2012年10月01日

チルドレン 伊坂幸太郎

チルドレン 伊坂幸太郎 講談社文庫

 5つの作品が集合してひとつの物語になっています。
 全体を通じて、陣内君(若い頃と家庭裁判所調査官になってから)、武藤君(陣内君の同僚)、鴨居君(陣内君のともだち)、永瀬君(盲目の人)、盲導犬ベス、優子さん(永瀬君の恋人)、以上の人たちで時間を隔てながら作品が構成されています。
「バンク」銀行強盗のお話です。意表を突く出だしがいい。このあとどう展開させていくのだろうか。1979年(昭和54年)に関西であった銀行立てこもりの猟銃強盗殺人事件を思い出しました。人質12人に2人がプラス。プラスの2人が12人のところへ来ないのは変です。読んでいて何かあるとピンときました。48ページの盲目永瀬君の言葉はいらなかった。トリックがわかってしまいました。この世には信用できるものは何もないという啓示(神の教え)です。
「チルドレン」家庭裁判所が舞台。陣内君は少年事件の調査官という職業に就きました。父親と万引き少年息子とのやりとりの中で、母親のことについて疑問が浮かびました。そこが秘密を解く鍵として読み進めました。予測とは反する展開で、そうつながるのかとあてがはずれました。
「レトリーバー」バンクに登場した盲目の永瀬君が再登場します。陣内君は作者の成り代わりではなかろうか。陣内君は人間の魅力にあふれています。さて作品内容はけっこう真面目ですが、現実に同じことが起こったら、滑稽な(こっけい)展開になると思います。作品は舞台劇のようでした。
「チルドレンⅡ」ここには本当の人生の切り抜け方が書いてあります。この作品は人生を生き抜くための教科書ではありません。本音の救済策のための書物です。
「イン」登場人物の彼らをとおして、「出会いの縁」を深く感じました。人付き合いを大切にしていけば、未来は開かれる。人助けをしておけば、遠い未来で自分自身が助けてもらえる。第6章盲目の永瀬君と少女とのやりとりは、目の見えない作者三宮麻由子著「そっと耳を澄ませば」を思い浮かべながらこの本の場面に重ねてイメージしました。状況がよくわかりました。

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