2014年03月25日

(再読)ジェノサイド 高野和明

(再読)ジェノサイド 高野和明 角川書店

 しばらく前からマレーシア航空機が行方不明になっています。ニュースを聞いたとき、似たような場面を小説で読んだことを思い出しました。この本を再読するきっかけとなりました。
 小説の後半で、主人公たちの外国人グループは、ボーイング機で、アフリカ南部から北米を目指します。また、日本人仲間たちが、難病を治す薬を開発するあたりは、最近話題になったSTAP細胞を思い起こさせてくれます。この2点で、この小説は、未来を予知した文献という空想ができます。
 物語は、スリリング、ダイナミック、ストーリー性は高い。緻密で、読む興味に富みます。映画化してほしい。
 人間を観察する小説でもあります。ピグミー族を差別する部分では、民族闘争を思い浮かべます。補足すれば、今、クリミア半島で起こっているふたつの民族の争いとも相通ずるものがあります。
 目的を達成するために、小さな犠牲には目をつむるのは王道という考え方があります。某国大統領職がそれにあたります。自分や家族以外の人間が犠牲者になっても痛みを感じないという個体もいます。人間は残酷です。たとえば、権力者は自らを狙う殺人者を取り締まろうとするけれど、自分のためなら殺人者を育成もするのです。さらに育成した殺人者を殺すことまで考えるのです。そして権力者たちは罪には問われない。
 イエガー、マイヤーズ、ギャレット、ミックの4人の傭兵が、アフリカコンゴ領内に投入されます。日本では、病死した古賀博士の息子くんと韓国人李正勲(イジョンフン)がGIFTギフトと名付ける新薬を開発します。ふたつのグループを結びつけるのが、影の主役です。
 いくつかの印象に残った表現です。
 復興協力の美名のもとに戦地に入った。
 新薬が完成に近づいてきたときの長い表現
 マウスを使って、人為的に難病を発生させる。
 失敗のない人生はありえない。
 読みながら自分自身が考えたこととして、相手に勝てないときは「共存」の道をさぐる。

