2012年11月18日

のぼうの城 映画館と小説

のぼうの城 映画館と小説

 はじめに小説の感想を記します。読んだのはもうずいぶん前です。記録を見ると2009年の年明けぐらいです。映画では津波を思い出させる場面があり、映画は1年延期して公開されています。いずれにしても原作の映画化には時間がかかります。同作者の本で、「のぼうの城」よりも「小太郎の左腕」のほうが好みです。小太郎のほうも映画化してほしい。観に行きます。

のぼうの城 和田竜 小学館

 「のぼう」とは、「でくのぼう」の「のぼう」であり、「でくのぼう」とは、城主成田長親(ながちか)氏を指します。城の名前が「忍城(おしじょう)」、現在の埼玉県行田市(ぎょうだし)となっています。最初は、豊臣秀吉の小田原城攻めに取り掛かる場面があるので、のぼうの城は小田原城だと勘違いしました。その記述の前に備中高松城の水攻めの様子が描かれています。秀吉の豪快な水攻めに感動した石田三成は、「忍城(おしじょう)」を水攻めにしますが、大失態を演じてしまいます。なにゆえそうなったかの経過が歴史事実を基に創作されています。
 戦闘シーンの記述は、映画「レッド・クリフ」を見ているようでした。ときには、漫画が思い浮かびました。
 この物語は面白いのですが、でくのぼうである成田長親(ながちか)氏の魅力がいまひとつ足りません。性格がはっきりしないのです。英雄ではあるけれど、強く支持もできないのです。脳に障害があるのだろうかと思うような行動を感じました。物語の流れも、多勢に無勢で敵を倒しつつも最後は悲劇的な滅亡に向かっていくと予想したのですが、そうでもありませんでした。
 総じて、勝利のためには、人心をつかむことが大切と教えてくれる物語でした。


のぼうの城 映画館

 2時間半ぐらいの長時間です。お尻は痛くなりましたが退屈はしませんでした。評判の良い映画です。小説の内容とは少し違うような気がするのですが、長編を2時間枠に入れて映画化するためには、ポイントを絞って表現することになります。本作品の場合、「人心をつかむ」、庶民にやさしい君主になることです。小説よりも映画のほうが、主人公像に愛着が湧きました。
 城主成田長親役をつとめる野村さんは熱演です。能楽師の演ずる世界を堪能しました。顔を白塗りして踊る姿は、志村けんさんのようでした。面白く楽しく人をひきつける性格がよく伝わってきました。400年前の風景映像もきれいです。観客は年配の夫婦を中心ににぎわっていました。場面とバックグランドミュージックとが合わないと感じたのですが、個々人によって感覚は異なってくるでしょう。子役の少し乱暴な言葉遣いが気になりましたが、これもわたしの感じ方が硬すぎるのでしょう。(一緒に観た家族の話では、武士と百姓の身分差別をなくすためにくだけた言葉づかいのやりとりにしてあるのだろうということでした。)姫役の榮倉さんは太いような気がするのですが、武道に秀でた豪傑女性ですから役のうえでは適切でしょう。のぼうさまが姫を救ったり、突き放したりするのですが、たいしたことではありません。姫にとっては秀吉のところに行くほうが安全だし安定するしなにより出世です。戦闘シーンのとっかかりはどちらが成田軍で石田軍かがわかりにくかった。わたしの理解力が加齢とともに衰えています。見終えて物足りなさが残ります。最後が、勝ちか負けかが明瞭ではなく、あいまいなのです。それは、小説を読み終えたあとと共通する感想です。


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