2012年10月05日

キッチン 吉本ばなな

キッチン 吉本ばなな 新潮文庫

 3編の作品が収録されています。かなり以前、出版された当時に読んだことがあるような気がしますがまったく記憶に残っていません。読解力がなかったのでしょう。
「キッチン」台所で死んでいた兄のことを記してあった「コンセント」田口ランディ著が思い浮かびました。桜井みかげは猫のようです。田辺雄一君の母親えり子さんはすばらしい。えり子さんの言葉は嘘臭くもあるが、そこに何を意図するのか深く考えさせられます。血縁関係、家族、なにげないことがしあわせ、台所をしあわせな場所にしたい気持ちが伝わってきます。
「満月 -キッチン2-」身近な人たちが次々と亡くなる記事には気が滅入ります。この続編の意味は何だろう。みかげさんは仕事に就いているが労働をしていない。みかげに嫉妬する雄一の彼女の意見にわたしは賛成です。食べ物(カツ丼)に物語を誘導させようとするのはよかった。作者は家族に飢えています。
「ムーンライト・シャドウ」さつきさんと等君、そして、うららさん。キッチンとは違って積極的な男女関係から物語は始まりました。作家と「死」は近い。作者は作品制作にあたり、自ら「死」に近づこうとしているようです。本気で死のうとしているのかそうでないのかが、作者自身にも見分けがつかないのではなかろうか。

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