2024年12月19日

『ねこはい 南伸坊』と、『ねこはいに』

『ねこはい 南伸坊(みなみ・しんぼう) 青林工藝社(せいりんこうげいしゃ)』と、『ねこはいに』

南伸坊:編集者、イラストレーター、エッセイスト 1947年(昭和22年)生まれ77歳

 『わたしの、本のある日々 小林聡美(こばやし・さとみ) 毎日文庫』で紹介されていた本です。もう一冊、『ねこはいに』と合わせて読んでみます。『ねこはいに』は、『ねこはい』の二冊目という意味です。

 まず、『ねこはい』からです。

 絵本だと思っていたら違いました。俳句集でした。
 『まえがき』に、ねこがはいくをつくるから(じっさいは、南伸坊さんがつくるのですが)、『ねこはい』だそうです。五・七・五の俳句です。だから、次の本は、『ねこはいに』なのか。なるほど。
 文章は、ひらがなでできています。

 絵も南伸坊さんです。自費出版みたいなつくりです。(じっさいは、商業出版です)

 数えたら、24の俳句がありました。
 わたしは、俳句のことについて詳しくはないのですが、一句ずつ、噛みしめるように読むと、それぞれ味わいがあります。
 ねこの立場に立ってつくった俳句だそうです。なぜねこの立場でつくるのかを考えました。
 きっと猫がお好きなのでしょう。

 絵がおだやかで、落ち着きます。
 絵本みたいです。
 ねこがいて、金魚がいて、てるてるぼうずやらカエルやらがいます。
 
 気に入った一句です。
 『どろぼうと ののしるこえを おいぬいて』
 黒いねこがさんまを口にくわえて走って行きます。

 もうひとつ。
 『おおぞらに くもひとつなし ひるのつき』
 ねこも青空が好きなのでしょう。

 ねこが煮干しを17匹食べて満腹(まんぷく)のようすですが、最近のねこは、煮干しを食べてくれません。キャットフードか、かつおぶしがいいらしい。
 先日、公園でノラネコにエサをやっている人がそんなものを与えているのを見ました。

 この句がとてもいい。気に入りました。
 『ゆきだるま いつあっても むくち……』
 
 変な絵が出てきました。
 壁から白い木の棒のようなものが突き出ています。少々長い棒です。
 なにかをひっかけるのだろうか?

 俳句の中にある言葉で、『こぞことし』の意味がわかりませぬ。
 調べました。こぞことし=去年今年だそうです。新年の季語だそうです。むずかしいですな。

 尻切れトンボのような終わり方でした。
 『……ニャー』とあります。


『ねこはいに 南伸坊(みなみ・しんぼう) 青林工藝社(せいりんこうげいしゃ)』
 「ねこはいを、もう一冊だしてもいいといわれたので、また猫になって書きました」とあります。おもしろい。

 絵には自然がいっぱいあります。
 海、野生の草花、ひまわり、セミ、あかとんぼ、季節の歳時記です。さいじき:季節を表現する俳句を載せた書物。

 ねこの気持ちになる。いぬの気持ちとは違うのでしょう。
 『う』にてんてんのひらがな単語がありますが、このノートパソコンではその文字が出ません。ヴィオロンです。フランス語で、バイオリンです。うに点々が、ヴの部分です。

 ひらがな文章です。味わいがあります。

 あんか:見かけなくなりました。暖房のための用具。冬、寒い時期に、布団に入れて、足もとを温める。

 うすらひ:薄く張った氷。薄ら氷(ひ)。

 はつすずめ:元旦の雀(すずめ)のこと。雀のさえずりのこと。

 ゆきうさぎ:雪で体をつくり、目はナンテンの実、耳はユズリハの葉でつくる。

 観察する。散歩する。徘徊(はいかい。うろつく)する。俳句づくり、言葉さがしです。

 ひざかり:太陽が盛んに照りつける。

 上品な俳句集でした。  

Posted by 熊太郎 at 06:34Comments(0)TrackBack(0)読書感想文