2024年12月20日
背中の蜘蛛(くも) 誉田哲也(ほんだ・てつや)
背中の蜘蛛(くも) 誉田哲也(ほんだ・てつや) 双葉文庫
推理小説を読みます。警察モノです。
背中の蜘蛛という言葉からは、背中に蜘蛛の入れ墨がある人間がいるという発想が生まれます。さて、どうなりますか。(入れ墨は関係ありませんでした)
『第一部 裏切りの日』
本宮夏生(もとみや・なつお):池袋署刑事課長(彼が語りながら物語が進行していきます)。眼鏡をかけている。53歳か54歳ぐらい。成人した娘がひとりいる。娘は大学卒業後、神戸の電子医療機器メーカーに勤務している。今は、ひとり暮らし。15年前に妻を胃がんで亡くした。
担当係長、統括係長。制服職場、上下関係のきつい職場です。指示・命令と服従が基本です。
組対(そたい):組織犯罪対策課。
上山:本宮夏生刑事課長が渋谷署にいたときの後輩。富坂(東京都文京区東京ドーム北西)の近くにある、『サイバー攻撃対策センター』に配属されて日が間もない。公安担当(国家体制を脅かす(脅かす)事案担当)。アメリカ合衆国FBI(連邦捜査局)で10か月間の研修を受けて帰国して2週間がたったばかり。細身の美男子。係長職。45歳か46歳。
浜木和昌(はまき・かずまさ):ガイシャ(殺人事件の被害者)。43歳。定職なし。転々としていた。住所は、川崎市多摩区登戸(のぼりと)。
9月25日20時19分、西池袋五丁目において、遺体で見つかった。(目白署との境)。目撃者なし。死因は腹部の刺し傷。刺されたあと歩いた形跡あり。傷害致死か。
浜木名都(はまき・なつ):浜木和昌の妻。江戸時代とか室町時代ぐらいの古風な顔立ちの女性。目が細くてのっぺりとしている。
西池袋五丁目路上男性殺人事件特別捜査本部:池袋署7階講堂。総勢55名で捜査開始。
防犯カメラに5人の男が映っている。そのうちの黒っぽいスーツの男が怪しい(あやしい)。
<人がたくさん出てきます。家で使用済みになったカレンダーの裏白い紙に登場人物名を書いて、整理整頓(せいりせいとん)しながら、内容を理解していきます。77ページで、第一の殺人事件が解決しました。この本は、個別の事件解決を紹介するというよりも、警察組織の上層部にいる人間同士のあれやこれやをあぶりだすことがテーマのように見受けられます>
SSBC:捜査支援分析センター
『第二部 顔のない目』
渋谷区千駄ヶ谷二丁目、北参道駅あたり。それから、杉並区浜田山三丁目、西永福駅あたり。
警察職員がたくさん出てきます。薬物売人逮捕のための捜査です。
植木範和(うえき・のりかず):警視庁所属。警部補。35歳。妹がいる。実家は山梨。父は死去。母は存命
佐古充之(さこ・みつゆき):高井戸署所属。巡査部長。29歳
千倉葵(ちくら・あおい):キャバ嬢。
森田一樹(もりた・かずき):25歳無職なれど、薬物の売人。身長180cm以上。千倉葵と関係がある。
Nシステム:自動車ナンバー自動読取装置。
ナカジマアキラ:薬物所持者
浅沼係長:捜査一課
本宮管理官(もとみやかんりかん):捜査一課(第一部の本宮夏生。人事異動で、池袋署から警視庁へ移った。刑事課長から管理官になった。管理官も課長職)
漢(おとこ):男子という意味
湾岸署:東京湾岸警察署。江東区
違法薬物:大麻、覚せい剤、MDMA(合成幻覚剤)
17日:中島逮捕
特捜部(特別捜査本部):警視庁捜査一課が仕切っている。
階級:巡査→(巡査長(正式名ではないそうです))→巡査部長→警部補→警部(係長職)→警視→警視正→警視長→警視監→警視総監
刑事部、組織犯罪対策部、生活安全部、地域部、公安部(国家警察)。
なにやら、組織の中のかけひきとかがありそうな小説の内容です。事件よりも、そちらのほうがメインぽい。
タレコミ:密告、裏切り、内通(ないつう)
サツカン:警察官
捜査一課 本宮管理官:特別捜査本部の最高責任者
『第三部 蜘蛛の背中』
冒頭は不思議な記述です。
意識もうろうとした状態で、だれが、語っているのかわからない文章が続きます。
理(おさむ):この人物男性がひとり語りをしています。
