2012年12月06日

勇気ってなんだろう 江川紹子

勇気ってなんだろう 江川紹子 岩波ジュニア文庫

 子どもさん向けとしてはむずかしい内容です。読む前は、こどもさんたちに語りかけるエッセイ形式のものと思っていました。自分の意志とか良心をつらぬく生き方をしてきた人たちへの取材結果を文章にまとめたものです。5人の人たちと、最後はイスラエルの人たちとなっています。いずれも一般社会の大衆からみれば、標準的な生活の枠の外で生きることを実行した人たちです。孤立とか孤独という厳しい環境を体験されています。
「スポンサーの期待を裏切ってエベレスト登頂を途中で2回断念した登山家」断念する勇気に始まり、中国支配のチベット問題まで進み言論の自由を訴えます。
「公設秘書の給与を流用して収監された元国会議員」うーむとうなるしかない。作者が犯罪者をかばうのはなぜか。作者は、再起可能な社会を掲げています。
「内部から追い出された拉致問題元事務局長」朝鮮半島の人は日本人をうらんでいる。日本人には加害者意識が無い。親族を取り戻すまでの作業は、分厚い壁を少しずつ削っていくようです。
「裏金を内部告発して干された警察官」家族は悲惨な目にあいました。彼のようには生きることはできない。日本社会は八百長で成り立っていたし、八百長で経済成長してきたことがわかります。
「イラクで誘拐され日本人から自己責任と猛攻撃を受けた女性」島国暮らしの日本人は、井の中の蛙(井戸の中のかえる)で、大海(広い世界)を知らない。なぜイラクなのか。27歳のとき友人に誘われて縁があったから。日本は、戦争を仕掛けた過去の歴史を踏まえて、紛争時に武力行使に賛成してはいけない立場にあることがわかります。
「パレスチナの人たちを追い出して建国したイスラエルの人々」イスラエルの政策に反対するイスラエル人たちです。書中にある、圧倒的な権力をもつと人の倫理観は崩壊する。人権侵害をなんとも感じなくなる。間違っているのは自分のほう。もしかしたら間違っているのは自分のほうじゃないかと気づけるか。歳月が経過していく中の世代交代で、社会は変化していく。古い世代の考えは間違ってはいなかったが、現代に合致しなくなってきた。それでも地球上に人類が存在する限り争いは絶えない。


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