2014年01月30日

教場 長岡弘樹

教場 長岡弘樹 小学館

 教場とは、警察学校を指します。この点で、教師と生徒の関わりを描く学校物語です。ただし、内容は重苦しい。学校内で犯罪が発生する。犯人は警察官である複数の生徒たちです。内戦模様が表現されています。突き詰めれば、ひとりの人間は善と悪の両面をもっているという人間探求の考察に至ります。
 警察はファミリー企業という解釈をもっています。親類縁者の集まりです。物語の中は、純白の世界ではありません。いじめもあれば、しごきもある。当然体罰もある。
 どういった人たちがこの小説を読むのだろう。警察関係者もいるでしょう。警察学校時代をなつかしむ内容とは思えません。警察関係者以外の読者が読んで、警察官の不正を責めて心地良い気分になるとも思えません。ことに第三話「蟻穴(ぎけつ。アリの穴)は後味が良くありません。第六話までありますが全話の関連性は弱い。民間企業経由の生徒を差別したり、親友は敵という位置づけをしたり、まずもって、警察学校は、できない生徒をふるい落とすところ、つまり退校届を書かせるところという定義が卑屈です。厳しさが愛情にまで届いているかというと微妙です。風間公親(かざまきみちか)係長の個性も設定しきれていません。彼の冷徹さに心は揺さぶられない。
 お話は、アイデアの列挙です。全体を流れる筋立てがありません。書き下ろしで連続性をもつ作品の創作にあたるべきでしょう。
 現場至上主義、職務質問の重要性、制服職場の特殊性はよく伝わってきました。

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