涼太(りょうた):飲み屋で理と知り合った。27歳。父親の顔は知らない。母親もよくわからず、母親は癌で死んだ。涼太が小学校三年生、姉の幹子が中学二年生だった。その後、悲惨な暮らしが続いている。施設ではなく、異母兄安藤光雄が世話してくれたが、異母兄はハングレ(準暴力団員)だった。生活費の面倒はみてくれたが、暴力で支配された。
幹子(涼太の姉):姉と弟涼太のふたり暮らし。身長170cmにとどくぐらい。涼太も幹子も不幸な家庭に生まれて苦労して、今は、ハングレ(やくざ者。準暴力団。異母兄安藤光雄)の支配下におかれて、違法行為をしている。かなりすさんだ暮らしをしている。
理のひとり語りが途絶えて、ひと区切りついたあと、情景描写は、警察関係の場所に移りました。
上山章宏:警察官。係長職。官舎住まい。46歳ぐらい。妻咲子165cmぐらい、長男蓮(れん)16歳、長女唯(ゆい)10歳ケータイが欲しいが父が許さない。
ねまわし、下地づくりをして上司長谷川管理官にプランをあげることが仕事。調整役。警務部人事二課、刑事部捜査一課、操作支援分析センターほかの幹部・関係者と調整を図る。
國見健次:警部補。統括主任。上山章宏にとって、年上の部下。52歳ぐらい。
松尾信晴:警部補。担当主任。元公安二課極左担当43歳
天野照良:警部補。担当主任。36歳独身。元SE(システムエンジニア)運三(警視庁総務部情報管理課運用第三係)の創立メンバーで、経験は2年7月。以前の所属は、生活安全部のサイバー犯罪対策課。松尾信晴と天野照良は、ステングレイによる張り込みの交代要員。
ステングレイ:携帯電話の番号で、電波の発信地を見つける装置。アメリカのハリス社が開発した携帯端末の追跡と盗聴を可能にする装置。ステングレイは、海にいる魚、『アカエイ』という意味。
阿川喜久雄:巡査部長。警視庁総務部情報管理課運用第三係所属と刑事部捜査支援分析センター職を併任。
向野哲郎(こうの・てつろう41歳)、荒山:運用第三係のメンバー。刑事畑での経験が豊富。
理(おさむ)という男は何者なのかを想像する読書です。
理はなんだかフラフラです。認知症の症状みたいです。薬物中毒かとも思えたりします。
お金ももっていません。
涼太は、まっとうな人間ではないでしょう。涼太は、理を犯罪行為で利用するでしょう。(利用はしませんでした)。
下井草駅:杉並区。西武新宿線。
高田馬場駅:新宿区
愛宕警察署の隣に警視庁新橋庁舎12階建てがあって、最上階が、上山章宏の職場。コールセンターのような部屋。パソコンが並んでいる。『捜査員』はいない。『技官』がいる。そこを、『平場』という。捜査員の部屋が、『奥』という。窓はどこにもない。部署名は、『警視庁総務部情報管理課運用第三係』
特殊詐欺の主犯格のアカウント。
アカウントで犯人をシステム上で追跡するようです。
鑑取り(かんどり):容疑者等の人間関係を調べる。
タレコミで容疑者逮捕の事案が二件あって、タレコミの主が警察職員らしいことに疑問をもった本宮夏生であった。
タレコミを受けたのは、佐古充之(さこ・みつゆき):高井戸署所属。巡査部長。29歳。
前回、本宮夏生にタレコミしたのは、警視庁の小菅捜査一課長だった。今の捜査一課長は、徳永警視正。同じ携帯電話の番号を使っているはず。殺人班の浅沼係長がからんでいるはず。そもそもタレコミはなかったのではないか。タレコミ以外の状態で、情報が提供されたのではないか。
デジタル犯罪とか、デジタル捜査のたいへんさが書いてあります。警察内でUSBメモリなどの情報量映画内容に厳しい管理体制がしかれていて、異変があったときは、システムがストップする仕組みになっています。
マルA:ステングレイ。携帯電話の電波の発信地を探す機器。
マルC:新橋庁舎にある総合検索システム、『スパイダー』(「蜘蛛」。この小説のタイトル蜘蛛の背中と関係があるのだろうか)。
預金詐欺事案:ネット空間で、預金が吸い取られて消えていく。どこに入金されていくのかがわからない。イットコイン:アメリカ発祥の暗号資産。
違法薬物の事件。
複数の事件が、重なって進行していきます。
