2012年09月30日

書を捨てよ、町へ出よう 寺山修司

書を捨てよ、町へ出よう 寺山修司 角川文庫

 正常と異常の境目で、異常に近い考えの持ち主の方のようで、さて最後まで読めるかなあ。社会常識と考えられていることに対して、反対視点から考察する人なのだろうか。記述内容は古い。生きておられれば今頃79歳ぐらいでしょうか。
 文章の中の本人と実際の本人とは乖離(かいり)していたのではなかろうか。47歳で亡くなっています。書中の実在人物たちは今はもう高齢者で、もうこの世にいない人もいて、でも書中で作者はさかんに当時の老人を批判しています。現在後遺症等で病気治療中の方もあり、本を読んでいるとわびしくなってきます。作者は生活の平均化を嫌っていますが、確かにまわりの人たちと同じことをしていれば幸福を感じられた時代がありました。書中に出てくる作者の詩は気に入りました。作者は世間の本流から離れたところにいます。文章は話し言葉で読みやすい。昭和の歌謡曲、昭和の風俗書です。
 97ページ、ジャン・ポール・ラクロワさんの言葉として、金をもつほど時間がなくなるの言葉も気に入りました。
 途中からショート・ショート(短いお話)になりました。これも気に入りました。
 146ページ、馬が殺される前に大学生にその命を救われて、その後障害物競技で優勝した馬の話はよかった。作者はこころのやさしい人です。運がいいか悪いかが運命の分かれ道、だから作者はギャンブルが好きなのか。
 「詩のボクシング」命名はこの本から来ているのではなかろうか。
 家庭や家族に満ち足りないこどもたちは文学に溶け込んでいく。ここまで読んできましたが、作者は頭でっかちな人だと感じる。太宰治「津軽」を思い出します。ふたりとも似ていますが生まれはずいぶん違う。太宰氏はお金持ちのお坊ちゃんだが、寺山氏は貧しい。生まれは青森で共通している。彼は馬にあこがれ、馬になりたかった。
 サラリーマンを強く攻撃しているけれど、彼自身はサラリーマンになりたかったのではなかろうか。「攻撃」とか「闘う」という単語ばかりを考えていた人のように受け取りました。泣き虫な幼い男の子の姿が目に浮かぶ。他人からやさしくしてもらいたかった人、愛情に飢えていた人という印象をもちました。

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