2013年02月24日

とんび 重松清

とんび 重松清 角川書店

 「夢」の物語でした。こうあったらと願うけれど、かなわない夢です。評価は賛否両論で分かれるでしょう。
 主人公ヤスさんは、市川安男さんで、彼が28歳のときに生まれた息子が市川旭さんです。奥さんは旭さんが4歳のときに事故死します。
 昭和時代の面影です。ヤスさんは、「北の国から」の田中邦衛(くにえ)さんが演じた黒板五郎さんであり、まんが「愛がゆく」小山ゆう作の北条松五郎さんです。
 年功序列とか学歴社会とか消えていった構成要素があります。この作品は人情物語です。時代の流れによって変わっていくものはあるけれど、それでも変えてはならない人間の「芯(しん)」について書かれています。
 書き方は同作者の「疾走」で神が語る方式をとってあります。そこに詩や歌謡曲を聞くようなリズムが加えてあります。とんびが鷹を産んだという例え(たとえ)なのでしょうが、旭さんがずばぬけて優秀というわけでもありません。岡山県が舞台なのは、作者の自叙伝という要素もあるのでしょう。
 作者はとても狭い世界を長編として書いています。ヤスさんと彼を取り巻く人たちの個性を好きか嫌いかは、「昭和」vs「平成」の対立となるのでしょう。物語の流れにはあまり抑揚がありません。山場は少ない。淡々とヤスさんの気持ちを中心に進んでいきます。こういう親子は少なくなりました。ヤスさんは、肉体労働者でかつどうもアル中のようです。べたべたした親子関係があります。
現代では、父親は朝早くから夜遅くまで働いています。さらに母親も働いています。もうひとつは世の中が便利になりました。携帯電話、自家用車、新幹線、長距離バスなどで、都会と田舎の距離は縮まりました。30年前に体験した春先のプラットホームでの物悲しい親子の別れは減りました。
 アキラさんの結婚話ですが、わたしは相手の由美さんに不満があります。彼女は結婚生活に向かない人です。だからわたしには、ヤスさんの気持ちがよく伝わってきました。何でもかんでもOKという今の時代にはついていけない自分がいます。
 子育てで間違いはなんぼでもあるという言葉には慰められます。


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