2013年09月26日

わたしをみつけて 中脇初枝

わたしをみつけて 中脇初枝 ポプラ社

 小説全体を包む雰囲気は「祈り」です。正義を下地においた力強い意志があります。読んでいる途中、幾度か涙しました。いい話でした。
 前半は詩のようです。ひんぱんに場面が変化します。個人病院である桜ヶ丘病院で准看護師として働いている32才山本弥生は自身が捨て子であったという秘密を抱えています。乳児院2年、児童養護施設で高校卒業まで、看護学校の寮、今は一間のアパートで暮らしています。これまでの人生の途中で、里親に預けられていたこともあります。
 中盤までの内容は暗い。この作家さんの得意分野である「虐待」に関する記述があります。また、正看護婦と准看護婦との差に固執があります。
 院長の誤診については、書いてよかったのだろうかと不安です。
 棄児(きじ、捨て子)であったことは、隠さなくてもいい。本人のせいではない。
 ラッキー(犬、ラブラドールレトリバー雌)を飼う菊地勇66才と新任の藤堂看護師長の存在が、物語に豊かさを広げ、かつ読み手の気持ちを引き締めてくれます。
 キーワードは「いい子」を演じるであり、津軽弁「へば(じゃあ、またね)」です。
 印象に残った部分を書き出して終わります。
 心の疲れと体の疲れは一緒
 九九の練習
 奉公先で、主人と奥さんのごはん茶わんが、奉公人たちの茶わんの半分の大きさしかなかった。
 (捨てた)親を探してはいけない。
 見えないものは見えなくていい。
 どうやったらそんなふうに思えるのだろう。
 看護師長はなぜ看護師になったのか。
 (保証人を依頼されて)光栄です。


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