前回の感想をつけたしておきます。

(2012年2月26日)
ジェノサイド 高野和明 角川書店

 書店の本屋大賞コーナーで売れ残っている本の数がいちばん多い作品でした。分厚く文字数も多い長編だからでしょう。しかし、15版でとても売れています。長編ならばこの自分が読まねばならぬと思い立ち手にとりました。
 ページ数全590ページのうちのまだ48ページまでしか読んでいませんが、忘れないうちに感想を書き始めます。わたしが本を読むときはまず38ページぐらいまでを一気に読んで登場人物等を整理します。あとが楽になります。全体のページ数の半分を超えると楽々と読み終えることができます。
 タイトル「ジェノサイド」の意味は「大量殺戮(さつりく)」です。アフリカ・ルワンダ国でのフツ人とツチ人との間の紛争によってフツ人がツチ人ほかを大量に虐殺したとされています。
 小説の冒頭では2004年のアメリカ大統領が登場します。人類を滅亡させるほどの威力をもった新種の生物がアフリカに出現したという報告があるのですが、大統領ほか幹部は真剣になることなく看過(かんか、見過ごす。)します。その後4人の男たちが南アフリカ共和国に招集されたところまできました。作戦の暗号名は「ネメシス」。チームリーダー・合衆国陸軍特殊部隊所属ジョナサン・イエーガーは、ポルトガルの首都リスボンに妻子がいますが、息子のジャスティン8才は、肺胞上皮細胞硬化症で死にかけています。(両親の遺伝子が病気の原因で肺が酸素をうまくとりこめません。)。医療担当・合衆国空軍医療救助専門特殊部隊所属スコット・マイヤーズ。通信担当・合衆国海兵隊武装偵察部隊所属ウォーレン・ギャレット。破壊工作担当・前フランス外人部隊所属<ミック>ミキヒコ・カシワバラ。4人はコンゴ民主共和国に投入されます。作戦内容はまだ明らかにされません。
 4人とは別の動きがあります。古賀研人(けんと24歳)東京文理大学大学院生園田研究所にて有機合成を研究中、そして研人の胸部大動脈瘤破裂で急死した父親(大学教授)の友人東亜新聞科学部記者菅井が「ハインズマンレポート」を仲介にしてからんでくるようです。
(1週間後)
 400ページまできました。残すは190ページです。内容はむずかしいです。医学の研究、薬学の分野、軍事ことに通信情報のハッキング(盗聴、監視カメラほか)、米国、アフリカ情勢など盛りだくさんです。専門用語や造語らしきものが出てきて記述内容は深刻で重い。一方的な思い込みとか押し付けも感じます。全体的に誇張が大きい。
 主人公である古賀研人は、病死した父親の指示で「アイスキャンディで汚した本」→「化学精義(上)」を手にとります。父親が残した黒い小型のノートパソコンが謎を解く鍵になります。彼は父の遺志を継いで1か月以内に難病を治癒させることができる新薬を創ることに没頭しはじめます。協力者が韓国人留学生李正勲(イ・ジョンフン)です。少しずつ秘密が明らかにされていきますが、これから読む人のためにここには書けません。294ページ付近で、病死後火葬された研人の父親は実は生きていて息子に指示を出しているのではないかとピンときました。(当たるかどうかはこれからの楽しみです。父親は姿を消しただけなのかもしれない。)
 物語を展開させていく人物たちです。ナイジェル・ピアース(人類学者)、坂井友里と恵麻平成8年11月4日生、6才小林舞花、バーンズアメリカ合衆国大統領、武器はAK47と狩猟用ショットガン、パピーとヌース(アキリ)、国防総省勤務先ペンタゴンのルーベンス。
 父から息子へのメッセージがあります。事象は現実世界からは遠い。李の言葉として「情(じょん)」があります。人と人、人と物の距離です。韓国人は日本人よりも二者の距離が近い。「ハインズマンリポート」には全世界全面核戦争の未来予測記事が登載されています。生き残ったとしても長期的には、だれも生き残れない。地球は廃土と化す。人類は絶滅する。
(読了後)
 作者はすさまじい労力をこの作品に継ぎこみました。よくできたお話です。
 希少な難病を治す特効薬を創ることが目標のひとつです。ギフト1=作動薬、ギフト2=アロスティク薬となっています。薬学のことが多種記載されています。人命を救うことが命題ですが、利潤につながらない薬の研究はあとまわしにされるという現実が突きつけられています。
 「進化」に関する柱があります。生物は進化すると体格が小型化する反面頭脳部分は大きくなる。人類が言うところの超能力が備わる。進化に至るまでの過去として共食い(戦争)がある。600万人が犠牲になったジェノサイド(大量虐殺)としてユダヤ人虐殺が紹介されます。人間とは自分の仲間以外を排除する性質をもった生物なのです。
 1977年に「ハインズマンリポート」を発表したハインズマン博士の未来予想図には説得力があります。米国は自由主義を完成させるために独裁者を産む法体系を創造してしまった。
 「プレデター」という言葉の意味がわかりませんでした。調べたら「他の生物を食べて生存を維持する生物」のような意味合いでした。
 後半の戦闘シーンは、まるで別の小説を読んでいるようでした。小説というよりも映画のスクリーンをながめているようです。とはいえ内容の展開に違和感はありません。迫力ある画面でした。
 心に残った表現を展開の順番に列記して終わります。
 (壁にぶちあたったとき)先入観を捨てて何が起こったのかをよく観る。
 (研人に対して父親が)いつかアメリカ人がおまえをたずねてくる。
 50億年後、太陽は燃え尽きる。数十万年後Y染色体は消滅する。人類も地球も消滅する。
 全世界で十万人の子供の命を救える。(鏡の部分として、現在の人類の人口は70億人で極端に少ない人数の命を救う薬という位置づけがあります。利潤を生む薬ではないということです。ただし、薬は癌撲滅の薬に転化する可能性をもっています。)
 (財閥の跡継ぎを放棄したピアーズが)「あの世界は汚すぎる。」
 ヌースの意図を理解し正しい負け方を選択しなければならない。
 人間なんかに生まれなければよかった。
 緊急発進によって戦闘機の編隊はおびきだされたのだ。
 誰も手をつけない希少病がターゲットだ。
 作者は書き足りなかったと思う。もう100ページのスペースが欲しかったに違いない。


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