2019年04月11日

宝島 真藤順丈

宝島 真藤順丈(しんどう・じゅんじょう) 講談社

 30年度下半期直木賞受賞作です。沖縄が舞台です。コザ市(現在沖縄市)。嘉手納空軍基地(キャンプカデナ)。那覇、金武(きん)、浦添、名護、普天間。行為は、戦果アギャー(米軍基地からの物資略奪)
 第一部が、1952年(昭和27年)-1954年(昭和29年)
 第二部が、1958年(昭和33年)-1963年(昭和38年)
 第三部が、1965年(昭和40年)-1972年(昭和47年)です。
 登場人物が、
 オンちゃん(アメリカ合衆国に勝った英雄、豪傑)20歳からスタート
 グスク:オンちゃんの親友。19歳からスタート。アメリカ子飼いの諜報員警官となる。
 レイ:オンちゃんの弟。17歳からスタート
 ヤマコ:女子。本名はマヤ子。オンちゃんとカップル。171cm。手足が長い。髪も長い。
 助っ人メンバーなどとして、那覇のサブロー、フク勝(まさ。英語がぺらぺら)、普天間のシンザ、浦添のキンジョー。ほかに、テルアキと謝花ジョー(じゃはなじょー)、ヨギ
 沖縄言葉などとして、
 クージー(さとうきび畑)、イユ(魚)、美ら(ちゅら)、戦果(米軍基地から盗んできた物)、イイドゥシ(親友)、ウットゥ(弟)、ヤッチー(兄)、フィーフィー(口笛)、火の箭(や)(矢)、ヌチ・ヌー・スージ(命びろいの宴会)、梳られる(くしけずられる。櫛で髪をとかして整える)、戦果アギャー(アメリカ統治下時代の沖縄での略奪行為)、チブル(頭かしら)、ヌスル(泥棒)、スー(おやじ)、アンマー(おふくろ)、スー(お父さん)、ヤマト(日本)、ヤマトンチュ(日本人)、シマ(故郷)、ミーングワ(お嬢ちゃん)、ハーメー(後家さん)、アシバー(ごろつき)、グマヌスル(ケチな泥棒)、ウチナー(沖縄)、ウチンチュ(沖縄人)、ユンター(語り部)、ウムヤー(恋人)、ウータイ(精霊送り)、エイサー(沖縄でお盆に踊られる伝統芸能)、ヤッチー(兄貴)、チュー・サン・ソー(たくましい肝っ玉)、PX(売店)、ダンパチ(散髪)、ジーグイ(いちゃもん)、シカー(腰抜け)、イーシャーアシヒャー(罵倒合戦)、イイドゥシ(親友)、ウットゥ(実弟)、イッチン・ヌ・グー(最高の相棒)、カラハーイ(羅針盤)、イリチー(炒りつけ)、クワッチー(ごちそう)、ヒージャー・ヌ・クス(山羊の糞)、タークトゥ(寝言)、シーサー(獅子像)、業腹(ごうはら。非常に腹が立つ)、MP(憲兵)、フラー(まぬけ)、クワッチー(おすすめ料理)、ウタキ(信仰施設)、ナチグィー(嗚咽おえつ)、アビグィー(悲鳴)、アカングワ(赤んぼう)、カチャーシー(沖縄地方の早いテンポの即興的な踊り)、フュークサラー(ものぐさ男)、スージ(宴)、ユヌ(夜ぬ)、ウガン(祈願)、ガマ(洞窟)、涵養(水が染み込むようにゆっくりと育てる)、フェーレー(追いはぎ)、レーション(お弁当)、ムヌクーヤ(浮浪児)、ガンジュー(元気)、カフー(幸運)、キャンプ嘉手納襲撃事件(嘉手納アギャー)、イングワ(野良犬)、チジャハージャー(つぎはぎだらけ)、ムヌクーヤー(浮浪児)、マチャグワー(雑貨屋)、カサギンチュ(妊婦)、ユクサー(嘘つき)、ジラ(面つら)、ウフソー(すっとこどっこい)、ムンヌキムン(魔よけのお守り)、ムヌマイー(行方不明)、アナヤー(掘っ立て小屋)、クブら(密貿易団)、ユイマール(助け合いの輪)、ミミガー(みみたぶ)、オーエー(取っ組み合い)、チンベール(あかんべえ)、キーマー(けむくじゃら)ウシショー(教師)、オーエー(喧嘩)、テーソー(牢名主)、ヌスル・ワジャ(泥棒稼業)、アシバー(ごろつき)、ジンブナー(知恵者)、ヤマイン(野良犬)、シーバイ(小便)、フラー(馬鹿)、シタイヒャー(ざまあみろ)、ウムカジ(面影)、ヌジュミ(本書中では店名として。希望)、フリムン(変態)、ボーチラー(きかんぼう)、ハゴームン(下衆な男)、ウムヤー(恋人)、Aサインの営業許可(米軍公認の飲食店・風俗店)、ニーワチャレー(面倒事)、ハゴームン(卑怯者)、ウフソー(まぬけ)、ナーイル(クズ男)、ヤフヮラー(繊細)、ヤナムシ(悪い男)、シワ(心配)、アシバー(ごろつき)、ユクサー(嘘つき)、あまりにもたくさんの沖縄言葉なので、77ページ以降は大部分を省略します。文章に独特のリズムがあり、それは、沖縄民舞のリズムです。金科玉条(きんかぎょくじょう。よりどころとする決め事。法律、規則)、かしまさんど(うるさい、わずらわしい)、ハイサイ(こんにちは)、託宜(たくせん。神のお告げ)、なんくるないさ(なんとかなるさ)、烏有に帰す(うゆうにきす。すっかりなくなる。火災で焼ける)、CP(シビリアンポリス。沖縄民警察)、おためごかし(相手のためとみせかけて、実は自分のため)、私淑(ししゅく。密かにその人を尊敬し模範として真似ること)、密貿易団クブラ、ボゼ(仮面神。鹿児島トカラ列島悪石島あくせきじま)、エケリ(兄)、オナリ(妹)、炯々(けいけい。目が鋭く光さま)、あきさみょう(びっくりしたときの感嘆の発声)、正鵠(せいこく。的(まと)の中心にある点)

