようにしてあったと記述があります。
 この図鑑を見ているときに別の雑誌で、ハワイ在住日本人の文章を読みました。「日本は便利な国になって、住みやすくなったけれど、きめこまやかなサービスを提供するために複雑になりすぎて、いつも気持ちがせかされている気分になる場所」というような文章でした。だから、不便でもおおらかな気持ちでいられるハワイ暮しを続ける日本人が多いのでしょう。日本にまん延しているものとして、攻撃のたぐい、パワハラ、セクハラ、いじめ、虐待、差別、過労、依存。さらしもの。全否定。人間不信だから、距離をおいたつきあい方になる。
 図鑑にある消えた仕事は、幅広い人材を数多く必要としていた。だから、だれもが、どこかのすき間に入って働いて収入を得て暮らしていけた。
 美術工芸品でしか残せない技術があります。
 本の内容自体はおとなしい。強い個性はありません。
 気になった職種として、「豆腐売り」、小学生の同級生が豆腐屋で、火事を出して全焼して、どこかへ引っ越していった子どもの頃の思い出があります。
 「働く」ことについての昔の言葉として、働くことは、当たり前のこと。どんなことがあってもやるもの。楽しいとか楽しくないとか、嫌とか辛いとか思うものではない。
 昔の職業あっせん部門の仕事類に気を惹かれました。なにもかもが、最初から公営であったわけではないと再確認できました。合法的なこともあるし、非合法的なあっせんもあります。それを世間が否定しなかったから存在した斡旋業でもあります。
 昔の人の知恵や知識、体験が詰まっている図鑑です。庶民の労働文化があります。
 「昭和30年代まで、傘は貴重で高価なものだった」全体的に、使い捨ての意識がその後浸透します。「屎尿汲み取り(しにょうくみとり):誰かがこの仕事をやらなければならない」
 「屑屋くずや」ああ、あったと思い出します。
 「エンヤコラ:女性の日雇い肉体労働者」女の武器を使ってあえて水商売を選ばず。誇りあり。
 ニコヨン240円、100円札2枚と十円札4枚。
 いろいろ勉強になりました。  

Posted by 熊太郎 at 06:00Comments(0)TrackBack(0)読書感想文