2013年06月08日

くりぃむパン 濱野京子 くもん出版 2013課題図書

くりぃむパン 濱野京子 くもん出版 2013課題図書

 94ページにある若竹小学校4年1組在籍黒川香里の言葉「生きるってせつないね」がこの作品の気持ちを凝縮したものです。
 課題図書食べ物3冊の主人公たちはいずれも片親、母子家庭、父子家庭でした。「お菓子な学校」の小学生フランス人ジャコことジャックは母子家庭。淋しさをお菓子づくりで克服します。「オムレツ屋へようこそ!」の小学校6年生小林尚子は母子家庭ですが、母親は旅まわりのライター(作家)で、一緒には住んでいません。母方祖母の家に預けられています。いとこであるふたごの兄弟が同級生として同居しています。小林尚子は子育てをしてくれない母親を許せない。「くりぃむパン」の本山未果は父子家庭で、遠縁の親戚黒川香里の家で居候(いそうろう)を始めます。母親は病死しています。父親は妻を病気で失い、勤めていた会社は倒産し、派遣社員として愛知県や神奈川県で働き、現在は栃木県で暮らしています。父も娘もひとりぼっちです。家族がいるようで、家族がいません。最近はひとり家族のこどもたちが増加していると考えました。課題図書のもう1冊「チャーシューの月」の小学校1年生明希は両親が離婚して父子家庭を経て、施設に入所しています。実母は再婚しようとしています。つらいことばかりです。
 「くりぃむパン」の本山未果はひとり家族で、居候をさせてもらっている家の同級生黒川香里の家族は、9人5世代が暮らす大家族です。ふたりの対比とか比較が始まります。女子につきものの嫉妬(しっと)といじわるがあります。なんだろう。今、ピンときました。アンデルセン物語にある「シンデレラ姫」を思いつきました。「くりぃむパン」の黒川香里は本山未果の生活をみながら心の成長をとげていきます。人を徹底的に叩くものではありません。
 お金がないことは哀しい(かなしい)。困ったときはお互いさまで助けあうと言いますが、お金は別です。基本は労働に対する報酬であるし、貯蓄です。学校の児童は本山未果を「守銭奴(しゅせんんど、ケチ、お金集めがすべての人)」と攻撃するけれど、彼女に非はありません。
 おばあちゃんとの60年来の親友の記述が出てきます。「ともだち」、心の病気にならずにすむための「お薬」です。いくらつらいことがあっても、職場にひとりの話し相手がいれば、仕事を続けることができます。学校も同様でしょう。勉強も運動もできなくても、通う(かよう)ことができます。
 対立しても幸せにはなれません。対立相手に勝利してもやっぱり幸せにはなれません。
 本山未果は、勉強ができて、運動もできて、背が高くて、スタイルがよくて、人あたりもいい。外見が人間性のすべてではありません。美人でもガラの悪い女子はたくさんいます。見た目は気にしなくていい。男女の結びつきは「相性」そして「縁(えん)」です。

この記事へのトラックバックURL

http://kumataro.mediacat-blog.jp/t91267
※このエントリーではブログ管理者の設定により、ブログ管理者に承認されるまでコメントは反映されません
上の画像に書かれている文字を入力して下さい