 どうも、オンちゃんの弟レイは収監されるようです。窃盗罪、不法侵入罪、3年から4年。オンちゃんは行方不明です。略奪集団はやがて暴力団になっていくようです。

 気に入った表現として、「亜熱帯の夜」、「調査不足」

(つづく)

 沖縄の人たちがこの本を読んだらどんな感想をもつのだろう。人間はこんなふうにモノを考えるとは思えません。<略奪を可とする。是とする。良しとする。あるいは、しかたがなかった行為とする>
 オンちゃん20歳が略奪行為の最中にアメリカ兵に追いかけられて行方不明になっています。オンちゃんの弟レイが必死になって兄を探します。

 第二部は、1958年、昭和33年から1963年、昭和38年までです。
 物語は意外な展開を見せます。驚くべきことに、戦果アギャー(米軍基地からの物資略奪メンバー)だったグスク(オンちゃんの親友)25歳が、琉球警察(本土の警察とは違う組織)の刑事職に就いています。沖縄の特殊性とあります。
 沖縄の特殊で深刻な米軍海兵隊犯罪問題があります。沖縄はまるで米国の植民地です。沖縄の悲しみがあります。暗い雰囲気が続きます。
 記述が虚構からのスタートだとしたらすごい想像力です。
 
 オンちゃんという人物は亡くなっているのだろうか。
 
 米軍の飛行機が小学校校舎に墜落します。(現実にあったのだろうか?)調べました。ありました。初めて知りました。ショックです。本土人と沖縄人の米軍に対する意識には違いがあります。
 
 取材に労力を尽くしたことがわかる内容です。
 登場人物はニックネームで表記してあります。本名は出しません。
 「沖縄祖国復帰協議会」、「本土復帰運動」、「オンちゃんはもういない」、「本当に目の敵にしなければならないのはアメリカよりも日本人(本土の人間)」、「(沖縄返還時)沖縄が日本になっても基地はなくならない」
 ただ、先日読んだ別の本では、終戦間近のとき、日本は、沖縄を見捨ててはいないと記されてありました。

 沖縄の戦後歴史書を読むようです。暗殺計画、第二室戸台風、縄張り争い。ベトナム戦争、ページは、第三部「センカアギヤーの帰還(米軍基地物資略奪団の帰還)」へと移ります。
 英雄とあがめたてられるオンちゃんの消息です。

 読み終えました。あいにく、自分には合わない物語でした。自分に伝わって来るものがないのは、共感する共通体験がないせいなのでしょう。物語は、長かった。文章は読みにくかった。疲れました。  

Posted by 熊太郎 at 11:40Comments(0)TrackBack(0)読書感想文