2012年10月07日

風林火山 井上靖

風林火山 井上靖 新潮文庫

 桶狭間の合戦で織田信長に敗れた今川家のお話から始まりました。
 武田信玄と上杉謙信の戦闘にまつわる物語です。主役は武田方の参謀である山本勘助です。彼の手法は良く言えば「知恵」悪く言えば「策略・計略」です。事実は闇の中であるので、物語は作者の空想であり、活動的な幻想です。なんとも残酷な場面が続きます。相手をだまして殺す。わたしは山本勘助のようなたくらみ上手な人間は嫌いです。彼は孤独だったでしょう。彼は剣術の使い手だと思っていましたが、どうもそうではないようです。
 権力闘争は非情です。怨み(うらみ)が復讐を生んでいきます。古府(山梨県甲府)と諏訪(長野県)が近くという記述がわたしにはピンときませんでした。そのあたりの地理にはうといわたしです。70kmぐらいのようです。
 勘助は自分の意思でいつでも闘争組織から抜けられる状況にあったと思う。それでも戦を続けて最後には戦死する道を選んだ理由は何だろう。
 女性の力は大きいのか小さいのかよくわかりません。歴史を振り返ってみると権力者となった女性もいるのですが、大半は男尊女卑で流れてきたように感じます。由布姫はなかなか根性がある人です。日本人の体質として、政略結婚、人質がわりというのはこの時代から長く続いてきたのでしょう。ただ、昔も今も亭主元気で留守がいいようです。由布姫は早死にするのだろうか。それから勘助ひとりに頼るのは組織としてどうなのだろうか。
 勘助63才、由布姫25才、川上弘美著「センセイの鞄」よりも年齢差がある。老いらくの恋か。合戦場での「引く」という行為がいい。私は「引く」ためには、強い勇気が必要と考えていたが戦略上は当然ある手法で、勝っていても「引く」ことがある。「引く」ことは珍しくない手法となっている。やはり交渉ごとは、押したり引いたりしながら少しずつ前進することがコツです。
 最強の武田騎馬隊という印象が強かったのですが、そうではなくて脆弱な(ぜいじゃく)面もあったという記述は裏話を聞かされたようでした。
 勘助の由布姫への想いは、「恋」ではなく主君への「忠誠」だということがわかりました。


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