2013年03月08日

ふがいない僕は空を見た 窪美澄

ふがいない僕は空を見た 窪美澄 新潮文庫

 同作者、本屋大賞候補作「晴天の迷いクジラ」を読んで興味をもち読んでみました。映画化されていますが映画は観ていません。
 5編の短編に関連性があります。さいとう助産院を中心にすえて、「命」について考える小説でした。書き出しは角田光代作品に似て、倒錯した性描写から始まります。しかし、その意味は作品の主題に大きな影響は与えません。不倫、児童性的虐待、コスプレ、描写されているほどの低俗な行為までに至らなくとも結果として、親子関係、夫婦関係が破綻に至ることは同じです。「晴天の迷いクジラ」と同様に「生きることの継続」がテーマです。人間は、どんな状況に置かれても気持ちを強くもって生きていくしかないのです。
 登場人物だけを紹介します。 
 斉藤卓巳(15歳、高校1年生の1学期終了から始まります。27歳の不妊主婦とアニメのコスプレをしながらエッチをして、その動画をネット配信され、写真映像を学校、ご近所にばらまかれ、ひきこもりになります。)
 コスプレ時のなまえは「あんず」。本名「岡本里美」、斉藤卓巳のお相手です。夫は製薬会社勤務岡本慶一郎。妻里美は、妊娠できないことから夫の母親マチコさんから強いプレッシャーを受けています。でも、夫も精子がうすいのです。
 松永七菜(女子高生。斉藤卓巳を好き。彼と寝たい。兄は優秀な大学生だったけれど、宗教団体入信でおかしくなった。)
 斉藤卓巳のクラスメート福田。セイタカアワダチソウのように背が高い。認知症の祖母とふたり暮らし。コンビニ店員をしている。
 田岡。コンビニ店員。元塾講師。ちいさな男の子が好き。
 みっちゃん。助産師なりたて。先生。助産師。斉藤卓巳の母親。夫には逃げられた。
 以下、印象に残った記述です。
 (お産が済んで)またひとり人間がふえた。
 「水分神社」(ミクマリジンジャと読む)
 永遠に続くようなマチコさんの会話(シュウトメであるマチコさんの嫁に対する話)
 マチコさんの物語。マチコさんが主役で嫁は悪役
 不妊の変態主婦
 オセロのコマが反転する時がくる。
 読んでいて、うすっぺらな生活と思う。女子高生の頭の中はこんなにも幼いのかとも思う。がまんしないで、やりたいことをやると神さまからばつがおりると思う。
 言い古された言葉ですが、「時が解決してくれる」。昔をふりかえって後悔するけれど、その当時のことを思い出すと、そうするしかなかったという結論が導き出されます。長い目で見て欲しい。人生の後半にしあわせな気分になれればいい。

この記事へのトラックバックURL

http://kumataro.mediacat-blog.jp/t88286
※このエントリーではブログ管理者の設定により、ブログ管理者に承認されるまでコメントは反映されません
上の画像に書かれている文字を入力して下さい