2014年03月09日

いとみち 越谷オサム

いとみち 越谷オサム 新潮文庫

 「いとみち」とは、津軽三味線を弾くと左指にできる三味線の糸の跡(溝)です。主人公相馬いと16歳高校1年生女子の名前の由来でもあります。昔、三味線の糸が絹だった頃、糸が切れないようにと願いながら強く弾いていたという伝えばなしが紹介されます。
 青森県には旅行で2度行ったことがあります。小説に登場する岩木山、八甲田山、青森市、五所川原市、浅虫温泉、三内丸山遺跡(さんないまるやまいせき。縄文時代)などに立ち寄ったので、物語を身近に感じながら読み進めました。
 津軽育ちで津軽弁がきつい主人公のいとは、人見知りを克服するために青森市内のメイド喫茶でアルバイトを始めました。「いらっしゃいませ、ご主人さま」あるいは「いらっしゃいませ、お嬢さま」の世界です。なかなか面白い設定です。メイド喫茶だからといって、お色気路線ではありません。喫茶店のウェイトレスがコスプレでメイド服を着ているだけです。ふつうのカフェというぐあいです。
 登場人物たちがまるで生きているようでした。昨年この作家さんの映画「陽だまりの彼女」を観たことがこの小説を読むきっかけでした。映画もなかなか良かった。
 この小説は、お涙ちょうだいの物語です。そこに魅力があります。後半が読み手の予想通りに運ぶので、ゆるさを感じるのですが、締めが良かった。
 会社・商店経営の話が出てきます。従業員を人として扱う店が少ないという文節が心に響きました。誠実でやさしくて従業員思いの店長はあの人しかいないという表現にも胸を打たれました。
 その他の感想として、主人公の風貌設定が、イメージと合いませんでした。小説内で、いとはかわいらしい姿ですが、津軽弁のきつさほかから、小太り、丸顔、ショートカット、足も太い、ごっつい気がするのです。小説では、細い、小さい、長い髪でした。
 旅したとき、津軽にある太宰治生家近くのおみやげ店で、地元女子高校生ふたりから観光に関するアンケートを受けたことを思い出しました。ふたりは、きれいな標準語でした。ですから、この小説を読んだ人が、津軽の女子高校生はなまりが強いと誤解されないことを申し添えて終わります。


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