2013年05月25日

ゾウの森とポテトチップス 横塚眞己人 2013課題図書

ゾウの森とポテトチップス 横塚眞己人(よこつかまこと) そうえん社 2013課題図書

 写真絵本です。強いメッセージがこめられています。
 読書は、写真が先か、文章が先かという製作にあたっての手法を推測するところから始まりました。写真撮影をしていたら事実に気づいた。あるいは、事実を解明するために写真を撮影に行った。
 次に、タイトルを読んで、ゾウとポテトチップスの関連は何かを考えます。答は出てきません。
 ボルネオ島で、食料油のもとになるパーム油の栽培がなされている。パーム油はポテトチップスをはじめ、インスタント食品、ファストフードなどに使用されている。パーム油はアブラヤシの果実からとれる。同島は、野生の樹木を伐採して、アブラヤシを大量に植樹して栽培している。これをプランテーション(大規模農園)という。金にならない野生の木を除去して金になる木を植える。農地拡大の結果として森は減少した。
 蛇行する幅の広い泥水色をしたキナバタン川の流域にある森には貴重な多種多様の野生生物が生息している。農地拡大によって野生動物・昆虫の棲む場所が狭い範囲内になってきているという警告があります。
 いくつかの課題が提示されています。
「自然環境を守り動物を保護する」
 人間の欲望を満たすために野生動物が犠牲になっている。
「共存をめざす」
 食料がなくなったゾウの群れは、あぶないキナバタン川を渡って対岸の森をめざす。非力な小ゾウはおぼれそうになる。対策として、ゾウのために川に橋をかける。くわえて、保護区域を設定することも必要でしょう。それは、森をプランテーションのために開発してはいけない区域です。
「知る」
 最初の一歩は知ることから始まる。快適な暮らしは、だれかの暮らしにくい環境のうえに成立していることに気づく。名も知らぬだれかに感謝する気持ちを忘れない。
 写真絵本のはじめあたりでは、野生のゾウが、まるで飼い犬のようにたくさんいます。ゾウにも家族がいます。ゾウの母親は、川で溺れそうになった小ゾウを自分の背中にのせて対岸まで泳ぎ着きます。親としての子育ての責任を果たします。
 食料がなくなっておなかをすかしたゾウは、プランテーションの中に迷いこんできます。人間はゾウに灯油をかけて火をつけてやけどをおわせて追い払います。ゾウはもう二度とそこへはこないのか、それとも大集団を組織して報復のために再び同地を訪れるのかはわかりません。やけどしたゾウを撮影した作者は、大きなショックをうけています。
 書中のゾウたちの行動に、人間を攻撃する様子はありません。同地に住む住民はゾウを嫌ってはいません。プランテーションを経営する会社と社員は、ボルネオの人ではないのかもしれません。
 こどもたちはおとなになるにつれて、選択をする時期がきます。世の中はたいてい二者択一式です。この本の場合、産業振興によって島民の生活保障をするためにプランテーションの拡大策を図る側につく人間になるのか、あるいは、自然環境保護を優先するのか。行き着く先は、両者の妥協点となる「共存」です。地球は人間だけのものではないと書中にあります。


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