2013年08月08日

いつやるか?今でしょ! 林修

いつやるか?今でしょ! 林修 宝島社

 自費出版本のような装丁(本のつくり)です。3時間から4時間で読める本です。流行語にもなったタイトルの文節は、内容との関連、一致性は低く、タイトルだけがひとり歩きしている感じがしました。案外、本人は、それがイヤかもしれません。
 当初、読者の対象者は大学受験生だったでしょう。結果的には、二十代前半の若者たちが読者となっていると予測します。最後半部にある記述は熱い。失敗続きの読者の気持ちをいやしつつ、強く励ましています。
 読み始めでは、机上(きじょう)のペーパーテスト解答能力に秀でた人物が、就職後に会社で精神的につぶれていく様子が目に浮かびました。理由は、社会に出るまでに、生活の術(すべ)を学びそこねた。成人するまでの人生において、衣食住の体験と知識と知恵を得る時間が設けられていなかった。
 前半で、「因果律」という言葉が出てきます。原因と結果の関連付けです。この本は、物事の考え方を伝授してくれる助言書です。若干賛同できかねる部分もありますが理解しやすい内容です。
 「対比」による論理展開、そして、若者への「一人暮らしの勧め」があります。作者自身の自己を愛する気持ちが強い部分が表面に出てきますが、気になるほどではありません。
 共感したのは、「逆算」方式でした。わたし自身、新聞はうしろから読みますし、本もうしろから読むこともあります。「逆転」と「順番」の発想は、1セットだと思っています。
 以下、記憶にとどめた表現の要旨です。
 古代ギリシャの人々がいっせいに発した「さあ、行進しよう!」が、この本のタイトル言葉の起源
 日常を思考訓練の場所にする(歩きながらでも考える)
 女性から「生理的に受けつけない」と言われたら<終わり>
 「うちの母さんだったら…」
 推理小説の「現場・証拠・犯人逮捕」は、「受験問題の傍線部・空欄-根拠-正解」と同じ
 なんとなくさびしいからメールしてみる。群れる行為に中身なし。
 ゲームは時間の無駄。読書をしたほうがいい。
 姓名で、読めない名前の付いた生徒の親は、考えが浅い。
 「この人が言うから、聞こう」
 話す順番として、頭括型(結論が先、理由があと)、尾括型(理由が先、結論があと)
 男も女も、最初は外見で選ぶのだから、お互いに文句は言えない。
 ギャンブル(とくに麻雀をとおして「流れをとらえる眼」を養う。)
 人間の視界・聴覚の範囲は動物と比較して狭い。「心の眼で観る」
 勝ちっぱなしはありえない。
 (若い頃は)とにかく走ってみる。
 負けから学ぶ。

 最後まで読んで、作者が東京大学卒であることを知りました。東京にある予備校の講師かと思いこんでいましたが、大阪で教えることがメインなように受けとりました。
 筆者は最後に現代若者たちに向けて「萎縮するな!」と檄(げき、強い励まし)をとばしています。そして、自分は、どれほどの人間でもないと自覚していることをさらしておられます。以前、東京大学を見物したことがあります。東大生はこんなにたくさんいるのかとびっくりしました。

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