2012年10月08日

日暮し 上・下 宮部みゆき

日暮し 上・下 宮部みゆき 講談社

 長かった。ひと月半ぐらいかかって読みました。江戸時代のもの言いとした文章、複雑な人間関係を紙に落として結んだり、あとからわかったのですが「ぼんくら」同著者の続編という位置付けなどから理解しながら読み進めることに時間を要しました。
 上巻はいつつのお話になっています。
「おまんま」おでこ(三太郎)は13歳。事件の解決を図っていく。だれかの霊魂がおでこにのり移っている。「三つ目がとおる」手塚治著が浮かぶ。おでこ君、君は何者なのだ。
「嫌いの虫」七夕(たなばた)の彦星・織姫のお話みたいです。作者が作者自身を慰めているような作品です。だけど心が落ち着く文章です。なにか諭(さと)されたように静かで穏(おだ)やかになれるリズムをもっています。読み進むにつれて、お恵(けい)さんがかわいそうで悲しくなってくる。
「子盗り鬼」これは現代の事件簿を江戸時代に置き換えたものです。鬼よりも怖いものは「人間」です。この作品はいい。詩の世界です。
「なけなし三昧(ざんまい)」世の中には、瞬間的につじつまのあう作り話ができる人がいるので注意しましょう。
「日暮らし」上巻の最後はやっぱり最初の話に戻るわけです。それぞれの人物が生き生きとしています。作者はなぜ江戸時代の設定で作品を制作しようとしたのだろうか。
 下巻に移ると項目は、「日暮らし(承前)」(前の文をうけて続く)と「鬼は外、福は内」のふた項目になりました。本当に入り組んでいるお話です。誰が犯人でもおかしくない。なんとでも経過と理屈をつけられる。弓之助の推理と判断になってきました。昔訪れたことがあるにぎやかな川崎大師を思い出しました。料理の場面は、江戸時代の風俗に関する書物を読んでいるようです。
 男性はお金がたくさん貯まると浮気遊びをすると決まっているわけでもあるまいが、お金がいくらたくさんあってもやさしい気持ちがなければ、家族のだれかは、がまんのあまり気が変になるし、だれかかれかは、血が半分しかつながっていないきょうだいになるし、だれかは嫌気がさして家を出て行ってしまう。結末に向かってなんだかさみしい話になってきました。(女性を殺害した犯人はだれ?)どんなトリックや心情の披露が用意されているのだろうか。
 終わりが近い。犯人のめどはつきましたが、動機がわかりません。長い物語でした。その数ページあとで、弓之助君のかっこよさに惚(ほ)れました。物語の基礎は「人情」です。今の世の中で、もっとも少なくなったもの、もっともいらないと思われているものです。


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