2013年05月31日

メガネをかけたら くすのきしげのり 2013課題図書

メガネをかけたら くすのき しげのり 小学館 2013課題図書

 理屈っぽい感想になってしまいます。
 第一印象です。女子がメガネをかけたらかっこわるくなるからメガネをかけたくないという発想は、30年以上前のものだと思うのです。ヒント・アイデアが古い。
 次に、メガネをかけることは、病気治療が目的です。近視の解消です。使用しなければならないという義務です。ぼんやりとしか見えないものがはっきりと見えるようになるのです。
 いやがる女の子のために先生たちみんながメガネをかけて女の子や他の児童にその姿を見せて励ますという手法は、甘やかしです。
 手厳しい冒頭記述になってしまいました。今度は、女の子の心に光をあててみます。
 素材は「メガネ」ですが、趣旨を伝えるためなら他の素材でもかまいません。趣旨とは、こどもからおとなへと成長する女性の成長過程に芽生える自立心です。比較して男子は遅く同年齢の場合幼い。
 女の子のメガネを選んだのは、女の子の母親です。女の子自身が選ぶべきですし、女の子は口ではイヤと言っていても自分で選びたかったのです。「選択の自由」という権利がほしかったのです。女子の心理は複雑です。いつも両方向の気持ちが入り混じっています。
 女の子は、おとなの指示に素直に従いたくないのです。女の子にメガネをかけさせるための説得する経過として、おとなたちは条件闘争にもちこみます。「おりこうにみえる」とおだてます。「かわいくみえます」とほめます。「(メガネが)軽い」と機能を説明します。対して、女の子は実現不可能な提案をし続けます。メガネをかけたら、本当に頭が良くなるならかけてもいい。同様に、ほんとうにかわいくなるなら、ちいさなばいきんが見えるなら(顕微鏡けんびきょう)、宇宙人が見えるなら、空を飛べるなら。かなわぬ要望です。
 妥協する。妥協ができないと社会生活を生き抜くことはむずかしくなります。人間にはふたつのタイプがあります。変化を平気で受け入れて楽しむタイプと、なかなか変化しないタイプです。どちらがいいともわるいともいえません。ひとりだけメガネをかけると目立つからいやだというタイプと、目立ちたいからメガネをかけうるというタイプもあります。どちらのタイプの人間にもなれる可能性を人間はもっています。たいていの日本人はみんながやるならわたしもやる。日本人の性質です。外国人はちがいます。人は人、自分は自分です。国ができてきた歴史が違うからだと思います。
 集団の中にある異質な性質のものを差別しないというメッセージも含まれている物語です。
 対比の絵が上手です。ことに後半半分のメガネをかけたひとたちは美人でキラキラと輝いていてすてきです。

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