2013年01月14日

泳ぐのに、安全でも適切でもありません 江國香織

泳ぐのに、安全でも適切でもありません 江國香織 集英社文庫

 短編集です。
「泳ぐのに、安全でも適切でもありません」夜遅くまで働いたあとの帰宅途中の電車の中で読みました。書き出しはうまい。あざやかです。本から顔をあげると夜の街を走りぬける新幹線が目に入りました。
「うんとお腹をすかせてきてね」鹿料理には、奈良公園の鹿を思い浮かべました。先日「鹿男あをによし」万城目学著を読んだばかりでもあります。愛し合うことに没頭する男女に食べられてしまう鹿やら他の動物やらが哀れな気持ちになりました。
「サマーブランケット」この短編集には、平凡な恋愛話はないのですね。
「りんご追分」言い回しがうまい。詩のようです。心に満たされないものをもった女性がいます。飲み屋であるバーの空間は、無法地帯と感じました。
「うしなう」ボウリング場風景の描写から、作者の孤独が伝わってきます。
「ジェーン」若い高校生さんたちは、なぜ心理学に強い興味をもつのか。118ページ付近はなぜかしら小学生の作文になっています。遠い過去の作品を引っ張り出してきたのでしょうか。
「動物園」「犬小屋」標準化できない人間たちがいます。彼らは法令の外で自己責任のもとに暮らしています。
「十日間の死」作者と主人公は誰に向かって語っているのだろうか。女性には、男性に頼らずに自立してほしい。
「愛しいひとが、もうすぐここにやってくる」ワンパターン化した一定の筋書きに登場人物をあてはめながら自分の個性を出していくという手法で各短編が作成されています。個性とは人間の本能である性欲となっています。前の作品で女性には自立して欲しいと描いたのですが、深く考えると、全体の作品をとおして、登場人物の彼女たちは彼女たちなりに自立しているのです。


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