サーフウェブ:一般的なパソコンユーザーが触れているネットワークの空間。インターネットの表層にある。検索エンジンで探すことができる。無料で閲覧できる。インターネット内に占める割合は1%未満
ディープウェブ:アクセス権をもつ限られたメンバーだけが閲覧できるページのこと。非公開ページ。有料サイト、有料動画配信サービス。インターネット内に占める割合は、99%以上
ダークウェブ:ディープウェブのさらなる奥底に存在する。一般のブラウザ(グーグルクロームとか)ではアクセスできない。専用のソフトウェアが必要になる。
匿名性が高い。違法薬物、偽造免許、偽造パスポート、偽札、違法ポルノ、児童ポルノ、改造拳銃、正規の軍用拳銃、爆弾、(この部分の記述を読んで、なるほどと感心しました。わかりやすい)
こだわりがあります。
薬物の売人である中島晃は、『ナカジマ・アキラ』と読むのか、『ナカシマ・アキラ』と読むのか。(なるほど)
捩じ込む:ねじこむ。(読めませんでした)
DOR:ダイレクト・オニオン・ルーター。タマネギのようになっている。皮を何度もむかないと核心に到達できない。
伝々(でんでん):次から次へ。
どん底の生活があります。
ちっぽけな弱者
理(おさむ)が動き出しました。
321ページまで読んで、かなり時間をかけて、ゆっくり調べて、状況を把握しながら読んでいます。
情報量は多いのですが、話自体は、シンプルにゆったりと進んできています。
全体で573ページあるので、あと252ページです。
これからどうなるのだろう。
(つづく)
朝陽新聞の記者 宇治木丈博(うじき・たけひろ):殺された。
PRS:台湾の総合電機メーカー
アース・エレクトロニクス:国内電子機器メーカーとヤマト電通:自衛隊が使用する防衛装備品等の開発をしている。
どうも、警視庁の情報管理機器のデータが何者かに乱されているらしい。
マルウェア:コンピューターの正常な動作を妨げたり(さまたげたり)、データやシステムの破壊等を行う、悪意を持って開発されたソフトウェアの総称。
サイバー戦争:コンピューターネットワーク上で行われる戦争。敵からのサイバーテロ(破壊行為)とシステムの防御・反撃。
防御だけではなく、相手のシステムをダウンさせる。反撃能力がないときは、ネットから離脱する。離脱すれば、ハッキングはされない。(乗っ取り)。
第二勾留(こうりゅう。取り調べのために拘束する(こうそく)):複数の罪を勾留理由にする。二番目の理由での勾留が第二勾留。
『テクノロジーは、人を幸せにもするけれど、確実に不幸せにもする……(いまどきの、スマホアプリを使った犯罪のあれこれを思い浮かべる言葉です)』
『蜘蛛(くも)』がネット上を回遊している。蜘蛛=警視庁が、ネット上に犯罪情報がないかと見回っている。『蜘蛛』の背中をよしよしとなでる犯罪者がいる。『蜘蛛』は、犯罪者の言いなりになる。
蜘蛛=スパイダー=米国が開発した通信監視、検索、分析プログラム。
だんだん話が見えてきました。
犯人は、バックドアをつくって、バックドアからシステムに入ってくる。
昔、組織運営の研修で習った言葉を思い出します。
『組織は、外部からの力ではなく、内部からの力で崩壊する。』
『……この三十年、四十年で我々が住む社会は、生きる世界は、大きく様変わりしてしまった。』(善意を悪用する人間が増えました)。
439ページに、『世界の真実がどれほど残酷か、この男にはわかるまい』とあるのを読んで、そのあとの記述も含めてですが、この人たちだけの世界で通用する事柄だと感じました。『違法捜査』は、ちゃんと暮らしている一般人にとっては、興味のないことです。人間界は、それほど狭くはありません。ごく狭い世界での警察と犯罪との戦いが繰り広げられています。
必要悪:良くないことではあるが、社会を維持していくうえでやむを得ず必要であること。
447ページまで読んできて、ようやくこの小説のテーマが見えてきました。長かった。
読んでいて、『幸せって何だろう?』という気持ちになりました。きれいごとだけでは生活していけません。理想を追うことは大事ですが、現実を乗り切ることはもっと大事です。ブレーキを踏みながらアクセルを踏む行為ですから、慎重にやらねば事故になります。
