2012年09月29日

ドミノ 恩田陸

ドミノ 恩田陸 角川文庫

 お勧めの1冊です。胸躍る思いでどんどん読み進めます。作家という人は多重人格者で、その人格のひとつひとつが登場人物へと姿を変えていきます。東京駅で事件が勃発します。
 ペットのダリオに関する記事は「説明」になっていると当初評価していたのですが、思わぬどんでんがえしでびっくりしました。まんまと作家さんにだまされました。女性向けの娯楽作品です。なかなか楽しめます。
 登場人物たちは、しなくてもいい「行為」をしています。たとえば、「関係ない」のひとことでしなくても支障の起きない行為です。そうとなれば、登場人物たちの行為は止まります。このことからこの作品の柱は「誠実さ」です。登場人物たちに誠実さがあるからこそ彼らは動き、この物語が成立するのです。
 麻里花ちゃんのサリー役のセリフはすばらしい。
 登場人物の個性設定がプロット(企て、企画書)の段階からいきなり、本文に飛んできた感あり。企画段階の最初は、もっと登場人物が少なかったような印象をもちました。
 62ページあたりからコミカルなものになって、ちょっと失望しましたが、その後は話の運びに引き込まれてゆきました。
 256ページで、この本はハッピーエンドになると確信しました。
 作者は心の優しい人だと感じました。都会では、すぐそばに人が存在していてもまるっきり世界が違う。同じ時間の出来事でも全体の共有はなされないという東京駅とその周辺の特徴がまんべんなく活用されています。
 303ページ、わたしが麻里花の父親だったら躊躇無く現場に突っ込んでいって娘を助け出します。
 「どらや」の紙袋複数が複雑にゆきかうのがわかりにくくて、読み終えたあとに再度読み返して、マジックで紙に書き出して理解しました。

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