2013年06月23日

宇宙へ「出張」してきます 古川聡 2013課題図書

宇宙へ「出張」してきます 古川聡 毎日新聞社 2013課題図書

 一生、宇宙へ行くことはない。行けるはずもない。旅行は安くて、近くて、楽しめればいい。安・近・楽がベター(最善)で、何もしないのが最高のぜいたく。冷えた気持ちでこの本を読み始めました。ところが、読み始めると、うきうきした気分になりました。読みやすくおもしろい。
 宇宙船の着陸経過は迫力があります。生身の人間の体を試した(ためした)壮大な実験です。宇宙飛行士は、長期間宇宙に滞在することによって体が「宇宙人」になるのです。宇宙人が、地球に帰還したとき、体は地球の環境、ことに引力に適応できなくなり、思うように体を動かせなくなるのです。初めて知りました。新鮮です。本物の宇宙人は、地球上では生存できないと判断しました。リハビリが最優先なのに、帰還後まもなくからのテレビ出演は酷です。リハビリ風景からは、人間の体にある器官の協調作用は神がかりだと感心しました。
 2011年6月10日から同年11月22日まで、165日間、宇宙ステーションに滞在されました。帰還するまで命がけです。虚構ではない事実があります。
 宇宙ステーションが、ジャンボジェット機の1.5倍もあるとは予想もしませんでした。もっと小さくて、狭苦しいところだと勘違いしていました。
 昔、ソビエト連邦とアメリカ合衆国は冷戦を続けていました。ソ連のソユーズ、アメリカのアポロ、宇宙開発は軍事目的です。宇宙から他国を偵察します。過去に対立していた国々が協力して、平和利用のために、宇宙ステーションで一緒に活動することは有意義です。
 作者は医師であるので、内臓や骨格の変化などの記述が詳しい。窓を開けることがない空間での生活は苦しい。メンタル面の記述が少ないことが物足りませんでした。うつ的になりそうな気がします。
 本人以外の人が書いた文章は読みませんでした。「純」が「純」でなくなるからです。完璧な網羅は必要ありません。
 90分おきに日の出と日没が訪れる。最初は美しい地球の球体もやがて飽きるような気がします。
 以下、気に入った文節とか表現です。
 (着陸時の宇宙船は火の玉となっているのに)揺れもせず安定して大気圏を突き抜けていく。同じく、パラシュートを開くとものすごい揺れで「まるでカプセルに乗ってナイアガラの滝を落っこちていくようだ」
 ISS(国際宇宙ステーション)は、米国、ロシア、日本、カナダ、ヨーロッパ宇宙機関15か国が協力して上空400kmに建設した。
 無重力環境で暮らしていると体型が変化する。(体が締まる。しわがなくなって若返る。宇宙ダイエット)<たぶん、すでに地上にて同じ原理で病気治療とかダイエット機器があるのだろう>
 宇宙でいびきをかきますか。(答はかきにくい。重力がないので舌根がおちない。立って寝ている写真があってびっくりしました。無重力ですから不思議な現象ではないのです)
 トイレは掃除機で吸う方式
 窓の外には「生きている地球」。海の青、雲の白、大地の茶色、森林の緑、富士山の雪、花火のような雷、二日間かけてドッキングする。
 「宇宙に着たんだなぁ」
 「宇宙に慣れた。宇宙人になったんだなぁ」
 宇宙服を着ないで、宇宙に出たら、体液が沸騰して蒸発して、たちまちミイラになる。(原理はよくわかりません)。宇宙は、昼は100℃以上、夜はマイナス100℃以下。宇宙放射線がたっぷり。
 やるべきことをやるだけだし、なるようにしかならない。
 古川さんからのメッセージ「今日できることを積み重ねていけば、明日はきっと今日よりよくなる」
 宇宙飛行士候補に選ばれてから宇宙へ行くまで約12年かかった。
 今、ぼくはヒューストンの自宅でこの文章を書いている。

 <これで、2013課題図書全部を読み、全部の読書感想文を書きました。何冊かは再読してみます>

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この記事へのコメント
僕もこの本をよみました。とても面白くドキドキわくわくがたまりませんw
Posted by 宇宙飛行士? at 2013年08月26日 17:25
ありがとう(^.^)
感想にも書きましたが、読む前は読む気がありませんでした。
読んだら読んで良かった1冊になりました。
Posted by 熊太郎熊太郎 at 2013年08月26日 20:56
すごくいいですね
Posted by cola at 2013年08月29日 22:35
ありがとう
Posted by 熊太郎熊太郎 at 2013年08月30日 21:09
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