肚括って:はらくくって。覚悟を決めて。
本宮は先輩で、上山は後輩
システムを使う人間の行為によって、不幸な事件が起きる。
携帯電話は弄る(いじる):読めませんでした。
フロントガラスが、斑(まだら)に曇っている:同じく読めませんでした。
読んでいて、3000万円というお金で済む話ではないと思う。
こういう結末にしたのか。う~む。なんと言っていいのか思いつかない。
鬼畜(きちく):心のある人間のすることではない。残酷な行為をする者
『信頼関係』のために、蜘蛛を取り除く。
心の病(やまい)があります。
変な人間がいます。(人間は権力をもつと気持ちの持ちようが変化します。支配者になるのです。自分は何をやっても許されると勘違いするのです)。
いろいろ理屈はありますが、職員が定年退職すると終わってしまうことです。
法令に寄りかかってやるしかない事柄なのでしょう。
全体で564ページを一週間ぐらいかけて読みました。
読書をしたという実感がひたひたと湧いてきて満足しました。
いい作品でした。よかった。
事件が起きる。
表向きの理由がある。
裏向きの理由で本音(ほんね)が出る。
個人に番号を付けて特定して、行動を記録して、保存しておいて、なにかあったら、組織が利用する。考えてみれば、マイナンバーカードとか、交通系ICカードとか、クレジットカードを使った時のデータは、どこかに集約されて保存されているのでしょう。
その人が、いつどこで電車に乗っていくら使って、どんな病気でどこの病院にかかって、どんな薬をどれだけもらって、お金の出し入れはいつどこでいくら動かして…… いろいろなことが本人の知らない間に、電子データを管理運営する組織で働く他人が知ることになる。
本人が自分の端末で履歴を削除しても、元データはどこかに残っているような気がします。
国家組織が、組織を維持するために個人の情報を利用する。そのとき、個人の都合は聞かない。
そんな話です。
素材をじょうずに組み合わせて、お話がつくってありました。
推理小説を読みます。警察モノです。
背中の蜘蛛という言葉からは、背中に蜘蛛の入れ墨がある人間がいるという発想が生まれます。さて、どうなりますか。(入れ墨は関係ありませんでした)
『第一部 裏切りの日』
本宮夏生(もとみや・なつお):池袋署刑事課長(彼が語りながら物語が進行していきます)。眼鏡をかけている。53歳か54歳ぐらい。成人した娘がひとりいる。娘は大学卒業後、神戸の電子医療機器メーカーに勤務している。今は、ひとり暮らし。15年前に妻を胃がんで亡くした。
担当係長、統括係長。制服職場、上下関係のきつい職場です。指示・命令と服従が基本です。
組対(そたい):組織犯罪対策課。
上山:本宮夏生刑事課長が渋谷署にいたときの後輩。富坂(東京都文京区東京ドーム北西)の近くにある、『サイバー攻撃対策センター』に配属されて日が間もない。公安担当(国家体制を脅かす(脅かす)事案担当)。アメリカ合衆国FBI(連邦捜査局)で10か月間の研修を受けて帰国して2週間がたったばかり。細身の美男子。係長職。45歳か46歳。
浜木和昌(はまき・かずまさ):ガイシャ(殺人事件の被害者)。43歳。定職なし。転々としていた。住所は、川崎市多摩区登戸(のぼりと)。
9月25日20時19分、西池袋五丁目において、遺体で見つかった。(目白署との境)。目撃者なし。死因は腹部の刺し傷。刺されたあと歩いた形跡あり。傷害致死か。
浜木名都(はまき・なつ):浜木和昌の妻。江戸時代とか室町時代ぐらいの古風な顔立ちの女性。目が細くてのっぺりとしている。
西池袋五丁目路上男性殺人事件特別捜査本部:池袋署7階講堂。総勢55名で捜査開始。
防犯カメラに5人の男が映っている。そのうちの黒っぽいスーツの男が怪しい(あやしい)。
<人がたくさん出てきます。家で使用済みになったカレンダーの裏白い紙に登場人物名を書いて、整理整頓(せいりせいとん)しながら、内容を理解していきます。77ページで、第一の殺人事件が解決しました。この本は、個別の事件解決を紹介するというよりも、警察組織の上層部にいる人間同士のあれやこれやをあぶりだすことがテーマのように見受けられます>
