2014年05月04日

語りつぐ者 2014課題図書

語りつぐ者 パトリシア・ライリー・ギフ さ・え・ら書房 2014課題図書

 読み始めて、アメリカ合衆国南北戦争を想像しました。違っていました。独立戦争でした。ほとんど知識がありません。奴隷解放目的の南北戦争は映画やドラマでよく描かれます。UKユナイテッド・キングダム、イギリスからの独立戦争について調べました。
 1775年4月19日-1783年9月3日、8年間、けっこう長いんだなあ。日本は江戸時代、杉田玄白の「解体新書」、平賀源内の「エレキテル」、田沼意次の時代です。音楽家では、モーツアルトやベートーベンが生きていた時代です。
 イギリス(正式国名は、グレートブリテン王国)とアメリカ東部のイギリス植民地13地域(その後の州)との戦争です。5万人ぐらいの人が戦闘や病気で亡くなっています。昔、アメリカ建国200年記念祭があったことを思い出しました。
 当時の13(州)には兵隊の制度がなく、開戦当初は、この物語のように、農民が兵として名乗り出た形です。ただ、一致団結して、イギリスと戦ったのではなく、同じ地域に住む、それまでは仲の良かった農民同士がイギリス派(王党派)と独立派(愛国派)に分かれたことから、この小説に登場する悲劇が生まれたのです。ときには、親子、きょうだい、親族同士の間で、考えの違いから割れています。そんな不幸を再び起こさないようにというメッセージがこめられている小説です。
 自分のルーツ(祖先)をさがす物語です。アメリカ合衆国に住むエリザベスは父子家庭の娘ひとり、母親は亡くなっています。父親はお面の彫刻師で、展覧会を開催するためにオーストラリア・メルボルンへ1か月ぐらいの間出張です。エリザベスは、おばさんである母親の姉リビー(科学者、独身、のっぽ、骨だけのやせっぽち、メガネ、空色の瞳、手のひらで顔をあおぐのが癖)の家に預けられます。雪景色が、さびしさを盛り上げます。エリザベスは、リビーの家で、200年ぐらい前の先祖エリザ(愛称ズィー)の肖像画を見ます。肖像画は羊皮紙に描かれています。読み手は、額(がく)の中になにかあると気配を感じます。メモとか手紙とか、なにかメッセージがあるに違いない。83ページ、やっぱりありました。でもそれは言葉ではありません。絵地図でした。200年ぐらい前に書かれたものです。エリザベスは、絵の解読に取り組み始めます。だれがズィーの肖像画を描いたのか。なぜ、この古びた絵は代々あるのか。
 年齢が書いてないので想像ですが、読み始めはエリザベスは10歳ぐらいと感じました。読み終える頃は12歳ぐらいと感じました。200年前のズィーは、最初は10歳ぐらい、肖像画のズィーは、最後あたりでは、17歳ぐらいと感じました。
 現代と昔が交互に、エリザベスとズィーの語りという形式で進行していきます。アメリカ映画「バック・トゥー・ザ・フューチャーPART3(1885年が舞台)」を思い出しました。
 過去の女性ズィーが語る部分は「詩」です。大自然につつまれて、農業や畜産によって生計を維持していた農民たちの静かで安定した暮らしが、戦争で壊れいくさまが散文としてつづられていきます。秘かな恋心、あたたかい親族・友人関係は、殺りくによって、肉体も服もぼろぼろになり、母を亡くし、家も焼かれ、彼女はホームレス状態になり、父親と兄がいる激戦地のディトン砦を目指します。
 さて、ふたつの別々の物語は、章でいうところのナンバー25で一体化します。それまでは、ズィーを追いかけていたエリザベスがズィーを追い抜きます。ズィーの部分のお話を創作していたのはエリザベスだったのです。エリザベスの親族であるハリーが、エリザベスは将来小説家になれると彼女を励まします。ハリーは、おふくろから聞いた、だれにでもひとつは得意なことがあるという趣旨のことを彼女に投げかけますが、それは、エリザベスに対するものを超えて、読者へ声をかけてくれているのです。だから、勉強しよう!という声です。
 200年前の登場人物で、わたしが気に入った人がいます。レナペ・インディアンのジェラードじいさんと孫娘のエラムです。一族が土地を離れるときに、ジェラードじいさんは、ついていきませんでした。わたしは先祖のためにここに残る。先祖の骨の世話をする。そして、エラムは、そんなおじいさんが好きで、土地に残りました。
 そのほか、印象に残った文節などです。
 エリザベスの言葉「わたし、ズィーのことを知りたいの」(知りたいから学習した。)
 (エリザベスが、ズィーの肖像画を転校後の学校へもっていったとき)ズィーのおかげでクラスの女の子たちといっしょにお昼を食べることができるようになった。
 リビーのいとこハリーの話、「彼らはなんとしても、この国を建国しなければならなかった。」
 エリザベスが父親のもとに戻らなければならない前日にハリーが父親を説得してエリザベスに「あすは、オスカリニーだ。何がなんでも行くんだ。」。オルカリニー渓谷:独立派(愛国派)の兵隊が待ち伏せにあって大量死した場所。
 今の平和があるのは、過去の人々の苦労と努力の結果・結晶・蓄積であることを自覚しておくことは必要でしょう。
 200年前のズィーと今のエリザベスの顔が似ていることについて、ひとつ書きます。先日読んだ課題図書「生命とは何だろう」に、女性の遺伝子は代々伝わっていくけれど、男性の遺伝子は消えていくというような記述がありました。さらに、遠い将来は、男性は消えて女性だけの世界ができるだろうとの予測でした。
 この本を読んで、自分のルーツ(英語で根っこ、先祖)を親に聞いて感想文に書くのもいいでしょう。


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