2012年12月17日

パイロットフィッシュ 大崎善生

パイロットフィッシュ 大崎善生 角川文庫

 パイロットフィッシュというのは魚です。理想的な環境の水槽をつくるため最初に入れられるお魚で、環境が整うと処分されてしまう。捨てられる、主役となる魚の餌にされる。パイロットフィッシュを人間に置き換えた物語が本作品の位置付けです。
 カメラメーカーの営業マン森本さん41歳がまず登場する。どうもアル中らしい。同い年の山崎さんがこの物語を引っ張っていく。エロマンガ出版社勤務で妻と小3の健太君と5歳の綾子さんの父親でもある。そこへ、19年前に同棲していた由希子の思い出が挿入されていく。
 誰かが主役のために犠牲になっていく。虚無感が広がる。登場人物については、根っこがない。自分に都合のいい理屈をつくって自分をかばう行為は、やがて自分を転落させていくことになる。
 物語には人間関係がない。家族とも友人とも同僚とも距離を置いて孤独な世界に身を置く人が増えている。
 ぼくと彼女とワンちゃんとアル中と精神病とセックスと夢も希望もない生活と、使い捨ての魚くん。さらに虐待もある。相手の名前も住所も連絡先も知らなかった。妄想の物語ですが12刷とよく売れている。


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