SSBC:捜査支援分析センター
『第二部 顔のない目』
渋谷区千駄ヶ谷二丁目、北参道駅あたり。それから、杉並区浜田山三丁目、西永福駅あたり。
警察職員がたくさん出てきます。薬物売人逮捕のための捜査です。
植木範和(うえき・のりかず):警視庁所属。警部補。35歳。妹がいる。実家は山梨。父は死去。母は存命
佐古充之(さこ・みつゆき):高井戸署所属。巡査部長。29歳
千倉葵(ちくら・あおい):キャバ嬢。
森田一樹(もりた・かずき):25歳無職なれど、薬物の売人。身長180cm以上。千倉葵と関係がある。
Nシステム:自動車ナンバー自動読取装置。
ナカジマアキラ:薬物所持者
浅沼係長:捜査一課
本宮管理官(もとみやかんりかん):捜査一課(第一部の本宮夏生。人事異動で、池袋署から警視庁へ移った。刑事課長から管理官になった。管理官も課長職)
漢(おとこ):男子という意味
湾岸署:東京湾岸警察署。江東区
違法薬物:大麻、覚せい剤、MDMA(合成幻覚剤)
17日:中島逮捕
特捜部(特別捜査本部):警視庁捜査一課が仕切っている。
階級:巡査→(巡査長(正式名ではないそうです))→巡査部長→警部補→警部(係長職)→警視→警視正→警視長→警視監→警視総監
刑事部、組織犯罪対策部、生活安全部、地域部、公安部(国家警察)。
なにやら、組織の中のかけひきとかがありそうな小説の内容です。事件よりも、そちらのほうがメインぽい。
タレコミ:密告、裏切り、内通(ないつう)
サツカン:警察官
捜査一課 本宮管理官:特別捜査本部の最高責任者
『第三部 蜘蛛の背中』
冒頭は不思議な記述です。
意識もうろうとした状態で、だれが、語っているのかわからない文章が続きます。
理(おさむ):この人物男性がひとり語りをしています。
涼太(りょうた):飲み屋で理と知り合った。27歳。父親の顔は知らない。母親もよくわからず、母親は癌で死んだ。涼太が小学校三年生、姉の幹子が中学二年生だった。その後、悲惨な暮らしが続いている。施設ではなく、異母兄安藤光雄が世話してくれたが、異母兄はハングレ(準暴力団員)だった。生活費の面倒はみてくれたが、暴力で支配された。
幹子(涼太の姉):姉と弟涼太のふたり暮らし。身長170cmにとどくぐらい。涼太も幹子も不幸な家庭に生まれて苦労して、今は、ハングレ(やくざ者。準暴力団。異母兄安藤光雄)の支配下におかれて、違法行為をしている。かなりすさんだ暮らしをしている。
理のひとり語りが途絶えて、ひと区切りついたあと、情景描写は、警察関係の場所に移りました。
上山章宏:警察官。係長職。官舎住まい。46歳ぐらい。妻咲子165cmぐらい、長男蓮(れん)16歳、長女唯(ゆい)10歳ケータイが欲しいが父が許さない。
ねまわし、下地づくりをして上司長谷川管理官にプランをあげることが仕事。調整役。警務部人事二課、刑事部捜査一課、操作支援分析センターほかの幹部・関係者と調整を図る。
國見健次:警部補。統括主任。上山章宏にとって、年上の部下。52歳ぐらい。
松尾信晴:警部補。担当主任。元公安二課極左担当43歳
天野照良:警部補。担当主任。36歳独身。元SE(システムエンジニア)運三(警視庁総務部情報管理課運用第三係)の創立メンバーで、経験は2年7月。以前の所属は、生活安全部のサイバー犯罪対策課。松尾信晴と天野照良は、ステングレイによる張り込みの交代要員。
ステングレイ:携帯電話の番号で、電波の発信地を見つける装置。アメリカのハリス社が開発した携帯端末の追跡と盗聴を可能にする装置。ステングレイは、海にいる魚、『アカエイ』という意味。
阿川喜久雄:巡査部長。警視庁総務部情報管理課運用第三係所属と刑事部捜査支援分析センター職を併任。
向野哲郎(こうの・てつろう41歳)、荒山:運用第三係のメンバー。刑事畑での経験が豊富。
理(おさむ)という男は何者なのかを想像する読書です。
理はなんだかフラフラです。認知症の症状みたいです。薬物中毒かとも思えたりします。
