2013年12月10日

きいろいゾウ 西加奈子

きいろいゾウ 西加奈子 小学館文庫

 読み終えてみて、読後感は爽快さが残るのですが、何が書いてあったのかがわからないということが正直なところです。夫婦愛とか人間愛(人類愛)をしみじみと謳い(うたい。たたえる)あげた作品だと思うのです。
 タイトルからインド象のふるさとインドで生活する病弱な女性(余命あと1年とか)をイメージしたのですが、ゾウはアフリカゾウで、どうも生き物のゾウではなく、天使を表わすようです。舞台は国内で、田舎と東京でした。
 名前の付け方がこっていて面白い。主役の若い夫婦は、むこさんとつまさんです。武辜歩(むこあゆむ)と妻利愛子です。むこさんは小説家で昔ナイ姉ちゃんという叔母さんが首吊り自殺しています。つまさんは主婦ですが、心臓が小さくて病弱という設定でした。
 他の登場人物として、犬のカンユ(後半でメスと判明)、アレチ(荒地マサル)、セイカ、足利盛雄、下竹強53才(漫才師つよし・よわしのかたわれ)、その相方、栄田栄太、平木直子、駒井、駒井さんの孫で、東京から来た不登校の星野大地9才小学校3年生、洋子、犬のメガデス(他にユメという名もあり)、三崎など、記録した限りはそれぐらい。
 きいろいゾウの童話のような文章が各章の頭にあります。つまの語りに続いて、むこの日記という形式が基本です。文脈から考えたこと、感じたこと、想像したことは次のとおりです。不思議な始まりです。お風呂の浴槽に外からカニが入ったようです。昔九州で暮らしていた頃、自宅横の崖地の沢に沢蟹がたくさんいたことを思い出しました。ありえないことはありません。
 時間がゆったりと過ぎる田舎暮らし。認知症の高齢者、犬、作物に囲まれた周囲の雰囲気。夜はたぶん午後8時から9時頃には寝る。
 いたわる気持ちのない人は、他の人を攻撃するばかりだから、やがて人は離れていき孤立する。
 だれかと出会うことから、しあわせになるし、ふしあわせになる。
 登場人物が次から次へと出てきます。ぼけた人との会話もあり、かみあわない会話がわかりにくさになっています。つながりがむずかしい。
 「時間」について考える本です。
 知的障害者、社会的弱者の世界です。入院中のベッドの中で、女の子が考えたきいろいゾウのお話です。
むこさんがつまさんを看護・介護しているようでもあります。
 作者はオプティという軽自動車に愛着をもっています。
 悲しみの固まりの文章が後半続きました。
 消化不良でしたが、以下、気に入った表現部分です。
 強くても弱くても人間だという部分。同じ人間でも年齢時期で強くも弱くもなります。
 からだは入れ物の役割で、なかみはこれから入れる。
 あの街(東京)では体がもたない。
 日記を捨てようと思う。
 なお、映画は観ていません。

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