お金ももっていません。
涼太は、まっとうな人間ではないでしょう。涼太は、理を犯罪行為で利用するでしょう。(利用はしませんでした)。
下井草駅:杉並区。西武新宿線。
高田馬場駅:新宿区
愛宕警察署の隣に警視庁新橋庁舎12階建てがあって、最上階が、上山章宏の職場。コールセンターのような部屋。パソコンが並んでいる。『捜査員』はいない。『技官』がいる。そこを、『平場』という。捜査員の部屋が、『奥』という。窓はどこにもない。部署名は、『警視庁総務部情報管理課運用第三係』
特殊詐欺の主犯格のアカウント。
アカウントで犯人をシステム上で追跡するようです。
鑑取り(かんどり):容疑者等の人間関係を調べる。
タレコミで容疑者逮捕の事案が二件あって、タレコミの主が警察職員らしいことに疑問をもった本宮夏生であった。
タレコミを受けたのは、佐古充之(さこ・みつゆき):高井戸署所属。巡査部長。29歳。
前回、本宮夏生にタレコミしたのは、警視庁の小菅捜査一課長だった。今の捜査一課長は、徳永警視正。同じ携帯電話の番号を使っているはず。殺人班の浅沼係長がからんでいるはず。そもそもタレコミはなかったのではないか。タレコミ以外の状態で、情報が提供されたのではないか。
デジタル犯罪とか、デジタル捜査のたいへんさが書いてあります。警察内でUSBメモリなどの情報量映画内容に厳しい管理体制がしかれていて、異変があったときは、システムがストップする仕組みになっています。
マルA:ステングレイ。携帯電話の電波の発信地を探す機器。
マルC:新橋庁舎にある総合検索システム、『スパイダー』(「蜘蛛」。この小説のタイトル蜘蛛の背中と関係があるのだろうか)。
預金詐欺事案:ネット空間で、預金が吸い取られて消えていく。どこに入金されていくのかがわからない。イットコイン:アメリカ発祥の暗号資産。
違法薬物の事件。
複数の事件が、重なって進行していきます。
サーフウェブ:一般的なパソコンユーザーが触れているネットワークの空間。インターネットの表層にある。検索エンジンで探すことができる。無料で閲覧できる。インターネット内に占める割合は1%未満
ディープウェブ:アクセス権をもつ限られたメンバーだけが閲覧できるページのこと。非公開ページ。有料サイト、有料動画配信サービス。インターネット内に占める割合は、99%以上
ダークウェブ:ディープウェブのさらなる奥底に存在する。一般のブラウザ(グーグルクロームとか)ではアクセスできない。専用のソフトウェアが必要になる。
匿名性が高い。違法薬物、偽造免許、偽造パスポート、偽札、違法ポルノ、児童ポルノ、改造拳銃、正規の軍用拳銃、爆弾、(この部分の記述を読んで、なるほどと感心しました。わかりやすい)
こだわりがあります。
薬物の売人である中島晃は、『ナカジマ・アキラ』と読むのか、『ナカシマ・アキラ』と読むのか。(なるほど)
捩じ込む:ねじこむ。(読めませんでした)
DOR:ダイレクト・オニオン・ルーター。タマネギのようになっている。皮を何度もむかないと核心に到達できない。
伝々(でんでん):次から次へ。
どん底の生活があります。
ちっぽけな弱者
理(おさむ)が動き出しました。
321ページまで読んで、かなり時間をかけて、ゆっくり調べて、状況を把握しながら読んでいます。
情報量は多いのですが、話自体は、シンプルにゆったりと進んできています。
全体で573ページあるので、あと252ページです。
これからどうなるのだろう。
(つづく)
朝陽新聞の記者 宇治木丈博(うじき・たけひろ):殺された。
PRS:台湾の総合電機メーカー
アース・エレクトロニクス:国内電子機器メーカーとヤマト電通:自衛隊が使用する防衛装備品等の開発をしている。
どうも、警視庁の情報管理機器のデータが何者かに乱されているらしい。
マルウェア:コンピューターの正常な動作を妨げたり(さまたげたり)、データやシステムの破壊等を行う、悪意を持って開発されたソフトウェアの総称。
サイバー戦争:コンピューターネットワーク上で行われる戦争。敵からのサイバーテロ(破壊行為)とシステムの防御・反撃。
防御だけではなく、相手のシステムをダウンさせる。反撃能力がないときは、ネットから離脱する。離脱すれば、ハッキングはされない。(乗っ取り)。
第二勾留(こうりゅう。取り調べのために拘束する(こうそく)):複数の罪を勾留理由にする。二番目の理由での勾留が第二勾留。
『テクノロジーは、人を幸せにもするけれど、確実に不幸せにもする……(いまどきの、スマホアプリを使った犯罪のあれこれを思い浮かべる言葉です)』
『蜘蛛(くも)』がネット上を回遊している。蜘蛛=警視庁が、ネット上に犯罪情報がないかと見回っている。『蜘蛛』の背中をよしよしとなでる犯罪者がいる。『蜘蛛』は、犯罪者の言いなりになる。
蜘蛛=スパイダー=米国が開発した通信監視、検索、分析プログラム。
だんだん話が見えてきました。
犯人は、バックドアをつくって、バックドアからシステムに入ってくる。
昔、組織運営の研修で習った言葉を思い出します。
『組織は、外部からの力ではなく、内部からの力で崩壊する。』
『……この三十年、四十年で我々が住む社会は、生きる世界は、大きく様変わりしてしまった。』(善意を悪用する人間が増えました)。
439ページに、『世界の真実がどれほど残酷か、この男にはわかるまい』とあるのを読んで、そのあとの記述も含めてですが、この人たちだけの世界で通用する事柄だと感じました。『違法捜査』は、ちゃんと暮らしている一般人にとっては、興味のないことです。人間界は、それほど狭くはありません。ごく狭い世界での警察と犯罪との戦いが繰り広げられています。
必要悪:良くないことではあるが、社会を維持していくうえでやむを得ず必要であること。
447ページまで読んできて、ようやくこの小説のテーマが見えてきました。長かった。
読んでいて、『幸せって何だろう?』という気持ちになりました。きれいごとだけでは生活していけません。理想を追うことは大事ですが、現実を乗り切ることはもっと大事です。ブレーキを踏みながらアクセルを踏む行為ですから、慎重にやらねば事故になります。
肚括って:はらくくって。覚悟を決めて。
本宮は先輩で、上山は後輩
システムを使う人間の行為によって、不幸な事件が起きる。
携帯電話は弄る(いじる):読めませんでした。
フロントガラスが、斑(まだら)に曇っている:同じく読めませんでした。
読んでいて、3000万円というお金で済む話ではないと思う。
こういう結末にしたのか。う~む。なんと言っていいのか思いつかない。
鬼畜(きちく):心のある人間のすることではない。残酷な行為をする者
『信頼関係』のために、蜘蛛を取り除く。
心の病(やまい)があります。
変な人間がいます。(人間は権力をもつと気持ちの持ちようが変化します。支配者になるのです。自分は何をやっても許されると勘違いするのです)。
いろいろ理屈はありますが、職員が定年退職すると終わってしまうことです。
法令に寄りかかってやるしかない事柄なのでしょう。
全体で564ページを一週間ぐらいかけて読みました。
読書をしたという実感がひたひたと湧いてきて満足しました。
いい作品でした。よかった。
事件が起きる。
表向きの理由がある。
裏向きの理由で本音(ほんね)が出る。
個人に番号を付けて特定して、行動を記録して、保存しておいて、なにかあったら、組織が利用する。考えてみれば、マイナンバーカードとか、交通系ICカードとか、クレジットカードを使った時のデータは、どこかに集約されて保存されているのでしょう。
その人が、いつどこで電車に乗っていくら使って、どんな病気でどこの病院にかかって、どんな薬をどれだけもらって、お金の出し入れはいつどこでいくら動かして…… いろいろなことが本人の知らない間に、電子データを管理運営する組織で働く他人が知ることになる。
本人が自分の端末で履歴を削除しても、元データはどこかに残っているような気がします。
国家組織が、組織を維持するために個人の情報を利用する。そのとき、個人の都合は聞かない。
そんな話です。
素材をじょうずに組み合わせて、お話がつくってありました。